報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「東武の帰路」

2020-12-06 19:48:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日12:23.天候:晴 栃木県日光市 東武鉄道下今市駅]

 リサ:「むー……」

 列車のトイレに入っているリサ。
 東武500系リバティのトイレは、全てウォシュレットとなっている。
 当然、女性が使うビデ機能もあるわけだ。
 リサも使用している。
 で、使うと気持ち良くなって、つい癖になってしまうのだった。
 事務所ではそれで高野に怒られたことがある。

〔♪♪♪♪。まもなく下今市、下今市です。……〕

 リサ:「おっと!」

 トイレの中にも響く自動放送。
 それで我に返ったリサは急いで、後始末を始めた。

 リサ:「急いで戻らなきゃ」

 後始末を終えたリサは、急いでトイレを出た。
 この時点でエブリンらしき者の姿は見られない。
 この列車には独立した洗面所が無いのだが、それは関係あるのだろうか。

 

〔「下今市、下今市です。当駅で12分停車致します。発車は12時35分です。また、後ろに3両、1号車から3号車を連結致します。発車までしばらくお待ちください」〕

 列車が下今市駅に到着する。
 リサが自分の席に戻ると、愛原が話し掛けた。

 愛原:「12分止まるそうだ。この隙に駅弁を買いに行けそうだな」
 高橋:「先生は病み上がりですから、ゆっくりしててください。駅弁なら、俺とリサで買って来ますよ」
 愛原:「そうか?悪いな」
 高橋:「何がいいっスか?」
 愛原:「そうだな……。肉系がいいかな」
 高橋:「了解です!ちょっぱやで買ってきます!リサ、行くぞ!」
 リサ:「了解!」

 リサと高橋はホームに降りた。

 高橋:「確か、このホームに駅弁屋があったはずだ」
 リサ:「あそこだよ!」
 高橋:「おおっ!」

 お昼時ということもあって、売店はなかなかの賑わいである。

 高橋:「明らかに、Gotoトラベル隊の連中ばっかだな」

 駅弁を買った後、列車に戻る。
 途中に待合室があるが、そこの前に駅員が数名いた。

 駅員A:「これですよ、これ!この落書き!」
 駅員B:「こんなに大きな落書き、誰も気づかなかったのか?」

 どうやら待合室の窓に大きな落書きがされていたようである。
 まだ消される前なので、リサ達はそれを見ることができた。
 どうやらそれは地下道などでよく見られるグラフティではなく、何かのメッセージ。
 血文字のような感じで書かれている。

 『あなたは あいつのお友だち あいつも あなたのお友だち みんなで死のう たのしく死のう』

 高橋:「何だこりゃ?」
 リサ:「うっ……!」

 突然リサに現れるフラッシュバック。

 『1番』:「あなたは♪あいつのお友達♪あいつも♪あなたのお友達♪皆で死のう♪楽しく死のう♪来世には♪あれがあるのよ♪現世には♪それは無いけど♪」

 高橋:「おい、リサ!大丈夫か!?」
 リサ:「い……ち……ばん……」
 高橋:「なに!?」

 リサには『1番』のことは後ろ姿しか記憶に無かった。
 しかしそれは残りの記憶が喪失していたからで、今また思い出した。
 仮面を被った『1番』が、『2番』のリサの前で、今の不気味な歌詞の歌を歌っていたのだった。

