まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

フランキー

2020-10-08 | フランス、ベルギー映画
 「ポルトガル、夏の終わり」
 余命宣告を受けた大女優フランキーは、最後のバカンスを家族や友人と過ごすため、彼らをポルトガルのシントラに集める。フランキーにはある企みがあったが…
 やっと観ることができたイザベル・ユペール主演作です。末期がんにおかされた大女優に扮したユペールですが、やはり彼女なのでお涙ちょうだいな湿っぽさとか感動の押し売りなど、見事なまでに微塵もありません。そもそもそんな映画にイザベル・ユペールは出ないでしょうし、彼女を想定して脚本を書いたというアイラ・サックス監督も、そんな安っぽいありきたりなキャラを彼女に当てはめる気など毛頭なかったようです。イザベル・ユペールの個性と魅力にインスパイアされて生まれたヒロインであることは、フランキーを見ていると一目瞭然。

 命が終わろうとしていても、骨の髄まで女優。気質も生き方も変わらない、変えようとしない女優の業の深さに畏怖、そして魅了されました。冒頭のプールでの初登場シーンから、まさにザ・大女優のオーラはハンパないです。気さくで気前がよく、軽やかに大胆で気まぐれ、そして自己中心的で冷徹でもあるフランキー。周囲の都合や思惑など全然お構いなく自分のしたいようにし、みんながそれに従うことを当然だと思ってる無邪気な支配者っぷりも、ぜんぜん不快ではなくとにかくカッコいいんですよ。フランキーが何をしようと何を言おうと、みんな不満はあっても結局は仕方ないと諦めたり許したりしてしまう、まるで神の宣託のごとき大女優の優雅で絶対的な命令。それは選ばれし大女優だけにある魔法のようでした。イザベル・ユペールは、そんな役を自然に演じることができる数少ない本物の大女優です。

 家族やファンから愛され賞賛されながらも、時折にじみ出る孤独や虚しさとか、それらをクールな微笑で隠す静かに美しい韜晦とか、イザベル・ユペールがまとう大女優の光と影は決して重苦しくも悲痛でもなく、あくまでサラっとフワっと乾いていて軽やかなところに感銘を受けました。基本的には台詞は英語なのですが、息子や元夫とはフランス語で話すフランキー=ユペールの自然な語学力にも憧れます。最も目を惹かれたのは、彼女のファッションです。1日だけの話なので、衣装をとっかけひっかえではなく、2回だけ着替えるのすが、どちらも本当にカッコいい!ファッショナブル!パープルのワンピースの上にデニムのジャッケット、オレンジのワンピースの上に革のジャケット、靴も素敵だった。絶対に一般人には真似のできない趣味の高さでした。
 
 とにかく余命いくばくもないという設定以外は、イザベル・ユペールそのまんまな役?私生活でもフランキーのように家族や友人に接してる彼女、想像に難くないです。美しいけど容色の老いは明らかで、それをあまり隠してないところもイザベル・ユペールらしかったです。夫とベッドで愛し合う裸の彼女、どう見てもおばあさんでした。
 フランキーを取り巻く人々を演じてる役者たちは、豪華というよりはシブい、かつ国際的な面々でした。夫役は「ヒットマンズ・レクイエム」でもいい味を出していたブレンダン・グリーソン(アイルランド)、元夫役は「ガブリエル」でもユペールの夫役だったパスカル・グレゴリー(フランス)、息子役はジェレミー・レニエ(ベルギー)、親友役のマリサ・トメイとその恋人役のグレッグ・キニアはアメリカ。

 「Nue propriété」以来のユペりんとの母子役共演?ジェレミーもすっかりおじさんになりましたが、今でも少年っぽさが残っていて可愛い。マリサ・トメイもすっかりおばさんになりましたが、大人女子って感じの親しみやすさと可愛さに好感。彼女の髪飾りもおしゃれだった。ゲイの元夫と行動を共にしてる現地人ガイトがイケメン!グレッグ・キニアの役が可哀想だった。彼へのフランキーの優雅な冷酷さも、まさにザ・大女優でフランキーの複雑な人柄を上手に表してました。

 愛する人たちを幸せにしようと彼らの人生の筋書きを勝手に書き、彼らを操ろうとしたフランキーでしたが、結局彼女の企て通りにはなりそうにない、でもそれでいいわ…みたいなラストのフランキーのホロ苦い微笑みも印象的でした。ままならない人生や愛を寡黙に優しく描くアイラ・サックス監督の作風、すごく好きです。他の作品も観たい。

 物語の舞台となったポルトガルのシントラは、イザベル・ユペールと並ぶこの映画の主役です。世界遺産のひとつであるシントラ、初めて知りましたが美しい街ですね。ひんやりと神秘的な雰囲気。童話の中に出てくるような森でフランキーが彷徨う姿が、まるで絵画のような美しさでした。静かな場所なのかな?と思いきや、名所では韓国人や中国人と思しき騒々しいアジア人の団体観光客がうじゃうじゃいるのが映っていて苦笑

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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ポルトガル・・・・ (フキン)
2020-10-09 13:01:18
原題「フランキー」なんですね。
邦題もいい感じですけどね。

ユペリン、いいですね~~!

デニムとショッキングピンクのスカートとか、壁のタイルの色合いとか、色彩がすごく素敵♬
真似したいけど、日本人には無理っぽい!笑

余命宣告されたら自分ならどうするだろとか考えました。(こちらの作品は未見ですが)
まずは…高級寿司店へ行って食べたことないネタを注文します!!笑
あとは・・・仕事しないで遊んで暮らします。

誰かをどうこうしようとは土台無理な話ですよね・・

宣告はされたいですね。
知らないで死ぬのは嫌だし‥。

死ぬまでに海外旅行行けるようになるのかしら??
姉はんは、コロナが無ければどこに行かれる予定でした??…ってか、この話題以前にもしましたっけ??(ボケてますか?笑)


大英帝国に行きたい (松たけ子)
2020-10-09 21:21:38
フキンさん、こんばんは!
フランキーでよかったと思うんだけどね~。ピエール・ニネの「婚約者の友人」もフランツのほうが私は好きです。
ユペりん、今回もカッコよくてエレガントで冷酷でシレっとしてます!ユペりんのファッションもエレガントかつスタイリッシュ。ハイセンスすぎます。
私も余命いくばくもなくなったら、仕事なんかもちろんすぐに辞めて、好きなことして暮らします!
最近またイギリスにすごく行きたい気分で、ガイドブック読みながら空想旅行してます。広島市内に出る元気もないくせにイギリスなんて、と自嘲してますが(^^♪

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