ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

謎の鍵盤バイオリン

2006-01-06 04:18:29 | ヨーロッパ

 今回は気分を変えて楽器のお話ですが。ともかく添付しました写真をご覧ください。こりゃなんだっ!てな代物を弾いている男女。これが北欧トラッドで使われる鍵盤バイオリン、ニュッケルアルパ(Nyckelharpa)と呼ばれる楽器なのですね。
 弓を持って弾いている様子から分かるとおり、バイオリンの変種に分類するべきものなのでしょうが、まあ、異様な外見です。弦なんか20本近く張ってありますし、ネックの側にある何本もの細い棒状のものは何なのだ?

 この楽器、右手に弓を持って弦を擦り、音を出すのはバイオリンと変わらないのですが、普通に弓で弾いてメロディを奏でるための演奏弦は3本だけ。ほかに、鳴らしっぱなしでベース音を奏でるドローン弦が1本、そして、奏でられるメロディに共鳴し、勝手に振動して鳴るための共鳴弦が12本、時にはそれ以上もあるというんだから、ただ事でない楽器ですね。インド音楽なんかでは大量の共鳴弦を持つ楽器は普通だけど、ヨーロッパ方面では珍しいですね。そもそも共鳴音なんかはクラシックの世界では雑音としかとらえられず、嫌われますね。

 で、ネック側にあるのは、非常に素朴な形ですが鍵盤であるわけです。これを左手で抑え、音階を作り出す、と。左手の指で直接、弦を押さえる普通のバイオリンよりも容易に、かつ正確な音程を確保できる・・・とは言うものの、どう考えてもこれは効率悪過ぎでしょうねえ。(もっとも、早いパッセージなんかを弾くと、音の出方がフラットなんで、なんかシンセを鍵盤で弾いたみたいな感触の音が出て、ちょっと面白い効果あり、ですが)

 まあ、ヨーロッパ音楽の初期にはこのような楽器も使用されたのだが、次第に今日のような洗練された形のバイオリンが主流となり、このニュッケルアルパは忘れられていったんですね。今では、北欧はスエーデン・トラッドの世界の、それもほんの片隅で生き残っていただけでした。
 が、昨今のスエーデンの人々の自国の伝統文化再評価の風潮とも相まって、ニュッケルアルパ復興の気風さえ出て来ています。ニュッケルアルパのみ6人組、なんてとんでもない編成のバンドも先日、CDを出したし。

 この楽器、雑に言えばバイオリンをやや金属的にしたみたいな音を出すんですが、その独特の野趣がスエーデンのトラッドの涼やかなメロディと上手く溶け合い、なかなか良い感じでして、ちょっと弾いてみたいような気がしないでもない・・・とは言え、てこずりそうだなあ、まともに弾けるようになるまでは。まあ、こんな楽器に出会えるのも辺境トラッド聞きの醍醐味でしょうね。






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2 コメント

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ニュッケルアルパ (massh@まー)
2006-01-07 00:00:55
この楽器の姿は知ってました。姿だけね。

まさかこんなに弦がありながら3本だけしかメロディを奏でないとは知りませんでした。

共鳴弦?すごいことしますね、ヨーロッパは。

共鳴するとユニゾン効果が出るんでしょうか。和音になるんでしょうか。

音に厚みが出そうです。



辺境?の北欧だから残った楽器というわけですね。民族も、辺境だからこそ周辺と混じらずに独自のものが残ったことも考えると、辺境は興味深いですね。

極東。。。
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辺境に生きる (マリーナ号)
2006-01-07 04:34:36
共鳴弦は今日、インド音楽の世界で当たり前の存在となっていますが、かっては世界中で楽器に使われていたのかも知れない。そんなものがしぶとく残っているのも、辺境の音楽の面白さですね。

というか、例のケルト音楽というものもまた、辺境で生き残った音楽であり文化であるわけで・・・
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