日本の社会保障は「雇用」と強く結び付きながら作られてきた。
かつての「日本型雇用制度」は労働者及び家族にとって安定した身分保証を与えるものであった。法的にも自動的に各種の保証がついてきた。
このため、当時の労働者たちは安心して結婚ができ、子育てもできる環境にあった。
しかし、バブル後の雇用システムの変化、特に非正規労働者にとっては厳しい生活環境にさらされることになった。
「正規雇用労働者」には、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の三つがセットで適用される。
「非正規労働者」の場合は、同じ職場で働いているにもかかわらず、非被用者扱いとなっているのが通例で、同じ職場に働きながらも、「職場」とのつながりを通じて、社会保険による生活の保障を受けることができない。
このため、配偶者の被扶養者としてパート労働をしているケースを除き、「非正規労働者」は医療保険は国民健康保険が、年金は国民年金が適用され、雇用保険は適用外となる。
しかも、「非正規雇用」の場合は医療保険や年金の非加入状態に陥るおそれが高い。制度の上では、被用者を対象とした健康保険や厚生年金保険の適用を受けない人は、国民皆保険制度で国保や国民年金が自動的に適用されるので、そうした「空白状態」が生じるはずはない。
しかし、「非正規雇用」や「若年無業者」は、しばしば雇用形態や勤務先企業、さらには住所が変わるケースが多い。そうした場合、そのたびに脱退と加入の手続きをとる必要が生じるが、手続きを忘れたり、さらには保険料を負担することを嫌って、手続きをしないケースもある。
わが国の社会保障は、一つの企業に長い間、正規雇用として勤める場合には特段の支障はない。しかし、正規雇用と非正規雇用を行ったり来たりするような人々にとっては、実に利用し難い仕組みになっている。
そして、この「制度間移動」の時に、まさに「無保険状態」が発生する危険性が高い。
結婚、とりわけ出産・育児は長期的な生活の展望がなければおいそれと決断ができない。
我が国の少子化の背景には労働環境が濃厚に関与している。
したがって、我が国の少子化対策は、特に若い労働者の生活環境に展望を与えるものでなければならない。
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