 リサ:「『1番』……もしかしたら、この近くにいるかも……」
 高橋:「何だと!?」

 高橋は周囲を見渡した。
 だが、高橋のイメージにもある白い仮面にセーラー服姿のリサ・トレヴァーは見受けられなかった。

 高橋:「おい、いねぇぞ!」
 リサ:「戻ろう。善場さんに……言わないと……」
 高橋:「……!」

 2人は車内に戻った。

 愛原:「おっ、ありがとう」
 高橋:「先生。リサの話じゃ、この近くに『1番』がいるっぽいです」
 善場:「えっ!?」
 愛原:「何だと!?」

 高橋はさっきの話をした。

 善場:「エブリンが現れない代わりに、『1番』が現れたのですか」
 リサ:「でも気配はしなかったの。普通は気配がするはずなのに……」
 善場:「巧みに人間に化けていたとするなら、上手く誤魔化せるのかもしれませんね」
 愛原:「どうします?この列車を降りますか?」
 善場:「いえ。降りたところで、もしも『1番』に捕捉されているのなら同じことでしょう。私も元リサ・トレヴァーでしたから、『1番』が何を考えているのか、想像はできます」
 愛原:「何ですか!?」
 善場:「『私のことを忘れるな』でしょうね。リサ・トレヴァーって、自己顕示欲が強いんですよ」
 愛原:「あ、そういえば……」
 善場:「私達がエブリンのことばかりを話題にしているので、少し頭に来たのかもしれません」
 愛原:「何だそりゃ」
 高橋:「てことは、やっぱり『1番』はこの近くにいるってことか?」
 善場:「列車が走り出したら、また車内を捜索しましょう。今度は6両編成ですから、ちょっと探すのが大変かもしれませんけど……」
 愛原:「リサ、頼んでいいか?昼飯の前で申し訳無いが……」
 リサ:「いいよ」

[同日12:35.天候:晴 東武日光線1128、1028列車]

〔♪♪♪♪。この列車は特急リバティ会津128号と、特急リバティけごん28号、浅草行きです。……〕

 列車が走り出すと、リサと善場が検索することにした。
 まずは先頭車に向かい、そこから後ろに向かって探すという作戦にした。
 特急列車なので、基本的に乗客は進行方向に向かって座っているからである。
 もちろん、途中にあるトイレも探した。
 使用中のトイレにあっては……。

 善場:「もしもーし!オカモトさーん!大丈夫ですかぁ~?」

 善場がトイレのドアをノックする。

 男性客:「え!?違うよ!」

 わざとノックをし、適当な名前を呼んでみるのだった。
 で、今みたいに明らかに男性の声がしたら違う。
 そして一巡してみて分かったことがある。

 善場:「いませんね」
 リサ:「うん。『1番』は大勢の人間を食べてるんだよね?」
 善場:「霧生市バイオハザード事件の最中、遭遇した人間を手当たり次第に襲って食べていたようですから」

 その中にたまたま運悪く、栗原蓮華達もいたのだ。

 リサ:「だったら、物凄く臭いはずなの。だけど、そんな臭いはしない」
 善場:「人間に化ければ、ある程度臭いは誤魔化せます。それでも、同族の『2番』や元同族の私の鼻は誤魔化せませんね」
 リサ:「だけど感じなかった」
 善場:「ということは、この電車には乗っていないということでしょうか」
 愛原:「どうも『1番』といい、エブリンとやらといい、考えが読めませんな」
 善場:「いずれにせよ『1番』は、栗原蓮華さんの敵ですから、彼女に見つかれば、問答無用で斬られるでしょうね」
 愛原:「いや、全くだ」

 ほとんど研究所から出ることの無かった『2番』のリサは、彼女らの心境はよく分からないという。
 それは裏を返せば、暴走状態と言えなくもない。
 少なくとも、『2番』のように、誰かにきちんと制御されているというわけではないようだ。
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“私立探偵 愛原学” 「特急リバティ会津128号」

2020-12-06 16:11:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日10:30.天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道会津田島駅→会津鉄道会津線1128列車4号車内]

 駅員:「10時41分発、特急リバティ会津128号、浅草行きの改札を始めまーす!」

 列車ごとに改札を行う会津田島駅。
 乗客達が改札口に並ぶ。
 駅員がブースに立って、1人1人キップを切る。
 特急は全車指定席なので、慌てて列車ら向かう必要は無い。
 改札口上に表示されているフルカラーLEDの発車標には、『1128 特急リバティ会津128号 浅草 改札中』という表示がされていた。
 ラチ内……失礼、改札内コンコースに入り、上りホームに向かうと、2番線に3両編成の特急車両が停車していた。
 下今市まで3両、下今市からは東武日光からの列車と併結して6両編成となる。
 3両編成のうち、最後尾の車両が指定されていた。
 もっとも、下今市からは更に後ろに3両が増結されるので、そこから先は中間車となるが。

 善場:「ここですね」

 5号車に1番近い座席が指定されていた。
 明らかに恣意性を感じる。
 必ずと言って良いほと、中間車が指定されることは無い。
 これは万が一、リサが車内で暴走した際にBSAAやデイライトがすぐに対処する為である。
 日本の鉄道車両は中間車両でも非常ボタンが付いているが、要は外から狙撃する際に先頭車か最後尾が狙いやすいからである。

