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「プリンセスチュチュ」ファンページ

Frühlingsstimmen 2

2013-07-03 01:21:01 | 二次小咄
「春の声」あひるちゃんヴァージョンです。
季節ハズレです。
長いです。
スミマセン (^-^;)

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ゆらゆら、きらきら、
2匹の蝶々が
ワルツを踊ってる。

見て、見て!
青い空にピンクの雪、なんだか不思議で・・・幸せな感じ。
いい匂いのするそよ風が吹いて・・・

そういえばさ、公園で蝶々がいっぱい飛んでたこと、あったよね。
あの時何か言いかけてなかった?
なんだっけ、えっと・・・蝶々たちが踊るのは・・・

あ、ねぇ、ほら、楽しそうな音楽が聞こえるよ。
くるくるとピルエットしながら音が舞い上がってくみたい。
明るい光が降り注いで、小さな白い蝶々が・・・

・・・あれ?
違う。あたしだ・・・!
あたし・・・パ・ド・ドゥを踊ってる・・・

ひらひら揺れる衣装は白く輝いて、まるでチュチュみたい。
でも、優雅にふわふわと宙に舞ってるのは、チュチュじゃなくて
・・・女の子のあたし。

え、えええ?
いつのまにあたし、こんなに上手く踊れるようになったんだろ?
てゆーか、そうじゃなくて、なんであたし、女の子の『あひる』になってるの?

あの『お話』はふぁきあが終わらせてくれて、あたしはただのアヒルに戻ったはずなのに。
もしかしてまだお話は続いてるの?
でもでも、今はそんな変な感じはしないし、空だってこんなに晴れてるし・・・

うーん、よく分かんないけど・・・あのお話じゃないなら、『本当』ってことなのかな。
あー、あたし、ほんとのほんとに、女の子になれたんだ・・・
そんなこと、願っちゃいけないって思ってたから、考えてもみなかったけど。

嬉しいなぁ。
ずっとこんなふうに、・・・と踊りたかったんだ、って、今なら分かる。
すっごく体が軽くて・・・なにより心が軽い。

まるで、自分でも気づかなかった枷がとれたみたいに。
チュチュみたいにきれいに踊れて―でも、操られて踊ってた時より、ずっと自由に。
鳥のあたしよりも―前に女の子だった時のあたしよりも、もっと・・・

あ、そうか。きっと王子様と一緒だからだね。
この人なら信頼できる。
あなたになら、あたしはあたしの運命を託して、せいいっぱい踊り切ることができるから。

しっかりと高くリフトされて空中を滑りながら、アン・オーに上げた手を開くと、
そこから雪―じゃなくて、ピンクの、たっくさんの花びらが生まれて、
あたしたちの周りでくるくるワルツを踊りながら広がってく。

嬉しくて、幸せで。
踊ってると、その気持ちが花になってあふれ出してくるみたい。
ずっとずっと、こうして踊ってたい・・・

どうしてかな?幸せなのに、胸がきゅっと軋む。
軽やかに心くすぐるような音楽のせい?
あたしたちを包んで揺れる淡い輝きのせい?それとも・・・

王子様がさっと動いてあたしを抱え、身を乗り出すように体を傾ける。
んん?この動き、なんだか懐かしい・・・?
って、考えかけたとたん、王子様と顔を突き合わせて見つめあった。

・・・ふぁきあ?
ふぁきあだ。
ふぁきあ・・・!

えっ、あれれ?なんだか急に胸がドキドキして・・・
体が熱くなって、じっとしてられないよな・・・
ふわあっと何かがこみ上げて、体が自然に踊りだすよな・・・

なんで?
だって、いつだってふぁきあはあたしと踊ってくれるのに。
いつもとおんなじだよね?

あたしを支えてくるくる回らせてくれたり、空に浮かぶみたいにリフトしてくれたり。
なめらかだけど力強い動きで、ふぁきあがあたしに向かって腕を差し伸べる。
あたしは、翼を・・・

ああ、そっか。
これ、夢なんだね。
だから、みんないるんだ。

みゅうととるうちゃんはお互いに腕を絡めるように優しく寄り添って。
猫先生はぴょんぴょん飛び跳ね、ぴけは腰に手を当てて胸を張り、りりえは胸の前で小さくひらひら手を振って。
うずらちゃんはエデルさんの足元で元気に太鼓を叩いて。

