報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「大会前日」

2020-12-24 15:32:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月5日21:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「うぃ~、次いいぞー」

 風呂から上がった私は、高橋に言った。

 高橋:「うっス!先生の残り湯、堪能させて頂きやす!」
 愛原:「だから、サラッと気持ち悪いこと言うなって」
 リサ:「お兄ちゃん、次は私だからね!先生の残り湯!」
 高橋:「あー、聞こえねぇ!聞こえねぇ!」
 愛原:「オマエらなぁ……」

 私は呆れ顔と苦笑を混じらせながらキッチンへ向かった。

 愛原:「ビール、ビールっと」

 冷蔵庫の中から缶ビールを取り出す。

 リサ:「ねー、私も一口ちょうだい」
 愛原:「出たな!妖怪ヒトクチチョーダイ!あと5年待て!」
 リサ:「えー」
 愛原:「『えー』じゃない!」
 リサ:「でもぉ……」
 愛原:「『でも』じゃない!」
 リサ:「だってぇ……」
 愛原:「『だって』じゃない!」

 私はリビングのソファに座ると、テレビを点けた。
 バラエティ番組で、芸能人のペットの特集をやっている。

〔「凄い大きい犬ですねぇ!?」「でも性格は大人しいんですよ?」「私が触っても大丈夫なんですかぁ~?」「もちろん!」〕

 リサ:「滑稽だねぇ!」

 リサ、私の隣にダイブしてくる。

 愛原:「ちょっ……!ひっつくな!」
 リサ:「人間と馴れ合うなんて、所詮はペット~!」
 愛原:「オマエが言うな!」

〔「ちょっとドーベルマン、怖いんですけどォ~?」「いやいや!ドーベルマンってのはですね、こう見えて結構臆病な種類なんですねぇ~!」「ホントですかぁ~?」〕

 愛原:「ゾンビ化したドーベルマンは除く」
 リサ:「言えてる。愛原先生達が来た時には既に外に連れ出されてたけど、私がいた研究所には……頭が3つあるケルベロスみたいなヤツもいたからね」
 愛原:「ちょっと待て!それ初耳だぞ!?それ何!?ヘタすりゃ俺達、そいつと戦ってたってこと!?」
 リサ:「まあ、私が最初に目を付けてたんだから、たかだかワンコ如きに先生は殺させないけどね」
 愛原:「そのケルベロスみたいな奴はどうなった!?」
 リサ:「さぁ?あの後さっぱり出て来なかったから、殺処分されたんじゃないの?」
 愛原:「メチャクチャ怖いんだけど、そういうの」
 リサ:「名前をティンダロスって言うんだって」
 愛原:「あ、そのまんまケルベロスじゃないのか」
 リサ:「私の言う事全然聞かないから、全然可愛くない犬だったね」
 愛原:「首が3つある時点で、可愛さマイナスだけどな!」
 リサ:「私にも首輪着けていいよ?リードも着けてね」
 愛原:「オマエが動物系のBOWなら、そうしてるよ。だけど、こうやって人型のBOWなんだから、そんなことするわけにはいかないだろう?」
 リサ:「そうかな?」

 リサはテレビのチャンネルを変えた。
 今度は歌番組である。
 そこでは女性バンドユニットが、ちょうど新曲を披露していた。

 リサ:「ほら、この人、首輪着けてる」

 リサがアップで映った女性ボーカルを指さした。

 愛原:「それはチョーカーって言ってだな、ただのファッションであって、犬猫に着ける首輪とはワケが違うの」
 リサ:「私も似合うかな?」
 愛原:「そりゃオマエは可愛いから、何でも似合うと思うよ」
 リサ:「! おー!」
 愛原:「人間形態よりは、鬼形態の方が似合うかもな」
 リサ:「ほんと!?」

 するとリサは第1形態に変化した。

 リサ:「これとか?」
 愛原:「『飼われてる鬼』ですよってか?いやいや、やっぱダメだな……」
 リサ:「ふーん……?」

 リサ、更に私にひっついてくる。

 リサ:「この姿も好きだよね?『人食い鬼』を押し倒したら先生、最強だよ……?」
 愛原:「ん?」

 リサは少し開けた口から、吐息を漏らした。

 リサ:「先生……」

 リサは妖艶な顔になっている。
 心なしか、リサの体から女の匂いが漂って来た。

 愛原:「リサ、落ち着け!」
 リサ:「食べたい……」

 リサが私の口に吸い付こうとした時だった。
 リサのスマホがブーブー震え出した。

 リサ:「チッ、誰だよ?こんな時間に……」

 リサは舌打ちをすると、テーブルの上の自分のスマホに向かった。

 リサ:「サイトー?何の用?」

 リサは不機嫌そうに出た。
 それっ、今のうちに!

