ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

自動運転タクシーへの過剰な期待

2022年01月02日 | 自動運転

将来自動運転が相当レベルに普及し、それにより自動運転タクシーがモビリティの主役となり自家用車やその他公共交通機関は衰退していく、というのは実現までの時間軸の議論はあるにせよ既定路線であることは間違いない。

時間軸に関しては、人車の完全分離インフラがいつ実現されるかにかかっている。どんなに優れた自動運転制御も突然の飛び出しには対応できない。しかしこれも段階的に進んでいくことになると思う。

自動運転の拡大については全く異論がないのだが、自動運転及び自動運転タクシーに関してはそのビジネスモデルに対して楽観的な言説が多い。

たとえば自動運転タクシーは無料もありうるというこの記事

タクシーのコストの過半をドライバーの人件費が占めること、またビッグデータ処理により適正配車をすることで実車時間が大幅に向上することなどから、自動運転タクシーは車両のコスト高という初期投資を十分にカバーできるほどコストが下がることは間違いない。

しかし、広告収入に過大な期待をもつのは非常に危険だと思う。
タクシーに限らず、自動運転化により運転が不要となるため車内でのEC需要が発生するという見方は以前からされており、アップルやGoogleが自動運転に乗り出す真の理由はそれだ、という人もいる。

本当だろうか?

私には、しょせん交通広告の一種であるとしか思えない。
じっさいタクシーにはすでに液晶モニターが設置されている。これは自動運転とは直接関係ない。しかし、このタクシーに設置されているデジタル広告が大成功しているという話はあまり聞かない。事実上海で2013年ころからこの事業を展開した中国企業は撤退した。

それはそうだろう。ほぼ100%の人のポケットにはスマホという自分に最適化された液晶モニターが入っている。わざわざタクシーの画面を見る必要はあまりない。
自動運転車のモニターやデジタルサイネージは電車の中吊広告とたいして違いのない交通広告なのだ。
いや、属性や目的地に応じた広告を出せるのだ、という反論もあるかもしれない。確かにその通りだが中吊広告よりはまし、という程度のことなのではないか。

どう考えてもタクシー料金を相殺できるような広告費を広告主からとれるとは思えない。

さらにリンク先の記事は道路状況や交通状況データの販売に関するオポチュニティがあるとしているが、誰に販売したところでそのデータを買って使うのは当の自動運転車じゃないのか?というか、それ以外に誰が使うのか、ということになる。

自動運転車はドライバーが不要、事故を起こさないからおそらく保険料もやすくなり、また適正配車による生産性もアップするだろうから相当に料金は安くなるだろうが、無料化にできるビジネスモデルが構築できるとは到底考えられない。


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