”Mikrokosmos”by Bela Bartok
ハンガリーの作曲家、ベラ・バルトーク(Bartók Béla 1881年3月25日~1945年9月26日)と言えば、クラシック畑の音楽家でありながら、自国の民俗音楽の研究に打ち込み、その影響下にユニークな作品をものしている。まあ、ワールドミュージック好きには、まことに”おいしい”クラシック関係者と言えよう。
そんなバルトークは音楽教育にも熱心だったそうで、ピアノの初級から中級あたりまでの練習曲集をも残している。それが今回の”ミクロコスモス”で、なにしろ特異な音楽性を生きたバルトーク、このような初心者向けの教則ものでも容赦はせず、濃厚に東欧の民俗音楽の影差すスコアを書き連ね、なかなかに魂消る音楽世界を現出しているのだった。
ここにその練習曲群がCD二枚にまとめられているのだが、当然ながら音数も少ない初心者用の音階練習曲においても妖しの影は出没し、音数が少ないがゆえにある種のシュールレアリズム絵画みたいな風景を想起させる曲想となっているのだった。
そんな狭間に隙を見ては(?)”ユーゴスラビア風に”とか”トランシルバニア風に”などという民俗派らしい曲想が差し挟まれるのだから、たまりません。ワールドミュージック好きの血が騒ぎます。
などと言っているうちに、レッスンが進めば女性歌手付きの”ハンガリー民謡”なんてそのままの曲が堂々と出てくるのだった。その他、バッハへの頌歌など一分もない曲なのだが、これもバルトーク節炸裂で実にスリリング。
まあ、ピアノなど弾く気もないこちらは、こんな風に勝手に面白がっていればいいのだが、これらの曲を練習曲として本当に使った人々はどんな気分だったのだろう。この作品、実際にピアノ練習曲として使われる事も多かったと聞くが。
そして終章、もうここまでくればあからさまに好きな事をやってしまえとばかりに開陳される”ブルガリアのリズムによる6つの舞曲”において、バルトークの文字通り小宇宙は爆発する。凄いなあ。
そして単なる野次馬のこちらは、本物のバルカン民謡と、そしてなぜかセロニアス・モンクのソロ・ピアノが聴きたい気分になっていたりするのだった。