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「ブラック・スワン」は...

2011-07-18 03:25:44 | その他
あちこちで嫌われているようなので、一応、口添えしときますかね(笑)。
私もすごく好きな映画というわけじゃないですが、そんなにヒドイ映画でもないと思うんで。
まあ、どっちかと言うと『映画好きのための映画』なのかなという気はしますが...

この映画、たいてい「スリラー」とか「ホラー」とかに分類されてることが多いようですが(映像的にね...)、個人的には「サスペンス」だと思ってます。
状況に追い詰められた主人公が精神のバランスを崩して破滅する、という筋書きは、「欲望という名の電車」他、往年の名作で繰り返し取り上げられてきた、ある意味『王道』モノですね。
(「赤い靴」もそうかな)
たいていは徐々に狂っていく過程を描くのが普通ですが、この作品では配役をきっかけに一気に偏執症状に陥る(たぶんそれまで潜在していた問題が顕在化した?)ので、「ホラー」っぽい感じになっちゃってるんじゃないでしょうか。
あと、(点線部内ネタバレ)
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問題(衝撃)シーンのあれこれは、すべて主人公の妄想なんですが、これが最初分かりにくい。
現実と妄想が切れ目無く繋がっていて、いつの間にか妄想の世界に入っていく。
主人公にとってはそれが『現実』なので、当然ながら、そう見えるように作ってあるわけで、最初から「これは妄想だ」と分かってしまったら映画としては駄作なわけですが、その辺の不明瞭さが『気持ち悪さ』のモトなのかなぁ。
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精神科的問題と妄想(幻覚)とは医学的にはイコールではないですが、同時に発症する(どちらかがどちらかの誘因になる?)こともありますし、誰しも漠然と身近に感じるところがあるので、こういう話は映画やドラマになりやすいんでしょうね。
『こうなりたい・こうあるべき(と自分が思い込んでいる)自分像』と、『現実の自分像(と自分が思っているもの)』のギャップ、あるいは『他人が期待する自分像』を自分の考えと混同してしまったりとか、逆にそれに反発することでかえって深層で強く意識してしまうといった、ありがちな精神的ストレスから惹起される問題(の中でも、より敏感なケース)を、妄想症状という映像化しやすいシチュエーションを介して(←この点に関しては、ちょっと台本が安易?)、映画的に描いてみせたものとも言えるかと思います。

分析的なクドさとか、『オチ』が無い(?)ところは、私にはドイツ文学を髣髴とさせるんですが(笑)
いわゆるハリウッド的な、商業ベースの作品ではない感じですよね。
バレエシーンについては、重要なところはABTのダンサーが代役で踊ってるようですので、そこでガッカリ(´Д`|||) (話が全部ブチこわし)てことはないんじゃないでしょうか。
(この”吹き替え”に関しては、代役のダンサーとの間でモメたらしいですね。
振付のミルピエは主演のポートマンの肩を持ったそうですが、ポートマンはまさに『振付家と寝た』クチだからな...(笑)
踊りの部分の代役を認めたところで、ポートマンの女優としての価値が下がるとは思わないんですが)

ちなみに、ポジションを得るために有力者と寝たの寝ないのという話は、クラシック界でも別に珍しい話じゃない(事実かどうかはさておき)ですけどね。
そういう中傷を「些細な雑音」と切り捨てられる強さ(あるいはおおらかさ)があるかどうかも、上を目指す人には大事なコトなんでしょうね。
実際問題、現実には、繊細すぎる人は職位的意味でのプリマにはなれないんじゃないかな。
あと、たいていの業界でそうかもしれませんが、クラシック界でそこそこ成功する上で、『才能』はあまり大きなパーセンテージではない(重要な一部分ではあるにしても)気がします。
自分の努力とか、周囲の協力とか、運とか、色々な条件が揃って、最後はやっぱり『健康』。(仕事に穴を開けたら話にならん 笑)
この映画は、熾烈で無慈悲な競争世界で精神を蝕まれるプリマ達を描きつつ、「自分の力だけで成功できる」という思い違いの悲劇をも見せてくれているのかもしれません。

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