まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

夫の目の前で…

2018-04-27 | フランス、ベルギー映画
 お松の第2回イザベル・ユペール映画祭②
 「Eaux profondes 」
 資産家のヴィクは、奔放な若妻メラニーの情事に寛容で無関心な態度をとっていた。メラニーの愛人たちは次々と不可解な死を遂げ…
 「太陽がいっぱい」などの原作者として知られるパトリシア・ハイスミスの小説「水の墓碑銘」を、「読書する女」など女優映画の名匠ミシェル・ドヴィル監督が映画化。ミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」と新作の「ハッピーエンド」では父娘役だったジャン・ルイ・トランティニャンとイザベル・ユペールが、この映画では夫婦役で共演しています。1981年公開の作品。36年前なので、当然ながら二人とも若い!

 メラニー役のイザベル・ユペールは、当時27、8歳。ショートヘアと、まだふっくらした丸い童顔が可愛い。小柄で華奢なので、ほんと少女みたい。役も悪女というより、イタズラ好きな子猫みたいでコケティッシュ。すごく陽気で闊達な若き日のユペりんが新鮮でした。可愛いけど挑発的で、すでにクールで二ヒルな毒があり、男たちの間をフワフワ飛び交いながら、毒を撒き散らして彼らを破滅へと導く小悪魔を、軽やかに楽しそうに演じてました。

 シックでエレガントな熟女な現在のユペりんですが、この映画の彼女はピンクや純白のドレスやパンツスーツなど、明るく可愛いファッション。おっぱい丸見え!なだらしなさ、あられもなさや、恥ずかし気もない平然とした全裸姿などが、天衣無縫なメラニーの性格を表していました。とにかく若い頃もユペりん、脱ぎっぷりがよすぎ!何ともあっけらかんと、ここで脱がなくても?!なシーンでも、大胆な全裸に。でも、着替えや入浴シーンで裸になるのは当然でしょ?と言ってるみたいな自然さリアルさが、さすがフランス女優です。

 ジャン・ルイ・トランティニャンは、当時51歳ぐらいでしょうか。現在はすっかりお爺さんになってますが、この映画の彼はシブい!ダンディ!そして男らしい!妻や幼い娘への優しさ甘さも素敵でしたが、たまに見せる射るような鋭い目つきが怖い!あの眼光が好きです。初老なのに、年寄りくささが全然なく、全体的にすごくシャキっとシャープで、若者みたいに動きが敏捷。プールで水着になるシーンがあるのですが、全然たるみがなく引き締まった上半身で驚きました。

 イビツな夫婦関係が怖くて面白かったです。ヴィクは若妻の浮気を容認していると見せかけて、間男たちを容赦なく始末。夫を疑い責めながらも、夫が殺人を犯すことが愛の証と無意識に思ってるようなメラニー。異常な愛のゲームのようでした。あんな異常な両親で、幼い娘が可哀想!娘が両親のやってることなどどこ吹く風で、すごく無邪気で幸せそうだったのが、せめてもの救い。働かずに遊びと趣味三昧っぽいブルジョア生活にも憧れます。ヴィクが飼ってたカタツムリが、ちょとっと不気味でした。何事にも動じないヴィクが、カタツムリ食べていい?と訊かれた時だけブチギレたのが笑えた。フランス料理のエスカルゴ、美味しいのかな?食べてみたいかも…
 サイコサスペンスな内容なのに、すごく洒脱で小粋な雰囲気の不思議な映画です。こういう大人の洗練された映画も、まさにフランス映画ならでは。今の邦画では望むべくもない味わいです。ミシェル・ドヴィル監督が撮った、フランスの人気女優たちが主演の映画のほとんどが、日本未公開なのが残念です。


 ↑若い頃のJLT、めっちゃカッコいい!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

堕ろす女

2018-04-24 | フランス、ベルギー映画
 突然の訃報に、広島中が驚きと悲しみに包まれました。衣笠祥雄さんが死去。ついこの間まで、野球解説をされてたのに。まだ71歳。

 山本浩二さんとともに最強赤ヘル軍団を牽引し、プロ野球界に不滅の名を刻んだ鉄人衣笠さんも、病には勝てなかったのですね…星野さんに続いて、また野球の巨星が落ちてしまいました。あらためて、ご冥福をお祈りします。衣笠さんの弔いのためにも、カープにはぜひとも3連覇を成し遂げてほしいものです。今夜はそんな闘志が実って、手ごわいベイスターズに勝利。完投間近で無念の降板となった中村祐太の、悔しそうな表情にキュンキュンしちゃいました♡ユータくんは、ピッチャーが軒並み崩壊しているという窮状の中、最大・唯一の希望の星!中日に信じられない逆転負け、そして3タテ食らうとか、もうカープあかん~!と絶望してたけど、ちょっとだけ光が見えてきました。首位も再び奪取。今年はぶっちぎりとはいきそうにないけど、衣笠さん、天国から応援してください!
 話はガラリと変わりますが。先日、やっとミヒャエル・ハネケ監督×イザベル・ユペールの新作「ハッピーエンド」を観に行くことができました。それを記念して、またイザベル・ユペール映画祭を開催したいと思います。今年のフランス映画祭でも、ユペりんの出演作が上映されるので楽しみ

 お松の第2回イザベル・ユペール映画祭①
 「主婦マリーがしたこと」
 ナチス占領下のフランス、ノルマンディー。出征中の夫の帰りを待ちながら、幼い子供たちと貧しい生活を送っていたマリーは、隣の奥さんの堕胎を手伝う。いつしか堕胎で稼ぐようになったマリーは、裕福に美しくなっていくが…
 ゴールデンコンビだったクロード・シャブロル監督とは、数々の秀作佳作を作り上げたイザベル・ユペール。この作品は、その代表作の一つといってもいいのではないでしょうか。ユペりんはこの映画で、ヴェネチア映画祭の女優賞を受賞(後に同じシャブロル監督との「沈黙の女」で2度めを獲得)。
 フランスで最後にギロチン処刑となった女性の物語と聞くと、とてつもなく重く悲惨な話を連想してしまいますが、確かに悲劇的な話ではあるのですが、ぜんぜん暗くも重くもありません。そして、上質で痛烈なフェミニスト映画でもあります。ヒステリックなまでに声高に女性の権利を叫ぶ映画とか、き◯がいとしか思えない田島ヨーコ先生の支離滅裂な主張よりも、女とは?女の一生とは?妻とは?母親とは?と真摯に考えさせてくれる映画です。

