わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸161(各務周海2)

2012-08-09 22:36:23 | 現代陶芸と工芸家達

「黄瀬戸」とは瀬戸地方でなく、美濃の半地上の窖窯(あながま)や登窯で焼かれた、

淡黄色の陶器です。 

3) 各務周海氏の陶芸

  ① 油揚手の黄瀬戸は、しっとりした質感ながら、ややザラザラした質感を有しています。

    しかし、焼きの甘い焼き物ではありませんし、砂を入れたりして焼いた物でもありません。

    「油揚手」「アヤメ手」といわれる『黄瀬戸』は、桃山時代の美濃大萱の窯下窯、牟田ヶ洞、

    中窯、浅間窯で名品が多く焼かれていました。

    注: 油揚手とは、豆腐屋さんの作る油揚げ、即ち稲荷寿司に使う油揚げの様な色と肌の

       ざらついた様子に見える事から付けられた名前です。

   ) 北大路魯山人は、油揚手の名品が焼かれた美濃山中の窯下窯を発掘した経験から、

     湿気がある窖窯で焼かれていた事を突き止めます。

     彼の窯は湿気の少ない登窯であった為、匣鉢を用い積み重ね、下部の匣鉢に泥状の土

     だけを入れて、水蒸気を蒸発させて、艶を抑えた黄瀬戸を焼成したとの事です。

     更に、徐冷をする事はより効果的と述べています。

   ) 加藤唐九郎氏は、釉に備長炭の灰を利用しているとの事です。

     (黄瀬戸釉は、灰釉を使っています。)

 ② 周海氏は、桃山時代の三拍子(油揚手、タンパン抜け、焦げ)揃った小さな陶片を、美濃山中

    の窯下窯で見つけ、その美しさに感動し、難関の油揚手に挑む決意をしたとの事です。

    恵那山(長野県、岐阜県)の土と釉薬を用いて、桃山の名品と遜色ない数々の優品を、世に

    送り出す事になります。

   ) 桃山陶工が身近な材料で調合したと推定される黄瀬戸釉を、周海氏は色々な灰を用いて

     試していましたが、恵那の栗皮灰をベースとして使い、効率の悪い窖窯で焼成し、成功を

     収めます。栗皮は白い灰にならぬように注意して、黒目の灰を作ります。

     これに裏山の雑木林の土灰をほどよく合わせて、黄瀬戸釉を作るとの事です。

      注: 栗皮灰とは、腐り易い栗の木は、伐採後樹皮を剥ぎ取り保管したそうです。

        その為、栗の樹皮は産業廃棄物状態で放置されていた物を、焼却し灰にして陶芸用に

        使ったのが始めと言われ、一般的な釉の材料です。

   ) 黄瀬戸は単に土と釉の問題ではなく、焼成方法も大きく関係している様です。

      即ち、桃山時代の黄瀬戸は作品を匣鉢に入れ、大窯(窖窯)で徐冷によって油揚手に焼き

      上げています。現在では大窯(共同窯)は、ほとんど姿を消しています。

      その為、焼成方法にも、工夫が必要なはずです。(詳細は当然秘密です。)   

   ) 黄瀬戸の器には、釉の上にタンパン(胆礬)という硫酸第二銅を使用し、銅緑色(又は褐色)

      の胆礬の斑点が、表面から裏面まで浸透した物を「抜け胆礬」と言い、茶人は特に珍重

      しています。 これは胆礬が水溶性の為、裏面まで通り抜ける事によります。

      又、胆礬は火前の強火では揮発し、光沢も出てきます。

   ) 周海氏の作品は主に茶陶器で、抹茶々茶碗や、懐石料理の器、ぐい吞みなどの酒気類が

      多いです。しかし単に桃山の再現や写しではなく、独自の造形を目指しています。

      黄瀬戸以外にも、志野の作品や伊賀の花入れ等も手掛けています。

次回(瀧口喜兵爾 )に続きます。

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