”Spezie Live”by INDACO
イタリアのプログレッシヴ・ロックのバンドの中で、もっともイタリアらしい香気に溢れているといわれる、歴史ある大御所バンド”バンコ”のギタリストがバンドの別働隊(?)として始めたユニットの確か3枚目のアルバムである。
ライブとなっているが、バンドのメンバーがテクニックあり過ぎで演奏に破綻部分がまったく無いゆえ、スタジオ盤と何も違った印象がない。これでは立派な演奏が出来ることがめでたいのかそうでもないのか、よく分からなくなってくる。と言うのもおかしな話だが。
演奏は、打ち出されるタイトなリズムに乗り、ブズーキのような伝統楽器とシンセサイザーの響きが交錯する、過去からの伝承と未来の混交する独自の世界を提示してみせる。古い地中海のリズムに揺られながら、バイオリンや、アラブの民族楽器サントゥールの音を模したキーボードが、神秘なオリエントのメロディを辿ってみせる。錆びたボーカルがメリスマの効いた海の神への祈りを詠い上げる。
ある外国の通販サイトでこのバンドの事を”プログレ・フォーク”なるジャンル訳をしていて笑ってしまったのだが、”民族プログレ”と言う言い方が、確かに妥当かもしれない。
古い南イタリアの民謡のメロディなど飛び出しつつ、キビキビと演奏は続く。イスラミックと言うのか東地中海各地の伝承音楽の面影が飛び交い、全体の印象は”航海”である。古代の貿易船に乗って地中海を行き来した船乗りたちの物語。沈みかけた夕日を目指して波を切って行く巨大な帆船の壮大な旅の面影。そんなものが音の向こうに浮かび上がる。潮の香漂う幻想が
などと、遠い彼方の時間と空間のロマンに酔い痴れつつ、暑過ぎ、長過ぎる夏に疲れた体を、エアコンの前にへたり込ませている我が身、というのもなかなかに情けないのであるが。
(このライブの音源はyou-tubeにはないみたいなので、ちょっと時代は違うが最近のものなど貼ります)