 リサ:「あっ、待て!」

 私はサーッと自分の部屋に逃げると、鍵を掛けた。
 因みに鍵は3つ付いている。
 変化したリサにはどんな鍵を付けていても焼け石に水だが、時間稼ぎにはなる。
 また、リサの部屋には外から鍵を掛けることができる。
 リサが暴走した場合、外から鍵を掛けて閉じ込めるのだが、それとて変化したリサにはやっぱりただのお飾りでしか無いのである。

 斉藤:「り、リサさん、急にお腹が痛くなってきたから、またね……」
 リサ:「あー、漏らす前にさっさと行っといで。今度私の邪魔をしたら、コジマみたいになるからね?」

 リサのヤツ、斉藤さんに植え付けたウィルスを少し活性化させたようだ。
 普段は休眠状態にさせているが、リサの不興を買った場合、活性化させられてしまう。
 リサの場合はまだ力を抑えて胃腸炎を起こさせる程度にしているが、本気を出せばゾンビ化したり、全身から血を噴き出させて殺すこともできる。
 『1番』はそうした。

 リサ:「ちっ、もうちょっとだったのに……」

 リサの悔しそうな声が外から聞こえてくる。
 ドアを開けようとしたが、鍵が掛かっているので諦めたようだ。
 無理やりこじ開けることも可能だが、大騒ぎして追い出されるのは困るので、そこまでは考えられるらしい。
 それにしても、いくら生理前でムラムラしているんだか何だか知らないが、第1形態に変化する度に性欲も強くなっているような気がする。
 リサも年頃の女の子になってきたが、早いとこ人間に戻してあげないと、後で大変なことになるような気がした。

 愛原:「リサ、明日は大事な日だろ?さっさと寝る準備しろ」
 リサ:「はぁい」

 ようやく高橋が風呂から出て来て、やっとリサが風呂に入ると、私はそのタイミングで部屋から出ることができた。
 ところが、私の部屋の前に、さっきまでリサが着けていたブラショーツが置かれていて、改めて私は食欲から性欲の『捕食対象』へと変化したのだと改めて認識させられた。
 いや、両方かもしれない。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長からの依頼」

2020-12-22 20:04:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月2日12:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 高野君への面会で東京拘置所に行った後、事務所に戻ると、斉藤社長からの依頼書がファックスされていた。
 それに目を通していると、ボスから電話が掛かって来た。

 ボス:「私だ」
 愛原:「ああ、ボス。お疲れ様です」
 ボス:「昼休みの最中、申し訳ない。そちらに斉藤社長からの依頼書が行ったと思うが、引き受けてくれるかね?」
 愛原:「はい。大丈夫です」
 ボス:「そうか。では、私から斉藤社長には伝えておくから、詳しい資料をメールしてもらおう。今日中に来るだろうから、しばらく待ってもらいたい」
 愛原:「分かりました」

 私は電話を切った。
 本当にボスは、ここぞという時にはタイムリーに連絡を入れて来る。
 一体、正体は誰なのだろう?

 高橋:「またレズガキのお守りっスか?」
 愛原:「そんなところだ」
 高橋:「全く。探偵を何だと思ってんスか、あの社長は……」
 愛原:「いや、今度の仕事は渡りに舟かもしれないぞ」
 高橋:「? どういうことっスか?」
 愛原:「今度の日曜日、聖クラリス女学院中等部と東京中央学園墨田中学校で女子空手部の交流試合があるらしい。絵恋さんも参加するから、俺達は護衛として付いて行って欲しいとのことだ」
 高橋:「あいつに護衛なんて要ります?化け物をピヨらせることができるヤツですよ?」
 愛原:「しかし、もしあの学校に『1番』がいるとしたら、巻き込まれる恐れがある。そんな時、バイオハザードを何度も潜り抜けた俺達の護衛が必要だってことらしいな」
 高橋:「どっちかっつーと、探偵よりかはガードマンの仕事って感じですね」
 愛原:「まあな」

