「存在の耐えられない軽さ」
1968年のチェコスロヴァキア・プラハ。優秀な脳外科医のトマシュは、画家のサビーナや不特定多数の女性との情事を楽しんでいた。出張で赴いた田舎町で、トマシュはテレーザという娘と出会う。突然部屋に転がりこんできたテレーザに戸惑いながらも、トマシュはしだいに純真なテレーザを愛するように。サビーナをはじめ他の女との関係も続けるトマシュを、テレーザは理解できず苦悩する。そんな中、ソ連のプラハへの武力侵攻が勃発し…
私が3回も映画館に足を運んだ唯一の映画です。多感な年頃だった私の心の琴線に、その美しく刺激的な恋愛ドラマはとてつもなく触れました。
テレーザを愛しながらも、女遊びをやめないトマシュ。たいていの男は、愛がなくても女とセックスできる、愛がないからこそセックスが愉しめる、ということをトマシュが幼い私に教えてくれました。潔癖で真面目な女性からしたら、とんでもないヤリチン、軽薄な浮気者、はたまた異常性欲者にも映ってしまうかもしれないトマシュ。確かに、トマシュみたいな男を愛したら大変だろうな~とは思います。だからこそ、私にとってはすごく魅力的な男なんですよね~。あんなに美しくて優しくて知的でエリートな男が、インポみたいな堅物だったらトホホですよ。自分の魅力を理解してて、無駄にしてないトマシュってカッコいい。トマシュって、ちょっと源氏物語の光源氏とカブるんですよね。女とヤリまくりながらも、ぜんぜん下劣にも卑俗にもならない。女に身を投げさせる誘惑も、軽やかで優しい。心の痛みや苦しみは与えられても、トマシュを愛した女たちは決して不幸ではない。むしろ女として、人間として豊かになれてる。放蕩をやめないのは、暗い生い立ちとか女への愛憎とかのせい…みたいな、心の闇チックな暗さや悲しみなどがないところも、トマシュの美点です。単にすべての女が好き、愛することができる、みたいな軽やかさ、懐の深さが素敵なんです。実際、いろんな女とヤるトマシュですが、許容範囲広すぎ~と驚嘆してしまうほど、いつでもだれとでもOKなラブマシーンぶりなのです。エッチで情緒不安定な女たちへの注射のつもり?さすがお医者さん、と笑えるほど。
花から花へと自由にフワフワしてるようで、ソ連の圧力や脅迫にも屈しない硬派で骨太な男でもあり、すべてを犠牲にしてテレーザを愛し抜くようになる(亡命先のスイスから、テレーザを追って危険なプハラへ戻るトマシュに感動!)潔い男でもあるトマシュ。こんな男、私なんか絶対に関わることのない世界の住人なんだろうな~と、残念だったり安心もしたり。この映画にハマってた頃、よく見る野良猫を勝手にトマシュと名付けて呼んでました。
主人公のトマシュを完全にのみ込み、文字通り食ってしまってるのが、テレーザです。この娘、ほんとスゴいんですよ~。まさに猪突猛進爆弾娘。おぼこな田舎娘、処女のくせに、優しく声をかけてきただけのトマシュを追って家出、彼の部屋に押しかけて、ほとんど彼をレイプ。その行動力、情熱にトマシュだけでなく観てるほうも圧倒されます。その後も、予測不可能な言動でトマシュを困惑させ翻弄するテレーザですが、そうすればするほど、トマシュはグイグイと彼女に惹かれていき、いつしか彼女なしでは生きていけない愛の奴隷になってしまうのです。ちょっと犬っぽいというか、俺がついてないと(飼ってやらないと)ダメな女(犬)だから、と男の父性本能をくすぐる頼りない危なっかしいキャラと見た目は、マネしようにもできない天然さ。計算高い悪女なんかよりも、テレーザみたいな天然不思議ちゃんのほうが怖い…と、幼い私は女性観もあらたにしました。
トマシュのセフレ?サビーナが、すごくカッコいいです。あーいう自由な女に憧れます。トマシュとは生き方や考え方が近い、同志みたいな愛で結ばれているのが素敵でした。彼女がもし男だったら、トマシュとは大親友になってたことでしょう。サビーナのアーティストなファッションがオシャレでした。
トマシュ役は、若き日のダニエル・デイ・ルイス。オスカーに輝いた作品の彼も素晴らしいけど、ワタシ的にはこの映画こそDDLの最高作なのです。とにかくカッコいいです。他の俳優だと、ただのヤリチン男になってしまうだろうトマシュが、まるで優雅な貴公子に見えたのはDDLだからでしょう。若い頃から、世界最高級の香り高き俳優だったのです。声が好きなんですよね~。すごい美声!トマシュのキメ台詞『服を脱いで』DDLのあの美声で言われたら、催眠術にかかったように女なら(男でも)誰でも言いなりになりそう(笑)。静かな優しい微笑も素敵ですが、たまに見せる歯が見えるほど大笑いする笑顔が可愛い!
テレーザ役のジュリエット・ビノシュが、とにかく圧巻の存在感と演技。あのダニエル・デイ・ルイスが食われてるもん。スゴい女優が現れたな~と、当時は無名に近かったJBさんを見て驚嘆したものです。後にフランスの大竹しのぶと呼ばれるようになったJBさん、ヤボったい可愛さとか、憑依的な演技とか、確かに大竹しのぶとカブります。テレーザ役も、たとえば宮崎あおいとか蒼井優とかが演じたら、ほんと不愉快なだけのブリッコカマトト女になってただろうな~。若かりし頃のJBさんは、瑞々しいフレッシュさ、純朴な愛らしさがありつつ、リアルな生々しさ、大胆さで圧倒的な女優魂を見せつけてます。やはりタダモノではありません。JBさん、当時はまだ英語が下手だったせいで、テレーザ役のオーディションに落ちたんだとか。再度チャンスがめぐってきて役を獲得しただけあって、力と熱の入れようがハンパじゃないです。後に国際女優として大成する彼女の原点、とも言える作品です。
サビーナ役のレナ・オリンもチャーミングな好演。こうだクミなど目じゃないほどのエロカッコよさ。挑発的でクールな演技は、同性受けしそう。レナ・オリンとジュリエット・ビノシュが、屈折した感情を吐き出すように互いのヌードを撮り合うシーンが、レズっぽくて妖しい。ハリウッドの有名女優ではなく、ヨーロッパの実力派女優を起用したのも、この映画の勝因と言えましょう。後年二人は、「ショコラ」で再共演してますね。二人ともすっかりおばさんになってて、感慨深いものがありました…
美しいプラハの街並みも見どころのひとつ。実際はプラハでロケできず、別の国で撮影したらしいけど。私が数年前にチェコに行ったのは、この映画の影響によるところが大きいです。透明感ある冷涼な映像、流麗な音楽も素晴らしいです。
有名な“プラハの春”も描かれてます。パニック映画さながらな迫力と緊張感あり。ほんとにあんなことがあったんですね~。街に戦車ですよロシア(当時はソ連)怖い~。ほんと、今も昔もおそロシア!
あと、犬好きの方は必見!トマシュとテレーザが我が子のように慈しむ愛犬カレニンが、超可愛い!カレニンとのお別れのシーンが泣けます。子豚のメフィストもいい味だしてます。
3時間近い大作ですが、集中力が皆無な私でもダレずに観ることができました。何だか夢を見ていたかのような、はかなく遠い余韻を残すラストも好きです。
1968年のチェコスロヴァキア・プラハ。優秀な脳外科医のトマシュは、画家のサビーナや不特定多数の女性との情事を楽しんでいた。出張で赴いた田舎町で、トマシュはテレーザという娘と出会う。突然部屋に転がりこんできたテレーザに戸惑いながらも、トマシュはしだいに純真なテレーザを愛するように。サビーナをはじめ他の女との関係も続けるトマシュを、テレーザは理解できず苦悩する。そんな中、ソ連のプラハへの武力侵攻が勃発し…
私が3回も映画館に足を運んだ唯一の映画です。多感な年頃だった私の心の琴線に、その美しく刺激的な恋愛ドラマはとてつもなく触れました。
テレーザを愛しながらも、女遊びをやめないトマシュ。たいていの男は、愛がなくても女とセックスできる、愛がないからこそセックスが愉しめる、ということをトマシュが幼い私に教えてくれました。潔癖で真面目な女性からしたら、とんでもないヤリチン、軽薄な浮気者、はたまた異常性欲者にも映ってしまうかもしれないトマシュ。確かに、トマシュみたいな男を愛したら大変だろうな~とは思います。だからこそ、私にとってはすごく魅力的な男なんですよね~。あんなに美しくて優しくて知的でエリートな男が、インポみたいな堅物だったらトホホですよ。自分の魅力を理解してて、無駄にしてないトマシュってカッコいい。トマシュって、ちょっと源氏物語の光源氏とカブるんですよね。女とヤリまくりながらも、ぜんぜん下劣にも卑俗にもならない。女に身を投げさせる誘惑も、軽やかで優しい。心の痛みや苦しみは与えられても、トマシュを愛した女たちは決して不幸ではない。むしろ女として、人間として豊かになれてる。放蕩をやめないのは、暗い生い立ちとか女への愛憎とかのせい…みたいな、心の闇チックな暗さや悲しみなどがないところも、トマシュの美点です。単にすべての女が好き、愛することができる、みたいな軽やかさ、懐の深さが素敵なんです。実際、いろんな女とヤるトマシュですが、許容範囲広すぎ~と驚嘆してしまうほど、いつでもだれとでもOKなラブマシーンぶりなのです。エッチで情緒不安定な女たちへの注射のつもり?さすがお医者さん、と笑えるほど。
