脳の病気、意識障害、老衰が進むと嚥下ができず、自力では食事が摂れなくなる。
私はこの状態に至ったら人生の終わりと考えているが、一般人も医療関係者の大部分もそうは考えていない。その結果、延命治療の始まりという認識がないまま点滴による水分や栄養補給が安易に行われる。
食べられなくなった場合はいくつかの選択肢がある。
(1)「その時が終わり・・・」と延命治療せず自然経過にまかせる。
私が推奨する方法で、その場合、1-3週間で衰弱して死亡する。この場合、患者は意外と苦しまない。
希望によって好きなものを若干口に含ませることもある。 嚥下機能が落ちているから、誤嚥性肺炎になる可能性がある。私はそれでも良いと思っており、患者や家族の希望に沿って許可している。
(2)経管栄養投与
口から食事が摂れない場合に鼻から胃にチューブを入れて、栄養を投与する方法。点滴よりも生理的で胃腸管の機能を保つことがでる。1500Kcalほど投与できるが、これ以上は吐き気や嘔吐、下痢をきたし困難になる。
チューブを入れる経路が2種類ある。
1:経鼻チューブ
鼻から管をいれる。先端が気道に入ると危険。この操作と安全確認は医療者にとってストレスとなる。最近はレントゲンで確認することが多い。チューブは1-2週毎に交換 する。老健や特養等の介護施設ではチューブ挿入が危険なために受けてもらえないことがある。
チューブ装着時には不用意に抜かれないよう に、身体拘束をする場合がある。
それ以上に、患者の顔にチューブ が固定されているのは非人間的??と私は思う。
2:胃ろう
胃に穴をあけて、チューブを腹から外に出す方法。造設には内視鏡を使った小手術が必要。それほど大きな危険はない。経鼻チューブと違い、抜けにくく、管理しやすい。老健や特養等の介護施設では胃ろうならOKと受け入れる施設が比較的多い。
(3) 経静脈栄養(点滴)
1中心静脈栄養
首や上腕、鼠蹊部の静脈を穿刺して、心臓近くまでチューブをいれ、高カロリーの点滴をする。十分な栄養が投与できる。刺すときに技術が必要。鎖骨下静脈から刺入する場合は気胸等の合併症が起こりやすい。長いことチューブを入れておくとチューブ自体に感染を起こして抜かなければならなくなることもある。
人工的な栄養を強制的に投与するので肝機能障害、血糖値不安定などが生じることがありも注意が必要。
点滴の交換や刺入部の清潔管理のケアが大変。
2末梢点滴
腕などの細い血管から水分と少量のカロリーを補給。徐々に低栄養状態になる。 2-3月くらいが限界。
3皮下注射法
お腹や大腿の皮下に針を刺して水分を入れる方法。投与量に限界があり長くは持ちたない。