報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「いきなりの戦い」

2020-12-25 15:11:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月6日07:48.天候:不明 東京都港区内 都営地下鉄大江戸線麻布十番駅→六本木駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「いよいよ次が六本木駅だ」

 森下駅から乗車した時はガラガラだった車内も、今度は新宿駅に近づく度に乗客が増え始めている。

〔次は六本木、六本木。日比谷線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Roppongi.E23.Please change here for the Hibiya line.〕

 善場:「皆さん、駅に着いてからは油断することの無いよう……」
 リサ:「!?」

 リサが何かに気づいた瞬間、電車がけたたましい警笛を上げて急ブレーキを掛けた。
 初めて都営大江戸線電車の警笛を聞いた気がするが、そんなことどうでもいい。
 そして、ドンッと何かにぶつかる音。
 更に、前方からガラスの割れる音。

 男性客:「うわっ、何だ!?」

 たまたま運転室入口のドアの前に立っていた男性客が、その窓越しに前方を見て驚いた。

 男性客:「わあぁぁぁっ!」

 そして、慌てて後ろに逃げ出す。
 その理由は分かった。

 リサ:「この臭い……!」

 リサが第1形態に変化しかけた。
 両目が赤く光り、髪の毛がぶわっと逆立つ。
 またガラスの割れる音がした。
 運転室と客室を隔てる窓ガラスが割られ、遮光幕が引き裂かれる。
 そこから顔を覗かせたのは……。

 愛原:「ネメシスだ!!」
 善場:「何で!?」
 高橋:「何でだよ!?まだ六本木じゃねェだろーがよォ!?」

 ネメシスは死体となった運転士の首根っこを掴んでいたが、それを客室内に放り投げた。
 たちまち先頭車内は大混乱に陥る。

 愛原:「皆さん!後ろの車両に避難してください!」

 言うて私も後ろに下がった。
 優先席付近にある非常ボタンを押す。
 恐らく応答する者はいないだろうが、しかしこの電車で非常ボタンが押されたことが運行管理を行う場所に伝われば良い。

 善場:「至急!至急!こちら善場!都営地下鉄大江戸線内にて、BOWネメシスと思しき個体と遭遇!大至急、BSAAの出動を請う!」

 善場主任も下がりながら携帯電話で連絡をしていた。
 幸いにも電波は通じる。
 ついにネメシスは運転室と客室との仕切りを壊して、こちら側に侵入してきた。
 高橋が何発が発砲する。
 当たってはいると思われるが、効いている感じがしない。
 既にリサは第1形態に戻っていた。

 リサ:「ネメシス!誰の命令でこんなことしてるの!?」
 ネメシス:「……見ツケタ……!」

 ネメシスは全ての歯が牙のように尖っており、その歯を見せて薄笑いを浮かべた。
 蓮華さんも試合用の竹刀ではなく、対BOW用の真剣を抜いている。
 だが、ミニ規格の大江戸線は車内も小さくて狭く、刀を大振りできない。

 リサ:「ネメシス!やめろ!!」

 リサがネメシスに警告を与えているが、ネメシスは聞かない。
 タイラントなら無条件でリサ・トレヴァーの言う事を聞くのだが、ネメシスはそうでもないようだ。
 ネメシスは持ち前の怪力で手すりを引き取ると、それを振り回してきた。

 高橋:「あっぶねぇな!」

 時々窓ガラスに当たったり、照明に当たったりして、それが割れる音が響く。
 リサがその攻撃を交わして、ネメシスに鋭い爪で引っ掻いた。

 愛原:「!?」

 その時、非常ボタンのスピーカーから何か聞こえてきた。
 雑音が大きいが……。

〔「日比谷線……はリサ・ト……。大江戸線は……シス。まさか本当に学校まで行けると思った?」〕

 最後の部分だけ声がはっきり聞こえた。
 その声は無邪気な少女の声であった。

 愛原:「オマエは誰だ!?」

 しかし、スピーカーからはクスクスと笑い声がしただけで、プツッと音声が切れてしまった。

 善場:「愛原所長、エブリンかもしれません!」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「先生、あいつマジヤバっス!」

 高橋と蓮華さんが後退してきた。

 善場:「止むを得ません!先頭車は放棄します!2両目へ後退しましょう!」

 私達が2両目へ退却すると、そこにはまだ乗客達が残っていた。
 何か、暢気に動画撮影している客もいる。

 愛原:「後ろの車両に避難してください!!」

 貫通扉を閉めて、物を挟んだが、そんなことしてもネメシスにとっては何でもない。
 ガラスを割ってこじ開ければ良いだけのこと。

 蓮華:「はーっ!」

 ネメシスが貫通扉を右手で破壊した所を蓮華さんが刀で斬り落とした。
 そこから血が噴き出す。
 だが、血はすぐに止まって、見る見るうちに右手が生えて来た。

 リサ:「栗原!……さん、ダメだよ!首を刎ねないと!」
 ネメシス:「タイマシ……リサ・トレヴァー『2番』……」
 愛原:「リサと蓮華さんが目的か!」

 ネメシスはリサと同じように掌から触手を出した。

 リサ:「いい度胸。触手で勝負」
 善場:「愛原所長と高橋助手も避難してください!」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「俺達も戦えるぜ!?」
 善場:「だからこそです!乗客達の避難誘導をお願いします。それに、所長達の仕事は斉藤絵恋さんの護衛のはずですよ?」
 愛原:「なるほど、そうか!」

 ここでは斉藤さんが一番戦えない。

 愛原:「斉藤さん、行くぞ!」
 斉藤:「リサさんは!?」
 高橋:「リサなら大丈夫だ!こん中でむしろ一番強い!」
 愛原:「そういうことだ!」

 私達は斉藤さんを連れて後ろの車両に逃げた。
 最後尾の運転室を開け、そこから貫通扉を開けて外に脱出すれば良い。
 だが!

 愛原:「!?」

 何と、今度は後ろに避難したはずの乗客達が前に向かって逃げて来た。

 愛原:「何だ何だ何だ!?前は危険ですよ!?」
 乗客:「後ろから化け物が来てるんだよ!」
 愛原:「ええーっ!?」
 斉藤:「は、挟み撃ち!?」

 んなバカな!?
 ネメシスが2匹もいるのか!?
 いや、しかしどうやって地下鉄のトンネルに!?

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