ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

もう止まらないEVシフトと日本の対応

2017年09月18日 | ITS
先日、EVに関するエントリーをしたが、日本の立ち位置について補足しておく。
2017年8月25日 EV化で自動車メーカーは消滅するのか?

欧州各国に引き続き、中国も近い将来の全面EV化を示唆している。
中国の自動車マーケットは年間3000万台規模。日本の5倍という非常に大きい数字であり、これは今後の経済成長により更に増える。
この巨大な市場がEVに切り替わるとすると、産業構造の大変革になる。また、中国のこの発言は自国のEV産業の今後についてかなりの自信があるとみるべきだろう。
いずれにしても世界的に自動車市場はEV化に大きく舵をきった。

それに対し日本は、世界で初めて量産市販EVを世に出し、世界市場に存在するEVの台数シェアではまだ依然一位だと思うが、今後の見通しについては不透明な部分が多い。今後日本のカーメーカーは欧米に加え中国とも戦っていかなければならない。
いままでいろいろな分野で「世界に先駆けて開発」し、「気がついたら負けてしまう」パターンを見てきたので非常に心配だ。

前回のエントリーで、EVだからといって誰にでも作れるわけではない、車両制御をはじめとする長年のノウハウが必要だ、と書いた。
そういう意味では中国のローカルカーメーカーの実力はまだ低い。しかし年々向上しているのも事実。
非常に感覚的な話だが、品質と商品力に関して以前は日本車100に対して40~50レベルだったのが、80くらいまでは来ている。もともと中国の消費者は品質に対する要求レベルが高くないので、少なくとも中国国内向けでは十分な商品となりつつある。

そもそも中国は電気自転車がものすごく普及し、シェアバイクも一気に広まるような下地があり、事実シェアEVもかなりの台数が走り始めている。さらに中国は中央が命令すればなんでもできる。充電設備を作れ、と言えばあっという間にインフラ整備は終わるだろう。中国でのEV普及のネックは集合住宅での充電だが、これが解決すれば今後急速にEV化が進んでも不思議ではない。
それに加え、自国のEV産業に対する様々な優遇策を講じることは間違いなく、この巨大市場に日本メーカーが食い込んでいくのはかなり難しい。
中国はEVの中国生産に対して自国の電池、モーター、インバーターの採用を強制している。(このうちどれか一つは中国企業からの調達が必要)
それは明らかに技術流出を意味することから日本のカーメーカーは中国現地生産に消極的だったが、もはやそんなことは言っていられなり大手日系各社は中国生産の意向を表明している。

日本国内マーケットの拡大も我が国のEV発展には重要な意味を持つが、日本政府は将来のEV化について宣言はしておらず、また現在のEV優遇策も際立っているとはいえない。
日本の主要輸出品がエンジン付き自動車であり、また国内の自動車メーカーのうち現時点で純EVを販売しているのが2社しかない状況では積極的になれないだろう。また、日本は電力供給という面で問題を抱えている。もし車が全部EVに置き換わったら電力は確実に逼迫する。
そもそも化石燃料を燃やして作った電気で車を走らせるよりも、化石燃料を燃やして車を走らせたほうが効率がいい。石油石炭で発電している限りEVは全然クリーンじゃない。
それに対する世界の回答は原発や再生可能エネルギーなのだが、その選択肢は日本にはない。原発はもう絶対作れないし、地理的にも再生可能エネルギーで多くを賄えるようにはならない。
とは言え、政府は認識を改めるべきだ。大きなパラダイムシフトが迫っている。

私自身、近未来に車が全部EVになることは無理で当面は小排気量ターボのような低燃費エンジンが主流になると考えていた。しかし最近の欧州、中国の発表をみるに、これは予想以上の大変革が起きると想定するほうが妥当ではないか。
それに対し、日本の自動車産業及び日本政府は相当な改革をしないと家電や携帯電話などの二の舞いになってしまう恐れがある。