ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

原発事故・真実を言わない政府

2011年07月16日 | 日本とわたし
デモクラシーNOWという、こちらで報道されている番組です。
ビデオを観る時間の無い方がいらっしゃるかもしれないので、ビデオ上に流れている日本語訳を書き出してみました。





『最初の1週間の放射能もれは2倍だったと訂正し、原子炉3基のフルメルトダウンも認めました。
法科大学院卒業生の江藤貴紀氏はいちはやく行政訴訟を起こしました。
政府の原子力政策には危険性がつきまとっています。
導入の段階から失敗がありました。
事故が起きた後も、政府は国民をきちんと保護していないことから、沈黙を守るのではなく、裁判で国の誤りを主張すべきと考えました。
原発事故の対応について、初めて政府を訴えたのは江藤貴紀氏でした。
事故処理の危険な作業にも、不況で人は集まりますが、発電所に入ったロボットは、かつてない高放射線量を感知しました。
日本の事故を受け、米国の電力業界も、国内の原子炉の安全を見直しています。

日米の原子炉の安全性について、2人のゲストと話します。

ロバート・アルバレス氏は、元エネルギー長官の上級顧問で、現在は政策研究所の研究員です。
『米国の使用済み燃料プールの危険についての報告書』を書かれた方です。

日本からは、グリーンアクションのアイリーン・スミス事務局長です。

*アルバレスさん、福島の事故では原子炉3基がメルトダウンしていたそうですが、どういう意味ですか?
事故はごく早い段階で、深刻な事態になりましたね?
*放射能汚染の被害も、ずっとひどいものになるでしょう。
先程の説明のように、土地の汚染は周辺に留まらず、極めて広い範囲に及ぶでしょう。
私がみた報道によれば、土壌汚染の範囲は広く、セシウム137に汚染されて人が住めなくなる地帯は、約600平方キロに及びます。
マンハッタン島の17倍の広さです。

*アイリーンさん、市民の反応は?
汚染は避難地区に留まらず、ホットスポットが広がっています。政府はもっと早い時期に公表しませんでしたね。
*大きな不安が広がっています。福島の父母だけでなく、かなり離れた東京でも、父母達に不安が広がっています。
市民は自分で線量を測っています。放射能の強い場所が見つかると、自治体や政府に知らせ、調査を要求します。
役所が調べると、汚染は確かで、結局このことは、市民が先頭に立たないと調査が成り立たないという状況を示しています。
あちこちに測定器が設置され、子供のいる人達が測定したり、大学教員が週末に測定したりしています。

*福島県は新たな健康調査を行いますね?
*はい、6月末に、住民の健康調査が始まります。
放射線被曝の影響を調べますが、心配なのは、座長の山下俊一氏です。長崎大学の原爆症研究者で、福島県の放射能健康リスク管理アドバイザーになりました。
メディアへの露出が多く、福島にもよく来て、今の放射能レベルは全く心配ないと言うのです。
妊婦が100ミリシーベルト浴びても健康には何の影響もないと。100ミリシーベルトですよ!
山下氏によれば、放射能の影響は、「ニコニコ笑っていいる人にはきません。クヨクヨしてる人にきます」だそうです。
こんな発言をする人が座長です。福島市民は心配でしょうね。

*アルバレスさんが出した報告書の新事実は?
*米国の原子炉に保管されている使用済み燃料の危険性を報告しました。
米国の原子炉の設計は、福島第一と共通部分があります。
福島第一の事故の進行をみると、爆発によって使用済み燃料が雨ざらしになりました。
米国の原発の燃料プールには、日本の3~4倍の使用済み燃料が貯蔵されています。
安全性の低い燃料プールに貯蔵した放射能物質は、地球上のどこより集中しています。
2008年に出した共同報告書は、9/11のテロ事件を受けて、核燃料プールの弱点を指摘するものでした。
プールの水が流れ出て、空になるような事態が起これば、放射能物質が燃えて大災害になる。
誰も住めなくなる土地の広さは、チェルノブイリ事故よりずっと広いのです。
チェルノブイリ事故による立ち入り禁止区域の広さは、ニュージャージー州の半分ぐらいです。
実のところ、核燃料廃棄物を最終処分する場所はどこにもないのです。
最終処分地を見つけようと、55年にわたって努力してきましたが、結局は米国の中に核廃棄物がたまる一方です。
運転中の原子炉は、使用済み燃料をどんどんプールに詰め込みますが、プールの安全性は原子炉に比べるとほど遠く、車の販売店やメガストアと大差ない建築物なのです。
電源喪失に備えた予備ディーゼル発電機を、原子力規制委員会は義務づけていませんが、冷却を続けることは不可欠なので、これが重大リスクになります。
米国の原子力発電所の持つ、最大の弱点だと思います。

