ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ウクライナの秘祭

2009-03-29 03:42:06 | ヨーロッパ


 ”Wild Dances” by Ruslana

 ウクライナの人気女性ポップス歌手のルスラナのことなど。

 以前、彼女の”ブレイク前”のアルバムをここで話題にした事があったけど、今回はまさに彼女の出世作を取り上げる。2004年、ここに収めれられている”ワイルドダンス”という曲で彼女は、もしかしたら”東欧圏初”であるのかも知れない”ユーロヴィジョン・ソングコンテスト”における優勝を勝ち取ったのである。
 このアルバムはその快挙を受けて、前年に出されていたアルバム”ワイルドダンス”を、ボーナストラックを加えて再リリースしたものだ。

 彼女の音楽は”ウクライナの古い山岳民族の音楽をエレクトリック・ダンスミュージック化したもの”と言われているようだが、その”民俗性”がどの程度リアルなものなのかは浅学にして分からない。
 ともかく彼女のプロモーション・ビデオなどを見る限り、その”野生のエネルギーを秘めた辺境の異民族”っぽい演出はファンタジー映画を見る如くであり、このあたりのエキゾティシズムが彼女の”売り”であるのは容易に想像が出来る。

 このアルバムで聞ける彼女の歌はどれも、ロシア民謡風という言い方が適当なのか分からないが、ほのかにスラブ系の哀愁を漂わせたメロディに、バルカン音楽風、あるいはジプシー音楽あたりを想起させる香気を混入させたような、ややクセのあるメロディであり、アジア人である我々には妙に親和感を覚えさせるものである。
 ともかくどれも初めて聴くメロディであるはずなのに、初聴きで馴染んでしまい、爪先でリズムを取り、歌声を追ってハミングを始めている私がいる。

 ホーンセクションがバルカン半島を連想させるイスラムっぽいフレーズを高らかに吹き鳴らして暴れまくり、ルスラナがコーラス隊を従えて「ヘイ!ヘイ!」とワイルドなシャウトを繰り返す。あるいは打ち込みのリズム、あるいはハードロックっぽいエレクトリック・ギターのリフ、あるいは渦巻くようなシンセ音の洪水、さらに民俗打楽器の呪術的響きなどが渾然一体となって襲い掛かってくる迫力はなかなかのもの。
 このあたりの土俗性と今日性を激しくバッティングさせた演出には、ワールドミュージック好きとしては手もなくやられて「ルスラナ最高!」と叫ぶしかないのである。

 ルスラナの、こんな異形の音楽世界を目の当たりにすると、ウクライナってヨーロッパ人にとってどんなイメージの土地なのだろうと、あれこれ空想を試みたくなる。そうこうするうち、キャラ設定のためにいつもエグいメイクをしているルスラナって結構いい女なんではないかなどと余計な事にも目が行ってみたりする。

 打ち鳴らされる大太鼓と角笛の響き。裸馬に乗って荒野を駆け抜ける夷たちが遠く呼ばわる声。ウクライナの夜祭りの幻が駆け抜け、”ワイルドダンス”のメロディは耳を去らない。




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4 コメント

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Unknown (kisara)
2009-03-31 22:42:34
ルスラナ・・・わたしもはまりました!
迫力があってカッコいいですよね!

>ロシア民謡風という言い方が適当なのか分からない
「世界は音楽でできている」には「ウクライナ民謡」と紹介されていましたよ・・・ウクライナのどこの地方なのかまでは書かれていませんでしたが。
あと、確かにロマ音楽の影響も見られますよね。

最近のユーロヴィジョンって、東欧勢がやたら上位に入ってますが、それまで東欧勢で優勝した人がいなかったってのが不可解ですよね?
優勝した人は正当に評価されているとは思いますが、ここ5~6年で本当に《優勝にふさわしい曲》だったのはルスラナだけなのでは?

その後、化け物のローディが優勝、色物のセルジューチカが2位に入っちゃって、大会自体がエライことになってしまいましたね・・・そうでなくても、出場者がアイドル歌手だらけでウンザリ、年々つまらなくなってるのではないかって気がしました。
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 (マリーナ号)
2009-04-01 04:04:52
 kisaraさんへ
 あっ、そうでした、以前、kisaraさんもこのアルバムを記事にしておられましたね。やあ、カッコ良いですよね、ルスラナは。
 そう、そのウクライナ民謡とロシア民謡の区別が浅学にしてつかないんですよ。なんか同じような音楽としか聴こえなくて(苦笑)
 ユーロヴィジョン、なんていうと昔は振り仰ぐと言うか、とてもきらびやかで手も届かない世界のものって感じだったんですがね。いつのまにか・・・そのうち、M-1化でしょうか。
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Unknown (kisara)
2009-04-01 17:08:37
ユーロヴィジョンは80年代が全盛だったそうで、その当時を知る人にとっては、最近のM-1化したユーロヴィジョンは見るに堪えないらしいですよ。
・・・わたしは、そのM-1化したユーロヴィジョンしか知らないので、コンテストと言うよりパーティーにしか見えないんですけど。 (苦笑)
一応、昨年のベオグラード大会から、化け物・色物は上位に入れないようになったようですが、歌唱力の無いアイドル歌手こそ上位に入れないようにしてほしいものです。

個人的には、ローディはセルジューチカよりも好きなんですが、彼らが日本人だったら間違いなく一発屋の部類だったでしょうね。 (笑)
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 (マリーナ号)
2009-04-02 01:56:14
 kisaraさんへ
 そういえば私も、ユーロヴィジョンの栄光の日々の実態は知らないのでした。知る方法が分からぬまま、勝手に想像で素晴らしいものと信じ込んでいた。
 で、知る事が出来るようになる頃には相手は没落していた・・・もしかしたらはじめからたいしたことはなかったのかも。そうでないとする、何の証拠もないわけですからね。
 化け物、色物。まあ、上位にいる必要はないけど、出てきて欲しい、見てみたい(笑)
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