 昔に比べると、女性の自立や権利が保障されるようになったとはいえ。いつの世も女性にとって社会は、理不尽で不公平で冷たい。苦患に満ちていて、生きづらいまま。それに抵抗、反逆するかのように、自由に軽やかに生きようとしたマリーに下された、現代社会なら絶対にありえない罰の苛烈さに愕然、暗澹となります。でもマリー、確かに調子に乗り過ぎた。その行為、言動は責められて当然ですが、だからといってあんな末路になってもいいわけない。見せしめ、生贄にされてしまった、究極の運のなさです。堕胎の罪よりも、男社会に従うことを拒んで、自分らしく好きなように生きようとしたことが罪深いとされての制裁、みたいでした。捕まっても罪の意識がなく、何が悪いの?いつ帰れるの?と獄中で無邪気に出所の日を待ってる姿が、愚かで哀れだった。

 映画はシャブロル監督らしく、ヘンにドラマティックにしたりせず、終始淡々と静かに、時に冷ややかなユーモアでもって、“マリーのしたこと”を描いています。堕胎ビジネスで稼ぐマリーが、どんどん調子ぶっこいてルンルン化する姿が、すごく軽やかでシニカル。クスっと笑えるシーンも多々あり。旦那への冷たさが、非道いけど痛快でもあって。夫にヘコヘコ貞淑にかしずいたりせず、マリーみたいに冷ややかな本音や現実を夫に叩きつけたい!と願望する奥さま、世の中にいっぱいいそう。

 お金も稼いで、キレイになって友だちや恋人もできて、子どもに美味しいものを食べさせてあげられて。暗い時代に反していいことづくめの幸せな毎日を謳歌してたマリーが、予期せぬ形で逮捕され、裁判にかけられて死刑宣告!と、あれよあれよな急転直下の憂き目に遭うのですが、ついに来るべきものが来たな~という、不吉なことが起こる兆しや伏線は散りばめていた演出は、シャブロル監督ならではでした。

 それにしても。いくら何でもマリー、夫を蔑ろにしすぎ。いくらダメ亭主でも、あそこまで全否定はあかんでしょ。マリーがもっと旦那に優しかったら、あんな悲劇は起こらなかったかもしれないし。あの夫、ダメ男だけど善い人だったから、あの仕打ちは可哀想だった。でも、マリーに愛されるよう、認められるよう努力をしなかった旦那も悪い。夫婦関係にも、思いやりと努力は欠かせませんよね~…
 堕胎についても、あらためて考えさせられました。あんな方法で、堕胎ってできるの?!容易すぎるし危険すぎる!極めてデリケートな問題なのに、マリーや妊婦たちがあまりにもあっけらかんとしてたのが、ちょっと衝撃的でもあった。望まない子どもを“排除”することは、女性にとって大罪なのか救済なのか…いずれにせよ、男のほうが楽!とつくづく思いました。あと、ギロチン処刑が第二次世界大戦まであったことにも衝撃。絞首刑も電気椅子もイヤだけど、ギロチンもイヤすぎる~ナチス占領下のフランスの庶民生活も、リアルに描かれていました。あんな不便で窮屈で暗い生活したくないので、ほんと戦争反対!です。
 イザベル・ユペールは、当時35歳ぐらい。まさに女ざかり、女優として脂がのりきってた頃です。さすがに若い、そして美しい、ていうか、可愛いです。

 小柄で華奢なので、少女みたいな風情。だいたい無表情だけど、笑顔で歌ったり踊ったりはしゃいだりするシーンも多く、かなり明るい彼女でもあります。この映画でも、悪びれる様子なく冷ややかにシレっとトボけてるユペりんでした。陳腐な悲劇のヒロインじゃないところが、さすがです。
 マリーのダメ夫役は、今やフランス映画界きっての名優フランソワ・クリュゼ。さすがに若い!みじめなダメ男を好演してます。マリーの愛人役のニルス・タヴェルニエが、なかなかの美青年でした。彼はその名の通り名匠ベルトラン・タヴェルニエ監督の息子で、最近は俳優ではなく監督として活動してるとか。マリーと仲良しになる娼婦役の故マリー・トランティニャンも存在感あり。彼女の遺児二人とユペりんが「未来よ こんにちは」と「アスファルト」で共演してるのが、何か奇妙な縁めいてますね。マリーの幼い息子と娘役の子役たちが可愛かった。娘役のほうは、最近では「静かなふたり」などに出演しているイザベル・ユペールの実娘、ロリータ・シャマだそうです。早くも母娘共演してたんですね。

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フランツ

2018-01-07 | フランス、ベルギー映画
 皆さまcomment allez-vous?
 年も明け、早いものでもう7日ですね~。いまだに正月休み気分が抜けず、脳みそが生煮えの餅みたいな私ですが、今年も交通事故と人間関係トラブルにだけは気をつけて、何とか平穏無事に、できれば小さなことでもいいので幸運に恵まれれば、と願っています。今年こそはいっぱい映画館とマツダスタジアムに行きたいな~。
 DVDや録画で、結構映画を観てるのですが、スラスラとサクっと感想が書けないこれも加齢のせいでしょうか。師走じゃないけど、師走のボーギャルソン映画祭の最終回、今さらながらUPします

 師走のbeau garçon映画祭⑥
 「婚約者の友人」
 第一次世界大戦後のドイツ。婚約者のフランツが戦死し、彼の両親とともに悲しみから立ち直れずにいたアンナは、フランツの墓前でアドレアンというフランス人の青年と出会う。フランツの友人だというアドレアンに、アンナは心惹かれていくが…
 観たい観たいと叫び続けて、もう10年ぐらい経った気がするほど待望だった、フランソワ・オゾン監督✖ピエール・ニネ主演作と、ようやくお目もじが叶いました。同じゲイの天才、グザヴィエ・ドラン監督がギャスパー・ウリエルなら、オゾン姐さんはピエール・ニネでしょ!そのうちきっと、ニネっちにオゾン姐さんのお手がつく(起用される)はず!と思ってたのですが、ホントに、そして思ってたより早く実現して驚喜!

