ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

アフリカの夜の翼

2011-06-09 05:06:47 | アフリカ

 ”Afro-Beat Airways: West African Shock Waves”

 あっと、この盤について、まだ何も書いていなかったっけ?こりゃいけませんなあと慌ててキイボードを前にしたんだけれど、いまさら説明するまでもない、皆さんもこのシリーズをきっと愛しておられるはずだ、そう信ずる。”アナログ・アフリカ”のシリーズ、今回は第8集、”アフロビート・エアウェイズ”である。

 1970年代の西アフリカはガーナやトーゴと言った国々の夜の大気をますます熱くやかましくかき回した、現地の名も無きバンドマンたちが地元のレコード会社に残した録音が、ビッシリとこのCD盤に染み付いている。そんな因果な記録を入手できて、今回も最高にご機嫌な気分である。
 正気の沙汰ではないアフリカ音楽の愛し方を実行する一人のドイツ人マニアにより発掘され、全世界相手に暴露される、このアフリカのローカルポップス。その実態はアフリカ風に誤読された狂乱のファンク・ミュージックだ。つまりは、本場アメリカの黒人たちより西欧風の常識からはより自由な立場で暴れ狂った者たちの騒動記である。

 聴いているとだんだん、ホーン・セクションなどの微妙なチューニングの狂いが妙にファンキーで心地良かったりするようになる。
 これはもちろん、彼らの演奏の稚拙部分を馬鹿にして言っているのではないよ。当然、本気で褒めているのでって(と、いちいち断らねばならないのが悲しい。文章表現を正面からしか読めない、想像力の乏しい人がいるんだよねえ)
 ともあれ。ファンとしてはむしろ、「正しいチューニングになんて合わせてやらねえっ」ってな心意気が嬉しくなるのだ。オザキユタカも歌ってるべ、「行儀良く真面目なんて出来やしなかった」とね。

 その、最高にご機嫌にチューニングがあやふやなホーンセクションのアンサンブルの中から唐突に、妙にスムーズなノリのジャズィーなアドリブが飛び出してくる唐突さが楽しい。こいつら、”いわゆるテクニック”は、あるのかないのか、どっちだ?
 ほんと、オモチャ箱をひっくり返したみたいな音楽なんだよなあ。
 そして、あちこちのバンドがフィーチュアしている、最高にファンキーなオルガン・ソロ。こいつはやっぱりこの世界の大看板と言えるだろう。

 豪華すぎるブックレットは今回も封入されていて、アフロ・ポップスの歴史が放つ臭気までも伝えてくる。とりあえずCDジャケの裏の写真はどうだ。精一杯着飾り、現地のバーで一杯やっているメンバーを挟んで座っているホステス風の女たち、こりゃどう見てもオカマでしょう。どういう会話がなされているんだろうなあ。
 その他、いかにもうさんくさいアフロ・ヘアーに裾広がりすぎのベルボトムのジーンズなどなど。メンバーのファッション・チェックもかかせません。ともかく、各場面のそこここに実にパワフルないい加減さが強力な芳香を放っている。

 それにしても。こんなに途方もない時間が、もう過ぎ去ってしまっているなんて。