”Kaenkukuntayat”by Riikka
フィンランドの民謡をはじめとする、かの国の民俗というのには興味を惹かれて、90年代の始め頃だったか、かの地のトラッドのCDなど買い集めて夢中になって聴いていたものだった。
ハンガリーと同じく”ヨーロッパ大陸に紛れ込んだアジアの血の一滴”という民族的出自がファンタスティックに思えた。他の欧州の言語とまるで関連のないみたいな不思議な響きのフィンランド語に憧れ、大衆音楽の事を「カンサンムジク」、”お前、ぶっ飛ばしたろか”を「ヨコハマフナウタ!」と言う、なんて事を知って妙に嬉しかったりした。
そしてフィンランド音楽の、アジア的な濁りを孕む歌声に血の騒ぎを感じ、丸太を大地に突き立てるようなワイルドなリズム感に撃たれ、はるか東方の響きを予感させる歌謡性を帯びたメロディラインに、フィンランドの人々が旅した道のりへの空想を喚起された。
そもそもフィンランドの人々の祖先はアラル山脈のふもとあたりに住まいしていて、古代のある時期、スカンジナヴィア半島に侵入、彼らの国家を築いたとの事。
と言うわけで、そんな遠い国の妄想に酔い痴れていた日々を思い起こさせるような、刺激的なフィンランド盤に出会えたので、ここに取り上げる次第。
はじめて名を聞く人だが、まるきりの新人とはとても思えない音楽的底力を感じる。解説に拠ればヴァルティナ等、名のあるグループに在籍してきた実力派のようだ。
このアルバムのテーマとしては、フィンランドの民俗音楽の様々なエッセンスを分解&再構成して、新しい”郷の音楽”を作り出そうという試みなのだろう。
アコーディオンやニッケルアルパといった民族系の楽器と打ち込みの電子音が地味にブレンドしあったバックトラックの上に、まるで森の小動物が鳴き交わすようにリッカの一人多重録音の歌声はリズミカルに広がり、人間には意味の聞き取れない秘密のネットワークが木々の間に張り巡らされて行く、そんな幻想が経ち現われる。
伝承音楽の響きを中心に残しつつ、全体の手触りはまるでポップであり、そこが良い。
北国特有の哀感の滲むメロディに乗せて、”アイヤ~アイヤ~イヤ~アイヤ~♪”なんて意味のない掛け声を繰り返しながら、古代の祭祀の幻想の中に入り込んで行く、その足取りの軽さが良い。重苦しい”民俗芸術”ではないのだ。
あくまでもそのノリは軽く、楽しげにハミングしながら森の中へ、太古の時間にスキップしながら入って行きそうな心安さがこのアルバムの勝因だろう。
さあ、我々もおいて行かれないように森を目指さねば。
ご指摘の曲は知りませんが、源流を辿ると同じだったりする曲もあるのかもしれません。その辺に血が騒ぐのが伝承音楽ファンの楽しみですねえ。
終わってからも、余韻の残る歌ですね。
しばらくたつと、Eddy Moneyの "Take Me Home Tonight"を聴きたくなってしまいました。
メロディーで、似ているところがあるのかな?
島唄じゃなく森歌ですね。森と泉の国の歌。
どうも世界の端っこのほうに行くほど、音楽は面白くなるのかも。
確かにとても幻想的です。
なんてゆうか、日本の島唄を連想させられます。
島唄はここまで幻想的じゃないけど。