ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

アラブの夜・アフリカの夢

2008-10-23 01:30:35 | イスラム世界


 ”Muzahara Nesaiea”by Shams

 そもそもアラブの音楽と言うものが普通に演奏しても我々異邦人にはエキゾティックなものだが、そんな音楽を普通にやっている連中が、”彼らにとってのエキゾティックな音楽”をやったらどういうことになるのか?なんてあたりが、このアルバムの楽しみどころかな。
 レバノンの女性歌手、2005年の作品であります。

 猟銃を肩にライオン(の剥製)に身を寄せる迷彩服を着た歌手本人、という奇妙なジャケに包まれたこの盤、”アラブ女性のアフリカ探検”みたいな秘境冒険もののファンタジィでも展開してみせているのだろうか。
 歌詞が、アラビア語が分からないのがもどかしい。けどまあ、収められた音楽の方向性からも、そんな盤である雰囲気濃厚である。あるいは錯綜する恋愛を、ジャングルの夜に蠢くケモノたちの生存競争になぞらえてみた、とか・・・

 ともかく、ミステリアスにしてクール、かつワイルドな音のつくりが、異郷の夜の妖しい血の騒ぎを演出して不思議な世界に我々を誘ってくれる、なかなかにエキサイティングな作品である。
 あるいは、”アラブ人が持っているアフリカのイメージ”とはどのようなものであるかが提示されているので、こいつをネタに比較文明論まがいのことなど思いを寄せてみるのも一興かと。

 毎度お馴染みのアラブ伝統のパーカッション群は、どこかサハラ以南、ブラック・アフリカを思わせる響きがしているし、バックに控えるコーラス隊も、あえてラフな手触りのハーモニーを用い、時にイコール&レスポンス状態ともなり、かなり無骨な”野生”を演じてみせる。差し挟まれるバイオリン系の楽器も、マグレブの薫り高い奔放なソロを聴かせる。

 タイトル・ナンバーの冒頭の部分などは、パーカッション群の響きや、それとボーカルの絡み具合など、ナイジェリアのフジ・ミュージックを一瞬、連想させるものがあり、相当に血が騒ぐ。
 もしかして、アラブ音楽の妖しさから湿度を排するとアフリカ音楽となる、なんて雑な方程式は成立可能か?などとも思う。

 戦前、我々日本人が”手ごろな異郷”である隣国・中国を夢想の対象として、”蘇州夜曲”あたりに代表される中華幻想系歌謡曲をいくつも作ったように、アラブにはこのようなアルバムがあり・・・さて、アラブの人々はどのような夢を、この音の向こうに結ぶのだろうか?


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