*他の方法は?
米国でも他の国でも、政府は原子力を断固として拡大しています。使用済み燃料は、ためる他ないのですか?
*『計画』と『現実』は大きく違います。
米国の原子力発電の拡大は、起きたとしても小規模です。
稼働中の104基の心配が先です。廃棄物も含めてね。
ドイツが25年前にやったことを見習うべきです。
燃料を貯蔵するのをやめ、プールを本来の目的で使う。つまり、使用済み燃料を数年かけて冷やすだけで、その後は水から出して貯蔵すべきです。
燃料プールの危険は、これで大きく減ります。

*原発拡大の方針は、大問題ではないと言いますが、歴代大統領が控えてきた原発推進を、オバマ氏が掲げたのはショックです。
米国では、30~40年も、原発の新設はありませんでした。
オバマ氏はかつて、原子力業界の支援を受けていました。大統領は推進をやめるとは言わず、今は口を閉ざしているだけですね。
*もともと口先だけです。原発というエサを投げただけ。
政敵をなびかせようとした可能性もある。
実際には、原発を米国で建設したいなら、国庫から無限に金を出す能力が要りますが、そんなことは無理です。
下院は最近、2012年予算を承認しましたが、オバマは提案した政府債務保証はすべて却下されました。
政府が債務保証をつけたくても、貸付けをするのは国庫です。
一基100億ドルもする原子炉に、今の議会が金を貸すとは思えません。
オバマは口では原発を支持し、政府債務保証の拡大を図りながら、ネバダの最終処分場計画を打ち切り、業界の足をすくったのです。
この件に限らず、大統領の行動については、口にしたことと実現したことを区別すべきです。

*アイリーンさん、福島原発事故についてお聞きします。
グリーンピースの調査によると、高濃度汚染水が海に排出されており、沖合80km地点でも汚染が検出されました。
日本の漁業への影響と、広範囲の海洋汚染に対する反応は?
*チェルノブイリでバルト海に出た放射能物質の10倍の見込みになると思います。
全国漁業連合会は、早くから、すべての原発の停止を要請しました。
原発を問題にしてこなかった漁業連としては、極めて異例のことです。
高濃度汚染水はたまり続けており、東電は再び海に放出するつもりで、漁業関係者は反対しています。

*アルバレスさんは、海洋汚染をどう思いますか?
*日本政府は事故後1週間の大気への放射線量を上方修正し、放出量はこれまでの2倍の、約4千万キューリーと認めました。
でも、2千万キューリーの汚染水を、海に放出したことは報告していません。
調査対象はヨウ素とセシウムですが、問題はセシウムです。
セシウム137は半減期が30年で、通過生も高く危険です。
食物連鎖により、他の生物に汚染が拡大します。
人間が食べる頃には濃縮が進み、環境に放出された時よりも、高濃度の放射能になります。
福島原発の沖合は、海洋底が広がっていて、幅は数キロ、長さは数百キロの範囲で、セシウム137汚染が確認されています。
水産物は日本人の重要な食料です。非常に心配される事態です。

*アイリーンさん、学校に許容される放射線レベルが変わったそうですね。
*大問題になっています。
福島の親たちは、バスを貸りて上京し、文部科学省に押しかけました。
庁舎はすっかり取り囲まれ、緊張の中で交渉が行われました。
福島の子供の許容される放射線の限度について直談判し、1ミリSvに戻すと役人に言わせました。
事故後、20倍に引き上げられたそれは、今も公式にはそのままです。
年間で20ミリシーベルトなんて、放射線管理区域に指定される基準よりずっと高いのです。
日本では、白血病になった原発労働者が、5ミリSvでさえ、労災を認定されています。
その4倍を子供に許容するなんて……私達は1ミリSvを要求し、役人に同意させました。
彼らの言い訳では、学校にいる間だけに適用される上限値だそうです。
でも、学校は子供の生活の中心です。政府の容認レベルは高すぎます。

*アルバレスさんに聞きます。
大災害が起きた時、政府が情報を隠し、ウソまでつく問題についてですが、スリーマイルアイランドでもチェルノブイリでもそうでした。
BPの原油流出事故でも、9/11後の住民健康被害でも、そして今度は日本です。
政府は即刻入手できた情報を、いつも国民から隠そうとします。
こんなことが続けば、国民は災害時の政府発表を信用しなくなります。
*そのとおりです。原子力業界は、特に米国やロシアや日本では、昔から情報隠しの体質があり、自分たちの事業の危険性について国民を欺いてきました。
米国でも昔からそうです。野外で核実験を繰り返していた頃からです。
原子力産業は、核兵器開発に起源があるため、他業界には無い地位を享受してきたのです。
秘密主義や隔離や特権に守られて育ったので、国民にオープンにすることが自分たちの利益だと考えないのです。
私は6年間エネルギー庁に勤務し、核政策の『インサイダー』でした。
そこで働く人達の思考回路ーどんな危険をはらんでいるか素直に話そうとしない理由は、「国民を恐がらせるのは禁物だ」「恐がらせるのは事実を語るよりもまずい」という、根本的に間違った思い込みです。

