福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

「司」と「士」と「師」  何で「医師」は「医士」でないのか?(2)

2009年03月15日 07時09分05秒 | コラム、エッセイ
 維新を経て発足した明治新政府は、迫られた富国強兵のために「和」「蘭」医学を廃し、国策としてドイツ医学を導入することにしたが、必要に迫られて「医師」という官職名で医術を用いる技術者を西洋並みの身分まで格上げした。その背景は分からないが、多分、招聘された何人かのドイツ人医師達が、わが国の医療関係者の身分や扱いがあまりにも低いことに驚き、激しく国に圧力をかけたのではないかと思われる。

 当時、医学は学問としては国学、国文学などの文系に比較して甚だしく軽視されていたが、国の力でそれと同等の学問に引き上げた、ということになるが、東大文系のある教授は、「医学関連の教授と同列視されるのを屈辱と感じる」と言う記録を残しているそうである。もう一つ、あの森鴎外は身分は高級文官でもあったが、医学関係の論文や投稿記事に「医師」でなく「医士」と書いていたこともあったという。
 当時の医師の置かれている立場を類推できるエピソードである。

 このような混乱期を経て「医師」と統一された。「医士」にする話題が公的に出たか否かは現時点で私は知らない。「医師」とされたのはこのような歴史、背景があったのだ。

 大正・昭和にかけて、医師の地位は向上し、「医師の品格」もそれなりにあったように感じられるが、最近、医師は単なる医療技術者・労働者に零落したような気がする。いや、こんなことを医師が述べること自体が駄目なのかもしれない。

 今更呼び名はこだわる必要はない。ただ、「医師の品格」として「日本人の品格」とされる慈愛、誠実、側隠、卑怯を憎む等の情緒と心を併せ持つことが必要である。その上で、医師が患者や他職種や介護スタッフと共に、チーム医療を実践していければいい。
 それには、いろんな意味で余裕が欲しいものである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする