まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

湿地姫

2022-12-04 | 北米映画22~
 「ザリガニの鳴くところ」
 1969年。ノースカロライナ州にある湿地で、金持ちの青年チェイスの死体が発見される。湿地で暮らす若い娘カイヤが容疑者として逮捕されるが…
 ミステリ、サスペンス、というより女性の生きづらさや自由に生きるための闘い、女性の強さと弱さを描いたフェミニズム映画、みたいでした。生き方や価値観がその他大勢と違うと、危険視されたり除け者にされたり排除されたりする社会の偏狭さには、この映画のカイヤほど非道い目に遭ったりはしないものの、私も日々感じています。社会の押し付けてくる常識や通念に従わず、いかなる圧力にも屈しないカイヤの生きざまに感嘆しつつも、自分さえよければいいの?もうちょっと柔軟性や協調性があってもいいのでは?とも思ってしまったが。あんな小さい女の子がジャングルみたいな湿地で独りで生活している、周りがさせている、というほったらかしネグレクト状態にも驚き。

 女性の生きづらさ、女性の苦悩や苦闘の元凶は男!ここがほとんどの女性と私との違いなのですが男なんかと深く関わると、ほんとろくなことにならないですよね~。カイヤは特殊な状況にいるようで実は、ろくでもない男に引っかかってバカを見るという、世間にはごまんといるダメ女なんですよ。気をつけて!うっかり男に心も体も許すとこういうことになる!と、女性にとっては警告のようなカイヤの災難っぷりでした。カイヤと恋愛関係になる若者二人、テイトとチェイスがそれぞれクソ野郎で、ほんと最低最悪なんですよ。男なんかほんとめんどくさい!怖い!と心底思わせる愚かな男女の修羅場でした。殺人事件にまで発展する痴情のもつれとか、ほんと関係ない人たちにとっては迷惑な話。

 カイヤがね~。男好きとまでは言わないけど、イケメンが近づいてくると簡単に受け入れてしまうユルさが、ちょっといかがなものかと。世捨て人のつもりでもナンダカンダで孤高を貫けない、人恋しい孤独が男に付け入るスキを与えてしまった。寂しい、愛されたい、そういう気持ちが強い女性はだめんずホイホイになりやすいんですねこの映画のだめんず、テイトとチェイスはどちらも真剣にカイヤのことを愛してはいたようですが、カイヤへの仕打ちがクズでゲスすぎる。消息を絶って音信不通、自然消滅を狙う男。支配欲が強く激したら暴力、あげくはストーカー化する男。どっちもカイヤを心身ともに痛めつけながらも、愛してるんだよ~!と情けなく執着してくる姿が気持ち悪かった。カイヤの彼らへの優しさ、そしてラストに判明する冷酷さは、一般的な女性の理解を超えたもの。それはやはり、特殊な環境が育んだものなのでしょうか。

 ↑ 映画のプロデューサーは、大物女優リース・ウィザースプーンさん
 カイヤ役のデイジー・エドガー・ジョーンズは、なかなかの美人。アリシア・ヴィキャンデルをしっとりエキゾティックにした感じ?ワイルドライフなのに肌も髪もいつもきれいテイト役のテイラー・ジョン・スミス、チェイス役のハリス・ディキンソンがなかなかイケメン、かつ印象的な熱演・怪演でした。テイラーはいかにもアメリカの明るく健康的で誠実そうな青年って感じの風貌。ちょっとアゴのあたりをゴツくした松下洸平、みたいに見えました。ハリスは顔は薄いけど役は濃ゆい。脱いだらスゴいマッチョな肉体美。

 舞台となる野生の湿地が、この映画の主役と言っていいほど。まるで異世界のようでした。カイヤの自然を活かした自給自足生活も興味深かったです。でも、あんな生活は実際には不可能なはず。いつも小ぎれいでおしゃれなコテージみたいな家とか、怖い動物も気持ち悪い虫も出てこないとか、ありえなさすぎる。そういう現実的なことは排除された、ファンタジーのような世界観もこの映画の特色でしょうか。
コメント (4)
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