 この作品を観てしみじみ思ったのは…オゾン姐さんもずいぶん変わったな~ということ。若かりし初期の頃の姐さんの作品は、かなり奇異というか、アクとケレン味が強くて、オサレ系のイロモノ映画っぽかったけど、人気と歳月が洗練と成熟をもたらして、解かる人、好きな人にだけウケればいい的な才気走りが影を潜め、この新作などがまるで往年のハリウッドのクラッシク映画のような優雅さ、格調にあふれていて、隔世の念を感じずにはいられませんでした。

 戦争の傷跡や悲しみ、反戦メッセージ的な描写など、およそ今までのオゾン監督らしくない真面目さに、感嘆というより違和感、困惑を覚えてしまいました。何だろう、ビッチだったお嬢さまが、貞淑な奥様に変貌してしまった、みたいな。良く言えば、丸くなって万人向けになった。悪く言えば、守りに入って当たり障りがなくなった。オゾン監督の毒と意地悪さが好きだった私としては、オーソドックスで陳腐ともえいる内容やキャラ設定に、物足りなさを感じずにはいられなかった…のが、後半になってアドレアンの正体が判明した頃になって、やっとオゾン姐さんらしい小気味よい意地悪さが滲み出てきてニヤリ。フランツとアドレアンの関係とか、さんざん思わせぶりに期待させて、え!?でしたし。ポカ~ン&ガッカリ、な腐女子を見てププっと嗤ってそうな、オゾン姐さんの人の悪さが心憎いです。

 あと、アンナのアドレアンへの恋の顛末も、悲しいとか切ないというより、若い女の勘違い、思い上がりを嘲笑うかのような意地悪さが。女に対するオゾン監督の冷徹さ、辛辣さが好きです。ラストのアンナとアドレアンの噛み合わなさって、ほとんど滑稽で笑えたわ。ビタースウィートな悲恋の皮を被せてるけど、その美しく薄い皮はよく見ればところどころにめくれていて、小さく醜い痣を発見してしまう、みたいな。おとなしくなった、上品になった、なんてのは韜晦!オゾン姐さんならではの意地悪さに気づいてそれを楽しむことこそ、この映画の醍醐味なのではなかろうか。ただの甘く切ない戦争悲恋もので片付けたら、かなりもったいないです。

 意地悪さ、皮肉と同時に、「まぼろし」や「8人の女たち」など女性賛歌な佳作を撮ってきたオゾン監督らしい、女性への敬意や畏怖が、この映画でもあふれていました。時に男が気圧される強さ、情熱を見せ、悲しみを乗り越えてしがらみを捨て、しなかやに未来へと進むアンナの姿は、まさにオゾン監督が理想とする美しいヒロイン像でした。
 アドレアン役は、いま最愛のボーギャルソンであるピエール・ニネ

 ニネっち、やっぱトレビアンな役者ですね~モノクロ映えするクラシカルでエレガントな雰囲気、たたずまいにうっとり。そんじょそこらにいない、いや、芸能界や映画界にもいないような美しい容姿は、まさに人間離れしているのですが、ロボットや人形みたいな血の通ってない不気味なものではなく、ちょっとファニーで可愛いアニメみたいな顔なので、すごく親しみがもてるんですよね~。超絶イケメンなのに、そこらのイケメンより優しそうだし。ガラス細工のような繊細さで、アンナだけでなく観客の心もムズキュン。壊れそうだから守ってあげたいのに、そうさせてくれない距離感、冷ややかさが返って女心を刺激するアドレアンを、ミステリアスに優雅に演じてるニネっちです。カッコいいのにカッコつけた感が皆無で、オドオドしたりシュンとしたりしてる表情が、傷つきやすい少年みたいでホント可愛い!結局のところ、ただの自己陶酔型天然おぼっちゃんじゃん!なアドレアンは、美男なだけ、演技が巧いだけの他の俳優が演じてたら、イラっとムカっとするだけの男になってたかもしれません。自分勝手でアホな男も、悲しくデリケートな男に変えてしまう、まさにニネっちマジック!泳ぐシーンで、美しい上半身裸も披露してます。ドイツ語の台詞も頑張ってましたが、やはりニネっちにはフランス語が一番しっくりきます。フランス語は全然わかんないけど、ニネっちの美声フランス語には、うっとり聞き入ってしまう魔力が。

 ヒロイン、アンナ役のドイツ女優パウラ・ベアの、清純さと芯の強靭さが同居した見た目と演技に好感。美女すぎないところも役に合ってました。
 モノクロ映像も、新鮮で美しかったです。ところどころで(アンナの心象で?)ふわ~っと瑞々しいカラーに変わる手法も、なかなか巧みで印象的でした。パリの美術館にあるのマネの「自殺」という絵も、意味深に効果的に使われていました。

↑イケてるニネっち画像、集めてみました~
 
 ↑ニネっちの新作は、フランスの高名な作家を演じた“La promesse de l'aube”です。シャルロット・ゲンズブールがママ役!シャルロット、もうそんな役やるようになったんですね~…

 ↑オゾン姐さんの新作は、かつての寵童ジェレミー・レニエを再び主演に迎えたエロティックなサスペンス“L'amant double”です。手なんかつないじゃって!イケメン大好きな姐さんが、次に狙ってるのは誰?楽しみ(^^♪
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒く煌めく男

2017-12-24 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭④
 「汚れたダイヤモンド」
 強盗団の一員ピエールは、長年音信不通だった父が、精神を病み野垂れ死にしたことを知る。葬儀で父の兄ジョセフ、その息子ガブリエルと初めて会ったピエールは、代々続く宝石商の生家から父を追い出し、財産を奪った彼らへの復讐を誓うが…
 逆境の中で育ち、反社会的な人生を歩んでいた主人公が、その魅力と才能を使って金持ち一族に近づき獅子身中の虫となって復讐する、というお話は韓流ドラマの定番ですが、よくある設定でもフランス映画だと、味わいに深いコクと苦みがあります。

