報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原、久しぶりの帰宅」

2020-12-07 20:05:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日14:45.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 久しぶりに私は自分の家に帰って来ることができた。
 実に感慨深い。

 愛原:「いやあ、自分ちはいいなぁ……」

 私は部屋に入ると、リビングのソファに座り込んだ。

 高橋:「この部屋も先生が帰って来てくれたことで、寂しくなくなりますよ。寛いでてください。後でコーヒー入れますから」
 リサ:「あっ、私が入れるー!」
 高橋:「オマエはさっさと着替えて来いよ」
 リサ:「『リサ・トレヴァーのJCカフェ』開店しまーっす!」
 愛原:「何だそりゃ……」
 高橋:「バリスタにカートリッジ入れて、ボタン押すだけだろうが」

 リサは私にコーヒーを入れてくれるまで、制服を着ていた。

 リサ:「どうぞ、ごゆっくり」
 愛原:「あ、ああ。ありがとう」
 リサ:「ふふ……。着替えて来るね」

 リサはそう言って、自分の部屋に戻って行った。
 いやあ、それにしてもやっぱり自分の家は落ち着くなぁ……。
 いやいや!
 ラスボスも張れる上級BOWリサ・トレヴァーや、道路交通法違反から暴行、傷害罪で前科ン犯の元ヤンと1つ屋根の下で落ち着くって!
 私も感覚がズレてきてるのかな……。

 高橋:「先生、明日はどうします?一応、日曜日ですが……」
 愛原:「そうだなぁ……。事務所に行ってみよう。高野君がいなくなって、事務作業とか大変なんだろう?」
 高橋:「ボスも気に掛けてくれますし、リサの様子を見に来た姉ちゃんが時々手伝ってくれますんで……」
 愛原:「自分達で何とかしなきゃいかんな。高橋もパソコン使えるんだから、事務作業も覚えてくれよ」
 高橋:「はい、そりゃもう」
 リサ:「私も手伝うー」

 私服に着替えたリサが会話に参加してきた。
 グレーのフード付きパーカーに、デニムのショートパンツを穿いている。

 高橋:「オマエは学校があんだろうが」
 リサ:「だから、学校が終わった時とか、明日とか手伝うの」
 愛原:「パソコン使えるのか?」
 リサ:「使えるようになったよ。先生が買ってくれたおかげで」
 愛原:「へえ……。まあいいや。斉藤さんとかと一緒に出掛けないのか?」
 リサ:「特に話は無いねぇ。多分、サイトーも実家に帰ってると思うから」
 愛原:「なるほどな。ということは、だ。高橋、明日は霧崎さんとデートできるんじゃないのか?」
 高橋:「どうっスかねぇ?あいつは……」
 リサ:「うん。いいと思う」
 愛原:「だろ?」
 高橋:「仕事の方が優先っスよ」
 愛原:「事務作業やるだけなら、昼までに終わるんじゃないのか?」
 高橋:「いや、まあ、そりゃそうっスけど。俺は先生の弟子なんスから、やっぱ勉強一筋っス」
 愛原:「たまには休みも必要さ。俺が入院中、事務所の方は任せっきりだったからな。息抜きしていいんだぞ?」
 高橋:「俺は大丈夫っスよ」

 その時、スマホの着信音がした。
 リサのスマホだった。

 リサ:「あ、サイトーからだ。『明日、遊びに行っていい?』だって」
 愛原:「うちにか?いいんじゃないか。どうせ俺も高橋も事務所だし」
 リサ:「私も手伝うって」
 愛原:「じゃあ、午後からかな」
 リサ:「うん」

 リサは斉藤さんに、午後からならOKというレスをした。

 リサ:「これでよしっと」
 愛原:「斉藤さん、実家にいないのか?」
 リサ:「空手道場にいるみたいだねぇ」
 高橋:「稽古の最中に、なにラインしてんだよw あのレズガキ」
 リサ:「今は休憩中みたい」
 愛原:「何気に斉藤さんの空手の腕に助けられた部分もあるから、そこは侮れないぞ?」
 リサ:「確かに。サイトーの空手技で、クリーチャーがピヨッたのは見ものだった」

 確か、鳴子温泉で餓鬼みたいなクリーチャーと戦った時か。
 斉藤さんがそいつの頭に拳を入れてくれたおかげで、すばしっこい餓鬼が脳震盪のようにフラついた。
 その隙に高橋がマグナムを撃ち込んで倒したんだったか。