みんなにこにこ笑ってる。
みんな喜んでくれてるんだ。
よかったぁ。

ねぇ、ふぁきあ。
あたしたち、みんなの役に立ててよかったね。
あたしたち・・・頑張ってよかったね。

今はあたし達のために踊ろう?
何かを得るためでなく、ただ踊りたいから。
心の底から、いっぱいにあふれ出す、この気持ちのままに。

胸の奥深くで行き場を失ってた想いが
やわらかな春の声にほころび、優しいそよ風にのって舞い上がってく。
今、このときだけの、物語の時間に。

わかってる。
これは束の間の季節の、束の間の夢。
どんなに願っても、儚く消えてしまうもの。

でも、蝶々たちが一瞬の春に命を輝かせるみたいに、
離れてはまた一つになって踊りながら、
きっといつまでも輝く物語を紡ごう。

うん、そうだよ。
あたし、あなたとパ・ド・ドゥを踊ってる。
あなたの笑顔が・・・



「おい、起きろ」
「ぐ・・・くぁ?」
「いつまで寝ぼけてる。帰るぞ。日が傾くと寒くなる」
「くぁ!」

あああ・・・いつものふぁきあだ。

《せっかくステキな夢みてたのに・・・》
「素敵な夢?・・・腹減ったのか」
《もう!食べ物の夢じゃないよ!そうじゃなくって・・・あれ?なんだっけ?》
「知らねーよ。俺に聞くな」

《おっかしいなあ、確かになんかすごーくイイ夢だった気がするんだけど・・・》
「・・・そうか、良かったな。ほら、こいよ」
《あ、うん。わあい、ふぁきあの腕の中、あったかい♡》

「体が冷えたのか?まったくお前は、あんな所で寝るからだぞ。ほら、頭に花びらがついて・・・」
《あっ、ふぁきあ、それ捨てないで!あたしにちょーだい》
「はあ?こんなもん、どうするんだ?」

《わかんないけど、なんとなく。見てるとなんか幸せな気分になれるし、いーじゃない》
「まあいいけどな。じゃあ、帰ったら押し花にしてやるよ」
《わーい、ありがと、ふぁきあ!今日は優しいね》

「今日、は、だと?」
《もー、そんな顔しないで。眉間のシワで、よけいコワい人って思われちゃうよ》
「そんなことは・・・」

《どうでもよくないからね。ふぁきあは誤解されやすいタイプなんだから気をつけなきゃ。それと、女の子にはもっと優しくしないとダメだよ》
「お前に言われるまでもない。・・・というか・・・いや・・・」
《なに?》

「覚えてて、言ってるのか?」
《なにを?》
「・・・なんでもない」

《なんでもなくないでしょ。ヘンだよ、ふぁきあ。どうしたの?何を言おうとしたの?》
「・・・みゅうとと俺とは違う」
《?何言ってるの?当たり前でしょ》

「もういい。ともかく、俺のことでよけいな世話を焼くな」
《世話焼きなのはそっちじゃない・・・》

じろりとふぁきあが陰りのある瞳であたしを見下ろし、あたしは羽毛に首をすくめた。
しばらくして再び見上げると、ふぁきあは何か考えに沈んでるみたいな顔をしてた。

《あのね、ふぁきあ?》
「なんだ?」

どうしてか、言おうと思ってたことは口から出てこなくて、替わりに別のことを言ってた。

《・・・あの花はまた咲くんだよね?来年?》
「ああ」
《そしたらまたピクニックに来ようね?》
「・・・そうだな」

ふぁきあは微笑んだけど、どこか強張った表情に見えて、
あたしは何か元気づけてあげたいのにあげられなくて、
もどかしい気持ちになる。

あたし、あなたの役に立てたらいいのに。
ふぁきあにはきっと、バーカ、って言われちゃうよね。
でも、あたしは『ほんと』に、ふぁきあのこと、大好きだよ。
次の春も、その次の春も・・・きっとね。

『金冠町』はこれから桜の季節

2013-04-07 03:41:33 | 二次小咄
ベタですが (^^;)、アシュトンの「春の声」(ヨハン・シュトラウスII)を見てて、「これはあひるちゃんでしょう!」と思ったので。
ふぁきあ君には激しく似合ってないんですけどね...
捏造設定:本編その後話です。
なお、振付は「作者の都合」により大幅に改定されております(笑)
(というか、私が設定してる時代にはまだこのバレエは作られてない...)