*原発事故によって日本人に健康被害が起きるとは思わないと、米国の原子力産業は発表しましたね。
*ただのリップサービスです。被害の全貌は数十年先まで知り様が無いのですから。
チェルノブイリ事故の調査や、米国の核施設労働者の50年にわたる記録などから確実に言えることは、今後ガンになるリスクが大幅に増え、他の病気も増えるでしょう。

*福島の事故は、チェルノブイリ並みか、もっと悪いかもしれないのですか?
*ええ。ソ連は環境中に出た放射能は、5千万キューリーと主張しています。
今日本政府が認めているのとほぼ同じ量ですが、福島の放射能は今も出続けています。事故直後ほどではありませんが、高水準です。
現場作業員の問題もあります。5千人もの作業員に、内部被曝の兆候が出たと知り、愕然としました。
この短期間でこんなに大勢です。
米国の核兵器開発は、50年近く活発に進められました。
さかんに核実験をしていた時期に内部被曝した米国人の総数に、匹敵するような数です。
事故直後に現場で働いた人々への影響は、しっかり見守る必要があります。一般住民の健康への影響を予測する手がかりになりますから。

*アイリーンさん、作業員の募集は順調だと、米国では報道されています。津波と原発事故で経済が混乱し、日当も高額だからだそうですね。
*そのとおりです。作業員への健康被害が心配です。
アルバレスさんが言うように、多くの作業員の内部被曝がわかり、市民の間にも懸念が拡大しています。
政府は、福島県住民が、内部被曝する可能性を認めません。
子供達のために、全身測定による内部被曝の検査を求めます。
検査ができた人は少数ですが、放射線医学研究所は結果を公表せず、「問題無い」と言うだけです。
市民は公表を求めています。
事故はまだ収束していません。
原発20キロ圏外には、まだ住民がいます。20~30キロ圏内の、高汚染地域だけが避難区域なのです。
避難区域の拡大を要求しています。
特に、妊婦と子供は避難が必要です。

*各国の反応をみると、米国は推進です。
スイスも脱原発ですが、サウジは数十基の原子炉を新設すると発表しましたね。
*さきほども申し上げたように、計画や声明は、概して実際に起きることと違います。
現実は、米国にはもう、原子炉を建設できる会社も、技能もインフラも無いのです。日本やフランスに作ってもらうのです。
圧力容器を鋳造しているのは、今は日本だけです。
米国の核技術者は、敗軍の兵です。核技術者を志望する米国人はほとんどいません。先の無い仕事だと思われています。
だからインフラが無いのです。
本格的に原発を増やしていくために必要な、現場技術の蓄積が無い。
福島の事故は、世界の原子力産業に、大きな打撃を与えたと思います。
日本には、54基の原子炉があり、世界第三位の原発大国です。
その日本が、一時的な理由にせよ、再稼働を来年まで凍結すると宣言すれば、世界に向けた警鐘になります。
すでに多くの原子炉を持つ国や、これから建設する国にも、です。
さて、サウジは原子炉を何十基も建設したがっていますが、そう簡単ではありません。
その種の受注には、米国が「うん」と言わないといけない。
サウジは核インフラを築いて、いずれは核武装する能力を持ちたいのでしょうが、サウジのような砂漠の国に、大量の水を使う原子炉を何十基も建てるのは不合理です。
そんな場所に原子炉を建てたら、費用は3~5兆ドルになるでしょう。
だから、こんな声明や計画は、ただの声明や計画だけでしかないのです。

*バーモント州議会は、米国で初めて、原発の廃炉を決めたそうです。でも、ヤンキー原発の所有者は、これを阻止しようと訴訟しました。
福島とヤンキーの原発を比べるとどうですか?
*ヤンキー原発はGEのマーク1沸騰水型原子炉で、福島第一の原子炉と同じ設計です。
貯蔵された使用済み核燃料は、壊れた福島の4基分を合わせたものより多くの放射性物質を含んでいます。
ヤンキー原発は42年前に建設され、原子炉の寿命が尽きています。
まるでATMかなにかのように、投資会社に最大限の利益を返す機械と錯覚してはいけません。
この原子炉を二束三文で買ったエンタジー社は、規制緩和をいいことに、安全対策の大改善などには投資したがらないでしょう。
州政府が、排ガス規制の厳守と冷却塔の建設を義務づければ、基本コストの検討だけで、この原子炉は廃炉でしょうね。
ここに戦線が敷かれています。
原発の今後をめぐって、各州と連邦の間に、次第に衝突が増えていきます』



日本の様子を語る部分では、少しシンプル化された表現が多いように思われますが、
アメリカにおける原発狂団の実態が、少し理解できてきたような気がします。
オバマ氏が、原発推進を装いながら、いったいなにを水面下で進めようとしているのか、
今月末に、ニューヨーク州にあるインディアン・ポイントという原子炉の廃炉を目指すミーティングがあるので、行って話を聞いて来ようと思っています。
日本が世界に向け、意義ある警鐘を鳴らしてくれることを祈りながら。