花から花へと自由にフワフワしてるようで、ソ連の圧力や脅迫にも屈しない硬派で骨太な男でもあり、すべてを犠牲にしてテレーザを愛し抜くようになる(亡命先のスイスから、テレーザを追って危険なプハラへ戻るトマシュに感動!)潔い男でもあるトマシュ。こんな男、私なんか絶対に関わることのない世界の住人なんだろうな~と、残念だったり安心もしたり。この映画にハマってた頃、よく見る野良猫を勝手にトマシュと名付けて呼んでました。
主人公のトマシュを完全にのみ込み、文字通り食ってしまってるのが、テレーザです。この娘、ほんとスゴいんですよ~。まさに猪突猛進爆弾娘。おぼこな田舎娘、処女のくせに、優しく声をかけてきただけのトマシュを追って家出、彼の部屋に押しかけて、ほとんど彼をレイプ。その行動力、情熱にトマシュだけでなく観てるほうも圧倒されます。その後も、予測不可能な言動でトマシュを困惑させ翻弄するテレーザですが、そうすればするほど、トマシュはグイグイと彼女に惹かれていき、いつしか彼女なしでは生きていけない愛の奴隷になってしまうのです。ちょっと犬っぽいというか、俺がついてないと(飼ってやらないと)ダメな女(犬)だから、と男の父性本能をくすぐる頼りない危なっかしいキャラと見た目は、マネしようにもできない天然さ。計算高い悪女なんかよりも、テレーザみたいな天然不思議ちゃんのほうが怖い…と、幼い私は女性観もあらたにしました。
トマシュのセフレ?サビーナが、すごくカッコいいです。あーいう自由な女に憧れます。トマシュとは生き方や考え方が近い、同志みたいな愛で結ばれているのが素敵でした。彼女がもし男だったら、トマシュとは大親友になってたことでしょう。サビーナのアーティストなファッションがオシャレでした。
トマシュ役は、若き日のダニエル・デイ・ルイス。オスカーに輝いた作品の彼も素晴らしいけど、ワタシ的にはこの映画こそDDLの最高作なのです。とにかくカッコいいです。他の俳優だと、ただのヤリチン男になってしまうだろうトマシュが、まるで優雅な貴公子に見えたのはDDLだからでしょう。若い頃から、世界最高級の香り高き俳優だったのです。声が好きなんですよね~。すごい美声!トマシュのキメ台詞『服を脱いで』DDLのあの美声で言われたら、催眠術にかかったように女なら(男でも)誰でも言いなりになりそう(笑)。静かな優しい微笑も素敵ですが、たまに見せる歯が見えるほど大笑いする笑顔が可愛い!
テレーザ役のジュリエット・ビノシュが、とにかく圧巻の存在感と演技。あのダニエル・デイ・ルイスが食われてるもん。スゴい女優が現れたな~と、当時は無名に近かったJBさんを見て驚嘆したものです。後にフランスの大竹しのぶと呼ばれるようになったJBさん、ヤボったい可愛さとか、憑依的な演技とか、確かに大竹しのぶとカブります。テレーザ役も、たとえば宮崎あおいとか蒼井優とかが演じたら、ほんと不愉快なだけのブリッコカマトト女になってただろうな~。若かりし頃のJBさんは、瑞々しいフレッシュさ、純朴な愛らしさがありつつ、リアルな生々しさ、大胆さで圧倒的な女優魂を見せつけてます。やはりタダモノではありません。JBさん、当時はまだ英語が下手だったせいで、テレーザ役のオーディションに落ちたんだとか。再度チャンスがめぐってきて役を獲得しただけあって、力と熱の入れようがハンパじゃないです。後に国際女優として大成する彼女の原点、とも言える作品です。
サビーナ役のレナ・オリンもチャーミングな好演。こうだクミなど目じゃないほどのエロカッコよさ。挑発的でクールな演技は、同性受けしそう。レナ・オリンとジュリエット・ビノシュが、屈折した感情を吐き出すように互いのヌードを撮り合うシーンが、レズっぽくて妖しい。ハリウッドの有名女優ではなく、ヨーロッパの実力派女優を起用したのも、この映画の勝因と言えましょう。後年二人は、「ショコラ」で再共演してますね。二人ともすっかりおばさんになってて、感慨深いものがありました…
美しいプラハの街並みも見どころのひとつ。実際はプラハでロケできず、別の国で撮影したらしいけど。私が数年前にチェコに行ったのは、この映画の影響によるところが大きいです。透明感ある冷涼な映像、流麗な音楽も素晴らしいです。
有名な“プラハの春”も描かれてます。パニック映画さながらな迫力と緊張感あり。ほんとにあんなことがあったんですね~。街に戦車ですよロシア(当時はソ連)怖い~。ほんと、今も昔もおそロシア!
あと、犬好きの方は必見!トマシュとテレーザが我が子のように慈しむ愛犬カレニンが、超可愛い!カレニンとのお別れのシーンが泣けます。子豚のメフィストもいい味だしてます。
3時間近い大作ですが、集中力が皆無な私でもダレずに観ることができました。何だか夢を見ていたかのような、はかなく遠い余韻を残すラストも好きです。
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