[11月27日20:29.天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道会津田島駅]
〔「長らくの御乗車、お疲れ様でした。まもなく終点、会津田島、会津田島です。1番線に入ります。お出口は、左側です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意願います。会津田島から先のお乗り換えをご案内致します。湯野上温泉、芦ノ牧温泉、西若松方面、普通列車の会津若松行きは、4番線から20時32分の発車です。本日の最終列車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。本日も会津鉄道をご利用頂き、ありがとうございました」〕
結局、あれから列車には何も起こらなかった。
アニメや映画の如く、車内ではバイオハザードが発生し……なんて事態も想定していたのだが、杞憂に終わったようである。
善場:「どうやら無事に着けそうですね」
高橋:「人騒がせなクソガ……いや、BOWだな」
ついには場内信号機を越えた先の踏切をも過ぎて、電車はホームに入った。
善場:「恐らく……何の命令も受けていないのでしょうね」
高橋:「どういうことだ?」
善場:「アメリカの試作型は何の命令も受けていないにも関わらず、制御不能となって暴走しました。しかしエブリンに限らず、制御できているBOWは基本命令が無いと何もしません。ここにいるリサがそうです」
高橋:「それもそうだな」
電車が止まって、ドアが開いた。
向こうのホームには、ディーゼルエンジンのアイドリング音を立てて停車している気動車が停車している。
東武浅草から続く電化区間はここまで。
ここから北は、非電化区間となる。
もちろん3人は乗り換えるつもりは毛頭無く、そのまま改札口へ向かう。
駅員:「ありがとうございましたー」
会津田島駅は自動改札口が無く、ブースに駅員が立って、そこでキップの回収が行われる。
駅舎内には観光物産館などもあるが、もう最終列車の時間とあっては営業していなかった。
高橋:「ホテルはこの前泊まった所か?」
善場:「いえ、今回は違います」
高橋:「違う?」
善場:「こっちです」
3人は駅舎の外に出ると、駅前ロータリーを左に回った。
前回は右回りでロータリーを出たが……。
善場:「あのホテルです」
高橋:「近っ!」
リサ:「コンビニがある。ヤマザキショップ……?」
善場:「館内に自販機くらいあるでしょうが、何か不足なものがあったら、今のうちに買っておいた方がいいかもですね」
高橋:「タバコ買って来る」
リサ:「お菓子……いいですか?」
善場:「食べ過ぎない程度にね」
[同日21:00.天候:晴 同町内 グリーンホテルミナト]
この地に古くから営業しているホテルということもあり、建物は年季が入っている感じである。
こちらはカードキーではなく、従来からの鍵である。
高橋がシングルで、リサと善場がツインであった。
善場:「明日は9時半頃に病院に行きますので、よろしくお願いします」
高橋:「了解」
エレベーターを5階で降りると、そこでリサは高橋と別れた。
善場:「ここですね」
善場がカギを開ける。
善場:「前回と違って、今回は愛原所長を迎えに行くだけという形なので、そんなに予算が下りなかったんですよ」
善場はそう言った。
リサ:「でも、駅見える」
窓からは会津田島駅がよく見えた。
いわゆる、トレインビューというヤツである。
もう最終列車の時間が終わっているが、それでもホームには夜間滞泊と思しき車両が停車していたし、保線作業を行うのか、その車両が動いていた。
善場はライティングデスクの上にノートPCを置いた。
善場:「ちょっと事務作業がありますので、先にお風呂入っててください」
リサ:「はい」
リサはバスルームに行った。
ベタなビジネスホテルの法則通り、3点ユニット式であるが、そこの洗面台とは別に洗面所があった。
リサはバスタブに湯を入れている間、テレビを点けてみた。
因みにビジネスホテルのユニットバスの入り方も、研究所を出て愛原から教わった。
その為、他のリサ・トレヴァーは知らないだろう。
リサ:「チャンネル少ないねぇ……」