 高橋:「先生。今日は先生の快気祝いをしたいと思います」
 愛原:「え?そんな、いいよ」
 高橋:「いえ。是非やらせてください」
 愛原:「そ、そうか」
 高橋:「つーわけで、ライフ行ってきます」
 愛原:「あ、ああ」

 リサにも買い物の手伝いをさせると思いきや……。

 高橋:「リサは先生に付いてやれ」
 リサ:「りょーかい!」

 1人で行くらしい。

 高橋:「それじゃ、行ってきます」
 愛原:「ああ。頼むよ」

 高橋が出て行くと、リサが言った。

 リサ:「この時間、サイトーのメイドさんも買い物に行く時間なんだよ。それ狙いだね」
 愛原:「そういうことか!」
 リサ:「じゃあ、2人っきりになったことだし、もっと別のことしようか?」

 リサは目を細めて妖艶な笑みを浮かべた。
 まだ15歳なのに、この妖艶さは……。
 ああ、そうか。
 リサ・トレヴァーだからこの肉体年齢だが、元々の生年月日としては私より年上なんだもんな。

 愛原:「何をする気だよ?」
 リサ:「お疲れの先生に、『リサ・トレヴァーのJCリフレ』オープンします!」
 愛原:「そういうことか」
 リサ:「じゃ、やっぱり着替えて来ないとね」
 愛原:「いいよ。いちいち制服に着替えなくても」
 リサ:「そう?でも……うん。それじゃあ……準備するから、ちょっと待っててね」

 リサはそう言って、再び自分の部屋に戻った。
 しばらくして……。

 リサ:「『リサ・トレヴァーのJCリフレ』へようこそー!」

 リサは制服ではなく、学校の体操服に着替えていた。
 上は白いTシャツ、下は学園のシンボルカラーである緑色のショートパンツである。
 昔はブルマだっただろうに、時代の流れだな。
 でもまあ、制服よりは体操服の方が動き易いか。
 私は早速、リサの部屋に向かった。

 リサ:「では、まずフットバスから~」
 愛原:「いいねぇ」

 私はプラスチックのたらいに張られたお湯の中に足を入れた。

 リサ:「先生、ずっと長い入院してて、しかも帰りも長旅だったから疲れてるでしょ?」
 愛原:「まあな」
 リサ:「体中、老廃物が凝り固まってそうだねぇ……。今日はそれを全部食べて……もとい、吸い出してあげるねぇ」
 愛原:「お手柔らかによろしく」

 人間の血肉を食らわない代わりに、老廃物でBOWとしての食欲を満たせているのだから、結果オーライか。
 リサに血中の老廃物を吸い出してもらうことで、確かに血液はサラサラになる感じがするのだから。
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“私立探偵 愛原学” 「東京帰着」

2020-12-07 10:56:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日14:15.天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅]

 電車が隅田川の鉄橋を渡る。
 90度のカーブでは徐行するが、それでも車輪の軋む大きな音が車内に響いてくるほどだ。

〔「浅草、浅草、終点です。4番線に入ります。お出口は、左側です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意ください。本日も東武鉄道をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 そして、ゆっくりと浅草駅の特急ホームに停車する。

〔ご乗車、ありがとうございました。浅草、浅草、終点です。東京メトロ銀座線、都営地下鉄浅草線はお乗り換えです。……〕

 愛原:「結局、何も無かったな?」
 善場:「そうですね……」

 私達は列車を降りて、改札口に向かった。
 いつもいつも何かあっても困るのだが、今回にあっては肩透かしだ。

 高橋:「いつの間にか、あの義足の女子高生が倒してくれてると楽っスね」
 愛原:「栗原さんか。何だかんだ言って、強いなぁ」
 リサ:「私以外のリサ・トレヴァーが弱いだけだよ」
 高橋:「おお?何か、張り合ってんなぁ?」
 リサ:「そ、そんなことない!」

 自動改札口まで行くと、その外側には栗原蓮華がいた。
 私服姿で、特に今は日本刀を持っているわけではない。

 愛原:「あれ?栗原さん?」
 栗原蓮華:「愛原先生、退院おめでとうございます。それと、霧生市の時は申し訳ありませんでした。私が……『8番』を先生達の方に斬らなければ、あんなことには……」
 愛原:「何だ、そんなことか。あれはキミは悪くないよ。俺達の出るタイミングが悪かったんだ」
 高橋:「俺も、油断して申し訳無かったっス!」
 愛原:「だから、いいんだって。それにしても、日本のリサ・トレヴァーは色々特徴あるな。『8番』みたいに毒液吐いて来るのもいるし、『7番』みたいにハンターを呼び寄せる奴もいたし、こっちのリサに至ってはタイラントを使役できる」
 リサ:「この近くにいればね」
 愛原:「『1番』はどんな特徴があるんだろうな?」
 善場:「『2番』と同じ完全体だということなので、恐らくこの『2番』のリサと同じようなものではないかと」
 愛原:「タイラントを使うのか。それは危険だ」
 リサ:「違うと思う。もっと、別の力を持っているような気がする」
 善場:「今は記憶が曖昧だと思いますが、思い出したらすぐに教えてください」
 リサ:「分かった」