 陳腐な復讐ものと違っていたのは、犯罪者や冷徹な者はいても悪人は誰ひとりいない、ということ。破滅させたいはずの相手が、しだいに自分にとってかけがえのない存在になっていくことで狼狽、葛藤し苦悩するピエールの揺れる心理が、丁寧に繊細に描かれていました。ピエールと彼に関わる男たちとの関係が、まるでシェイクスピアのように残酷で悲劇的。みんな決して真人間ではなく、社会的にも人格的にも欠点はあるけど、不器用ながら優しさと愛情を秘めている。ジョセフと強盗団の親方がピエールに示す父性が、切なくて泣かせます。ピエールにとって憎むだけなら、復讐を遂げるだけなら、どんなに楽だったことでしょう。愛のほうが憎しみよりも、はるかに重く破壊力があるのですね。憎しみが愛に変わろうと、いったん狂った歯車は止まらず、後戻りできずに予期せぬ皮肉すぎる、恐ろしい破局へと向かう展開は、なかなかドラマティックで引き込まれます。まさに人を呪わば穴二つですが、悲しい結末ながらも暗闇から抜け出したピエールの旅立ちに、救いのような小さな光が見えました。それにしても。誤解と思い込みって怖い。復讐のみならず、行動する際には短絡的で衝動的にならぬよう気をつけたいものです。
 ピエール役は、グザヴィエ・ドラン監督のお気に俳優で、この作品でセザール賞新人賞を受賞したニールス・シュナイダー。

 イケメンとか美男と形容するにはちょっと躊躇してしまう、独特な顔をしてます。オーランド・ブルームをすごくダークにデリケートにした感じ?私好みではないけど、個性は強烈です。変わった顔だけど、時おりハっとしてしまうほど美しく見えることも。見る者の目を奪う磁力があるところ、しっとりとした濡れたような若い男の潤いがあるところが、オーランド・ブルームとの決定的な違いでしょうか。ヘンに激烈に熱演せず、復讐の鬼というより愛に戸惑うピュアな青年って感じだったのが可愛くて好感。ほっそりとスレンダーな身体と、何着てもオサレに見える雰囲気が、さすがフランス男(パリ生まれのカナダ育ちですが)。彼の他の出演作はまだ見てないのですが、画像などを調べてみると、この映画とは別人みたいな風貌で驚きました。どれが本当の彼なの?なかなかのカメレオン俳優なのかな?そんな謎めいた魅力も、凡百な俳優とは一線を画してるかも。今後が大いに期待できる新星です。

 ガブリエル役は、「青い棘」などで知られるドイツ俳優のアウグスト・ディール。流暢なフランス語で、気のいいちょっとおバカな従兄を好演してるのですが、彼がもうちょっと若いイケメンだったら、さぞや香しいBLムードが出てたかも。BL漫画だったら絶対に、ピエールとガブリエルはセクシュアルな愛憎関係に堕ちてるのにな~。せっかく女っけがほぼゼロな、男だらけ男祭り映画なのに。微かでもBLの匂いが欲しかったところです。ダイヤモンドを買い取ったり、工場で削ったりする過程が、興味深く描かれていました。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ママの秘密

2017-12-22 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭③
 「ミモザの島に消えた母」
 アントワーヌとアガット兄妹の母は、彼らが幼い頃にノワールムーティエ島の海で謎の死を遂げていた。中年になってもそのことを引きずり、真実を語ろうとしない父に不満を抱くアントワーヌは、長年封印されていた母の秘密を探り出そうとするが…
 ママの死は事故?自殺?それとも?なミステリーと、父と息子、兄と妹の葛藤や絆を描くファミリードラマが、巧みにブレンドされた佳作です。ミステリーといっても、奇異な連続殺人が起こったり、大ドンデン返しがあったり、華麗なる謎解きがあったりするわけではなく、時の流れで氷が解けていくように真相が見えてくる展開が、地味ながら不自然な作り物っぽさがなく好感。家族愛も、フランス人らしくベタベタしてなくて、それでいて優しさに包まれていて、温かな感銘を受けました。

 ママの秘密、死の真相は、そんなに意外でもショッキングでもなく、でも悲しくて切ないものでした。本当に愛する人との出会いが遅すぎた悲劇ですね。私がママと同じ立場なら、いったいどうしただろう…と考えさせられました。そして、子どもの立場からも。ママの選択を受け入れることができるだろうか。そのような運命とは縁のない私の人生は、本当に幸せで凡庸です。
 日本の2時間ドラマや刑事ドラマだと、死に関する重要な人物は必要以上に怪しく意味深な言動をするけど、この映画ではかなりあっさりとした存在になってました。あくまでアントワーヌ目線で話が進むので、話が散漫にならずにすんでました。誰ひとり悪人はおらず、ママを死に追いやってしまった人たちの心情や立場も、罪深いとは思えませんでした。むしろ人間的というか、当たり前のことと理解できた。もうちょっと寛容さと広い視野があったら、あんな悲劇は起こらなかったんだろうな~。ママにももうちょっと冷静さがあったら、死なずにすんだことだろうに。歯車が悪いほうへと動き出したら、もうどうしようもないものなんですね。たくさんの人たちが苦しんだけど、いちばんの被害者はやっぱアントワーヌとアガットです。どんな事情があるにせよ、子どもを悲しませ傷つけることは罪です。
 アントワーヌ役は、「エル ELLE」でヒロインの隣人を演じてたローラン・ラフィット。

 ええ~!?な役だったエルとは打って変わって、優しそうで温かみがある雰囲気、大人の男だけど少年のようなナイーブさが可愛かったです。エルでは気づかなかったけど、アラブ系なのかな?繊細で不器用だけど誠実な善人キャラ、ちょっと濃い目の風貌は、何となくマーク・ラファロを彷彿とさせました。マークもアントワーヌみたいな役、似合いそう。いい男で、いい役者なローラン・ラフィットは、名門コメディ・フランゼーズの座員で、フランスでは国民的な人気俳優みたいです。73年生まれだから、キムタクより年下!うう~ん、大人ですね~。キムタクも、この映画やエルみたいな作品で、ローラン・ラフィットが演じたような役に挑戦すればいいのに。

 アガット役のメラニー・ロランも、クールだけど芯は優しい感じが素敵でした。メガネっ娘なのが知的ながらも可愛かった。何げないたたずまいやポーズが、すごく絵になるのもフランス女優ならでは。気合いの入ってない、けどセンスのいいファッションも参考になりました。アントワーヌの娘役の子が美人。彼女がアントワーヌのママと同じ秘密と悩みを抱えていて、カミングアウトすることで父との関係が好転する展開が、観客にとって救いのような安堵感を与えてくれます。アントワーヌがママの残した手紙を娘に見せることで、彼女を大人扱いするシーンがすごく好きです。
 ミステリーの舞台となるノアールムーティ島の風景が、とても美しくて行ってみたくなりました。私も島の別荘で暮らしてみたいわ~。アントワーヌ一族のブルジョア生活も、アメリカや韓国の派手で品のない成金と違って、慎ましくありながらもさりげなく贅沢、なところに憧れます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イケメンDQNの悲劇