 善場:「向かい合わせにしますか?」
 愛原:「そうですね。そうしましょう」

 私は進行方向向きの通路側に座った。
 窓側にはリサ。
 ビジネスマナーとしての席次は進行方向向きの窓側がトップになるのだが、リサが乗る場合はこの限りではない。
 窓側に座らせて、いざという時は外から狙撃するようにする為らしい。
 先頭車か最後尾かは、特に指定は無い。
 昔は運転席が乗っ取られないように最後尾で、という指定があったらしいが、今となってはほぼ無意味だからである(ATS未整備の時代と違い、今は外からでも列車を緊急停止させることができる為)。
 基本的に航空機、それにも旅客機には乗せない。
 そんな所で暴走されたら、即死亡フラグだからだ。
 八丈島の時は、特別に許可された。
 それで何も無かったので、恐らくうちのリサに限ってはOKになるかもしれない。
 当たり前だが、今でもリサは監視対象なのである。

 リサ:「この電車は窓の下にテーブルが無いね?」
 愛原:「そういえばそうだな」

 東武鉄道の車両には当たり前にある窓の下のテーブルが、500系リバティには無い。
 もちろん、ひじ掛けの中にテーブルは収納されている。

〔♪♪♪♪。この電車は10時41分発、特急リバティ会津128号、浅草行きです。下今市まで、快速運転を行います。停車駅は会津高原尾瀬口、上三依塩原温泉口、中三依温泉、湯西川温泉、川治湯元、川治温泉、龍王峡、新藤原、鬼怒川公園、鬼怒川温泉、東武ワールドスクウェア、小佐越、新高徳、大桑、大谷向、下今市、新鹿沼、栃木、春日部、北千住、とうきょうスカイツリー、終点浅草の順に止まります。……〕

 やたら停車駅の多い特急なのである。
 下今市駅までは各駅停車の部分もあり、それで特急料金は取らないのだろうが、しかしそこは問屋が卸さない。
 自由席として乗る場合は特急料金を払わなくて良いのだが、指定席として乗る場合は特急料金を払わなければならないのである(つまり前者は、JR東日本で言うところの『座席未指定券』のようなものである)。

 善場:「ここで1つ皆さんにお願いがあります」

 進行方向逆向き、通路側に座った善場主任が言った。

 善場:「この区間……まあ、会津田島から浅草までという長距離区間ですが、新型BOWエブリンの目撃例が多いようです。もし皆さんの中でそれらしき者を目撃したら、すぐに私に報告して頂きたいのです」
 愛原:「分かりました。因みにリサ、今それらしき気配はあるか?」
 リサ:「無いよ。何か、突然現れるの。普通だったら、私の鼻や耳ですぐに分かるのに」
 善場:「ですよね。アメリカのオリジナル版は、特異菌のBOWということもあってか、カビの臭いがしていたそうです。ところが、リサはカビの臭いはしなかったそうですね」
 リサ:「一応ね」
 善場:「リサ・トレヴァーに日本版完全体がいるように、エブリンにもそういった類の者がいるのかもしれません。何しろ、アメリカのオリジナル版が騒ぎを起こしてから3年経っています」
 愛原:「でも、それを開発したのはどこの誰なんですか?もう旧アンブレラは無いでしょう?」
 善場:「“青いアンブレラ”の話によると、“コネクション”だの“HCF”だのというバイオテロ組織の名前が出されていますが、向こうも調査中らしくて、詳しい情報が入って来ないのです。HCFにあっては、かのアルバート・ウェスカーが所属していた組織ですが、日本に支部はありませんし、“コネクション”に至っては全くの未知なる組織なので、情報がありません」
 愛原:「そうなんですか」
 善場:「ただ……。旧型のBOWたるリサ・トレヴァーに、何らかの思いはあるらしく、“青いアンブレラ”が無許可で霧生市に出張って来たのは、それを狙ってエブリンが現れるのではないかと踏んだようです。結果的にはハズレだったようですけどね」
 リサ:「旧型ってバカにしてたね、私のこと」
 愛原:「どんなに新型でも、地下鉄が0系や200系新幹線に勝てるわけないだろうが」
 善場:「得てして妙な表現ですね。確かにエブリンは新型です。しかしアメリカのオリジナル版を見た限りでは、向こうは完全体と言いつつ、とてもそうとは言えない欠陥だらけのものでした。それと比べれば、例え旧型でも名実ともに完全体であるリサ・トレヴァーの方に軍配は上がると思います」

 リサは自分が褒められているように思ったのか、照れ笑いを浮かべた。
 しばらくして、列車がゆっくりと走り出した。
 時計を見ると、定刻通りである。
 まだ乗客は少ない。
 賑わうのは、東武線に入ってからだろうか。
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