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Frühlingsstimmen


・・・眩い光の中、花びらが舞い落ちる。・・・



あひるが踊っている。
すらりと伸びた手の先から、無数の花びらを振りまきながら。
あひるの指先と同じ、仄かな淡紅色の小片が
はらはらと、しなやかな腕の周囲を舞い、細い躰に纏わる白い薄衣と戯れ、そして・・・
あひるをリフトしている彼の顔に降り懸かる。

次の瞬間あひるは舞い降り、
ふわりふわりと、ポワントで地面に触れるか触れないかのジュテで、空中を跳ね飛んで行く。
無論、それは、彼が支えているからこそなのだが、なぜかその彼にも、まったく重さが感じられない。
それを不思議だとは、どういうわけか、思わないが、わけもなく胸がざわめく。
まるで彼の助けなど無くても、あひる自身が、重力に縛られぬ者として生まれた存在のようで・・・

さっとあひるを引き降ろして、腕の中に仰向かせ―いつかもこんなことがあった―稚い丸顔を覗き込むと、
柔らかな春の空色がぱっときらめき・・・真っ直ぐに、彼に笑いかける。
その笑顔から伝わる幸福感に―それとも己の胸に湧き上がった感情か?―不意を衝かれ、
(彼には決してありえないことに)次の動きを忘れて立ち尽したとたん、
抱いていたはずの温もりが、ふっと消えた。

ほっそりした背を見せ、アッサンブレ・ボレで跳んで行くあひるの周りに、鮮やかな春の野辺が広がる。
薄雲越しの太陽のためらいがちな微笑みはかえってまぶしく、
軽やかにピルエットするあひるの姿を、幻のように霞ませる。
心地良い東風の緩やかな吐息と、ほんのりと香る花の媚薬に
幻惑された心地で伸ばした彼の手は、小鳥のように素早いシソンヌ・フェルメでかわされた。

・・・あひるはこれほどバレエが上手かったか?
透ける衣装の裾を翻して春の精さながら跳ね回るあひるを、むきになって追いかけ、
いくぶん乱暴に手首を捉える。
湧き上がる原始的な悦びに戸惑いを覚えながらも、伸ばした両腕で後ろから抱きすくめるように持ち上げ、
くるりと回って、二人を包む軽快なしらべに身を委ねる。
そうして二人はなめらかに音楽と溶け合い、欲求も迷いも、すべてが解け、一つになり・・・

完璧な左右対称でのアティテュードから、重なってアラベスク、
会話するようにお互いの動きを追いかけたかと思うと、
高さもタイミングもぴたりと一致して、回り、跳ぶ。
まるで一つの有機体のように、お互いの息さえ共有している。
揃ってパ・ド・ヴァルスを踏む二人の足元で、降り積もった花びらが舞い上がる・・・

誰かと踊っていて、こんなにまで心浮き立ったことが・・・歓びに満たされたたことがあったか?
顔に笑みを浮かべて踊るのが、これほど簡単だと思えたことが?
春の声が、芽吹き始めた希望を謳い、ときめく心が真実を突き付ける。
甘い苦しさが胸にこみ上げ、踊らずにはいられない。
・・・踊らずにはいられないからこそ、こんなふうに踊れるのだと。

小さな手がそっと彼の肩に添えられ、
その場所に、ありえないほどの熱を感じる。
つかず離れずで踊っていたあひるとの距離が次第に縮まり、
踊っているせいにはできないほどに鼓動が早くなり、

二人の上に、花びらと、光が、降り注ぐ・・・



あひるは、かわらず、彼の傍らにいた。
黄色くふわふわした羽毛に包まれた小さな体を丸め、
「ピンクの雪!」と評した花びらの山に、半分埋もれるように顔を沈めて。
どんな夢を見ているのかは知る由も無かったが、
その夢の『王子』が自分でないことだけは、痛いほど分かっていた。

乗馬ネタ?その2

2011-09-05 21:58:54 | 二次小咄
「...一体全体、君達は何をやっているんだ?」

彼女は奇想天外な姿勢のまま、人間とは思えない角度でくるりと首を回した。

「あ、あおとあ!今ふぁきあに乗馬を教えてもらってるんだよ」
「見ての通りだ。それはともかく、普通、日常会話で『一体全体』なんて言うか?」

手綱を掴んだまま腕組みして立っている男が、うっとうしげな視線を投げてきた。が、もちろん、そんなことでひるむような僕ではない。

「大きなお世話だ。ところで普通と言えば、僕はそれほど乗馬に詳しいというわけではないが、普通、乗馬と言うのは、鞍の上に座ってやるものじゃないのか?」
「普通はそうだな」