 もちろん身辺警備を一手に引き受ける警備会社は存在する。
 だが、普通の暴漢相手ならそれで事足りるだろうが、何しろ相手はBOWだからな。
 海外ならむしろそこで“青いアンブレラ”の出番なのだろうが、いかんせん日本では活動停止を食らってしまった。
 最初のうちは日本の警備会社に毛を生やしたような活動にしておいたら、取り締まられることもなかっただろうに、“青いアンブレラ”は日本をナメてるとしか思えない。
 いや、むしろヘタすりゃ“青いアンブレラ”が出張ってもおかしくないバイオハザードをナメている日本政府の方がおかしいのだろうか。
 もしも新型コロナウィルスがゾンビウィルスに変異しようものなら、後者の論が正しいということになる。

 高橋:「しかしあんなことがあったってのに、開催するんですね」
 愛原:「ミッション系の学校だからな。『神の御加護さえあれば大丈夫』とでも思ってるのかもな」
 高橋:「全然大丈夫じゃなかったと思いますけどね」
 愛原:「まあな。まあ、俺の勝手な想像だ」

[同日15:30.天候:晴 同事務所]

 リサ:「ただいま」
 斉藤絵恋:「こんにちはー」

 日本広しと言えど、JCが気軽にやってくる探偵事務所なんて、ここだけだろう。
 だが、ちょうどいい。

 愛原:「おー、お帰り。斉藤さん、いらっしゃい」
 高橋:「神聖な事務所をたまり場にすんじゃねぇ」
 愛原:「まあ、どうせヒマだからいいよ」
 高橋:「はあ……」
 愛原:「給湯室の冷蔵庫にジュースがあるから」
 リサ:「はーい」
 斉藤:「ありがとうございます」

 2人は給湯室にあるダイニングテーブルに向かった。
 ここで宿題をやるのが定番になっている。

 愛原:「今日は、あのメガネのコはいないのかい?」
 リサ:「コジマは午後から病院に行ってる」
 愛原:「そうか」
 斉藤:「リサさんが『捕食』してくれてるおかげで、小島さんのお腹の病気も調子がいいんですよ」
 愛原:「そりゃあ良かった。それより斉藤さん、ちょっと飲みながらでいいから聞いてくれるかな?」

 すると斉藤さん、リサとの一時を邪魔されるのがイラッと来たか、眉を潜めて言った。

 斉藤:「これから宿題をやらせて頂くんですけど?」
 愛原:「ああ、そうかい……」

 だが、リサが斉藤さんを軽く睨み付けた。
 今のリサは人間に化けた第0形態だが、睨み付ける瞬間のみ、瞳が赤く光った。

 リサ:(なに先生の頼み断ってんの?いい度胸してんじゃん。逆らったらどうなるか、分かってるよね?)

 そんなことを言いたげだ。

 斉藤:「ひぅ……!ご、ごめんなさい!な、なんでしょうか?」
 愛原:「ああ……えーと……。さっき、斉藤さんのお父さんから仕事の依頼を受けたんだ。何でも今週日曜日、空手の対外試合があるらしいね?」
 斉藤:「あー、そのことですか。よりにもよって、連続猟奇殺人事件が起きた聖クラリスですよ?何で中止にしないのって思いましたね」
 愛原:「会場はその聖クラリス女学院なんだってね」
 斉藤:「そうなんです。あそこの武道館の方が、うちより新しくてきれいなので」
 愛原:「そうなのか。で、私と高橋がキミの護衛役を任されたのでよろしく」
 斉藤:「そうなんですか。まあ、私は護衛なんて要らないって言ったんですけどね。父の心配性のせいで、巻き込んでしまって申し訳ありません」

 斉藤さんはやや憤慨気味に言った。

 愛原:「どうだろう?この際だからリサも、関係者として一緒に連れて行くことはできないだろうか?私達はキミの護衛役として一緒に学校に入れるみたいだが、リサも一緒の方がキミはもっと安心だろう?」
 斉藤:「そうですね!ていうか、リサさんの応援があれば心強いです!……そうですね。リサさんには、空手部のマネージャー助手ということにしておきましょう」
 愛原:「よろしく頼むよ」

