ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

テレマティクス、レスポンスの記事からもう少し

2015年07月01日 | ITS

このエントリーは直前の「コネクティッドカーの将来展望」からの続き。

レスポンス記事「テレマティクスサービス国内ユーザー、5年後は1320万人に…フロスト&サリバン

これはもっとわかりにくい。

フロスト&サリバンによると

「テレマティクスサービスののべ国内ユーザー数は2014年の849万人から2020年には1320万人へと増加する」

いま849万人というが、本当に車の10台に一台はテレマティクスサービスを利用しているのだろうか?この数字はどこから出てきているのか?
想像するに、T-Connect、Carwings会員数と、アフターのAirナビ等通信対応ナビの総出荷数から割り出していると思われる。

しかし、実際にテレマティクスが使われているのかというと怪しい。これが「高速通信環境整備(LTEのことか)、スマートフォンの普及で急速に拡大する」といわれても本当かなと思う。

日本では「緊急通話や遠隔車両診断が車両位置情報に基づくサービスの次に重要なものとして位置付けられている」という記載があるが、これは本当なのか?しっくりこない。特に遠隔車両診断(リモートダイアグ)は、遠隔で車が修理できるのならまだしも、故障原因が分かったところでどうしようもない。

「車両位置情報データが増加すれば、OEMやテレマティクスサービスプロバイダは信頼できる事業例を構築できる。これにより車載通信モジュールの装着標準化が進めば、このトレンドが加速することも期待できる。」は非常にわかりにくい文章だが、プローブのことを言っているのか?プローブ車両が増えれば交通情報などの正確さがまし、ユーザーがほしがるから標準化が進み、ドライブがかかる、といいたいのだろうか?

最後の文章、「今後は、高品質アプリの提供と併せたオープンアーキテクチャ戦略が、大規模なテレマティクス・ユーザーの基盤を構築するカギになるとみている」は、いいアプリが出てくればブレイクするかもね、といっているだけで具体的なことは何一つ示されていない。

テレマティクス、もしくはコネクティッドカー(車+通信)はすでに10年以上やり続けてもキラーコンテンツが見つからない「蜃気楼」のようなマーケットなのだと思う。


コネクティッドカーの将来展望 フロスト&サリバン報告

2015年07月01日 | ITS

6月4日に調査会社であるフロスト&サリバンジャパンが開催したGIL 2015: Japanにおけるコネクティッドカーに関する講演のレスポンスによるレポート。

顧客ニーズからとらえなおすコネクティッドテクノロジーの2020年

「ビッグデータを活用することによりOEMはクルマ1台あたり年間700から1500ドルを得る。データをモビリティとの関連で論じると、データはモビリティインテグレーションを実現するビジネスモデルを可能とするためのコネクテッドサービスのうちの75%を占める」

非常にわかりにくい文章だが、コネクティッドカーからの各種情報をビッグデータで処理し分析することでカーメーカーに価値をもたらす、ということか。もしくは車両に対するアフターセールスのプッシュで利益を得るということか。

いずれにしても、これは机上の空論に近いものでしかないと私は思う。

曲がりなりにも大手カーメーカーはもう10年以上テレマティクスを運営してきたが、こうしたビジネスは全く生まれていない。これから生まれるという理由がわからない。

また、ここで言っているコネクティッドカーのシェア(現在日本で18%、等)は何を指しているのだろうか?車両への通信デバイス埋め込みという前提であればここまでの数字にはなっていない。ユーザーが自分の通信機器をつなぐことができる車載器の普及率だと思われ、実際につないでいるかどうかは不明。

欧州はe-Callの法制化でコネクティッドカーは自動的に拡大するが、付加価値付与に対する法規制があるためいわゆるテレマティクスの拡大にはならない、というのはその通りかもしれない。また、緊急通報に関して「日本は欧州ほどには前向きな、積極的な施策がない」のも事実。しかしそれ以上に重要なことはコネクティッドカーがユーザーにとってどのような価値をもたらすかだろう。

これについても言及されているが、ここに書いてある内容だけを読むとほとんど自己矛盾のようなことしか書かれていない。いわく、ユーザーが求める機能にはコネクティッドは入っていない、車の中でスマホを使うのは通話や停車時のメールチェック、など。

これに対する回答が

「こういった需要が実態としてある。市場を踏まえて色々なサービスを提供する上では地域的セグメントや性別を考慮しながらきめ細かなサービスの提供が求められている」

というあいまいなものになっている以上、コネクティッドカーが本当にいうほど普及するのか、はなはだ怪しい。

テレマティクスからコネクティッドカーと名前は変わったものの、依然として明確なユーザーニーズが見えず、またキラーコンテンツも見つからない状況に変わりはない。

そうした中で2020年に向けて大きく普及率が向上するという理由が私にはわからなかった。