ふぁきあがほらみろと言いたげな表情をあひる君に向ける。その彼女は、手足が絡まったような奇妙な格好で鞍にぶら下がって、上気した頬を膨らませた。

「だあってぇ~。ふぁきあが教えてくれた通りにやってるはずなのに、どうしてもこんがらがっちゃうんだよ」
「お前はバレエをやってるくせに、バランスが悪過ぎる。鞍に乗るくらい、誰だってできるぞ」

というか、普通の人間にはこんな体勢になることは不可能だろう。

「そんなこと言ったってさ、ふぁきあは注文が多いんだよ。右足を上げろーとか、左足を伸ばせーとか、上体を起こせーとか、いっぺんに言われると頭がこんがらがっちゃう」
「体をトータルにコントロールするのはバレエの基本だろ」
「そりゃそうだけど」
「...もし君達がサーカスの練習をするつもりなのでなければ...」

こほんと咳払いして注意を引く。

「ふぁきあ、とりあえず君が動きをサポートしてあひる君を鞍に乗せてやれば、やり方がわかるんじゃないのか?」
「そうだよね!」
「昨日まではそうしてた」

...なるほど、今日が練習初日ではないわけだ。

「そうそう、知ってるあおとあ?馬って長い間乗ってると、お尻とか太腿の内側とか膝とかが痛くなってくるんだよ」
「話をそらすな。それにお前のは明らかに柔軟性不足だ。とにかくまずは一人で鞍に乗れるようになれ。一度降りて、最初からやり直しだ」
「あー、うん、そうしたいんだけど、すっかり絡まっちゃってて、ぐ、わわわわ...!」
「あひる!」

...

「いったぁ...あっ、ごめん、ふぁきあ!だいじょうぶ?」
「...なわけないだろ。さっさと俺の上からどけ」
「あ、うん」

それ以上コメントする気にもなれなかったので、僕は首を振りつつ立ち去った。

乗馬ネタ?

2011-08-24 00:42:00 | 二次小咄
捏造『その後』設定、ヒトあひる です。

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「ふぁきあ!って、馬乗れたよね?!」

強い光が瞼の裏に射し、うたたねから覚まされた。

「...なんだ、いきなり」
「ねぇふぁきあ、学校の中庭で頭に本乗っけて寝てたら危ないよ。ヤギ子先生が転がってくるかもしれないし、ふぇみおの牛に踏まれちゃうかもしれないし...」
「俺はそんなに鈍くない。いいから、それ返せ」
「あっ、もう。ふぁきあってば、あたしには色々うるさく言うくせに、自分は...」

俺が取り返した本に手を伸ばして無防備に寄りかかってくる小さな体を、片手で押し返す。

「それで?馬がどうしたって?」
「あっ、そうそう、ぴけとりりえがね、今度一緒にファームステイに行こうって。田舎の農家に泊まって、畑や家畜の世話をしたりするんだよ。で、馬に乗って野原を歩けたりもするんだって。ほら、あたし、馬に乗ったことないじゃない?だから、乗り方を教えておいてもらった方がいいかな、って。あと、収穫した果物でジャムを作ったり、搾ったミルクでチーズを作ったり...」
「やめとけ」
「えっ?なんで?あ、もしかしてあたしが一人で行っちゃうと寂しいと思ってる?」
「違う!そうじゃなくて...とにかく、馬はダメだ。落ちて骨でも折ったらどうする。お前、卵とはいえ、バレリーナだろう」
「だって~、ふぁきあは乗ってたじゃん」
「一緒にするな。お前、そそっかしいんだからな」
「またそうやって自分だけ危ないことする...」

のぞき込んでくる顔を避けるように立ち上がり、本で膝を払う。

「俺は危ないことをしてるわけじゃない。今はな。こういうことには、技術とか訓練以前に、向き不向きってものがあるんだ。お前は乗馬には向かない。馬は賢いし、乗り手の人を見る。精神的にも馬を支配して従わせられる人間でないと、乗りこなすことはできない」
「馬と心で話すってこと?」
「...ちょっと違うが、まあ、それに近いか」
「じゃあ、たぶんできるよ。あたしにも」
「あのな、そういうことじゃなく...」
「ねえふぁきあ、バレエだって本当はあたしには向いてないかもしれない。でもあたしは、そんな理由で踊ることをやめたりしないよ。そうでしょ?」
「それとこれとは違...」

