「ベルファスト71」
カトリック派とプロテスタント派の対立が激化する北アイルランドのベルファスト。治安維持のために派遣されたイギリス兵のゲイリーは、暴動の中で独り取り残されてしまう。IRAのメンバーたちに命を狙われ、ゲイリーは決死のサバイバルを余儀なくされるが…
「ブラディ・サンデー」などでも描かれていた、北アイルランドでの暴動市民VSイギリス軍。その激突は、とても現実とは思えない、思いたくない悲惨さ過酷さで慄然、茫然とならずにはいられません。血で血を洗う宗教対立や国際紛争とは縁遠い日本に生まれて、本当に幸せだと心の底から思います。長い歴史の中で培われた敵意や憎悪は、アイルランド人の生活や人生に深く沁み込んでいて、ちょっとやそっとじゃ拭いとれないだろうな~。彼らの怨念や執念、闘志はもはや、生きる糧にもなっているみたい…
今までたくさん、アイルランドを舞台にした映画を観ましたが…アイルランド=貧乏、というイメージは定着するばかりです。この映画でも、住宅や団地、食事や衣服など、生活水準の低さが否が応でも気にかかります。豊かな国にあるような華やかさ、楽しみが何もないところも、過激な抗争につながっているのでは。鬱屈した不平不満のはけ口として、人々は暴れてるようにも思えて。
それにしても。アイルランド人って老若男女、ほんと血の気が多い人たちですよね~。すぐプッツンして暴れるし。暴動も、まさにマジで殺す気的。何かに憑かれたようで狂気的。最も怖い、つらいのは、若者、子どもまでも恨みや憎しみに染まって、暴力を正義として肯定するようになってしまってる気風、土壌。ゲイリーと仲良くなるプロテスタント派の男の子(ガキんちょなのに、男気があってカッコいい)や、IRAメンバーの青年ショーン(顔が怖い!)など、狂信的な思想信条ゆえに悲劇的な末路を迎えてしまう。最近のアルカイダにしてもイスラム国にしても。年端もゆかぬ若者たちがテロの被害者、加害者になってしまう悲劇には、ただもう暗澹となってしまうばかりです。
独り取り残され、阿鼻叫喚の無法地帯から脱出するために戦うゲイリーの悲壮なサバイバルが、サスペンスフルに描かれています。乱闘、銃撃戦、火炎瓶、爆破etc.もうほとんど戦場なベルファスト。ゲイリーが逃げ迷う狭い夜の小路や荒廃した団地は、まるで悪夢の迷宮。71年頃は、実際にもあんな風だったんですね。あんなアナーキーな町、とてもじゃないけど住めない!命がいくらあっても足りんわ。イギリス軍もIRAも一枚岩ではなく、主導権をめぐって錯綜する裏切りと陰謀の複雑さも物語を面白くしています。とにかく、解かり合うとか許し合うという生ぬるさのない、ひたすら傷つけ合い潰し合うことしか頭にないような地獄のエンドレスゲームを、映画だからと気楽にスルーできない今の世の中が悲しいです。
主人公ゲイリー役は、最近躍進著しい要注目の英国男優ジャック・オコンネル。
いま大人気のブリティッシュ男子、主流である優美で知的で紳士的なイケメンや男前とは違って、オコンネルくんは庶民的な下町系。貴族社会を舞台にした映画やドラマに出ても、ぜったい小作人や使用人の役です。素朴で少年っぽい風貌、寡黙で内気だけど、内には荒々しさと繊細を秘めた感じが好きです。某事務所のタレントとか、チャラチャラ軽薄で派手な、調子がいい世渡り上手そうな若い男ばかり目にしてるので、オコンネルくんみたいな不器用に一生懸命な、非道い目に遭うのが似合う不幸顔の青年は、返って新鮮で魅力的。心身ともに傷だらけになって戦う姿が、悲壮ながらも躍動感ある若々しさにあふれています。痛めつけられても必死にガマンしてる悲しそうな顔が、何だか虐待されてる子犬みたいで痛々しくも可愛いです。それにしても。あんな壮絶な地獄、サバイバルできても相当なトラウマになるだろうな~。ラスト近く、弟を迎えに施設に来たゲイリーが、対応が悪い職員にドスがききすぎな悪態をつくのですが、ああ心が荒んじゃってるな~そうもなるよな~と同情を禁じ得なかった。でも、あのシーンのオコンネルくん、何かすごくキュンときちゃったわ。
ゲイリーが施設に預けている弟が、すごく可愛いです。大人にやらされてる感ありすぎな、不自然に演技が上手い子役じゃなくて、自然な素人っぽさに好感。不幸そうな兄弟の、この世ではお互いしかいないみたいな仲の良さが、微笑ましくも哀切で。薄幸で可愛らしい兄弟、ピッタリと寄り添って生きてるだろう数年後の二人を想像し、ちょっと萌えてしまった私は重症な腐です…
ジャック・オコンネルくんは、アンジェリーナ・ジョリー監督の「不屈の男」や、ジョディ・フォスター監督の「マネーモンスター」など、ハリウッドの大物女傑たちにも人気みたいです
