福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

物みなは新しき良し ただしくも 人は旧にし 宣しかるべし(万葉集)

2009年02月24日 08時32分46秒 | コラム、エッセイ
 「全て物は新しいのが良い。ただ、人間だけは老人こそがよいはずだ」、と言う意味の歌で、作者不明の万葉集の巻10-1885番である。朝日新聞に数日前に紹介されていた。記事に目を走らせていたら目に止まった。

 万葉集等の世界は、私もいつかはクビをつっこみたい、と楽しみにしている分野であり、簡単な解説が付いた記事は時々楽しんでいる。

 この歌は私と逆の考えの内容であったからピンと来た。

 奈良県立万葉文化館中西館長の子供向けの解説によると、「確かに物は新品の方がいいのに決まっている。でも人間には品物と違って経験がある。人間は成長するにつれて考えも深くなり、物を見る目も正しくなり、心に感じたことが豊に蓄えられていく。子供達はこの目や心の成長を目指して立派な大人になろうとする。やたらに年を取るだけでなく、思いやりが深く、心の豊かな大人になりたいものだ」、とある。
 
 私は物品に関しては基本的には保守的で、年季の入った物が好きである。特に自分のもとで古くなった物品は私の過ぎ去った時間の確認、振り返りの対象でもあるからとても大事にしている。尤も、私は過去を懐かしみ、慈しむ気はない。積み重ねの確認のためである。大きな意味ではどう評価すべきか分からないが、一刻一刻は無駄にしていない、と思っているし、別な選択肢はあったかもしれないが、満足しているからである。

 お年寄りに関しては、自分の年齢のことを含めて、社会や組織の中では存在は徐々に薄くなっていく。それは自然の摂理であり、それを本来ならば本人自ら自覚すべきだろう。私は当然自覚している。ただ、口に出すべき時まで出せないだけである。

 岩手県水沢出身で医師でもあり、内務大臣まで務めた後藤新平は「私は午後3時の人間をあてにしていない。午前10時の人間と共に改革に努める・・・」と発言している。5時から人間というのもあるが、意味が全然違う。確かに、彼の革新的改革手腕は、私はまだ多くを知らないのだが、特に東京の都市計画の推進に於いては、午後3時以降にある方々の反対によって多くが頓挫させられたが、その記録を読むと痛々しくもなるし、一方では彼の強靱な精神力に感嘆する。振り返ってみるべき人物の一人である。

 たまたま作者不明の万葉集の巻10-1885番の歌に触れてつらつらと考えた。

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2 コメント

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私も福田と申します (福田)
2009-02-24 11:20:56
人の魅力は年を重ねた柔軟さだと思います。 若さは直線的ですが老いには温かみがあります。生かされて生き抜いた光りがありますね。そんな老いを迎えたいものです。お元気で お過し下さいね。
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歳を重ねる (福田)
2009-02-26 04:54:18
歳を重ねることは、本来は楽しいものだと思います。 老いの意義を自覚できればさらに良いのでしょう。
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