きらきら輝く大きな瞳を見てはいけなかった。なのに、つい見てしまった。

「...う...」
「大丈夫。本当にムリだって思ったらやめるから。あたしだってケガするのイヤだもん。でも、努力してみる前にあきらめてしまうのもイヤだから」
「...それは分かるが...」
「それでさ、いつかふぁきあと馬を並べて走れるようになったら素敵だと思わない?一緒にパ・ド・ドゥを踊るみたいに。あっ、そうだ、そんなに心配してくれるんだったら、ずっとそばにいて教えてくれればいいじゃない?こっちで練習する時だけじゃなくて、あっちで乗る時も」

頭の中で広がった妄想に気を取られて、うっかりうなずいていた。

「...しょうがないな」
「よかった!じゃあふぁきあも一緒に行くって、ぴけとりりえに言って来る!」
「おい、ちょっと待て。俺はお前達と一緒に行くなんて言ってない。第一、誘われたのはお前だろう。俺はお前が馬に乗る時だけ様子を見に...」
「だいじょーぶ、最初っからふぁきあも誘うってことになってたから」
「...は?」
「うん。『ふぁきあも一緒でいい?』って聞いたら、ぴけは『あんたはきっとそう言うだろうと思ってたよ』って。りりえは『楽しみねえ~v』って」

何を楽しみにされているのか知らないが、どうせロクなことじゃない。
だが、身震いして引きとめようとした時には、パタパタと走って行ったあひるが、植木の陰で手ぐすね引いて待ち構えていた二人に捕まるのが見えた。



Fruehlingslied

2011-02-11 23:19:16 | 二次小咄
数々の御都合設定には、どうぞお目こぼし下さいませ(笑)↓

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あおとあに感謝する日がこようとは夢にも思わなかった。

「おかえりー、ふぁきあ、雪降ってきちゃったね、寒かったでしょ?ほら、上着脱いで、早くこっちおいでよ。そういえばさっきカロンさんが来てね...」
「あひる...」
「うん?ちょっと待ってて、今、お茶淹れるお湯を沸かすから」
「後でいい。それよりこれ」
「なに?わぁ!バラの花束!!ありがとう、ふぁきあ!!」
「実は偶然、花屋の前を...」
「何言ってるの、バレンタインデーのプレゼントでしょ。ぴけとりりえから聞いたから知ってるよ。そういえばふぁきあ、去年も同じこと言って、バラを買ってきてくれたよね、あたし鳥だったけど。あれ?ってことはふぁきあ、あたしが鳥の頃から...」
「別に深い意味はねーよ。くだらねー事考えるな、バーカ(くそ、あいつら余計なことしやがって...)」
「えへへー。実はかなり期待してたんだ。だって、人間になって初めてのバレンタインデーだし、ふぁきあって意外と細かい事にこだわるトコあるから。あ、別に意外じゃないか...」

その通り。ただし今日はそのこだわりが災いして練習が長引いてしまい、完全に出遅れて、花屋に行った時にはバラは売り切れていた。他の花で誤魔化せるだろうかと悩んでいた時、どこからともなく現れたあおとあに―本当にこいつは、図書の者かと思うくらい、どこにでもいる―バラの花束を押し付けられた。

「何だ、これは?」
「君の行動パターンなぞ見切っているよ、ふぁきあ君。あひる君に渡したまえ。これで貸し一つだ」

何か腑に落ちないものは感じたが、背に腹は替えられなかった。

「うーん、そう思って嗅ぐと、ロマンチックな匂い...ふぁきあがあたしのこと好き、ってちゃんと分かってるけど、やっぱりこういうのって嬉しいな。あたしも大好き、ふぁきあv」
「お、おい、俺は別にそういうつもりじゃ...」
「いいの、いいの、分かってるって。それもぴけとりりえから聞いたんだ。ちゃんとお礼しなきゃいけないんだよね」
「お、おおお礼?」
「いーから、もう黙って」

奴らが完全に余計なことをしてくれたのは確かだったが、せっかくの『お礼』を断る理由は無かった。

Windspiel(後編)

