エプソンでもキャノンでも、インクジェットプリンター本体は非常に廉価で販売されているがインクが高い。本体の価格を安くして本体の販売競争に勝ちその後インクで利益を回収するビジネスで、これはよく知られていることだ。
消費者としては、大きな瓶に入ったインクを買ってそれを随時継ぎ足して使いたいが、毎回カートリッジを交換しなければならない。しかもそのカートリッジにはチップが埋め込まれ、純正品でないと交換した履歴が残らないなどの仕掛けが施されている。
髭剃りの替刃もこれに少し似ている。交換替刃が彼らのビジネスのメインであり、それを装着するホルダーはただで配っているようなものだ。
しかし、プリンターともちょっと違う部分がある。それは剃り味の耐久性。4枚刃だろうが5枚刃だろうが、2−3週間で切れ味が悪くなる。世の中には工業用ダイヤを使って相当固いものを切る刃が存在する。今の技術を持ってすれば、一年位使える髭剃り替刃は簡単に作れるはずだ。
実はすでにシックからダイヤコートを施した替刃が発売されたことがある。この商品「ダイヤプラス」は耐久性に優れ非常に評判が良かったが、そのうち製造中止となった。自分の首を絞めてしまうからだ。確実に消費者が喜ぶ商品が、そののビジネスに壊滅的な打撃を与えることがある。カミソリは数社に寡占されている市場なので、替刃の持ちはこの先もずっとある一定のレベルに制御されていくことになる。
自動車にとっての自動運転も商品に改良が自らの首を絞めるという意味では似ている。事故がなくなるから部品が売れなくなるが、プリンタや替刃とは違いそれですべてのビジネスをしているわけではない。それ以上に大きな問題は、性能やブランドによる付加価値付与ができなくなるということ。自動運転は交通事故をなくすものであり、その実現は社会の要請だが、カーメーカーとしてはあまり積極的にやりたいものではない。
しかし、ここに来て各社が自動運転を言い始めた。看過すればIT系企業に主導権を握られてしまうからだ。
この先自動運転が自動車の産業構造を変えてしまう可能性もある。
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