カトリック派とプロテスタント派の対立が激化する北アイルランドのベルファスト。治安維持のために派遣されたイギリス兵のゲイリーは、暴動の中で独り取り残されてしまう。IRAのメンバーたちに命を狙われ、ゲイリーは決死のサバイバルを余儀なくされるが…
「ブラディ・サンデー」などでも描かれていた、北アイルランドでの暴動市民VSイギリス軍。その激突は、とても現実とは思えない、思いたくない悲惨さ過酷さで慄然、茫然とならずにはいられません。血で血を洗う宗教対立や国際紛争とは縁遠い日本に生まれて、本当に幸せだと心の底から思います。長い歴史の中で培われた敵意や憎悪は、アイルランド人の生活や人生に深く沁み込んでいて、ちょっとやそっとじゃ拭いとれないだろうな~。彼らの怨念や執念、闘志はもはや、生きる糧にもなっているみたい…
今までたくさん、アイルランドを舞台にした映画を観ましたが…アイルランド=貧乏、というイメージは定着するばかりです。この映画でも、住宅や団地、食事や衣服など、生活水準の低さが否が応でも気にかかります。豊かな国にあるような華やかさ、楽しみが何もないところも、過激な抗争につながっているのでは。鬱屈した不平不満のはけ口として、人々は暴れてるようにも思えて。
それにしても。アイルランド人って老若男女、ほんと血の気が多い人たちですよね~。すぐプッツンして暴れるし。暴動も、まさにマジで殺す気的。何かに憑かれたようで狂気的。最も怖い、つらいのは、若者、子どもまでも恨みや憎しみに染まって、暴力を正義として肯定するようになってしまってる気風、土壌。ゲイリーと仲良くなるプロテスタント派の男の子(ガキんちょなのに、男気があってカッコいい)や、IRAメンバーの青年ショーン(顔が怖い!)など、狂信的な思想信条ゆえに悲劇的な末路を迎えてしまう。最近のアルカイダにしてもイスラム国にしても。年端もゆかぬ若者たちがテロの被害者、加害者になってしまう悲劇には、ただもう暗澹となってしまうばかりです。
独り取り残され、阿鼻叫喚の無法地帯から脱出するために戦うゲイリーの悲壮なサバイバルが、サスペンスフルに描かれています。乱闘、銃撃戦、火炎瓶、爆破etc.もうほとんど戦場なベルファスト。ゲイリーが逃げ迷う狭い夜の小路や荒廃した団地は、まるで悪夢の迷宮。71年頃は、実際にもあんな風だったんですね。あんなアナーキーな町、とてもじゃないけど住めない!命がいくらあっても足りんわ。イギリス軍もIRAも一枚岩ではなく、主導権をめぐって錯綜する裏切りと陰謀の複雑さも物語を面白くしています。とにかく、解かり合うとか許し合うという生ぬるさのない、ひたすら傷つけ合い潰し合うことしか頭にないような地獄のエンドレスゲームを、映画だからと気楽にスルーできない今の世の中が悲しいです。
主人公ゲイリー役は、最近躍進著しい要注目の英国男優ジャック・オコンネル。
いま大人気のブリティッシュ男子、主流である優美で知的で紳士的なイケメンや男前とは違って、オコンネルくんは庶民的な下町系。貴族社会を舞台にした映画やドラマに出ても、ぜったい小作人や使用人の役です。素朴で少年っぽい風貌、寡黙で内気だけど、内には荒々しさと繊細を秘めた感じが好きです。某事務所のタレントとか、チャラチャラ軽薄で派手な、調子がいい世渡り上手そうな若い男ばかり目にしてるので、オコンネルくんみたいな不器用に一生懸命な、非道い目に遭うのが似合う不幸顔の青年は、返って新鮮で魅力的。心身ともに傷だらけになって戦う姿が、悲壮ながらも躍動感ある若々しさにあふれています。痛めつけられても必死にガマンしてる悲しそうな顔が、何だか虐待されてる子犬みたいで痛々しくも可愛いです。それにしても。あんな壮絶な地獄、サバイバルできても相当なトラウマになるだろうな~。ラスト近く、弟を迎えに施設に来たゲイリーが、対応が悪い職員にドスがききすぎな悪態をつくのですが、ああ心が荒んじゃってるな~そうもなるよな~と同情を禁じ得なかった。でも、あのシーンのオコンネルくん、何かすごくキュンときちゃったわ。
ゲイリーが施設に預けている弟が、すごく可愛いです。大人にやらされてる感ありすぎな、不自然に演技が上手い子役じゃなくて、自然な素人っぽさに好感。不幸そうな兄弟の、この世ではお互いしかいないみたいな仲の良さが、微笑ましくも哀切で。薄幸で可愛らしい兄弟、ピッタリと寄り添って生きてるだろう数年後の二人を想像し、ちょっと萌えてしまった私は重症な腐です…
ジャック・オコンネルくんは、アンジェリーナ・ジョリー監督の「不屈の男」や、ジョディ・フォスター監督の「マネーモンスター」など、ハリウッドの大物女傑たちにも人気みたいです