 これでリサを潜り込ませれば、『1番』のことがもっと分かるかもしれない。
 何しろ同じリサ・トレヴァーだ。
 同族のことは、もう気配などで分かるだろう。

 斉藤:「高等部では女子剣道部の交流試合もあるそうなので、盛り上がれそうですね」
 愛原:「えっ、そうなの!?」

 私は咄嗟に栗原蓮華さんの顔を思い浮かべた。

 斉藤:「そうなんです。えーと……高等部には1年生で、しかも左足が義足でありながら、段位を持つ強い剣道部員がいるそうです」
 愛原:「栗原さんだ!……因みに、因みにだよ?更に他に武道の交流試合はあるの?」
 斉藤:「いいえ。中等部では女子空手部、高等部では女子剣道部だそうです。それがどうかしましたか?」

 私と高橋は顔を見合わせた。
 これは何たる偶然!……というには、あまりにも話が出来過ぎてはいないだろうか?
 もしかして、大いなる罠が仕掛けられているのでは?
 うん、何かそんな気がしてきた。

 愛原:「とにかく、俺達とリサが護衛に行くから。もし斉藤さん、危険だと思ったら、急いで逃げるんだよ?」
 斉藤:「えぇ?」
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“私立探偵 愛原学” 「秋葉原経由菊川行き」

2020-12-22 16:09:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月2日10:20.天候:晴 東京都千代田区神田佐久間町 東京メトロ秋葉原駅→秋葉原電気街]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 高野君と2回目の面会を行った後、事務所に戻る途中である。
 来た道を戻るつもりでいたので、本来なら1つ手前の仲御徒町駅で降りる予定であった。
 しかし高橋が、どうしてもアキバに寄りたいというので、帰りは秋葉原周りで帰ることにした。

〔足元に、ご注意ください。あきはばら、秋葉原。中目黒行きです〕

 私達は秋葉原駅で降りた。

 高橋:「先生、サーセン。俺のワガママに付き合って頂いちゃって……」
 愛原:「別にいいよ。それで、何だ?買い物か?」
 高橋:「そうなんです。注文してた銃のカスタムが終わったみたいなんで、引き取りに……」
 愛原:「それは本物?それともエアガン?」
 高橋:「【お察しください】」

 地上に出て電気街方面に向かう。

 高橋:「引き取りに行くだけなんで、すぐ終わります」
 愛原:「そうか」
 高橋:「先生もついでに、新しい銃を見繕ってみては?」
 愛原:「いいよ。別に持ち歩くわけじゃないし、俺にはショットガンで」
 高橋:「そうですか?」
 愛原:「それで思い出したけど、高野君みたいなスナイパーがいなくなると、少し痛いかもな」
 高橋:「え?」
 愛原:「いや、『1番』との戦いが今後どうなるか分からんけど、もしもゲームや映画のような展開になるとしたら、遠くから狙撃することも重要だからな」
 高橋:「でも実際最後の方、ロケランとかグレラン撃ってますよ?」
 愛原:「……まあな。やっぱりいいよ。最後はBSAAの皆様の仕事だ」
 高橋:「はい」

 平日の午前中とあってか、電気街は空いていた。
 電気街は北に行けば行くほど、マニアックな店が増える傾向にある。
 特に、『電気街北口駅』とも言える銀座線の末広町駅周辺はそのような店が多い。
 その為、電気街の北側に用のある者は、秋葉原駅ではなく、末広町駅を利用するのだという。
 そこの一画に、高橋行きつけのガンショップがあった。

 店長:「いらっしゃい。おお!高橋さん」
 高橋:「うス。マスター、例の物を引き取りに来たぞ」
 店長:「毎度。今度のカスタムでは、弾倉の方を……」
 高橋:「これから敵はもっと強くなる。霧生市のゾンビの1匹や2匹、弾1発で軽くあの世に送れるくらいの威力は欲しいよな」
 店長:「高橋さんは誰と戦ってるの?」
 愛原:「高橋、一応ゾンビも元人間だからな?」

[同日10:56.天候:晴 千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1088K電車最後尾車内]