2010-06-17 23:39:01 | 二次小咄
「わーい、ありがとう!なになに?キモノ?ニンジャ?」
「お前ニンジャを何だと...いいから開けてみろ」
「うん...わー!キレイ!!」
「壊れてなかったか。良かった」
「これ、なあに?ガラスのベル?あっ、ベルにアヒルの絵が描いてある!下に紙がぶら下がってるよ。何か文字が書いてある...これを持って鳴らすのかな?」
「貸してみろ」
「はい。えっ、ふぁきあ、どこ行くの?...窓際に飾るの?」
「...どうだ?」
「あ、風で揺れて音がする...へぇ、自動的に鳴るんだ...」
「『風鈴』っていうらしい」
「ふうん。風の音楽だね」
「風の音楽、か。そうだな」
「これを聴けたのもふぁきあのおかげだね!ありがと!」
「おおげさなヤツだな。みやげ物を買ってきたくらいで」
「そうじゃなくて。ふぁきあがあの物語を終わらせてくれたから、あたし達は外の世界に出ることができて、外の世界にはこんな珍しいものやステキなものがいっぱいある、って知ることができて良かった、ってこと」
「良かった...か...」
「なに?」
「いや...ああ、そうだな、だが俺だけの力じゃない。それに壁を壊したのは、お前と、みゅうとだ。お前達が気づき、決断したから、壁は壊れた」
「でもそれだってふぁきあがいてくれたおかげだよ」
「みんな、だな。俺やお前だけじゃなく、あの時あの場にいて俺達と関わっていたみんな、一つ一つの関わり、一つ一つの出来事が重なって、物語を終わらせることができた。だからあれは、一種の奇跡みたいなものだったんだ。...そう思うようになった」
「うん、そう!あたしもそう思ってた!...うれしいな、ふぁきあと同じコト考えてたなんて」
「そ、そうか」
「うん。ねえ、この風鈴、みゅうとやるうちゃん達にも見せてあげたいなぁ。あっちの世界にも有ると思う?」
「さあ」
「もう、ふぁきあってば、素っ気ないんだから」
「あっちにはあっちで、俺達が見たことのないものがたくさん有るさ。さあ、気が済んだらしまっとけよ。鳥達が音で驚いて来なくなるぞ」
「あ、それは大丈夫。ちゃんと話しとくから」
「そうなのか?」
「うん、じゃあ、デザート食べよ!揚げリンゴがあるんでしょ?帰ってきた時、匂いがしてたよ!」
「よく食うな、お前...」

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ごちそうさまでした(笑)

Spargel シュパーゲル(ホワイトアスパラガス)の季節はもうそろそろ終わりですが...
「ラビオリ」と言ってるのはMaultaschen マウルタッシェンのことです。普通は中身は挽き肉ですが、あひるちゃん用にチーズにしてみました。
揚げリンゴは素揚げじゃなく、フリッターみたいな皮がついてるのです。

日本熱帯説は実話(笑)
まあ、ヨーロッパに比べれば、緯度が低いですからね...

Windspiel(前編)

2010-06-16 23:26:05 | 二次小咄
「ブログで小咄」シリーズ?(笑)

設定:物語後ふぁきあ&ヒトあひる、二人暮らし(笑)

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「あっ、ふぁきあ!お帰りなさい!帰ってたんだね!」
「遅かったな。まあ、どうせ今日も居残りだろうとは思ってたが」
「うう...ほんとは早く帰ってきて、駅までお迎えに行きたかったんだけど...あ、晩御飯もうできてるv」
「荷物置いて、座れよ。飯にしよう。腹が減った」
「はーい。ふぁきあの作ったご飯、久しぶり!うれしいな」
「カロンのと変わらないだろ」
「それはそうだけど...あ、そうそう、カロンさんはお料理手伝わせてくれたよ!ふぁきあにも今度作ってあげるね。ジャガイモとタマネギのスープとか、茹でアスパラガスのオランダ風ソースかけとか...」
「遠慮しとく」
「もー、あたしにだってできるのに。カロンさんだって、『ふぁきあが料理を始めた頃より上手だよ』って言ってくれたよ」
「その頃俺はまだ小さかった。いいから食え」
「うん、チーズのラビオリ好きv...でも、この、上に乗っかってる黒いの何?」
「食ってみろ」
「...美味しい!これ何?」
「Nori」
「ノリ?」
「ああ。海草を乾燥させたものらしい。他の皆は食わなかったが、試しに食ってみたら旨かったから、お前にも食べさせてやろうと思って...」
「持って帰ってきてくれたの?ありがと、ふぁきあ!そういえば日本公演どうだった?」
「まあ、成功、かな。拍手も多かったし、カーテンコールがなかなか終わらなくて、俺も何度も出た。もっとも日本はいつでもそうらしいから、批評家の評価が出てみないと何とも言えないが」
「いいなあ。ふぁきあはスゴイよね、学生なのに抜擢されて海外公演なんて」
「子役もどきだったけどな」
「あたしもいつか行ってみたいな。でも海外公演って、体調管理とか難しそう」
「いつもと変わらないさ。ただ、こっちとはだいぶ気候が違うから、その辺りの調整にちょっと気を遣った」
「へー、そうなんだ。日本って熱帯の国だっけ?」
「...海外公演に行きたいなら、地理もちゃんと勉強しろ」
「ところでふぁきあ、さっきから気になってるんだけど、その箱、何?」
「話を逸らすな...飯は食い終わったか?」
「うん、ごちそうさま!美味しかった!それで?」
「みやげだ。ほら」

