「危険な関係」
18世紀のフランス。社交界を牛耳るメルトイユ侯爵夫人は、若く美しいセシルと婚約した愛人への復讐として、女たらしのヴァルモン子爵にセシルの処女を奪わせようと企む。ヴァルモンは貞淑なトゥールベル夫人をなびかせようと躍起になっていたが…
有名なラクロの原作は、これまで各国で何度も映画化されていますが、今のところ最高傑作はこのハリウッド版ではないでしょうか。後に「クィーン」なども高く評価された、イギリスの俊英スティーヴン・フリアーズ監督の作品。
この映画、とにもかくにもメルトイユ侯爵夫人役のグレン・クローズが強烈すぎます。
「危険な情事」そしてこの「危険な関係」。危険シリーズ?で2年連続アカデミー主演女優賞にノミネートされたグレン・クローズは、メリル・ストリープと並ぶアメリカ屈指の名女優。「ガープの世界」や「ナチュラル」での好演も忘れがたい彼女は、美女ではないけど賢くタフで優しいアメリカ女性といったイメージでしたが、恐怖のストーカー女アレックスをセンセーショナルに激演した「危険な情事」で映画ファンの度肝を抜いた後、この華やかにインモラルなコスチュームプレイで再び恐ろしい女を怪演し、女優としての力量と奥の深さを実証したのでした。
メルトイユ夫人は、ある意味「危険な情事」のアレックスより怖い女。アレックスには、まだ相手を一途に思いつめる愛がありましたが、メルトイユ夫人には愛など一片もありません。他人を操り弄び、彼らが傷つき苦しみ堕ちて汚れる姿を見て悦びを味わう悪女。なんでこんなに性悪になれるんだろうと、人が善いだけの私なんかからすると、悪い意味で羨ましくなるほどの外道、鬼畜っぷり。とにかく、メルトイユ夫人が言葉巧みに、偽善に満ちた笑顔で人々を愚弄する手練手管が、痛快なほど悪辣で笑えます。
内心では相手を嘲笑いながらも、表面的には観音さまのごとく優しげな微笑の白々しさ。そして、悪だくみしてる時のゾっとするよな酷薄な魔女顔。激情ぷっつん女のアレックスには警戒や反撃もできるけど、冷酷非情で狡猾な鬼女メルトイユ夫人には、知らぬ間に寝首をかかれてしまいます。まさに他人の不幸は蜜の味、その甘味を糧にして生きる毒婦。常に自分が魅力的であることを確信するために、権力を握って他人より優位に立つために、罠や策謀を糸のように張り巡らせる蜘蛛女。女の陰湿さ冷酷さの権化のような妖婦を毒々しく、かつクールに理知的に演じてるグレンおばさまに圧倒され、魅了されるばかりです。とんでもない悪女なのに、何かカッコいいんですよね~。この人がこう言うんだから間違いないだろう、と思わせる説得力のある姉御肌、貫禄が素敵。その懐の深さに包まれたいという魔魅にあふれてるのです。セコい性悪女とは格が違う、カリスマ的大物感ある悪女なのです。まさに大女優の威厳と風格。CMタレントのお遊戯を見慣れた目には、いささかドギツいグレンおばさまです。共感とか同情とかをいっさい拒みながらも、中年女の悲哀もにじませてるところがいい。
ヴァルモン子爵役のジョン・マルコヴィッチがなあ~。彼は間違いなく名優で、細やかな絶妙な演技を披露しているのですが、いかんせんルックスが…あんな見るからに胡散くさいブサイクなおっさんに、何で美女たちがよろめくのか納得できなかった。演技が巧いだけじゃダメな役ってのもあるのです。まあ、あえて彼が演じたのも、意表を突いて面白いとは思うけれども。ヴァルモンは、少々演技がヘタでも、セクシーな美男俳優にやってほしかった、というのが私の正直な感想。
清らかで憂いある美貌のミシェル・ファイファー(トゥールベル夫人役)と、デビューしたばかりの頃の初々しいウマ・サーマン(セシル役)が、この映画の花となってます。そして、セシルに恋する青年ダンスニー役、これまた駆け出し時代の若きキアヌ・リーヴスが可愛い!すごい大根ですが
アカデミー賞の脚色賞を受賞しただけあり、メルトイユ夫人やヴァルモンの伯母様がのたまう、人生や恋愛に関する含蓄ある台詞が素晴らしいです。貴族たちの贅を尽くした華やかな衣装やインテリアも目に楽しく、オスカーの衣装賞、美術賞獲得も納得の見事さです。
それにしても。恋愛ゲームにうつつを抜かす貴族たち、もっと他にすることなかったのでしょうか。そのヒマ人っぷりに呆れます。人間、ヒマと金がありすぎたらロクなことならないんですね~
日本で映画化されるとしたら、理想的なキャストは?メルトイユ夫人役は、40代の頃の京マチ子とかピッタリそうですが。ならヴァルモンは市川雷蔵?うう~ん、いいかも!現代なら誰がいいかなあ。ドラマ「華麗なる一族」の悪女役がよかった鈴木京香とかよさげ。ヴァルモンは意外性(いや、結構ハマるかも?)で向井理。トゥールベル夫人は壇れい、セシルは思いつかん、ダンスニーは池松壮亮。舞台は平安時代か、大正時代の貴族社会。このメンツで映画化してほしいわ~。