 高橋の用事も終わり、私達は本当に事務所に帰ることにした。

 高橋:「先生、サーセンっした」
 愛原:「いや、いいよ。これからの戦いの役に立つってんなら……。あ、いや、なるべくなら使わない方がいいんだよな」

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。急行電車の通過待ちは、ありません〕

 強風を伴って京王電鉄の車両が飛び込んで来る。
 さすがにラッシュの終わった今は、空席の目立つ車内となっている。

〔4番線は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう~、岩本町~〕

 電車に乗り込んで、ローズピンクの座席に腰かけた。
 車両にもよるだろうが、都営地下鉄の車両よりもクッションは柔らかい。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 都営地下鉄の車両はJR東日本の普通列車と同じ音色のドアチャイムだが、京王電鉄の方はJR東海のそれと同じである。
 乗務員室の方から発車合図のブザーが聞こえると、エアの抜ける音がして電車が走り出した。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.S09.Please change here for the Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 この区間で私達は『1番』と思われる少女に出会った。
 反対方向であるが。
 どうして『1番』はあの時、痴漢に遭った少女でいたのだろう?
 私達のことは、『1番』の耳にも入っていたはず。
 明らかに彼女の敵になることは知っていたはずだ。
 であれば、私達がまだ正体を知らぬうちに殺してくるなり、いっそのことあの電車にウィルスを撒き散らしてバイオハザードを引き起こすことだってできたはずである。
 いや、そもそも何であのタイミングで痴漢に遭ってたんだ?
 そりゃ、痴漢が発生してもおかしくないほどの混雑っぷりではあったが……。

 愛原:「ん?」

 その時、私のスマホが震えた。
 メール着信である。
 見ると、斉藤社長からであった。
 新たに仕事の依頼があり、その依頼書を事務所にファックスしたので、確認してほしいというものだった。
 全く。
 NPO法人デイライトと斉藤社長の仕事の依頼のおかげで、うちの事務所は持っているようなものだ。
 ありがたいことだ。
 もっとも、斉藤社長の依頼してくる仕事とは、おおよそ探偵業とはかけ離れた『便利屋』とか『何でも屋』みたいなものであるが……。

 愛原:「斉藤社長から仕事の依頼が来たようだ。急いで帰って確認しよう」
 高橋:「はい」

 日本でも指折りの大製薬企業の経営者である斉藤社長が、うちみたいな弱小探偵事務所に仕事の依頼をしてくるなんて、今もってしても不思議なことである。
 ただこれは、斉藤家の財務から報酬が支払われており、大日本製薬(通称、ダイニチ)の会計から支払われているのではない。
 つまり、斉藤社長の個人的案件で私達は動いているわけだ。
 もちろんそれでも、私達にとっては大口顧客であることに変わりは無いが。
 はてさて、斉藤社長は今度は何の依頼をしてきたのだろう?
 また、絵恋さんのお守りじゃないだろうな。
 ここで一旦、『1番』に関する推理・考察は停止した。
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“私立探偵 愛原学” 「再度、高野に面会」

2020-12-20 22:55:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月2日07:54.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅大江戸線ホーム→大江戸線603A電車先頭車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は『1番』のことを聞く為、再び高野君の所へ面会に行く所だ。
 今度はルートを変えてみることにした。
 前回は都営新宿線で岩本町駅まで行ってみたが、隣の森下駅まで歩いてみて、そこから都営大江戸線に乗り換えることにした。
 こちらは空いているのではないかと見越してのことだ。

〔まもなく3番線に、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 ホームで電車を待つ乗客の数は多かった。
 やはり朝ラッシュだから当たり前か。
 しかし、やってきた電車の混み具合は、都営新宿線より空いていた。
 何より、意外とこの駅で下車がある。

〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕

 私達は先頭車に乗り込んだ。
 さすがに座れるまでには行かなかったが、吊り革に掴まれるくらいの混雑程度であった。
 吊り革どころか、乗り込むこと自体、一苦労の都営新宿線と比べればマシである。