寝物語

2007-06-18 03:00:00 | 二次小咄
水盤の話が出たついでに。
ふぁきあひ観光案内・アンデルセン風味?(笑)



「『...そのどっしりとした塔のような門の中に進んで行くと、中はがらんどうで、外とは打って変わって薄暗く、ひんやりとしていました。そこを通り抜けたとたん、果てしなく続いた荒野から、一瞬にして別の世界に来たようでした。お城の内側は、質素で堅牢な外見からはおよそ想像もつかないほど、繊細な華やかさをたたえていました。庭にはオレンジがたわわに実り、バラやジャスミンやそのほか色とりどりの花が、うっとりするような香りを漂わせています。建物は床から天井に至るまで、一面、美しい装飾で覆われ、よく見ればそれらの装飾に溶け込むように、あちらこちらに神をたたえる言葉がちりばめられています。それらは、このお城全体が、神への祈りであることを示しているのでした』」

「くわぁー。ステキだね。きっとみんなびっくりしただろうなぁ」

「そうだな。『そこの人々にとって、神を賛美することは神の創った自然を賛美することでした。星や草花をかたどった装飾を形作る無数のタイルや彫刻には、一つとしてまったく同じ色形のものは無く、それでいて見事な調和を醸していました』」

「そっか。自然のものは、葉っぱの一枚一枚も、みんな違うもんね」

「ああ。『そうしていくつもの噴水が中庭や部屋の中にまで設けられ...』」

「部屋の中に?部屋が水浸しになっちゃわない?」

「ここの噴水は、金冠学園にあるようなのとは違うみたいだぞ。『いくつもの噴水が中庭や部屋の中にまで設けられ、床にはめ込まれた円くて浅い水盤の中心から清らかな水が絶えず湧き出し、水盤を満たしては、細い水路に流れ込んでいました。城中に巡らされた決して枯れることのない静かな流れや、あまたの池は、まるでこの秘められた楽園を息づかせる澄んだ血流のようでした』」

「ふうん。じゃあどこでも水が浴びられるね!」

「み、水を浴びる?」

「何うろたえてんの?」

「別に...ちょっと思い出しただけだ」

「?お城の周りにはあんまり水が無いんでしょ?そしたらきっと鳥たちもいっぱい来るよ」

「ああ、たぶんな」

「みんな一緒が楽しいよね!あっそうだ、ここのお姫さまたちも池で泳いだりしたのかな?」

「いや、この後の話に出てくるが、この国では高貴な女性は人前には姿を現さないんだ。建物の2階の、表からは見えないように格子がはめ込まれた窓から、庭の様子を眺めるだけだったらしい」

「そうなの?つまんないね...あれ、でもここって暑いトコなんだよね?じゃあ汗を流したい時なんかは、お部屋でお風呂に入ってたの?」

「そういう時はハマムがある」

「何それ」

「蒸し風呂...みたいなもんだな。ずっと後の方に書いてあった...ああここだ、『いくつかに区切られた小部屋には窓がなく、高い天井に並ぶ星型の穴から光が射し込むようになっていました。一番奥の部屋の隅に置かれた湯船から蒸気が立ち上り、湯船や床のハーブの香りと一緒になってハマム中を満たしています。その部屋が一番熱く、一番手前のあまり温度の高くない部屋は着替え用で、その間の部屋で人々は体を洗ってもらったり、マッサージをしてもらったり...』」

「あふぁ...なんか想像したら...気持ちよくなって...眠くなってきちゃった...」

「おい、あひる、まだ読み始めたばっかり...あひる?あひる?...はぁ...まあいいか。おやすみ、あひる。いい夢を見ろよ」

Sheherazade

2007-06-13 02:59:42 | 二次小咄
しばらくネット落ちしてました。
というわけで...



「ねぇふぁきあ、今度ふぁきあがやる『シェエラザード』ってどんなお話?」

「そうだな...前に聞かせてやった『千夜一夜物語』って覚えてるか?」

「うん!空飛ぶじゅうたんとか魔法のランプとかのお話だよね」

「そうだ。だがあの物語全体の主人公は、ある女性不信の王だっただろ?」

「そうだっけ?」

「ほんとに人の話を聞いてるのかお前は...まあいい、とにかく、王は夜ごと違う女性を寝床に呼び、朝になると殺してしまっていた。だが、シェエラザードだけは、彼女が語る物語があまりにおもしろかったので、殺すのを一日一日先延ばしにしているうちに、王の心も和らいで彼女を妃に迎えた、っていうのが『千夜一夜物語』の大きな骨組みになってる」

「へぇー。そういうお話なんだ」

「『千夜一夜物語』の方はな。だがこのバレエは、『シェエラザード』って曲が使われてるし、プリマも『シェエラザード』って名だが、話はどっちかって言うと『千夜一夜物語』の背景にあたる部分だな。題材になってるのは、王が女性不信になった原因の、前の妃の不義密通事件だと思う」

「フギミッツウ?て何?」

「簡単に言うと浮気だ。王妃は王の留守中に奴隷と、その、関係を持つ。それを知った王は激怒し、王妃も奴隷も殺してしまう、って話だ」

「なんかコワイ話だね...」

「まあな。だが昔はアラビアに限らず、密通は晒し者にされた上で死刑ってことになってたからな。もっとも現実には、王の妃には宦官しか近づけないから、間違いは起こりようがなかったんだろうが」

「カンガン?」

「ああ、ええと、男だけど男じゃない家臣のことだ」

「?。どういうイミ?」

「...気にするな。それ以上は俺には説明できない」

「そうなの?よくわかんないけど、まあいいや。それでふぁきあは?何の役?」

「奴隷だ」

「じゃあ、あんまりいい役じゃないね」

「いや、一応主役なんだが...」

「そうじゃなくて、だって王様を裏切る役でしょ?ふぁきあらしくないじゃない。ふぁきあって、忠誠心のカタマリだもん」

「関係ないだろ...」

「だって、みゅうとのプリンセスだって分かっててるうちゃんと浮気できないでしょ?」

「お前な...そりゃるうのことは絶対そんなふうには思えないが、だからってみゅうとと同じ相手を好きになることがなかったとは言えないだろ。誰かを好きになるのにそういうのは関係ないんだから」

「そうなの?ふぁきあもそういうことあった?」

「...聞くなよ、バカ...」

White Day

2006-03-15 01:34:26 | 二次小咄
「白の日」。
日付が変わってしまいましたが、御容赦を。



<おかえり!>
「うわっ、飛びつくな!危ないだろ」
<危なくなんかないよ。ふぁきあがちゃんと受け止めてくれるもん。
 それより、ちょっとこっち来て!見せたいものがあるの>
「おい、分かったから、くちばしで引っ張るのはよせ」
<早く!ほら、あそこ、桟橋のたもとの茂み!>
「ああ・・・待雪草か?やっと咲き出したんだな」
<ね?一番花だよね>
「一番花?」
<うん、だってほら、最初に出てきた星を一番星って言うじゃない?
 だから一番花>
「・・・ああ」
<特別な花だからね、絶対ふぁきあに見せなきゃ、って思って>
「・・・そうか。ありがとう」
<あと、こないだバラの花見せてくれたから、そのお返しv>
「いや、その、あれは、別に、そんな・・・」
<それよりさ、花が咲き始めたってことは、もう春なんだよね?
 もう自由に歩き回ってもいいよね?>
「・・・まだ雪が残ってるだろ。もう少し辛抱しろ」
<ケチ>
「ケチで結構。帰るぞ」
<あ、ねぇ>
「なんだ?」
<あの時の赤いバラね、なんとなくるうちゃんを思い出すなぁって思ってたんだけど、
 この白い花はなんかみゅうとみたいだよね>
「・・・」
<ね、そう思わない?>
「・・・みゅうとと言うよりむしろ・・・」
<うん?>
「いや、なんでもない」
<もー、ふぁきあってば、ひとには途中でやめるなって言うくせに>
「・・・おまえ、この花の花言葉を知ってるのか?」
<えっ?花言葉?>
「ああ、いや、いい、気にするな」
<なに?知らないんだもん、ちゃんと教えてよ>
「・・・おまえは知ってるよ」
<え?どういうこと?>
「俺がおまえに教える必要は無いってことだ。それより腹が減った。飯にしよう」
<あ、あたしもおなかすいてたんだった!・・・ねぇ、この花、あしたもあるよね?>
「・・・あるさ。明日も明後日も。だんだん増えていくはずだ」
<よかった!>

(どこよりも、お前の心に咲いている花だからな)