2017-12-20 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭②
 「Je ne suis pas un salaud 」
 妻子と別れ、荒んだ生活を送っていたエディは、不良グループに絡まれ暴行を受ける。エディの証言で容疑者の男が逮捕されるが、彼はまったく事件には関わりがなかった…
 最近、世界各国で多発している銃乱射や暴走車突っ込み事件。被害者にとっては悪夢としか言いようがない、理不尽で理解不可能な惨劇に、もうどこにも安全な場所などないと絶望的になってしまいます。理解とか同情など拒んでいるかのような加害者の心理には、ただもう戦慄するだけです。加害者たちの立場や身分が特異なものではなく、ごくフツーの一般人、事件前までは善良な市民として私たちの隣で生きていた、という事実にもゾっとさせられます。どんな事情や問題があったにせよ、彼らの犯行を許すことなど到底できませんが、なぜこんなことを?いったい何が彼らを蛮行へと駆り立てたのか?と、その昏い心の深淵をのぞいてみたくはなります。この映画の主人公エディも、そんな闇を抱えた人物でした。

 エディもこれといって特別な人間ではなく、いるよね~こんなドキュン男、程度。ドキュンだけど根は善人で、まっとうに生きたいとは思っている。家族も大事にしたい。けど、気づかないうちに心の病や荒びが深刻になっていて、他人や社会とうまく折り合えなくなってしまってる。自分の思い通りにならないと暗い怒りをためこんで、抑えきれなくなるとプッツン大暴れするエディって、自分勝手とか短気とかではなく、精神的に障害があるように思えました。たいていの人ならできる努力や我慢ができないエディには、イラっとさせれつつ、本人的にはどうしようもないんだろうな~と、気の毒にもなってしまいました。しかるべき治療とかカウンセリングを受けるべきでした。

 そして、冤罪という災厄も怖すぎる。いきなり犯罪者にされてしまう恐怖。濡れ衣を着せられた側ではなく、着せたほうが主役というのが珍しかったけど、冤罪の怖さを訴える内容ではなく、あくまでエディの人生崩壊のきっかけに過ぎない扱いになってました。それにしても…エディ、ほんとに罪深い男でしたわ。冤罪だけでなく、妻子までも不幸のどん底に陥れて。あんなに良い奥さん、良い息子なのに、可哀想すぎ。エディがこれまた妻子をすごく愛していて、彼らを幸せにしよう、守ろうとしているのに、心の闇のせいで自ら幸せをブチ壊してしまう姿が、愚かで哀れでした。衝撃的で悲痛すぎるラストには、暗澹とした苦い後味が。
 エディ役のニコラ・デュヴォシェルの熱演とイケメンぶりに瞠目!

 久々に見たニコラ。「White Material」以来かな?可愛かった彼もアラフォーに。でも、今でもカッコカワいい!童顔なので、実年齢より若く見えます。やつれて荒んだ不健康そうな顔でも、美しさは隠せません。うらぶれてショボくれている中、不意打ちのように見せる美しさに何度もハっとなった。フランス人にしては薄口な美しさ。ちょっとイギリス美青年っぽい?きれいで可愛いけどドキュン、これがニコラの個性と魅力でしょうか。全身刺青だらけ、暗く淀んだ雰囲気と目つき、触るものみな傷つける刺々しさ、荒ぶる魂。まさにドキュンの鏡です。世界一美しいドキュンかも。激情的なプッツン演技のヤバさも強烈でしたが、あまりにもみじめで哀れな風情に胸キュンさせる、ヒリヒリした繊細な演技も素晴らしかった。しばらく見ぬ間に、役者としてすごく成長してたニコラ。ただの美男俳優では終わりたくないという、彼の気概に感服です。彼はこの作品でセザール賞の主演男優賞にノミネートされました。受賞は「たかが世界の終わり」のギャスパー・ウリエルでしたが、ギャス男よりもニコラのほうが受賞に相応しかったのでは。

 日本のイケメン俳優も、エディみたいな役に挑戦すればいいのに、とは思うけど、演技力と魅力がないと、ただの凶悪なドキュンになってしまう危険性もある難しい役です。ニコラは演技力以上に、おんな心に訴えるダメ男の危険な魅力があるんですよね~。一緒にいたらダメになる、傷つくだけと判っていても、離れられない見捨てられない男って、実際いますもんね。美しい男って、幸福より不幸のほうが似合う。ニコラもまた、そんな美男です。それにしても…誘蛾灯と蛾、ゴキブリホイホイとゴキブリみたいな男と女の関係、愚かしいけど憧れます。
 妻役のメラニー・ティアリーは、「La princesse de Montpensier」のモテ姫役とは打って変わって、生活に追われるママ役を好演。「ホロウ・クラウン」のヘンリー5世編にも出ていた彼女、美人ではないけど人情深さと肝っ玉がありそうな風貌、演技に好感。息子役の男の子も可愛くてけなげだった。

 ↑美しきDQN俳優、ニコラ・デュヴォシェル。リュディヴィーヌ・サニエとの間のお子さん、もう大きく、さぞやきれいに成長してることだろうな~。いい役者に成長したニコラの出演作は、日本未公開が多くて残念。ピエール・ニネ!と共演したコメディ、DVDスルーでいいので観たい!!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モテキのプリンセス

2017-12-17 | フランス、ベルギー映画
 皆さま、ぼんそわ~る!
 日ごと寒さが募りますね!着てはもらえぬセーターを、涙こらえて編んでしまいそうになりますね!ただでさえ寒いのに、背筋が凍りそうになる事件や事故が多発するせわしない年の瀬ですが、皆さまもご用心&ご自愛くださいますやう。残り少ない2017年を、無事に乗り切りましょう!
 今年もたくさん映画、観ましたね~。私もついに、待望の「婚約者の友人」で、今年最後の劇場鑑賞。ピエール・ニネが映画納め男になりました(^^♪それを記念して、フレンチなイケメンたち、ボーギャルソン映画祭を開催!お目汚しいただければ、幸甚の至りですイケメンは心の湯たんぽ!あったかいんだからぁ~♪(古っ!)