善場:「まあ、そこは地方ですから」
リサ:「ねぇ、善場さん」
善場:「何ですか?」
リサ:「人間に戻れて良かった?」
善場:「もちろんですよ。とはいえ未だ経過観察中ですが、特に体に不調は無いので、恐らくもう大丈夫なんだと思います。もちろん、1人でも人間を捕食した者はダメです」
リサ:「化け物として人間を食い殺したんだから、化け物として殺されろってことね」
善場:「それもあるんですけど、捕食するのようなヤツらの場合、人間だった頃の記憶が無く、人間だった頃の戸籍も無くなっているので、人間に戻して法の裁きを受けさせることができないのです。なので、BOWのまま殺処分した方が、被害者達も救われるかと」
リサ:「なるほど。私は?」
善場:「前の、人間だった頃の戸籍は無くなっています。日本アンブレラは施設から“買い取った”子供をしばらく養育した後、“不慮の事故”で死んだことにしてしまうのです。残念ながら、あなたもそうです。今は愛原リサとしての新しい戸籍で生きています。恐らく、リサ・トレヴァーの中で戸籍を取って人間として生活しているのは、あなたくらいかと」
リサ:「おー!」
善場:「よく人間を捕食しないで生きて来ましたね。まあ……体の一部を食べることはしているみたいですが、それはまあ、目を瞑りましょう」
リサ:「バレてた?」
善場:「バレバレです。それより、早くお風呂に入りなさい」
リサ:「はーい」
リサは自分の荷物の中からTシャツと黒のスパッツ、そして替えの下着を用意した。
そして、着ている制服を脱いだ時にふと気づいた。
リサ:(あ……スパッツ下に穿くの忘れてた)
そこで、また思い出す。
リサ:「善場さん、高野さん、釈放されるのかなぁ……?」
善場:「さあ……。どうでしょう?……司法取引に応じてくれるのなら、あるいは……と、言ったところでしょうか」
日本には司法取引の制度は無いが、高野は特別らしい。
善場:「ちょっと“青いアンブレラ”はねぇ……。日本で活動するには、勇み足だったのかもね」
どうやら、色々と日本の法律的にはマズい所が発覚してきているらしい。
欧米の感覚で日本にも展開してきたのがマズかったようだ。
在日米軍と同じである。
〔「長らくの御乗車、お疲れ様でした。まもなく終点、会津田島、会津田島です。1番線に入ります。お出口は、左側です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意願います。会津田島から先のお乗り換えをご案内致します。湯野上温泉、芦ノ牧温泉、西若松方面、普通列車の会津若松行きは、4番線から20時32分の発車です。本日の最終列車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。本日も会津鉄道をご利用頂き、ありがとうございました」〕
結局、あれから列車には何も起こらなかった。
アニメや映画の如く、車内ではバイオハザードが発生し……なんて事態も想定していたのだが、杞憂に終わったようである。
善場:「どうやら無事に着けそうですね」
高橋:「人騒がせなクソガ……いや、BOWだな」
ついには場内信号機を越えた先の踏切をも過ぎて、電車はホームに入った。
善場:「恐らく……何の命令も受けていないのでしょうね」
高橋:「どういうことだ?」
善場:「アメリカの試作型は何の命令も受けていないにも関わらず、制御不能となって暴走しました。しかしエブリンに限らず、制御できているBOWは基本命令が無いと何もしません。ここにいるリサがそうです」
高橋:「それもそうだな」
電車が止まって、ドアが開いた。
向こうのホームには、ディーゼルエンジンのアイドリング音を立てて停車している気動車が停車している。
東武浅草から続く電化区間はここまで。
ここから北は、非電化区間となる。
もちろん3人は乗り換えるつもりは毛頭無く、そのまま改札口へ向かう。
駅員:「ありがとうございましたー」
会津田島駅は自動改札口が無く、ブースに駅員が立って、そこでキップの回収が行われる。
駅舎内には観光物産館などもあるが、もう最終列車の時間とあっては営業していなかった。
高橋:「ホテルはこの前泊まった所か?」
善場:「いえ、今回は違います」
