鬼

相変わらず、イヤイヤ期真っ盛りの息子（２歳）。

『この時期は自我が芽生えるのでどんな子供もワガママになります』

と世間で言われているのをいいことに、今日も反抗の限りを尽くしている。

第一次反抗期なんて、第二次反抗期に比べたらたいしたことないわ。
と、子供が生まれる前は思っていた。

夜の校舎の窓ガラス壊して回ることもないし、
盗んだバイクで走り出すこともない。

けど、第一次の場合は『世間体を気にしない反抗』ってのがタチが悪い。

気に食わないことがあると、近所迷惑考えずに大泣きする。
我が家はまだあまり無いけど、買物先でも平気で地団駄を踏んで大暴れして泣き叫ぶ。
誰が見ていようが、どこにいようが、全くお構い無しなのだ。

対する大人の我々は、世間体を気にしまくる。
ご近所にうるさくないだろうか？
こんなにお尻を叩いて、児童相談所に通報されないだろうか？

そんな二者が対立するもんだから、そりゃなかなかスムーズにいかないわな。
どこぞの国と日本のようだよ。

前なら「鬼が来る！」「オバケが出る！」と言って脅していたけど、段々とそれも効力がなくなってきたんだよね。
こりゃ何か新たな脅し文句を考えねばならないな。

と思いつつ、毎日のように息子と戦う日々。

今日もボクが押入を開けたら、奥に隠していたオモチャを見られてしまった。
「あれいる！」
と息子。

まあそりゃそう言うわな。

「あれはダメ」

大きいオモチャだから、出したら面倒な事になるんだよな。
面倒くさいって理由だけで拒否しているのであまり強気でいけないが、でも親の言うことは聞かせねばならない。

「あれいる！」

何度も繰り返す息子に、断固拒否のボク。
しかしこのままじゃこの強引さに押し切られてしまいそうだ。

危うし！

そんなボクの目に、押入の奥にあっる物が飛び込んできた！

お！
こいつはいい物を見つけたぞ！

いつ何の為に買ったのかも覚えていないけど、謎のマスクがあったんだよね。
ボクは何がしたくてこのマスクを買ってどうしようとしていたんだろう。
ま、それはいいや。
ずっと押入に眠っていたけど、これが役に立つ時が遂に来たようだ。
思えばボクはこの瞬間の為にこのマスクを買っていたのかもしれない。

まだワガママを言っている息子。

「言うこと聞かないから鬼が来たぞ！」

マネキンの首にマスクを被せ、押入から覗いているようにして見せた。



ら！

「びぎゃぁ～！！！！」

今まで見た事もない表情を炸裂させ、愚妻のほうへ逃げて行くではないか！

アハハハハ！
めちゃくちゃビビっとるわ！！

これはゆかい。

しばらく泣き止まずに怯えてやがんの！
そして押入のオモチャのことはもう一切言いませんでしたわ。

これでしばらくは言うこと聞くかな。
その後も、ずっと鬼を気にして生活してましたよ。

このマスクかぶって、言うこと聞かない家庭を回るバイトでもしようかしら。
一軒５００円くらいでさ。
大儲け出来るかもしれないな。

ま、数時間したらまたワガママが復活したから、効果は数時間程度だけどね。