 師走のbeau garçon映画祭①
 「La princesse de Montpensier」
 内戦に揺れる16世紀のフランス。貴族の娘マリーは、ギース公との恋仲を裂かれ、モンパンシエ侯爵との結婚を強いられる。夫と元恋人との間で揺れるマリーにとって、彼女の教育係であるシャバンヌは心安らぐ相手だったが…
 名匠ベルトラン・ダヴェルニエ監督作品。最近はめっきり佳き時代劇が少なくなっているので、美しい衣装やセット、実際の古城でのロケ、激動の時代の中で美男美女が繰り広げる波乱のロマンス、といったコスチュームプレイのエッセンスがぎっしり詰め込まれたこの映画は、時代劇ファンや歴女にとっては必見と言えましょう。描かれている社会背景や恋愛関係など、大人向けの時代劇でもあります。

 とにかくヒロインのマリーが、激モテ!鬼モテ!なんですよ。しかも、いい男オンリー。情熱的な美男の元カレ、真面目で優しい夫、教養深い熟年の家臣、奔放で背徳的な王子…見た目もキャラもそれぞれ個性的なイケメンたちに愛されて、もう大忙し!いい男独り占めのウハウハな花より男子状態なんです。マリーをめぐって、狂おしく切ない恋情に身を焼く男たち。マリーの女冥利に尽きるモテっぷり、羨ましいかぎりでしたが、あんなに愛や恋まみれになるのって、疲れるだろうな~と、マリーの混沌として安らぎのない生活を見ていて思いました。たくさんのイケメンにモテモテよりも、やっぱ一人の男に優しく誠実に愛されるほうがいいですね。

 情熱的だけど、どこか退廃的で不毛な恋愛もフランス的。マリーも、若い娘だけどドライでクール。全然うろたえたり取り乱したりしないんですよ。私なら、アタフタとテンパリすぎて胃潰瘍か高血圧になって、心も身体も壊して入院するでしょう運命にも自分の心にも逆らわずに生きる、マリーのしなやかさが魅力的でした。

 マリー役のメラニー・ティアリーは、すごい美女!ではないけど、男心をソソりそうな親しみやすさとエロさのある女優。全裸シーンがあるのですが、その白い柔肌の美しさときたら!胸の形、大きさとかまさに理想的。ジムで鍛えたり、シェイプアップに血道を上げて作る人工的なナイスボディとは違う、持って生まれた系の瑞々しい裸体でした。
 マリーを愛する男たちを、フランスの人気イケメン俳優や男前熟年俳優が演じています。これが最大の見どころ!
 ギース公役は、「たかが世界の終わり」でセザール賞を受賞するなど、イケメン俳優から味のある性格俳優へと成長を遂げたギャスパー・ウリエル。

 雄々しく血気盛んな貴公子を演じてるギャス男、その美丈夫っぷりに惚れ惚れ!美男だけど、どんどん野郎っぽくワイルド化してるギャス男の、ノシノシした男らしい歩き方が好き。ちょっとアゴがとんがり過ぎなのが最近気になるが。マリーへの想いでハアハアしたりプッツンしたり、とにかく情熱的なギャス男。怒りんぼなところが可愛かった。
 モンパンシエ侯爵役は、ギャス男の「かげろう」ではまだ子役だったグレゴワール・ルプランス・ランゲ。 

 すっかり大人になったグレゴワールくんですが、まだ少年っぽい。マリーより年下に見えました。マリーに対して真面目でシャイなところが、けなげで切なかったです。すっぽんぽん姿も可愛かった。地味だけど誠実で優しい彼が、嫉妬に狂って取り乱したり、ギーズ公と恋の火花を散らすシーンに、ドキドキワクワクしました。私もいい男ふたりを争わせて、けんかはやめて~♫二人をとめて~♪してみたい!
 国王の弟アンジュー公役は、これまたお気にのボーギャルソン、ラファエル・ペルソナ。

 怪しくて、ちょっとコミカルでもあったラファエル。タヌキっぽいパンダなメイクもユニーク。マリーに色目を使ったりしますが、どちらかといえばゲイっぽいキャラで、ギャス男との絡みに微かなBLのかほりが。

 若いイケメン3人よりも、どちらかといえばシャバンヌ役のベテラン男優、ランベール・ウィルソンのほうがヒロインの相手役っぽかったです。かつては美青年、現在は美熟年のウィルソン氏。理想的な男性の年齢の重ね方です。思慮深く紳士的で、どこか厭世的な大人の男を好演してます。ちょっと顔がイチローに似て見えたのは、きっと目の錯覚
 ギース公は黒、モンパンシエ侯爵は緑、アンジュー公は赤、シャバンヌは青、と男たちの個性に合わせた色の衣装も素敵でした。マリーのドレスや寝間着、髪型なども、派手ではないけど美しくて目に楽しかったです。当時の貴族の生活の描写も興味深かったです。
 同じ時代の宮廷劇「王妃マルゴ」と観比べるのも一興かも。マルゴは名前しか出てきませんでしたが、悪名高い母后カトリーヌは登場します。ラストではバルテルミーの大虐殺も描かれてました。
 この映画を日本の時代劇に置き換えてリメイクするならば、理想妄想キャストはこうだ!
 
 マリー … 小松菜奈
 ギース公 … 松坂桃李
 モンパンシエ侯爵 … 池松壮亮
 アンジュー公 … 瑛太  
 シャバンヌ … 竹野内豊

 こんなん出ましたけどぉ~?
 小松菜奈ちゃんが、その若く美しい肢体を大胆にさらしたら、すごい話題になって女優としてステップアップできると思う!
 男優たちはみんなちょんまげが似合いそうにないので、江戸時代じゃないほうがいいですね~。 

 ↑ギャス男33歳、グレゴワール30歳、ラファエル36歳…日本の某事務所のアイドルグループと、ほぼ同年代。大人っぽいけど若く見えるフランス男優たちと、子どもっぽいけど老けてる日本のアイドルの違いに愕然…
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