18世紀のフランス。社交界を牛耳るメルトイユ侯爵夫人は、若く美しいセシルと婚約した愛人への復讐として、女たらしのヴァルモン子爵にセシルの処女を奪わせようと企む。ヴァルモンは貞淑なトゥールベル夫人をなびかせようと躍起になっていたが…
有名なラクロの原作は、これまで各国で何度も映画化されていますが、今のところ最高傑作はこのハリウッド版ではないでしょうか。後に「クィーン」なども高く評価された、イギリスの俊英スティーヴン・フリアーズ監督の作品。
この映画、とにもかくにもメルトイユ侯爵夫人役のグレン・クローズが強烈すぎます。
「危険な情事」そしてこの「危険な関係」。危険シリーズ?で2年連続アカデミー主演女優賞にノミネートされたグレン・クローズは、メリル・ストリープと並ぶアメリカ屈指の名女優。「ガープの世界」や「ナチュラル」での好演も忘れがたい彼女は、美女ではないけど賢くタフで優しいアメリカ女性といったイメージでしたが、恐怖のストーカー女アレックスをセンセーショナルに激演した「危険な情事」で映画ファンの度肝を抜いた後、この華やかにインモラルなコスチュームプレイで再び恐ろしい女を怪演し、女優としての力量と奥の深さを実証したのでした。
メルトイユ夫人は、ある意味「危険な情事」のアレックスより怖い女。アレックスには、まだ相手を一途に思いつめる愛がありましたが、メルトイユ夫人には愛など一片もありません。他人を操り弄び、彼らが傷つき苦しみ堕ちて汚れる姿を見て悦びを味わう悪女。なんでこんなに性悪になれるんだろうと、人が善いだけの私なんかからすると、悪い意味で羨ましくなるほどの外道、鬼畜っぷり。とにかく、メルトイユ夫人が言葉巧みに、偽善に満ちた笑顔で人々を愚弄する手練手管が、痛快なほど悪辣で笑えます。
内心では相手を嘲笑いながらも、表面的には観音さまのごとく優しげな微笑の白々しさ。そして、悪だくみしてる時のゾっとするよな酷薄な魔女顔。激情ぷっつん女のアレックスには警戒や反撃もできるけど、冷酷非情で狡猾な鬼女メルトイユ夫人には、知らぬ間に寝首をかかれてしまいます。まさに他人の不幸は蜜の味、その甘味を糧にして生きる毒婦。常に自分が魅力的であることを確信するために、権力を握って他人より優位に立つために、罠や策謀を糸のように張り巡らせる蜘蛛女。女の陰湿さ冷酷さの権化のような妖婦を毒々しく、かつクールに理知的に演じてるグレンおばさまに圧倒され、魅了されるばかりです。とんでもない悪女なのに、何かカッコいいんですよね~。この人がこう言うんだから間違いないだろう、と思わせる説得力のある姉御肌、貫禄が素敵。その懐の深さに包まれたいという魔魅にあふれてるのです。セコい性悪女とは格が違う、カリスマ的大物感ある悪女なのです。まさに大女優の威厳と風格。CMタレントのお遊戯を見慣れた目には、いささかドギツいグレンおばさまです。共感とか同情とかをいっさい拒みながらも、中年女の悲哀もにじませてるところがいい。
ヴァルモン子爵役のジョン・マルコヴィッチがなあ~。彼は間違いなく名優で、細やかな絶妙な演技を披露しているのですが、いかんせんルックスが…あんな見るからに胡散くさいブサイクなおっさんに、何で美女たちがよろめくのか納得できなかった。演技が巧いだけじゃダメな役ってのもあるのです。まあ、あえて彼が演じたのも、意表を突いて面白いとは思うけれども。ヴァルモンは、少々演技がヘタでも、セクシーな美男俳優にやってほしかった、というのが私の正直な感想。
清らかで憂いある美貌のミシェル・ファイファー(トゥールベル夫人役)と、デビューしたばかりの頃の初々しいウマ・サーマン(セシル役)が、この映画の花となってます。そして、セシルに恋する青年ダンスニー役、これまた駆け出し時代の若きキアヌ・リーヴスが可愛い!すごい大根ですが
アカデミー賞の脚色賞を受賞しただけあり、メルトイユ夫人やヴァルモンの伯母様がのたまう、人生や恋愛に関する含蓄ある台詞が素晴らしいです。貴族たちの贅を尽くした華やかな衣装やインテリアも目に楽しく、オスカーの衣装賞、美術賞獲得も納得の見事さです。
それにしても。恋愛ゲームにうつつを抜かす貴族たち、もっと他にすることなかったのでしょうか。そのヒマ人っぷりに呆れます。人間、ヒマと金がありすぎたらロクなことならないんですね~
日本で映画化されるとしたら、理想的なキャストは?メルトイユ夫人役は、40代の頃の京マチ子とかピッタリそうですが。ならヴァルモンは市川雷蔵?うう~ん、いいかも!現代なら誰がいいかなあ。ドラマ「華麗なる一族」の悪女役がよかった鈴木京香とかよさげ。ヴァルモンは意外性(いや、結構ハマるかも?)で向井理。トゥールベル夫人は壇れい、セシルは思いつかん、ダンスニーは池松壮亮。舞台は平安時代か、大正時代の貴族社会。このメンツで映画化してほしいわ~。