ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

インダストリアルロック・フロム・キンシャサ

2010-09-06 03:11:54 | アフリカ

 ”Assume Crash Position”by Konono No 1

 あのキンシャサの騒音王、コノノNo1の新譜である。彼らの「アフリカからのダイナマイトが150トン」とでも仇名したいような禍々しくも騒々しくも美しいデビューアルバムがリリースされた時、私は「こんなバンドを待っていた!」と狂喜して、私版年間ベストアルバムの第1位に選出したりもしたものだった。なんかあれからずいぶん長い時が流れたように思える。
 さて今回は。私的見解によると、ということになるのだが、より彼らの音に”テクノ度”が増した気がする。まあ、はじめから”人力テクノ”なんていわれていた連中なのであるが、その要素、より濃厚になった。

 まず、バンドの主役である親指ピアノの音色が、よりクリアーになった。初登場時の、歪みまくりザラザラと”障り”の音を振りまきつつ鳴り響いていた、あの特徴ある親指ピアノの音とはずいぶん違った印象となり、ピンポンホンコンと、カラーボールが跳ね回るような陽気なイメージを振りまいている。
 こいつがまず、今回のアルバムの”テクノっぽさ”を演出する。全体の音作りも大分風通しが良くなり、各楽器同士のフォーメーション・プレーも明確に見通せる事となり、そこで結構クールな彼らの音構造に、「こりゃテクノだなあ」と舌を巻く、という次第だ。

 親指ピアノがピキポコと跳ね回り、同じフレーズ、あるいはそのバリエーションの執拗な繰り返しを奏でて、次第にリズムは熱くなって行く。アフリカ音楽では定番の進行だが、バックで鳴っているギターはお洒落な音色で結構クールなフレーズを奏でていたりする。たびたび登場する親指ピアノとパーカッション群の絡み合いなども、熱狂的なようでいて実は冷徹な構成美の支配する世界だ。
 大作、”コノノ・ワワワ”の後半、各楽器が延々とフリーキーなフレーズで鳴き交し合う部分など、事情を知らない奴にそこだけ聴かせたらテクノバンドによるシンセの演奏と普通に信ずるんじゃないのか。まさか工事現場から拾ってきた廃材で作った楽器の集合体とは気が付くめえ。

 これは彼らの心変わりというより、アフリカ音楽が元々そのような要素を秘めていて、そいつが新しいアルバム作りの課程で表に出て来た、と考えるべきだろう。ふとスライの曲に”アフリカが君に語りかける”なんてのがあったよなあ、なんて関係あるようなないような事を思ってみたりして。なんかゾクゾクするなあ。こいつはいいよ。
 なにしろさあ、この自動車部品の林立する表ジャケや中ジャケの写真、考えてみれば相当にインダストリアルな代物だ。こうなったらヨーロピアン・ロック好きな連中に、むしろ薦めたく思う。いや、ほんとに。