”Yesterday was Dramatic -Today is OK”by Mum
この間、アイスランドの不思議な持ち味の女性シンガーのことなど書いてみたけれど、「ひょっとして今、”最前線”にいるのはアイスランドのミュージック・シーンなのではないか?という、特に根拠の挙げようもない予感がある。
具体的な根拠もないので、詳しい話のしようもないのだが、何だか彼等が”今、いるべき場所”にいるように思えてならないのだ、私は。彼等が音の底に共通して持つ独特の透明感やら屈折したユーモアの感覚など、なにやらありそうな感触がいっぱいなのだ。
そんな私の疑惑(?)を裏付けるように、いつの間にかそっと来日までしていたというアイスランドの奇妙な持ち味のエレクトロニカ・バンド、”Mum”のアルバムなど。
エレクトロニカであるのだから当然、打ち込みの音から始まるのだが、これが全然機械くさくない、それどころかむしろちょっととぼけて温かいニュアンスを振りまく。キーボードのソロは決して尖った音は使わず、丸っこい和音で、聴く者の心を雲で包み込むようなフレーズを積み上げて行く。
楽器の音色の選択だって、「あれ?スピーカーの具合がおかしくなったのかな?」と首をかしげるような間抜けな音をあえて響かせるのだ。打ち込みの上に乗る楽器もメロディカみたいにのどかな楽器だったり、女性ボーカルは子守唄でも歌うようにホワホワと宙を漂う。
そんな具合だからアルバムの進行に耳を傾けていても、機械仕掛けのモグラが太古の地球を探検に行く、みたいなすっとぼけた物語が頭を横切って行くばかりで、その正体を突き止めようと思うと最初から最後まではぐらかされているみたいな気分になってくる。
でも、いつのまにかその独特な手触りの夢想サウンドが妙に恋しくなって、CDにまた手が伸びてしまう仕組みで、う~ん、こいつら、絶対に何を企んでいると思うぞ。