血に飢えた伯爵夫人

2017-10-10 | フランス、ベルギー映画
 皆さまお久しぶりです!やっとシャバに出られました~。長かった~。2、3日で退院できると思ってたから。ひょっとしたら生きてここから出られないのでは?と、病室で毎日怯えていました。
 早く帰りたいな~と不安な日々でしたが、のんびりまったりした入院生活を満喫。仕事せずに怠惰に過ごすって、ほんと至福じゃ~。ぼっちなので、家族さえ見舞いに来ない(身寄りがない可哀想な人と思われてたかも)静かで平和な毎日でした。目が悪いくせに、ヒマなことをいいことに読書や似顔絵を心行くまで楽しめました。
 このたび生まれて初めて手術をしたのですが、もう2度とゴメンじゃわ~。手術も全身麻酔も経験がある老父母は、ぜんぜん平気!何の苦痛もないと言ってたから、すっかり安心して油断してました。終わった直後、麻酔から覚めたら聞いてないよ~な地獄の苦痛。嘔気と目の痛みで、ずっとうなされてました。美人ナースに無理やり座薬を挿入され、すごく恥ずかしかった!けど、おかげで気分の悪さも痛みも引いて楽になりました。
 今も痛くはないけどずごい違和感が目にあり、もうちょっとだけ家で安静が必要みたいです。皆さまも、くれぐれも目はお大事になさってください!

 「Daughters of Darkness」
 新婚旅行中のステファンとヴァレリーが滞在するホテルに、若い女秘書を伴った伯爵夫人エリザベスが現れる。彼女は永遠の命と美貌を保つため、人間の生き血を求めて旅を続ける吸血鬼だった…

 1971年にフランスで制作された怪奇映画です。今の映画にはない70年代独特のサイケでデカタンなムードと、エロティックなシーン満載な珍作でした。
 若い男女が美しい女吸血鬼に魅入られるという話は、古くから映画や小説、少女漫画でもおなじみのものですが、この映画の吸血鬼は美熟女のレズビアン!なのが珍奇で面白かったです。エリザベスのステファンとヴァレリーへのアプローチや、女秘書との絡みも妖しすぎて笑えましたが、意味不明で意味深なキャラやシーンが結構ツボでした。ステファンは実は暴力や死体に興奮するド変態サド男だったり、ステファンのイギリスに住んでる母親がなぜか女装したおっさんだったり(ステファンがヴァレリーにせっつかれても、なかなか実家に結婚報告をしようとしない、何とか回避してたのは、これが理由?)。レズにSMに女装と、かなり倒錯した色情怪奇変態映画でした。冒頭から寝台車での夫婦の営みシーンなど、無駄に強引に全裸やセックスシーンが多く、ちょっと懐かしの日活ロマンポルノみたいな味わいも。うっかりお子さんと一緒に観ないよう気をつけて(笑)。
 吸血鬼映画というと、「トワイライト」シリーズや「ヴァン・ヘルシング」みたいに、変身とか飛んだりとか特殊能力を面白おかしく描くのが常套ですが、この映画のエリザベスは特にそんな能力は発揮せず、見た目は妖しい美熟女なだけです。支配下に置いたステファンとヴァレリーを操って、殺人や死体遺棄をさせる冷酷な女王さまぶりの陰惨さ凄絶さは、架空のモンスター話よりも怖い実録おんなの事件簿っぽかったです。

 エリザベス役は、アラン・レネ監督やルイス・ブニュエル監督作品などで知られるフランス女優のデルフィーヌ・セイリグ。妖気あふれる貴婦人な女吸血鬼を、楽しそうに演じてます。彼女のゴージャスだったりマニッシュだったりするファッションも見どころ。エリザベスの壮絶?滑稽?な最期も強烈です。
 ステファンとヴァレリーを演じてた無名の男優と女優が、見た目も演技も魅力薄だったのが残念。特にステファンは、若い頃のミスター・ビーンみたいだった。もっとイケメンにやってほしかった、いや、イケメンじゃないとダメな役でしょ。リメイクされるとしたら、エリザベスはニコール・キッドマン、ステファンはテオ・ジェームズがいいかも♪
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BLセブンティーン

2017-08-16 | フランス、ベルギー映画
 「Quand on a 17 ans」
 高校のクラスメート同士であるダミアンとトマは、互いに反感を抱き合っていた。そんな中、トマの養母が病気で入院する。ダミアンの母で医師のマリアンヌは、トマを一時預かることに。突然の同居に、トマとダミアンは戸惑うが…
 以前から観たかったフランス映画。名匠アンドレ・テシネ監督作品です。本国ではコンスタントにテシネ監督の新作は公開されているのに、日本ではとんと途絶えてしまっているのが悲しい。「私の好きな季節」などテシネ監督の作品で描かれる、恋愛の形や家族の関係が好き。複雑で繊細な機微がいかにもフランス的だけど、決して芸術映画きどりのワケワカメさがなく、驚かされると同時に共感できることも多い。そして、ほとんどの作品はフランスの大物女優と無名だけど魅力ある若いイケメンが主演、というのも美味しい。さらに、同性愛が物語の重要なエッセンスになっていることが多い、という点も気になるテシネ監督作品なのです。この作品なんて、ズバっとBL映画

 上質のBL漫画みたいな佳作でした。コソコソ楽しんでいた昔と違い、BL漫画や映画は日本でも市民権を得ている現在。「怒り」や「無伴奏」など、挑戦的なBL描写がある邦画も最近は珍しくありません。でも、さすがというか、フランスのほうがやはり格段にBL先進国です。人気イケメン俳優がちょこっと脱いだり絡んだりするのとは雲泥の差がある、大胆で生々しいBLシーンに瞠目せずにいられません。でも、何かBL=特殊、みたいな邦画と違い、フランス映画のBLは男女の恋愛と同じ自然さ。そういうところも大人な国だな~と感嘆するばかりです。

 この映画、BL物語だけど、ラブシーンはほとんどありません。ラストに一回だけ。その最初で最後のセックスシーン、それまでの鬱屈や情欲のぶつかり合いのような激しさ、濃密さ。こういうシーン観るたびに思うけど、俳優さん大変だろうな~。ホントにヤってるとしか思えないリアルさ。最中にも終わった後にも、大事なところを隠してる不自然さがない。ボカシも何もないのが、返ってイヤらしくないんですよね~。

