報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再度、高野に面会」

2020-12-20 22:55:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月2日07:54.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅大江戸線ホーム→大江戸線603A電車先頭車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は『1番』のことを聞く為、再び高野君の所へ面会に行く所だ。
 今度はルートを変えてみることにした。
 前回は都営新宿線で岩本町駅まで行ってみたが、隣の森下駅まで歩いてみて、そこから都営大江戸線に乗り換えることにした。
 こちらは空いているのではないかと見越してのことだ。

〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 ホームで電車を待つ乗客の数は多かった。
 やはり朝ラッシュだから当たり前か。
 しかし、やってきた電車の混み具合は、都営新宿線より空いていた。
 何より、意外とこの駅で下車がある。

〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕

 私達は先頭車に乗り込んだ。
 さすがに座れるまでには行かなかったが、吊り革に掴まれるくらいの混雑程度であった。
 吊り革どころか、乗り込むこと自体、一苦労の都営新宿線と比べればマシである。

〔「3番線から都庁前行き、まもなく発車致します。ドアが閉まります」〕

 車外スピーカーから短い発車メロディが鳴って、それからドアが閉まる。
 都営大江戸線はワンマン運転を行っている。
 電車が走り出すと、結構走行音は大きかった。

〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。お出口は、右側です〕

 新型コロナ対策の為に窓を開けているのと、トンネル断面が都営新宿線よりも小さい為に音が反響しやすい。
 また、軌間が標準軌である為、スピードを出して走行できるということもあって、尚更走行音が大きいというのもあるだろう。
 もっと言えばカーブが多いので、その度に車輪の軋み音も響くというのもある。

 愛原:「意外と空いてる。これなら痴漢も出ないだろうし、リサも安心して高校に行けるだろうな」
 高橋:「新宿の方に行く電車なのに、どうしてなんスかね?
 愛原:「都営新宿線や総武線と違って、千葉県から来ない上に、東京都の端っこや神奈川県に行ったりしない、東京都心で完結する路線だからかもしれないな」

 その割には山手線や丸ノ内線は混んでるって?
 さあ、何でかな……。
 新宿駅以外、ターミナル駅を通らないからだろうな。

[同日08:01.天候:不明 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→東京メトロ日比谷線仲御徒町駅]

 電車は上野御徒町駅に着いた。
 ここが下車駅である。
 ここからJR上野駅は徒歩圏内である。
 東京中央学園上野高校は上野駅の近隣に位置しており、十分徒歩圏内と言えるだろう。
 つまり、菊川から森下駅まで歩き、上野御徒町駅から上野高校まで歩けば、利用する路線は1つで良いということになる。
 これは使えると思った。
 リサに提案してみよう。

〔上野御徒町、上野御徒町。銀座線、日比谷線、JR線はお乗り換えです〕

 乗り換え路線が複数あるだけに、この駅での乗降客は多い。
 ここからでも日比谷線に乗り換えられる……というか、こっちの方がいちいち地上に出なくて良いから、こっちのルートの方がいいのかもしれない。
 東京拘置所の最寄り駅である小菅駅は、基本的には日比谷線と相互乗り入れする電車しか停車しないので、日比谷線で向かうのは普通である。

 愛原:「うん……そうだな」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「一応、定期は菊川~上野まで買ってあげよう。雨が降ってたりすると、大変だからな」
 高橋:「何の話ですか?」
 愛原:「リサが高校に通う時に買ってあげる定期だよ。今度は地下鉄通学になるからな」
 高橋:「ああ……」
 愛原:「その前に高校用のブレザー買ってあげないとダメか。スカートは共通だけど、リサも大きくなったしなぁ……」
 高橋:「アジャスターがギリだって言ってましたし、買ってやった方がいいと思いますよ。ていうかそれより、今はアネゴのことです」
 愛原:「おっとと!そうだった!」

[同日09:30.天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 今度は何のトラブルも無く、拘置所に到着することができた。
 よし、帰りも大江戸線経由にしよう。
 ……いや、帰りは新宿線でもいいか?

 高野:「先生、おはようございます。また来てくださいましたね」
 愛原:「はは、おはよう」

 どうしても、こういう刑事施設に収監されている者というと、囚人服とかを着ているイメージなのだが、高野君は普通の私服だ。
 未決囚は基本的に私服だからである。
 何しろ初公判がまだ先なので、しばらくはここでの生活が続くだろう。

 高野:「差し入れありがとうございます。これでまた暇つぶしが出来そうです」
 愛原:「そうか」
 高橋:「ムショとかだと、やることがあるからいいけど、拘置所じゃやること無ェしな。雑居房なら、適当な話し相手見つけて話すっていう手もあるんだけどな」
 高野:「全くだね」

 私は高野君に本などを差し入れた。
 また、拘置所内で購入することもできるが、それには現金が必要である。
 これも差し入れしておいた。

 高野:「それで、今日聞きたい事は何ですか?」
 愛原:「『1番』が現れたよ。但し、直接姿は現していない。……というかこの前来た時、痴漢に遭った女の子がそれっぽかったらしい」
 高野:「そうでしたか」
 愛原:「キミは『1番』のことについて、どれだけ知っているか教えてくれないか?」
 高野:「日本アンブレラが開発したリサ・トレヴァーの完全版の1つ。霧生市のバイオハザードの時、他のリサ・トレヴァー達と共に研究施設から脱走した個体」
 愛原:「それが今、都内にいるみたいなんだけど、何か知ってるかい?」
 高野:「『2番』と同様、寂しがりやの部分があると思います。『2番』のリサちゃんが愛原先生を慕っているのは、何も命を救われたからだけではなく、愛原先生に追い出されて、居場所を失うことを最も恐れているからです。『1番』も同じだと思われます」
 愛原:「しかし『1番』は同じ学校の生徒を駒扱いして、何人も殺してしまった。せっかくの居場所を自分で潰そうとするかね?」
 高野:「それは直接本人に聞きませんと。とにかく、私が知っているのはここまでです」
 愛原:「分かった。もし更に私に教えたくなったら、手紙を書いてくれな?」
 高野:「分かりました」

 この時点では、高野君からは重要なことは聞き出せなかった。
 でも、まだ他に何か知っていそうな感じだ。
 時期が来たら、話してくれるかもしれない。
コメント
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