ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

街の灯を歌う(ナポリの女神再訪・2)

2010-09-18 01:06:22 | ヨーロッパ
 ”Teresa De Sio”

 さて、テレーザの初期作品群というかユニバーサル・レーベル時代を振り返る企画、本日は1982年発表のセカンドアルバム。彼女の名が記されているだけでタイトルはなし。こういうアルバムって話題にする時面倒なんだよな。

 まあそれはそれとして。ナポリ民謡界で活躍してきた彼女が”ポップス歌手”として評価を受け人気を得るきっかけとなったのがこの盤、なんて話を聞いたことがある。
 聴いてみればなるほど、よく出来たポップス作でお洒落なサウンド、各曲のメロディも親しみやすく美しいものばかり。親指ピアノの活躍するトロピカル調なんかずいぶん楽しいアレンジで、へえ、こんなアルバムも出していたのかと驚くばかり。
 テレーザの声も何だかいつもより若々しく響いている。このままアイドル歌手として通用するようにも思えるが、独特のコブシの廻りようが民謡世界から来た妖しの歌い手という出自を隠しようも無し。

 ああ、これなら皆に好かれる盤となったかも知れないと納得しかけるのだが、このアルバム、自作の曲をナポリ方言で歌ったもの、なんて話もあり、それはどうだろうか。こちらは正調イタリア語とナポリ方言の区別なんか付かないのだが、ナポリ以外の土地で売れるのに、それは障害にならなかったのだろうか。
 ともあれ。南イタリアの明るい太陽の光を十分に吸ったお洒落なポップス作。でもどこかに土俗民謡派のディープな血の騒ぎもそこはかとなく漂う、好アルバムといえよう。

 もっともリアルタイム、プログレやトラッドにガチガチに入れ込んでいた当時の自分がこれを聴いたら・・・この分かりやすさが逆に胡散臭く感じられ、反発していたかも知れないなあ。いや、めんどくさいものであります、人間の自我。あ、うんそう、このアルバム、聞き逃していたんだよね。