ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

カビールの哀歌

2010-09-24 01:25:46 | イスラム世界

 ”Hommes Libres”by Thissas

 もう10年以上前に入手して「不思議だなあ」なんて感想を抱いたアルバム。今聴いてもやっぱり不思議なんだけどね。検索かけても何も分からず。
 とりあえず北アフリカはアルジェリアの、カビール人の音楽らしいんだけど、これまで聴いてきたものとずいぶん様子が違う。

 まずパーカッションのアンサンブルで打ち出されるリズム。ことのほか穏便と言うか丸っこい感じのアクセントがあり、しかもシロフォンが一緒に演奏されるんで、何だかお洒落な印象もある。
 そこにストリングスやブラスが被り、どういう意味なのか子供たちのコーラスまで入ってくると、砂漠のなかに造成されたお洒落な庭園を見る感じになってくるのですな。
 そこにはいつものマグレブ音楽を味わう際の、砂漠の砂が口中に紛れ込むみたいな苦さみたいな感じではなく、むしろ甘酸っぱい”哀歌”のニュアンスが漂う。

 メロディラインが、いわゆるイスラム色があまり強くなく、むしろ日本民謡にも通ずるような音階が歌われており、イスラムっぽい神秘や甘美の色よりも、より感傷的な哀しげな表情が表に出て来ているわけで。
 行き交う人々がうつむきがちに、はじめて聴く筈なのになぜか不思議に聞き覚えのある、そんな嘆きの歌を口ずさみ通り過ぎる・・・不思議な秘密の花園に迷い込んでしまった気分なのでした。

 どうもカビール人の音楽というと、毎度愛好しているロボ声砂漠のファンク怒涛のノリ、みたいなものやダフマーン・エル・ハラシみたいな硬派の歌手を連想してしまうけれど、まだまだ奥行きのある世界なのかもなあと、まあ当たり前の事を再認識した次第。
 こんな音楽こそ試聴を貼りたいんだけれど、You-tubeには一つもありませんでした。残念だなあ。それにしても、なんだろ、この音楽。