”LA REYNA Y SENORA”by JESUS VASQUEZ
ペルー名物。きっとそうなのでしょう、バルス・ペルアーノなる白人系大衆音楽の、彼女は最初のスターとのこと。名花JESUS VASQUEZ 、デビュー。1939年のことであります。可憐な声で切なく美しいメロディを彼女は、夜空に瞬くお星様を仰ぎつつ心を込めて歌い上げます。
バルス・ペルアーノ。アルゼンチンのタンゴなんかでも”ワルツ”なるサブ・ジャンルが存在しているのであるし、その辺の”ラテンアメリカ・三拍子文化圏”の中のものという方向から捉えていいのか?
確かにその南欧の尻尾を付けた妖しく美しいメロディ展開は、その血族である事を主張しているが、バックのサウンドは、優雅なタンゴ世界のそれとはかなり違っていて、なにやらリズム・セクションが前のめりにジタバタとせっかちな進行をするあたり、あまり洗練されているとは言えず、ブエノスアイレスのタンゴ紳士たちからはイナカモノ扱いを、そりゃされるんではないかな?私などはこのパワフルなリズム展開はずいぶんと心地良く感じられるのだが。
などと余計な心配をしている間にもアルバムは進行して行きます。今、南欧仕込みと書きましたが、いったい古きヨーロッパからペルーの地はどれほど離れているのか。彼女の歌に聴き入り、あるいはリズムに合わせてダンスのステップを踏む男女に、再び大西洋を越えて故郷に帰り、グラナダを見る機会などあるのだろうか?
切なく流れるギターの音よ。哀しく揺れるピアノの和音よ。そして可憐なる少女歌手よ。君も我も、共に明日知れぬ人生の旅人ならん。
旅路の果ての新大陸、荒れ果てた大地で見上げる星、二度と帰れぬ故郷を思い、可憐なるペルーのワルツにただ酔い痴れてみせる、わけあるバガボンドの心細き心情に想いを至らせば我が胸にもまた望郷の涙、溢れ出でて止まるところを知らぬのであります。