 はじめは意味も理由もなく反目し合ってた(こういうのが、いかにも混沌とした思春期の少年らしい)ダミアンとトマが、同居を機にだんだん仲良くなっていき、やがて…みたいな関係が、ビタースウィートに描かれています。それにしても。二人が仲良しになるきっかけとなったのが、山の中でのタイマン!まるでヤンキー少年漫画なノリ。フランスの男の子もあんなことするんですね~。深刻な苦悩や悲劇も起きるけど、湿っぽくも暗くもならず、瑞々しく爽やかな印象が残る映画になってます。ハッピーエンドだったのも好感。
 ダミアンとトマのキャラも、それぞれ個性的でチャーミングでした。ダミアンは見た目からしてモロにゲイなんだけど、言動は全然キャマっぽくなく、むしろ格闘技を練習してたりと猛々しい。それはゲイであることゆえの心理的武装にも思えて、けなげで切なかった。トマは、とにかくミステリアスで複雑。何を考えてるのかわからない、本人にもわからない、心と体を持て余した葛藤やモヤモヤが、蒼い思春期の少年って感じ。ダミアンに冷たくて優しいツンデレっぷりにも、腐萌え~。二人とも学校では群れず孤高でトンがってるけど、母親には超優しいところが可愛かったです。

 ダミアン役は、「HOME 我が家」でイザベル・ユペールの息子役を演じてたケイシー・モッテ・クライン。成長しましたね~。ちょっと新スパイダーマンのトム・ホランド似?イケメンではないけど、ゲイのリアルさ繊細さがよく出てた名演でした。撮影当時、実際にも17歳だったというケイシー。17歳の男の子があんなシーン!するほうも、させるほうもスゴいわ。日本ではありえない!トマ役のコランタン・フィラは、ケンブリッジ飛鳥をさらに凛々しく鋭利にした感じの美青年!さすがイケメン発掘の名人テシネ監督、またまた上玉を掘り出しましたね~。パリにいても目立つような美貌が、ド田舎の中ではさらに際立ち、異彩を放っていました。セックスシーンだけでなく、すっぽんぽんになって湖で寒中水泳とか、脱ぎっぷりもあっぱれでした。
 マリアンヌ役のサンドリーヌ・キベルランも好演。決して過干渉はせず、でも理知的に優しく少年たちを見守ってくれる理想のママン、素敵な女性でした。トマとエッチしちゃう淫夢を見てしまうなど、生々しい女なシーンが意味深で興味深かったです。脱がなくてもいいシーンなのに平気で脱いだりするところが、さすがフランス女優。ダミアンの単身赴任中の軍人パパ役が、テシネ監督の「溺れゆく女」で注目されたアレクシス・ロレ。おじさんになったけど、可愛さは不変。ダミアンとは父子というより年の離れた兄弟みたいだった。
 舞台となったピレネー山脈のふもとにある田舎町の風景が、雪深い冬、緑豊かな夏など四季のうつろいの中で美しく撮られていました。ああいうところで暮らしてみたいな~。
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

もうひとりの私が…

2017-07-28 | フランス、ベルギー映画
 「ふたりのベロニカ」
 ポーランドでコンサートの舞台に立っていたベロニカは、突然の発作に襲われ急死する。その時、フランスでは音楽教師のベロニカが強い喪失感に胸を衝かれて…
 いい映画、面白い映画は枚挙にいとまがありませんが、美しい映画となると稀。ポーランドの名匠、故クシシュトフ・キェシロフスキ監督のこの作品は、私にとってそっと心の奥にしまっておきたい、大切な小さな宝石のような映画なのです。たまに宝石箱から取り出して、その美しさを愛でたくなる。そんな映画です。いつ見ても、その美しさは永遠不滅です。
 お話的には、けっこう難解というか、謎が多く、観る人の解釈に委ねる不思議系なので、小中学生向けみたいなわかりやすい映画じゃないとダメな人には、退屈なだけの意味不明映画かもしれません。私にとっては、そのミステリアスさ、深遠さが心の琴線に触れてくる映画です。

 キェシロフスキ監督の作品って、この映画もですが、静かで淡々としてるけど、映像や演出がかなり独特というか、斬新なんですよね~。冷戦時代の東欧の冷たい不気味な社会主義っぽい雰囲気と、フランス映画の高い香りがブレンドされてるというか。哀感漂う静謐さの中に、不穏なドラマティックさがふと現れるところが特徴でしょうか。ちょっと思わせぶりな、不可解な謎シーンや謎人物(ベロニカがすれ違う紳士とか、時おり出てくる老婆とか)も、お約束になってます。

 冷ややかさと温かみが混在する、透明感ある映像もキェシロフスキ監督作品の魅力。そして、音楽も効果的に使われています。清澄で荘厳で宗教的なところが、映画をとても神秘的にしています。ベロニカがコンサートで歌うシーンは、何だか怖くなるほどの神聖さで圧倒されます。あと、小道具もいつも印象的。人形劇の人形、透明のピンボール、ベロニカに届く謎のプレゼントetc.どれも意味があるようでないような、ないようであるような、そういう曖昧なところも魅惑的です。演出も脚本も、奇をてらいすぎて鼻につく才気走り系な映画よりも、私は答えのない、答えを求める必要のない美しい謎に満ちたキェシロフスキ監督のような感性のほうが好きです。あと、人形劇も美しくて面白かった。

 そして何といっても、ふたりのベロニカを演じたイレーヌ・ジャコブ。“キェシロフスキ監督の宝石”と讃えられた彼女の瑞々しい演技と美しさこそ、この映画を傑作にしたと言っても過言ではありません。イレーヌはこの作品で、カンヌ映画祭女優賞を受賞しました、

 まさに宝石のような女優イレーヌ。宝石といっても、ギラギラと輝くダイヤモンドではなく、慎ましくも優美な真珠のような存在。清楚でピュアな美しさと、柔らかで濃厚な女の色香を併せもっています。若く豊満な裸体も惜しげもなく、それでいて自然にさらして魅了してくれます。とにかくイレーヌの、まるで聖女のごとき優しさが崇高。どんなに演技が巧い女優が、どんなに優しい女性を演じても、芯にある性悪さ、気の剛さは隠せない。本当に性質が美しくないと、ベロニカ役は絶対ムリだと思う。見た目の美しさ以上に、演技力以上に、キェシロフスキ監督はイレーヌの人柄で起用を決めたのではないでしょうか。ファンレターの返事をくれたし、イレーヌって絶対善い人!彼女の聖女美がさらに活かされ輝いたのが、キェシロフスキ監督の遺作となってしまった名作、わし史上ベスト映画かもしれない「トリコロール 赤の愛」です。後日、この作品の感想もUPしたいと思います。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする