報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長の所へ」

2020-12-27 12:31:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月8日09:50.天候:晴 東京都千代田区丸の内 大日本製薬本社]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は一昨日の件に関する報告書を、斉藤社長の所へ持って行く所だ。
 一昨日は斉藤社長の娘さんのお守りを任されていて、本当なら昨日お渡しするはずだった。
 しかし昨日は社長の都合が悪かった為、今日になったというわけだ。
 うちの事務所から本社ビルまではタクシーで向かう。
 大事な報告書なので、輸送には最新の注意を払わなてはならない。

 運転手:「こちらでよろしいですか?」
 愛原:「はい」
 運転手:「ありがとうございます」
 愛原:「領収書お願いします」
 運転手:「はい」

 私は料金を払うと、高橋と一緒にタクシーを降りた。
 今日ばかりは高橋もスーツを着てはいるが、やはりどうしても新宿歌舞伎町のホスト感が否めない。
 受付で用件を伝え、入館証を貰って先へ進む。

 警備員:「お疲れ様です!」

 役員室フロアへ直接向かうエレベーターホールには別に警備員が立っていたが、私達の入館証を見るや直立不動で敬礼してきた。

 愛原:「こんにちは。お邪魔します」

 私も20代の頃は、そっち側に立っていた。
 いつ頃だっただろう?
 警備員ではなく、探偵の仕事をやりたいと思うようになったのは……?
 忘れたな。
 警備員より探偵の方がカッコ良くて儲かるなんてミーハーな考えだったと思うが……。

〔上に参ります〕
〔ドアが閉まります〕

 一気に何百メートルも上に上がる。
 こういう時、耳がキーンとなるのが高層ビル上層階の特徴だ。

 高橋:「先生。先生もいつかはこういうビルに事務所を……」
 愛原:「いや、最近になって気づいたんだがね、探偵業より警備業の方が儲かるわなぁ……と」
 高橋:「え?」
 愛原:「いや、警備業ならセコムとかアルソックとかCSPとか、有名企業がいくつもあるけど、探偵業で有名どころって知ってるか?」
 高橋:「えっと……」
 愛原:「そういうことだよ」

 昔の連続テレビドラマに“東京警備指令ザ・ガードマン”なんてのがあったけど、あれは警備業と探偵業を足して2で割った設定だな。

〔ドアが開きます〕

 ピンポーン♪

〔30階です〕
〔下に参ります〕

 秘書:「お待ちしておりました、愛原様。ご案内させて頂きます。どうぞ」
 愛原:「恐れ入ります」

 私達が通されたのは応接室。
 下の階のミーティングフロアにも応接室はあるだろうが、役員が直接応対する部屋なだけに、その内装は豪勢なものである。

 秘書:「ただいま斉藤が参りますので、少々お待ちください」

 秘書さんにお茶を出して頂き、それから私達は斉藤社長が来るのを待った。

 斉藤:「おお、愛原さん。御足労、感謝致します」

 隣の社長室から斉藤社長が入って来た。

 愛原:「斉藤社長、報告書をお持ち致しました」
 斉藤:「一昨日は想定外の事で、大変でしたな」
 愛原:「裏を掻かれてしまいましたね。まさか、地下鉄の中で襲ってくるとは……」
 斉藤:「そのような中、娘を無傷で護って頂けるとは、さすがは愛原さん達だ」
 愛原:「お褒めに預かりまして……」
 斉藤:「報酬は御約束通り、例の口座に振り込ませて頂きます」
 愛原:「ありがとうございます」
 斉藤:「それで、どうですか?アンブレラ達の動きについて、何か分かりましたか?」
 愛原:「リサ・トレヴァー『1番』が、聖クラリス女学院に生徒のフリして潜んでいる可能性が大です。今、NPO法人デイライトの関係者が学院内を捜索中です」
 斉藤:「そうですか……」

 斉藤社長は右手を顎にやって考える仕草をした。

 斉藤:「実は娘は当初、聖クラリス女学院への進学を考えていたのです。しかし通学の利便性を考えて、東京中央学園に急きょ変更しました。あの性癖ですから、『共学校なんてイヤ!』と駄々をこねたものです。しかし、今となっては東京中央学園で良かったと思っていますよ」
 愛原:「斉藤社長も東京中央学園の出身者ですよね?」
 斉藤:「ええ。高等部だけですが」

 東京中央学園は中高一貫校ではあるが、高等部から入学する者もいる。
 それに対して、聖クラリス女学院は高等部からの入学者がいない(転入生はいる)完全中高一貫校である。

 愛原:「社長、日本に新型BOWエブリンが入ってきている可能性は考えられますか?」
 斉藤:「エブリンですか?」
 愛原:「はい。2017年、アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件のラスボスです」
 斉藤:「そのことは知っています。可能性はあると思います」
 愛原:「ありますか!」
 斉藤:「ありますね。愛原さん、だいぶ前、群馬の方にお仕事に行かれたことがあるでしょう?下仁田方面です」
 愛原:「ありますね!」
 斉藤:「実はあの時点でエブリンの存在は疑われていました。日本アンブレラの五十嵐元社長が手引きしたのか、或いはもっと別の誰かが手引きしたのかは分かりませんが、疑いがあったのは事実です」
 愛原:「座敷童扱いされていましたね」
 斉藤:「正しく座敷童の如く、獲物の家に取り憑くBOWですよ。但し、日本の妖怪としての座敷童は、憑いた家に幸福を齎すと言われているのに対し、エブリンはその逆ですけどね」
 愛原:「もしかして、聖クラリス女学院に憑いている?」
 斉藤:「可能性はありますね。エブリンは大体10歳前後の少女の姿を模しています。まさかそんな幼気な少女がBOWだなんて、誰も思いますまい。そして聖クラリス女学院には、初等部もある。考えられることです」
 愛原:「今、デイライトさん達が調査中ですので、その結果を待つしか無いですね」
 斉藤:「恐らく私は近いうち、BSAAが突入するものと思っていますよ。そうなったら、民間人の我々は傍観する他無いですから」
 愛原:「そりゃそうです」
 斉藤:「そこで国家機関が聖クラリス女学院に目を向けている間、愛原さん達には別の仕事をお願いしたいと思っております」
 愛原:「別の仕事?」
 斉藤:「はい。以前、愛原さん達には、私が高校生だった頃、通っていた東京中央学園上野高校についてお話ししたことがあったと思います」
 愛原:「当時の科学教師が旧・日本アンブレラの研究員で、科学準備室の奥の倉庫に秘密の研究室を構えていたという話ですね?」
 斉藤:「そうです」

 しかし私達が調査に入った時には既に蛻の殻で、一応そこには更に秘密の隠し通路があり、そこを通じて、やはり蛻の殻となっていた旧・日本アンブレラの営業所に繋がっていたという所までは突き止めた。
 だが、当の研究員の事については結局分からずじまいだった。

 斉藤:「東京中央学園は栃木県に合宿所を持っていましてね。愛原さん、そこの調査をお願いできますか?」
 愛原:「その合宿所、何かあるんですか?」
 斉藤:「元々は学校として建てられた物が廃校となり、それを日本アンブレラが買い取ったものなんですが、近くに新しい施設を造ったという理由で、売りに出したんですよ。それを買ったのが東京中央学園なんです」
 愛原:「ええっ!?」
 斉藤:「もちろん新しい研究施設は、日本アンブレラが倒産したことで無くなりました。その施設は取り壊されて更地になっていますが、旧施設の方は今でも合宿所として使われています。私が現役生だった頃、あの施設では色々な噂を聞いたものです。所詮高校生の言うことですから、単なる噂話だったのでしょうが、それにしては具体的な話とかもありましたからね。火のない所に煙は立たぬ、というでしょう?」
 愛原:「まあ、いいでしょう。お引き受けします」
 斉藤:「ありがとうございます。後で依頼書をお送りしますので、どうかお願いします」
 愛原:「1つ聞いていいですか?」
 斉藤:「何でしょうか?」
 愛原:「確かに建物の歴史からして曰く付きですけれども、それでも社長が私達を送り込むという判断に至った材料とは何だったのでしょう?」
 斉藤:「実はふとしたことがきっかけで、私は新施設と旧施設の図面を手に入れることができました。それを照らし合わせてみると、何とも奇妙なことに気づいたんですよ。だからです。図面は後でお見せします。きっと愛原さんも唸ると思いますよ」

 しかし、探せばまだまだあるもんだな。
 旧アンブレラの秘密研究施設。
 恐らく1つが見つかったり、見つかりそうになって処分するに至っても、すぐにまた別の施設で研究が続けられるようにする為だろうな。
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“私立探偵 愛原学” 「それから……」

2020-12-26 22:57:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月7日09:30.天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所(面会室)]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日の惨劇の後で、私は三度高野君を訪ねた。

 高野:「おはようございます」
 愛原:「ああ、おはよう」
 高野:「いつも来て下さって、ありがとうございます」
 愛原:「『宅下げ』の物、預かるよ」
 高野:「お手数お掛けします」
 高橋:「アネゴ、保釈申請しねーのか?いい加減、保釈して出て来いよ」
 高野:「私は組織犯罪関係でここにいるの。申請したところで、『証拠隠滅の恐れあり』とか言われて却下に決まってるわ」
 愛原:「キミ個人としては、大した犯罪内容じゃないんだけどねぇ……。銃刀法違反(許可されていない銃器を使用した)とか、捜査機関に嘘の情報を流したとか、まあとにかく、大した内容じゃない」
 高野:「あの女としては、大したことのようですよ」
 愛原:「善場主任か?まあねぇ……」
 高野:「それに、ほとぼりが冷めるまで、ここにいた方がいいと思います。“青いアンブレラ”の中にはBSAAにいれられなくなった不良軍人とかもいますから」
 愛原:「旧アンブレラの非正規軍組織UBCSみたいなものか」
 高野:「そうですね」
 愛原:「まあ、キミがそこが安全だというなら、それでもいいさ。それでも、面会はさせてもらうからね?」
 高野:「大歓迎です。それで、今日は私に何の話を?」
 愛原:「昨日の朝、都営大江戸線が襲われた。『1番』のヤツ、実力行使に来たよ。無関係な乗員乗客にまで被害を出しやがって……」
 高野:「『1番』らしいですわね。で、倒した……わけではなさそうですね?」
 愛原:「ものの見事に逃げられたよ。それで、どうも新型BOWエブリンの影もちらついてるんだ。何か知らないか?」
 高野:「2017年夏、アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードについては御存知だと思います」
 愛原:「ああ」
 高野:「“青いアンブレラ”が駆け付けた時、オリジナルのエブリンは既に最終形態に変化しており、イーサン・ウィンターズ氏によって止めが刺されました」
 愛原:「知ってる」
 高野:「“青いアンブレラ”としては確たる証拠は見つけられませんでしたが、エブリンの素体が日本へ密輸された可能性は大だと見ています」
 愛原:「なにっ!?」
 高野:「先生のお話を伺いまして、恐らくエブリンと『1番』は既にタッグを組んでいるような気がします」
 愛原:「マズいか、それは?」
 高野:「マズいと思います。彼女らが本気を出せば、今度はこの東京が霧生市のようになると思います」
 愛原:「まだ彼女達は本気ではないということか?」
 高野:「でしょうね。どうして本気を出さないのか、それは不明です。……いや、1つ考えられることがあります」
 愛原:「何だ?」
 高野:「彼女達は『2番』のリサちゃんと同じく、ちゃんと制御されているからだと思われます。制御する側としては、今すぐに東京に大規模なバイオハザードを起こしたくはないのでしょう。アメリカのエブリンは、制御を失って暴走してしまいました」
 愛原:「彼女達を制御している人間に心当たりは?」
 高野:「いくつかあります。組織としてはバイオテロ組織。HCFとか“コネクション”なる組織ですね。まだ日本に進出しているという証拠は掴んでいませんが、しかし、もしもエブリンが本当に日本に密輸されているのだとしたら、可能性はあります」
 愛原:「他には?」
 高野:「個人が『1番』とエブリンを所有し、制御している可能性です」
 愛原:「個人が!?そんなことできるわけ……」
 高野:「ありますよ。先生がそうじゃありませんか?」
 愛原:「俺が!?」
 高野:「ええ」
 高橋:「確かにリサのヤツ、先生には『何でも言う事を聞く』『先生の奴隷になってもいい』まで言ってますよね?」
 愛原:「で、でも俺は、善場主任の依頼で……」
 高野:「先生に制御を託されたのは、リサちゃんの御指名だそうですよ」
 愛原:「ええっ!?」
 高野:「霧生市から脱出した後、私達はリサちゃんと一旦お別れしましたよね?」
 愛原:「ああ」
 高野:「リサちゃん、ずっと先生に会いたがってたらしいですよ。で、終いには耐え切れなくなって暴走しかけたそうです」
 愛原:「ええ?」
 高野:「それで善場さん達が『このまま殺処分されるくらいなら』ってことで、先生にリサちゃんの制御を託したというわけです。案の定、今も上手く行ってますね」
 愛原:「でも結局のところ、それって組織的な制御じゃん?俺があくまでも委託されただけで?」
 高野:「ですから、同じように制御者が1人だけで、あの2人を管理している可能性もあるってことです。いや、もしくは『1番』とエブリン、それぞれ別個に制御されているのかもしれませんしね」
 愛原:「なるほどなぁ……」
 高野:「でも先生、今は先生達の側が不利になってますよ?」
 愛原:「どういうことだ?」
 高野:「恐らく『1番』やエブリンは、既に『2番』の制御者が先生だということに気づいたでしょう。もしも『2番』を倒したければ、まずは制御者を倒せと思うかもしれません。『将を射んと欲せばまず馬を射よ』の逆パターンですよ」
 愛原:「マジか」
 高野:「それでいて、先生達はまだ『1番』の背後関係が分かっていないわけでしょう?」
 愛原:「今日、改めて善場主任が聖クラリス女学院に、全ての生徒を照会することになっている。捜査令状はまだだが、捜査協力依頼書付きだ。実際、聖クラリス女学院の制服を着た女の子が、俺達から逃走したんだ。学院側は、言い逃れはできんさ」
 高野:「学院全体が、彼女達の手に落ちていないといいですねぇ……」

[同日10:04.天候:曇 東京都足立区足立 東武鉄道小菅駅]

 高野君との面会を終えた私達は高野君から預かった宅下げ品を持って、最寄り駅の小菅駅に向かった。
 宅下げとは差し入れの対義語で、要は収容者から面会者へ渡される物のことを言う。
 高野君の場合は、読み終えた本や着替えなどであった。
 東京拘置所では下着類以外は洗濯してもらえないので、上に着ている服にあっては面会者などに宅下げして洗濯してもらい、洗濯済みの服を差し入れしてもらうという形になる。

〔まもなく1番線に、日比谷線直通、各駅停車、中目黒行きが7両編成で到着します。……〕

 高橋:「ヤバイっすね……」
 愛原:「何がだ?」
 高橋:「いえ、リサを見てて思うんスけどね。リサのヤツ、先生に命令されたら、この東京にバイオハザードを起こすことも平気でやると思うんスよ」
 愛原:「俺は絶対そんな命令出さないぞ!?」
 高橋:「ですけど、『1番』の制御者が先生みたいな人格者じゃなかったら、大変なことになるってことっスよね。どこぞのサイコパスとかだったら、もうサイアクっスよ」
 愛原:「そうなる前に見つけないとな……」

 私達はやってきた東武電車に乗り込んだ。

 高橋:「昨日あんな事件を起こした奴らです。それを命令したヤツがいたとしたら、とても人格者とは思えないですよ」
 愛原:「た、確かにな……」

 すぐにドアが閉まって、電車が走り出す。
 私は空いている席に座った。

〔次は北千住、北千住。……〕

 愛原:「善場主任達の、捜査状況に期待するしか無いな」

 私は今まで通り、リサと接していれば良い。
 それで良いはずなのだが、何故か実は『薄氷を履むが如し』の状態だったのではと思った。
 ちょっとでもリサと接し方を間違うと、私のせいで東京がバイオハザードに見舞われる。
 そんな気がしてきた。
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“私立探偵 愛原学” 「地下鉄の戦い」

2020-12-25 20:09:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月6日08:20.天候:不明 東京都港区 都営地下鉄大江戸線麻布十番駅~六本木駅間トンネル]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 すんごいマズいことになった。
 私達の想定だと、これから向かう女学院にてリサ・トレヴァーの『1番』が待ち受けているはずだった。
 ところが、『1番』はその上を行きやがったのだ。
 現地に向かう地下鉄の中で襲って来たのだ。
 これは想定外だった。
 行く手をどこに潜んでいたか、ネメシスが立ちはだかり、後部からはまた別の化け物が襲って来たというではないか。
 まさかネメシスが2匹?
 それだとBSAA並みの装備が無いと勝てないぞ?
 リサですら、一匹相手に苦戦しているというのに!

 愛原:「どいて!通してください!」

 前後を挟み撃ちにされて避難路を失った乗客達はパニックになっていた。
 中には機転を利かして乗降ドアの非常コックを開き、手動でドアを開けて車外へ脱出しようと試みる者もいた。
 ところが、ミニ規格の地下鉄の弱点がここで現れた。
 トンネル断面が小さく、しかもこの辺りは単線トンネルである為、側面からの脱出が困難という特徴があった。

 高橋:「どけっ!」

 私達がそんな乗客達を避けながら最後尾に向かうと、そこにいたのは……。

 乗客ゾンビA:「アァア……!」
 乗客ゾンビB:「ウゥウ……!」
 乗客ゾンビC:「アゥゥ……!」

 ゾンビ化した乗客達だった。
 動きがぎこちなく、素早さにも欠けることから、Tウィルス系のゾンビだと思われる(Cウィルスだと動きは俊敏になる)。

 愛原:「ゾンビしかいないぞ!?ゾンビしかいないじゃん!?」

 もちろん私の感覚がマヒしているだけであって、他の一般乗客達から見れば、これとて十分な化け物なのである。

 女子中学生:「キャアアアッ!」
 乗客ゾンビD:「アァァァッ!!」

 その時、1人の女子中学生がゾンビ化した乗客に掴み倒された。

 高橋:「伏せろ!!」

 高橋は手持ちのマグナムを取り出すと、それで乗客Dの頭を撃ち抜いた。

 愛原:「大丈夫か!?」

 私が女子中学生をゾンビDから引き離した。
 その直後、ゾンビAが私に噛み付こうとしたが、私も手持ちのハンドガンで応戦する。

 高橋:「先生、下がってください!ここは俺が!」
 愛原:「分かった!キミ、ケガは無いかい!?」
 女子中学生:「は、はい……」

 少女はリサと似たようなショートボブの髪形をしており、しかも聖クラリス女学院の制服を着ていた。
 登校中にこの惨事に巻き込まれたようだ。

 愛原:「前の車両に逃げるんだ。もっとも、先頭には行くなよ?真ん中の車両辺りだ。いいね?」
 女子中学生:「は、はい」

 しかし、この乗客達はどうしてゾンビ化したのだろう?
 もちろんネメシスにそれは可能だ。
 しかしネメシスは前の方にいた。
 そしてこの狭いトンネルでは、電車の外側を回り込むことなど不可能だ。

 乗客ゾンビB:「ギャアァァッ!!」
 乗客ゾンビC:「アァァァ……!」
 愛原:「よし、クリア!」
 高橋:「掃除完了っス!」

 私達は最後尾にいたゾンビ達を倒した。

 愛原:「後ろはどうなってるんだ!?」

 私達は後部運転室に向かった。
 大江戸線はワンマン運転なので、後部運転室に行っても、そこに車掌はいない。
 しかし遮光幕は下ろされておらず、しかも室内は照明が点灯していたので、中の様子を見ることはできた。
 だが、中は特段何も無い。
 ネメシスに侵入された前部運転室とは対照的だ。

 愛原:「そこの貫通扉を開ければ、脱出できるはずだ」

 私は乗務員室扉をこじ開けた。
 そこから運転室に入ると、貫通扉を開けた。

 職員A:「大丈夫ですか!?」
 職員B:「救助に来ました!」

 麻布十番駅方面から地下鉄職員達がやってきた。

 愛原:「先頭車両は大変なことになっています!運転士さんは殺されました。とにかく、乗客の皆さんを避難させてください」

 私はそれだけ職員達に言うと、再び前の方に向かって進んだ。

 愛原:「後ろから避難できます!後ろの車両に向かってください!」

 とはいえ、さすがに死体だらけの最後尾を通るのはアレか?
 こりゃ早いとこネメシスを倒さないと……。

 女子中学生:「…………」
 愛原:「おおっ、キミ!後ろから脱出できるぞ!ちょっと……あれだ。死体が転がってるから、それが苦手だというのなら、目を瞑って……」
 女子中学生:「ありがとう。オジさん達、強いね」
 愛原:「ちょっとな。前は危ないから、後ろから脱出するんだ」
 女子中学生:「うん、分かった。ありがとう」

 女子中学生は最後尾の車両に向かった。
 だが、そこへ……。

 リサ:「待てっ!オマエ、『1番』だな!?」

 前の車両からリサ達がやってきた。

 愛原:「おお、リサ!無事だったか!?」
 善場:「ネメシスは何とかこちらで対応しました!BSAAが新宿方面から来ましたので!」
 愛原:「そうでしたか!」
 リサ:「『1番』!」
 女子中学生:「『1番』?何の事?」
 リサ:「トボけるな!私は『2番』だ!臭いは誤魔化せない!」
 『1番』?:「あなたが『2番』?ふーん……」

 その時だった。

 愛原:「おわっ、ととと!」

 何と、電車が動き出した。

 愛原:「え?え?え?何で何で!?」

 こんな状態で電車が動けるのか!?
 誰もハンドル操作なんてしてないのに!?

 『1番』?:「じゃあね?『2番』さん」
 リサ:「待てっ!」

 リサから『1番』と呼ばれた少女は後部運転室に行くと、開いている貫通扉から飛び下りた。

 蓮華:「『1番』!私はオマエを絶対に逃がさない!必ずまた見つけて、その首刎ねてやる!!」
 善場:「至急!至急!こちら善場!大至急、麻布十番駅を包囲されたし!聖クラリス女学院の制服を着た少女が『1番』である!」
 愛原:「前の方はどうなってるんだ!?」
 リサ:「ネメシスにだいぶ壊されたはずだけど……!」

 私達は先頭車に向かった。
 もしもこの電車が暴走しているのなら、早いとこ止めないとマズいことになる。
 確かに4両目から向こうは、窓ガラスが殆ど割れ、照明も壊されて薄暗くなっていた。
 最初に私達が乗っていた先頭車なんか、まるでトロッコ列車のようだ。
 だが、これもどういうわけだか、次の六本木駅に到着すると、ちゃんと停車した。

 愛原:「何が一体どうなってるんだ!?」
 善場:「ATO運転の路線ですからね。まさか、指令所から遠隔で操作した?いや、まさか新交通システムではないのだから、そういうことはできないはず……」

 しかし、仮にさっきの少女が『1番』だとしたら、最後尾車両の惨劇も辻褄は合う。
 リサ・トレヴァーもTウィルスを宿しているので、普通の人間を感染させてゾンビ化させることは可能だからである。
 都営新宿線で会った少女はロングヘアーだったが、恐らくあの後切ったのかもしれない。

 愛原:「リサ、あれは本当に『1番』で間違いないのか?」
 リサ:「私と同じ匂いがした。というか、かなり人食いをした臭いがしたよ」

 BOWは人食いをすればするほど、体臭がキツくなる。
 普通の人間でも、採食より肉食を中心とした食生活をしていると体臭がキツくなるのと同じことだ。

 善場:「でも、これではっきりしましたね。『1番』は聖クラリス女学院の生徒として潜り込んでいることが」
 愛原:「今から乗り込みますか?」
 善場:「もちろんですよ。何食わぬ顔して、登校しているかもしれませんからね」

 私達は電車を降りると、聖クラリス女学院に向かおうとした。
 だが、その前に警察に事情を話さなくてはならなった。
 もちろんこの場に善場主任がいたので、流れはスムーズだったが。
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“私立探偵 愛原学” 「いきなりの戦い」

2020-12-25 15:11:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月6日07:48.天候:不明 東京都港区内 都営地下鉄大江戸線麻布十番駅→六本木駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「いよいよ次が六本木駅だ」

 森下駅から乗車した時はガラガラだった車内も、今度は新宿駅に近づく度に乗客が増え始めている。

〔次は六本木、六本木。日比谷線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Roppongi.E23.Please change here for the Hibiya line.〕

 善場:「皆さん、駅に着いてからは油断することの無いよう……」
 リサ:「!?」

 リサが何かに気づいた瞬間、電車がけたたましい警笛を上げて急ブレーキを掛けた。
 初めて都営大江戸線電車の警笛を聞いた気がするが、そんなことどうでもいい。
 そして、ドンッと何かにぶつかる音。
 更に、前方からガラスの割れる音。

 男性客:「うわっ、何だ!?」

 たまたま運転室入口のドアの前に立っていた男性客が、その窓越しに前方を見て驚いた。

 男性客:「わあぁぁぁっ!」

 そして、慌てて後ろに逃げ出す。
 その理由は分かった。

 リサ:「この臭い……!」

 リサが第1形態に変化しかけた。
 両目が赤く光り、髪の毛がぶわっと逆立つ。
 またガラスの割れる音がした。
 運転室と客室を隔てる窓ガラスが割られ、遮光幕が引き裂かれる。
 そこから顔を覗かせたのは……。

 愛原:「ネメシスだ!!」
 善場:「何で!?」
 高橋:「何でだよ!?まだ六本木じゃねェだろーがよォ!?」

 ネメシスは死体となった運転士の首根っこを掴んでいたが、それを客室内に放り投げた。
 たちまち先頭車内は大混乱に陥る。

 愛原:「皆さん!後ろの車両に避難してください!」

 言うて私も後ろに下がった。
 優先席付近にある非常ボタンを押す。
 恐らく応答する者はいないだろうが、しかしこの電車で非常ボタンが押されたことが運行管理を行う場所に伝われば良い。

 善場:「至急!至急!こちら善場!都営地下鉄大江戸線内にて、BOWネメシスと思しき個体と遭遇!大至急、BSAAの出動を請う!」

 善場主任も下がりながら携帯電話で連絡をしていた。
 幸いにも電波は通じる。
 ついにネメシスは運転室と客室との仕切りを壊して、こちら側に侵入してきた。
 高橋が何発が発砲する。
 当たってはいると思われるが、効いている感じがしない。
 既にリサは第1形態に戻っていた。

 リサ:「ネメシス!誰の命令でこんなことしてるの!?」
 ネメシス:「……見ツケタ……!」

 ネメシスは全ての歯が牙のように尖っており、その歯を見せて薄笑いを浮かべた。
 蓮華さんも試合用の竹刀ではなく、対BOW用の真剣を抜いている。
 だが、ミニ規格の大江戸線は車内も小さくて狭く、刀を大振りできない。

 リサ:「ネメシス!やめろ!!」

 リサがネメシスに警告を与えているが、ネメシスは聞かない。
 タイラントなら無条件でリサ・トレヴァーの言う事を聞くのだが、ネメシスはそうでもないようだ。
 ネメシスは持ち前の怪力で手すりを引き取ると、それを振り回してきた。

 高橋:「あっぶねぇな!」

 時々窓ガラスに当たったり、照明に当たったりして、それが割れる音が響く。
 リサがその攻撃を交わして、ネメシスに鋭い爪で引っ掻いた。

 愛原:「!?」

 その時、非常ボタンのスピーカーから何か聞こえてきた。
 雑音が大きいが……。

〔「日比谷線……はリサ・ト……。大江戸線は……シス。まさか本当に学校まで行けると思った?」〕

 最後の部分だけ声がはっきり聞こえた。
 その声は無邪気な少女の声であった。

 愛原:「オマエは誰だ!?」

 しかし、スピーカーからはクスクスと笑い声がしただけで、プツッと音声が切れてしまった。

 善場:「愛原所長、エブリンかもしれません!」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「先生、あいつマジヤバっス!」

 高橋と蓮華さんが後退してきた。

 善場:「止むを得ません!先頭車は放棄します!2両目へ後退しましょう!」

 私達が2両目へ退却すると、そこにはまだ乗客達が残っていた。
 何か、暢気に動画撮影している客もいる。

 愛原:「後ろの車両に避難してください!!」

 貫通扉を閉めて、物を挟んだが、そんなことしてもネメシスにとっては何でもない。
 ガラスを割ってこじ開ければ良いだけのこと。

 蓮華:「はーっ!」

 ネメシスが貫通扉を右手で破壊した所を蓮華さんが刀で斬り落とした。
 そこから血が噴き出す。
 だが、血はすぐに止まって、見る見るうちに右手が生えて来た。

 リサ:「栗原!……さん、ダメだよ!首を刎ねないと!」
 ネメシス:「タイマシ……リサ・トレヴァー『2番』……」
 愛原:「リサと蓮華さんが目的か!」

 ネメシスはリサと同じように掌から触手を出した。

 リサ:「いい度胸。触手で勝負」
 善場:「愛原所長と高橋助手も避難してください!」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「俺達も戦えるぜ!?」
 善場:「だからこそです!乗客達の避難誘導をお願いします。それに、所長達の仕事は斉藤絵恋さんの護衛のはずですよ?」
 愛原:「なるほど、そうか!」

 ここでは斉藤さんが一番戦えない。

 愛原:「斉藤さん、行くぞ!」
 斉藤:「リサさんは!?」
 高橋:「リサなら大丈夫だ!こん中でむしろ一番強い!」
 愛原:「そういうことだ!」

 私達は斉藤さんを連れて後ろの車両に逃げた。
 最後尾の運転室を開け、そこから貫通扉を開けて外に脱出すれば良い。
 だが!

 愛原:「!?」

 何と、今度は後ろに避難したはずの乗客達が前に向かって逃げて来た。

 愛原:「何だ何だ何だ!?前は危険ですよ!?」
 乗客:「後ろから化け物が来てるんだよ!」
 愛原:「ええーっ!?」
 斉藤:「は、挟み撃ち!?」

 んなバカな!?
 ネメシスが2匹もいるのか!?
 いや、しかしどうやって地下鉄のトンネルに!?
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“私立探偵 愛原学” 「会場へ向かう」

2020-12-24 21:06:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月6日07:27.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅新宿線ホーム→大江戸線ホーム]

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。もりした~、森下~。大江戸線は、お乗り換えです〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は斉藤社長の依頼で、娘の絵恋さんに付いている。
 そして、絵恋さんは他校との交流試合に参加するところであった。

 高橋:「何もこんな朝早くからよ」

 電車を降りがてら、高橋がそんな文句を言った。

 愛原:「開会式は9時からだ。絵恋さんとしては、早めに到着して、先方の雰囲気を掴んでおきたいんだよ。何しろ、東京中央学園側はアウェイなわけだからな」
 高橋:「そりゃそうですけど……」

 菊川から森下駅までは歩いても行けるのだが、絵恋さんと待ち合わせをして一緒に行く為、菊川駅から電車に乗った。
 都営新宿線には一区間だけ乗る形になる。

 愛原:「場所は六本木。東京中央学園よりも一等地にあるな」
 高橋:「高校は上野にあるんでしょう?東京中央も、そういった意味では一等地だと思います」
 愛原:「まあな」

 東京中央学園は都内各地(一部は千葉県)にキャンパスがいくつか散らばっている。
 イメージとしては埼玉の学校法人、佐藤栄学園に似ている。
 それに対し、これから向かう聖クラリス女学院は初等部から大学まで徒歩圏内に集約されている。

 愛原:「どれ、次は大江戸線か」

 一旦改札口へ向かうコンコースに上がり、それから大江戸線ホームへ向かう階段を下りる。
 平日なら通勤・通学客でごった返している時間だが、日曜日ともなると静かなものだ。

 リサ:「先生、『退魔士』の人、来る?」
 愛原:「栗原蓮華さんか。来るだろう。高等部は高等部で、剣道の交流試合だ」
 リサ:「先生。もしも私が『1番』だったら、多分私の前に直接は現れない。あいつ、臆病者みたいだから」
 愛原:「ということは?」
 リサ:「私だったら、『退魔士』の人を襲うと思う」
 愛原:「なるほど。確かに今、蓮華さんを見ている人はいないな……」

 大江戸線ホームに向かい、そこでしばらく電車を待ちながら私は考えた。
 『1番』とは同族のリサが考えることは一致しているかもしれない。
 そして、同族とはなるべく戦いたくないが、面倒臭い人間はさっさと殺したいと思うだろう。
 そうなると、蓮華さんを狙うか。
 しかし、蓮華さんもそれまで何人ものリサ・トレヴァーの首を刎ねている。
 その中で『1番』が一番強いったって、復讐心に燃える蓮華さんだって強いと思うのだ。
 どうしたものか……。

〔まもなく4番線に、大門、六本木経由、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 しばらく思案していたが、なかなかいいアイディアが思いつかない。
 そんな時、接近チャイムと放送が鳴り響いて、私は我に戻った。

〔4番線の電車は、大門、六本木経由、光が丘行きです。もりした、森下。新宿線は、お乗り換えです〕

 ぶどう色に近いワインレッドのラインカラーを帯びた電車がやってくる。
 そして先頭車両に乗り込むと、そこには見知った顔が2つあった。

 善場優菜:「おはようございます」
 栗原蓮華:「おはようございます」

 空いている車内に、善場主任と栗原蓮華さんが乗っていた。
 そこで私はピンと来た。
 そうか!蓮華さんの方は、善場主任に見てもらえばいいんだ!
 或いは、その逆でもいい。
 何でこんなことに気が付かなかったんだろう!
 『1番』のことだから、善場主任に相談すれば、動いてくれるのだ!

 愛原:「おはようございます」

 私達は彼女達の向かい側に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディ(乗降促進メロディ)が鳴って、ドアが閉まった。
 そして、電車が走り出す。

〔次は清澄白河、清澄白河。半蔵門線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Kiyosumi-Shirakawa.E14.Please change here for the Hanzomon line.〕

 善場主任はいつも通り黒いスーツを着ているが、蓮華さんは違った。
 もう既に剣道着を着ているようである。
 但し、上にはコートを羽織っていたが。
 で、私が気になったのは持ち物。
 長物を2つ持っている。
 1つは試合に使う竹刀だろう。
 しかしもう1つは……恐らく、『1番』を斬る為の真剣であろう。
 そんなもの合法的に持ち歩けないから、善場主任が付いているのだろう。
 聞けばやはりその通りであった。

 善場:「愛原所長も水臭いですよ?『1番』の情報を掴んだら教えてくださいと言ったではありませんか?」
 愛原:「す、すいません。まだ確定はしていない、推理の段階だったので……」
 善場:「それでもいいんですよ。些細なことでも、情報提供は大事ですから」
 愛原:「はあ……」

 正しくその通りだ。
 因みに斉藤さんは、学校指定のジャージを着ている。
 試合の時に着る空手の道着は、手持ちのボストンバッグの中に入っている。

 愛原:「『1番』の目星、誰だかもう付いてるんですか?」
 善場:「何人かは。愛原所長が仰ってた特徴と照らし合わせて、何人かは候補に浮上しました。ただ、候補者達は中等部と高等部に別れてしまっています」
 愛原:「え?」
 善場:「聖クラリス女学院は、東京中央学園と違って、中等部・高等部で制服のデザインを変えるようなことはしないのです」
 愛原:「あちゃー……」

 東京中央学園は男女共通で、中等部のブレザーはシングル、高等部はダブルという違いを付けているのだが。
 だからもし、ここで蓮華さんが制服を着ていたら、彼女はダブルのブレザーを着ているということになる。
 今ここで制服を着ているのはリサだけだ。
 そのリサはシングルである。

 善場:「とにかく、『1番』がどこから攻撃してくるか分かりません。私は彼女を見ていますから、愛原所長は『2番』と行動してください」
 愛原:「分かりました」

 善場主任は元『12番』の『0番』。
 人間に戻れつつも、身体能力はリサ・トレヴァー時代の物を色濃く残す善場主任がいれば心強い。
 
 善場:「何かありましたら、すぐに連絡を」
 愛原:「はい」

 私は善場主任から小型のトランシーバーを渡された。
 なるほど。
 同じ学校の敷地内でも、中等部と高等部は分かれているし、当然会場も別れている。
 こういう時、無線機があるとやり取りしやすいかもな。
コメント (2)
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