”BAD BOY”by 張恵妹(A-MEI)
俺ってバカじゃね?「今頃気がついたのか」とお笑いの貴兄に。いや、すんませんなあ、毎度毎度ご迷惑かけて。
いやなにがバカってねえ、この9日に私、この場でアフリカン・ポップス古層発掘盤”アナログ・アフリカ”の中の一枚、”Afro-Beat Airways”について書いたでしょ? あれ、CD置き場の片隅でほこりを被っていた盤を見つけて「お、これは忘れないうちに論じておかねばならん」とかいいつつ慌てて文章をアップしたんだけど、後で調べてみたらちょうど一ヶ月前、盤を手に入れた直後にすでに記事にしていた盤だったのでした。今頃気がつきました。
ボケかましちゃったなあ。同じアルバム、2度紹介しちゃったよ。検索でこのページに来た人、なんと思うだろう?かっこ悪いなあ。恥かしいからどっちか消そうかと思ったんだけど、まあどうせ書いたんだからそのまま残しておきます。バカにするがいいさ、ふんっ。
とか、これがはじめてのつもりで書いてるけど、以前にもこんなこと、やっていないと言う保証はない。もうずいぶんいろんな盤を話題にして来た。記憶巣はすっかり錆び付き、自分でも何をやってしまうやら、何の自信もない。まあともあれ、気をつけていかねばなあ。
という訳で今回、台湾の人気歌手の阿妹(A-Mei)こと張恵妹が1997年に出した、彼女にとっては初期作品、2ndアルバムの”Bad Boy”であります。大丈夫、昔に手に入れたアルバムだからと言って、過去に取り上げた作品を再度論じてしまう心配はない。だってこのCDには、まだシールで封がしてあって買いはしたものの一回も聴いていないこと、丸分かりなんでね。いや、これだって、せっかく買ったCDを10年以上も忘れていたのかよ、というバカの証明になりかねないが。
A-MEIは1972年、台湾の生まれ。のど自慢番組で25人抜きをやったのち、台北のライブハウスで歌っていたところをスカウトされ、1996年12月、デビュー。 1stアルバムは連続9週売り上げチャート第一位と大成功で、ついには台湾だけで売り上げが100万枚を記録し、一気に人気歌手となる。
なお、彼女は台湾先住民のプーマ族(卑南族)の血を受け継いでいる。彼女の登場によって台湾では先住民の歌い手に注目が集まり、ちょっとしたブームになった、なんて余談もあるそうな。
このアルバムはデビュー・アルバムの成功を受けて翌年、リリースされたもので、これもまた連続売り上げNo1.を記録し、台湾のみならず中国本土や香港、シンガポールにまで、彼女の人気は広がっていった。
で、何で私がせっかく買ったこのアルバムを聴かずに放り出していたのかといえば、彼女の”台湾先住民の血を受け継ぐ歌手”って所に過度の思い入れをしてしまったから、ということになる。
先住民独自のポップスというのは台湾には確かに存在していて、独自のジャンルを形成しているのだけれど、A=MEIもそんな音楽をやっているに違いない、こリャ面白そうだぞと。
ところがそんな私の期待を裏切って、どうやら音楽のジャンル的には普通のポップスをA-MEIはやっているようだと知って、ガックリしちゃったのだ。なんだ、そうと知ってりゃ、この間見かけた2ndアルバム、買わなかったのになあ。ああ、損した。と。
さて、10数年の恩讐を越えて(?)こちらの勝手な期待も捨てて、あらためて虚心坦懐に聴いてみるA-MEIの歌声は。
うん、これがなかなか良いのだった。あやあ、これなら素直に彼女の音楽を受け入れておけばよかったなあ。
一部では”台湾のアムロ”と渾名される彼女、見かけはアイドルっぽいけれど、その地声は結構太く力強くドスが聴いていて、ある種、オトコマエな魅力さえ感ずるキップのよさがある。しゃがれ声を張り上げてシャウトなんかすると、相当にロックなヤサグレ感が漂い、これも良い。
ともかく、熱くハードなナンバーを歌い上げても、その底には結構クールでハードボイルドな闇みたいなものが潜んでいる歌声で、4曲目のようなジャジーなナンバーを歌うと、深夜の都会の裏通りに野生のケモノが迷い込み、月に浮かれてジャンプしている、そんな幻想的な風景などまで浮かんでくる。
このあたり、彼女の個性なのか部族の特性が表に出てきているのか、まだ良く分からないんだけれど、ちょっと聴いていて血が騒ぐ感じだ。
うう、こういうことなら。実はA-MEIの新作アルバムが相当に傑作であるらしい、そんな噂が伝わってきているのであって、これは”買い”だろうね、そのアルバムも。と、何をいまさら、なA-MEIファンは舌なめずりするのであった。うん、彼女は良いよ。今頃気がつくのもドンくさくてカッコ悪いけどな。