 浅草駅の外に出て、迎えの車に乗り込む。

 愛原:「栗原さんはいいのかい?」
 蓮華:「私の家、本所吾妻橋駅の近くなんです。歩いて帰れます」
 愛原:「そうなんだ」

 東京中央学園上野高校へは浅草駅まで歩き、そこから銀座線に乗っているのだろうか。

 善場:「マンションの方でいいですか?」
 愛原:「ええ。お願いします」
 善場:「分かりました」

 善場主任が部下の黒服男性に合図をすると、男性職員は頷いて車を走らせた。

 愛原:「善場主任」

 私は助手席の善場主任に話し掛けた。

 善場:「何でしょう?」
 愛原:「高野君に面会したいんですが、可能でしょうか?」
 善場:「大丈夫ですよ。但し、平日のみになりますので、ご注意ください」
 愛原:「分かっています」
 善場:「もしかしたら、所長がいた方が何か真相を話してくれそうですね」
 愛原:「どうでしょう?職員が立ち会っているんでしょう?……もう東京拘置所に?」
 善場:「はい。“青いアンブレラ”の活動は日本では非合法となりました。合法である欧米各国からは非難もありましたが、BSAAからはその存在を疑問視する声もありましたので」

 旧アンブレラが犯した罪の数々を贖罪する為、未だ各国で起こっているバイオテロを責任を持って鎮圧するという理念の下に立ち上げられた組織らしいが、いくら贖罪意識があるとはいえ、元はテロを起こす側にいた連中が鎮圧する側を行うというのは何とも疑わしいということだった。
 因みにBSAAにもそのような職員はいるが、あまり前に出されることはない。
 というか、BSAAに入ればいいのに、それをせず、新たな組織を立ち上げるということが疑問視されているのだ。
 高野君の日本アンブレラ時代の所属はUSS、つまりアンブレラ直営の警備会社である。
 アメリカでは警備会社であっても、許可さえ取れば警察並みの装備を用意することができ、しかも捜査権を持つこともできる。
 日本では規制が厳しいので、それは無理。
 高野君が自称、地元の新聞記者でありながら、軍用のライフルやマシンガンをいとも簡単に扱えたのは、アメリカのUSSで訓練を受けた経験があったからである。
 “青いアンブレラ”はアメリカの警備会社の感覚で日本でも活動したことが、アウトだったわけだ。
 それまではBSAAの依頼を受けて、後方支援などを行うに留めるという名目で活動できたわけだが、霧生市においてBSAAの依頼でもないのに勝手に行動をしたのがマズかったというわけだ。
 BSAAは国連組織であり、バイオテロ発生時は迅速な鎮圧を行う為、地元政府の許可が無くても現地入りして活動できることになっている。
 “青いアンブレラ”はそれにぶら下がって日本でも活動していたのだが、ついに化けの皮が剥がれることとなった。

 高橋:「まさか、アネゴは死刑っスか?」
 善場:「それは無いと思います。高野被告が殺人を犯したという証拠はありませんし、彼女自身の証言もありません」
 高橋:「ゾンビを殺して殺人犯だって言われたら、俺や先生も逮捕だぜ?」
 善場:「そして私も逮捕ですね。大丈夫です。ゾンビに関しては、もう死体と同じですし、死体を撃ったからといって、今度は死体損壊罪に問われるのかというと、それも適用外だと法曹界からの公式見解もありますので」

 霧生市のバイオハザード事件の時、生還者の多くはゾンビと戦ったり、中には銃で応戦した者もいたが、当時の日本政府から、全てそれは緊急避難や正当防衛と認めるとの発表があった。

 善場:「とにかく、面会は平日のみ。場所は小菅の東京拘置所です」
 愛原:「分かりました」

 善場主任の話によれば、執行猶予が付くかどうか微妙なところらしい。
 高野君がもっと善場主任の組織に協力的であれば、司法取引ではないが、執行猶予が付くくらいの勢いらしい。
 だが、高野君は刑に服する気満々らしく、善場主任が面会に行っても、もうアンブレラのことは話さないとのことだ。
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