高橋:「違う?」
善場:「こっちです」
3人は駅舎の外に出ると、駅前ロータリーを左に回った。
前回は右回りでロータリーを出たが……。
善場:「あのホテルです」
高橋:「近っ!」
リサ:「コンビニがある。ヤマザキショップ……?」
善場:「館内に自販機くらいあるでしょうが、何か不足なものがあったら、今のうちに買っておいた方がいいかもですね」
高橋:「タバコ買って来る」
リサ:「お菓子……いいですか?」
善場:「食べ過ぎない程度にね」
[同日21:00.天候:晴 同町内 グリーンホテルミナト]
この地に古くから営業しているホテルということもあり、建物は年季が入っている感じである。
こちらはカードキーではなく、従来からの鍵である。
高橋がシングルで、リサと善場がツインであった。
善場:「明日は9時半頃に病院に行きますので、よろしくお願いします」
高橋:「了解」
エレベーターを5階で降りると、そこでリサは高橋と別れた。
善場:「ここですね」
善場がカギを開ける。
善場:「前回と違って、今回は愛原所長を迎えに行くだけという形なので、そんなに予算が下りなかったんですよ」
善場はそう言った。
リサ:「でも、駅見える」
窓からは会津田島駅がよく見えた。
いわゆる、トレインビューというヤツである。
もう最終列車の時間が終わっているが、それでもホームには夜間滞泊と思しき車両が停車していたし、保線作業を行うのか、その車両が動いていた。
善場はライティングデスクの上にノートPCを置いた。
善場:「ちょっと事務作業がありますので、先にお風呂入っててください」
リサ:「はい」
リサはバスルームに行った。
ベタなビジネスホテルの法則通り、3点ユニット式であるが、そこの洗面台とは別に洗面所があった。
リサはバスタブに湯を入れている間、テレビを点けてみた。
因みにビジネスホテルのユニットバスの入り方も、研究所を出て愛原から教わった。
その為、他のリサ・トレヴァーは知らないだろう。
リサ:「チャンネル少ないねぇ……」
善場:「まあ、そこは地方ですから」
リサ:「ねぇ、善場さん」
善場:「何ですか?」
リサ:「人間に戻れて良かった?」
善場:「もちろんですよ。とはいえ未だ経過観察中ですが、特に体に不調は無いので、恐らくもう大丈夫なんだと思います。もちろん、1人でも人間を捕食した者はダメです」
リサ:「化け物として人間を食い殺したんだから、化け物として殺されろってことね」
善場:「それもあるんですけど、捕食するのようなヤツらの場合、人間だった頃の記憶が無く、人間だった頃の戸籍も無くなっているので、人間に戻して法の裁きを受けさせることができないのです。なので、BOWのまま殺処分した方が、被害者達も救われるかと」
リサ:「なるほど。私は?」
善場:「前の、人間だった頃の戸籍は無くなっています。日本アンブレラは施設から“買い取った”子供をしばらく養育した後、“不慮の事故”で死んだことにしてしまうのです。残念ながら、あなたもそうです。今は愛原リサとしての新しい戸籍で生きています。恐らく、リサ・トレヴァーの中で戸籍を取って人間として生活しているのは、あなたくらいかと」
リサ:「おー!」
善場:「よく人間を捕食しないで生きて来ましたね。まあ……体の一部を食べることはしているみたいですが、それはまあ、目を瞑りましょう」
リサ:「バレてた?」
善場:「バレバレです。それより、早くお風呂に入りなさい」
リサ:「はーい」
リサは自分の荷物の中からTシャツと黒のスパッツ、そして替えの下着を用意した。
そして、着ている制服を脱いだ時にふと気づいた。
リサ:(あ……スパッツ下に穿くの忘れてた)
そこで、また思い出す。
リサ:「善場さん、高野さん、釈放されるのかなぁ……?」
善場:「さあ……。どうでしょう?……司法取引に応じてくれるのなら、あるいは……と、言ったところでしょうか」
日本には司法取引の制度は無いが、高野は特別らしい。
善場:「ちょっと“青いアンブレラ”はねぇ……。日本で活動するには、勇み足だったのかもね」
どうやら、色々と日本の法律的にはマズい所が発覚してきているらしい。
欧米の感覚で日本にも展開してきたのがマズかったようだ。
在日米軍と同じである。