ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

チェコ女性、チェロでロック

2011-05-08 00:53:11 | ヨーロッパ

 ”Piosenki do snu”by Tara Fuki

 チェコのチェロ弾き語り女性のデュオ。つまり、チェロ2台と女性ボーカル二人の掛け合い、それだけで成立している音楽なのだ。
 けれど、とてもスリリングであり、手に汗を握りつつ一気に聴いてしまう。そのスリルに身をゆだねているのが、非常な知的快楽、と感じられる。

 いかにも東欧らしいと言おうかチェコらしいと言うべきなのか、哀感漂う旋律の中に、二人の奏でる底鳴りのするチェロの響きが複雑に絡み合い、パワフルなリズムを打ち出す。とても思索的で構築的な世界がモノクロームな静けさを伴って展開されて行く。
 当方には一言も意味の分からぬ異境の言葉がロックのテンションを持って歌い上げられ、不思議な血の騒ぎを心臓に送り込んでくる。

 あくまでも知的抑制の効いた表現の中で時に、二人の女性の秘められた激情が炸裂する。その瞬間の輝きは、ギラリと暗い祝祭の感覚を闇に描いて消え去って行く。
 ヨーロッパが内に抱えた、闇の深さと豊かさを垣間見せるような、妖しい儀式を予感させる一枚だ。