ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ブレトン岬、ロリコン通り

2010-06-01 00:49:29 | ヨーロッパ

 ”Songbook 1”by Cecile Corbel

 ああ、俺はスケベさ、それがどうした!と素地を作っておいて、さてそれでは本題に移るとしよう。(いやなに、「ここのところ女性歌手の話ばかり書いてるなあ」と、ふと気がついたもので)
 と言うわけで、フランスはブルターニュ出身のハープ弾き語りのトラッド歌手、セシル・コルベルちゃんであります。
 この人はスタジオジブリの新作映画の主題歌を歌っているので、その歌声をお聴きになった方もおられるでしょう。つーか、私はそれは聴いた事がないんですがね。
 まあ、変な形で彼女が日の当たる場所に引きずり出されてしまうのは面白くないんで、その歌があまりヒットしない事でも祈っておきましょうか。いや、こういう個性の人はマニアが人に隠れてコソコソ聴いてこそ、その個性が生きるってなものでしょう、正味の話。メジャーの世界で生きて行くのは無理と言うか場違いだと思うよ。

 コルベルちゃんの出身地であるブルターニュ半島といえば、アイルランドなどと同じく、古代ケルト文化の痕跡が色濃く残っている土地として知られており、その種の音楽の復興につくした、アラン・スティルベルなんて偉人もいて、スキモノにはたまらん土地となっております。
 でもコルベルちゃんの音楽はストレートにトラッド、ケルティック、という感じでもなく、むしろ彼女のうちにあるそれら音楽への幻想を積み上げ、彼女なりの美学にもとずく、カッコつきの「ケルティック」な音楽の迷宮を創造しているというべきでしょう。結構、虚構の手触りがする音楽です。彼女自身が演奏するハープの響きに絡むストリングスと電子楽器の轟き・・・
 でもそれが”ポップス”に通ずる美学となっているので、これはこれで意義ある、興味深い試みと受け取っていいのではないでしょうか。

 ・・・もっともらしいこと書いてますがね。なに、実は私、コルベルちゃんの唄を一耳聴いて(一目見て、という言い回しがあるから、こういうのも良いんではないかと)、その文字通りの小悪魔的響きに一発でやられてしまってミーハーなファンになっているのですわ、それだけの話。
 この声をどのように表現したらいいのかなあ。まあ、聴いてもらうしかないんだけれど。アルカイックな微笑を浮かべた唇の奥から生まれ出る、魔法の木から流れ出した謎の樹液みたいな濃厚な糖度を示すこの歌声は。
 ヤバいねえ。妖しいねえ。こういうものをやらせたらフランス人は天下一品だねえ。根っからスケベなんだねえ。呆れたものだねえ。フランス・ギャルとかシャンタル・ゴヤとか、ちょっと聴きたくなってきたねえ。





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