陶芸をしている方は、薪での焼成を一度は経験したいと、思っている方も多いと思います。
薪窯には、登窯と窖窯(あながま)に大別されますが、実際薪で良い作品を得る為には、土の種類や
窯詰めの仕方、更には焼成方法など、知っておくべき事も多いです。
以前には主流であった登窯は容積が大きく、大量の作品を作る陶芸家や、窯場の共同窯で
使用する以外は、ほとんど使われなくなっています。(公害問題も大きく影響しています。)
1) 一方窖窯は、小規模であり窯自体を貸してくれる所もありますので、近年個人や陶芸
グループなどで、割合容易に薪を使う窖窯が利用される様になり、人気も上がって来ています。
① 窖窯での焼成には、それなりの心得が必要です。
釉を使わず、自然降灰の松灰と炎に任せる薪窯の魅力は、焼肌が紅やオレンジ色になる
「緋色」や、松灰が流れる「ビードロ」、そして薪のオキの中で出来る「焦げ」等が起こる事です。
これらが単独で起こる場合と、複合的に起きる場合があります。いずれも窯任せの状態です。
その結果は、窯出しの際に判明される物ですが、どの様な焼き上がりを望むかによって、土の
選択や作品の作り方、窯詰めの仕方、更には、焼成方法によって、その出来不出来が決ると
言われています。
) 土選び: 一般に信楽の土と伊賀の土を使う事が多いです。
(勿論備前土もありますが、備前は焼き方が他とは事成りますので、後でお話します。)
窖窯では焚き口と煙道との温度差は大きく成り易いですが、土の耐火度も1300℃程度は欲しい
所です。これに適合する土として、「古信楽」の細目と粗目と、「古伊賀」が挙げられます。
a) 「古信楽土」は、長石粒(ハゼ石)を含み、この長石が美しく熔け、大物の作品に向き、
緋色も出易い土です。「白信楽土」は、長石や珪石を含みませんが、松灰が掛り流れ易く
なり、繊細な作品向きに成ります。尚、緋色は土に含まれる鉄分と、薪の炎に含まれる
「アルカリ」成分が反応して、現れると言われています。
b) 「古伊賀土」は長石を含み、熔けて弾けて豪快さが表現でき、緑色の「ビードロ」が映える
器肌に仕上がります。この土は耐火度が非常に高く(1350℃程度)、更に数度の窯入れ
にも耐えられます。鉄分の少ない白めの原土に、磁土と赤土を3~4割混ぜる場合も
有ります。原土のみよりも、ビードロが載り易く、緋色も出易いと積極的に使う人もいます。
尚、 土は信楽や滋賀土を専門に取り扱っている業者も多いですので、そこから取り寄せて
いる方も多い様です。
c) 「黄ノ瀬土」と「篠原土」も昔より、窖窯の中で緋色が出易い土として使用されています。
現在名前は同じでも、昔と同じ土を見出すのも困難かも知れません。
それ故、各種の土をブレンドして使用している陶芸家もいるようです。
d) 薪窯の煙道近くは、焚き口より温度が低くなりますが、逆に還元が強く掛かる場所でも
有ります。その為炭化焼き風の作品に仕上げる様に、信楽の赤土系や黒御影土の作品を
置く場合もあります。
) 窖窯に向く作品の造り方
以下次回に続きます。