”欣賞”by 秀蘭瑪雅
う~ん、このアルバムの中の曲を何かこの場に貼りたいんだけどねえ。You-tubeでは見つけることが出来ませんでした。残念。
もう彼女についてはこの場で2度ほど触れて来ていますが。台湾のジャズ演歌姐ちゃん、シュウラン・マヤ嬢であります。
まだ若いのに台湾の演歌、それも懐メロ中心に歌う、なおかつその歌唱スタイルは演歌風でもなんでもなく、あくまでもジャズ~R&Bっぽいフェイクをまじえながら気だるく、というよく分からない芸風の人で、分からないながらもいつの間にか私などは大ファンになっていた次第で。
何枚か手に入れてみた彼女のアルバムはことごとく”郷愁”がキイワードとなっているようでした。収められているのは、ほとんどスローものですからね。アップテンポの曲なんか、アルバム一枚に一曲、入っているかどうか。
台湾のお年寄りは彼女のアルバムを聴くたび「ああ、この歌が流行っていた頃、あんなことがあったわい、こんなことがあったわい・・・」と、喧騒の台北の町並みの向こうに続く遠い山並みかなんかに見入ってしまうんじゃないだろうか。いかにもそんな感じの、ほどよく古びた昔懐かしいメロディが並んでおります。
ただ、その台湾懐メロをマヤ嬢は、黒人音楽の影響顕著なオゥイェ~♪なフレージングで歌ってしまう、それが売り物らしいのが、私には不思議でならない。台湾のお年寄りは「なんでこのコは、こんなおかしな節をつけて歌うのかのう?」と首をかしげたりしないんだろうか。
まあ、私などは逆に、そんなクールさが感傷ベタベタの懐メロ演歌になるのを防ぎ、涼やかな風をその音楽世界に生み出している、そこを気持ちよく感じているんだが、台湾のお年寄りも同じ様な楽しみ方をしてるんですかね?ここがいまだ解けないマヤ嬢の人気の秘密なんですが。
このアルバムの聴き所はなんと言っても3曲目からですな。”淡水暮色”なる、いかにも台湾古謡らしい墨絵のような感傷漂う美しいメロディを歌い上げた後、始まる”男性苦恋”って曲、あのフランク永井氏の”夜霧の第二国道”です。台湾語の歌詞を付されたそれは、オリジナルよりさらにテンポを落として、レイジーにブルージィに台北の夜を描き出す。
続いて、実に安っぽい”エレキバンド”の轟音に導かれて始まる、橋幸夫氏の往年のリズム歌謡、”チェッチェッチェ!”であります。これが、マヤ嬢がもともと持っている”良い友達になれそうな女”風のダルい雰囲気と相まって、台北の夜の繁華街でチャラチャラ遊んでいる若い連中の血の騒ぎなどを実に生々しく伝えてくるのですな。
さらにその後に2曲、キレイなバラードが続きまして、それらもクレジットには”日本曲となっているんだが、私の知らない曲でした。
しかし、こんなにもドメスティックな感傷のど真ん中に外国の、日本の曲が4曲も入ってしまっていいんだろうか。なんて気になってきたりもする。
とかなんとか。私はどうも、くだらないことばかり気にしているのかも。黒人っぽい歌い方も、郷愁のど真ん中に日本曲が収まってしまうのも、台湾のお年寄りにしてみれば「おおそうか、言われてみればそうだったかのう」で済んでしまう話かも知れないのですよね。
なんて具合に私は、行ったこともない台湾の地をまるで自分の故郷みたいに錯覚させてくれるマヤ嬢のJazzy演歌に、今宵も聴き惚れるのでありました。