〔「3番線から都庁前行き、まもなく発車致します。ドアが閉まります」〕

 車外スピーカーから短い発車メロディが鳴って、それからドアが閉まる。
 都営大江戸線はワンマン運転を行っている。
 電車が走り出すと、結構走行音は大きかった。

〔次は両国(江戸東京博物館前)、両国(江戸東京博物館前)。お出口は、右側です〕

 新型コロナ対策の為に窓を開けているのと、トンネル断面が都営新宿線よりも小さい為に音が反響しやすい。
 また、軌間が標準軌である為、スピードを出して走行できるということもあって、尚更走行音が大きいというのもあるだろう。
 もっと言えばカーブが多いので、その度に車輪の軋み音も響くというのもある。

 愛原:「意外と空いてる。これなら痴漢も出ないだろうし、リサも安心して高校に行けるだろうな」
 高橋:「新宿の方に行く電車なのに、どうしてなんスかね?
 愛原:「都営新宿線や総武線と違って、千葉県から来ない上に、東京都の端っこや神奈川県に行ったりしない、東京都心で完結する路線だからかもしれないな」

 その割には山手線や丸ノ内線は混んでるって?
 さあ、何でかな……。
 新宿駅以外、ターミナル駅を通らないからだろうな。

[同日08:01.天候:不明 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→東京メトロ日比谷線仲御徒町駅]

 電車は上野御徒町駅に着いた。
 ここが下車駅である。
 ここからJR上野駅は徒歩圏内である。
 東京中央学園上野高校は上野駅の近隣に位置しており、十分徒歩圏内と言えるだろう。
 つまり、菊川から森下駅まで歩き、上野御徒町駅から上野高校まで歩けば、利用する路線は1つで良いということになる。
 これは使えると思った。
 リサに提案してみよう。

〔上野御徒町、上野御徒町。銀座線、日比谷線、JR線はお乗り換えです〕

 乗り換え路線が複数あるだけに、この駅での乗降客は多い。
 ここからでも日比谷線に乗り換えられる……というか、こっちの方がいちいち地上に出なくて良いから、こっちのルートの方がいいのかもしれない。
 東京拘置所の最寄り駅である小菅駅は、基本的には日比谷線と相互乗り入れする電車しか停車しないので、日比谷線で向かうのは普通である。

 愛原:「うん……そうだな」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「一応、定期は菊川~上野まで買ってあげよう。雨が降ってたりすると、大変だからな」
 高橋:「何の話ですか?」
 愛原:「リサが高校に通う時に買ってあげる定期だよ。今度は地下鉄通学になるからな」
 高橋:「ああ……」
 愛原:「その前に高校用のブレザー買ってあげないとダメか。スカートは共通だけど、リサも大きくなったしなぁ……」
 高橋:「アジャスターがギリだって言ってましたし、買ってやった方がいいと思いますよ。ていうかそれより、今はアネゴのことです」
 愛原:「おっとと!そうだった!」

[同日09:30.天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 今度は何のトラブルも無く、拘置所に到着することができた。
 よし、帰りも大江戸線経由にしよう。
 ……いや、帰りは新宿線でもいいか?

 高野:「先生、おはようございます。また来てくださいましたね」
 愛原:「はは、おはよう」

 どうしても、こういう刑事施設に収監されている者というと、囚人服とかを着ているイメージなのだが、高野君は普通の私服だ。
 未決囚は基本的に私服だからである。
 何しろ初公判がまだ先なので、しばらくはここでの生活が続くだろう。

 高野:「差し入れありがとうございます。これでまた暇つぶしが出来そうです」
 愛原:「そうか」
 高橋:「ムショとかだと、やることがあるからいいけど、拘置所じゃやること無ェしな。雑居房なら、適当な話し相手見つけて話すっていう手もあるんだけどな」
 高野:「全くだね」

 私は高野君に本などを差し入れた。
 また、拘置所内で購入することもできるが、それには現金が必要である。
 これも差し入れしておいた。

 高野:「それで、今日聞きたい事は何ですか?」
 愛原:「『1番』が現れたよ。但し、直接姿は現していない。……というかこの前来た時、痴漢に遭った女の子がそれっぽかったらしい」
 高野:「そうでしたか」
 愛原:「キミは『1番』のことについて、どれだけ知っているか教えてくれないか?」
 高野:「日本アンブレラが開発したリサ・トレヴァーの完全版の1つ。霧生市のバイオハザードの時、他のリサ・トレヴァー達と共に研究施設から脱走した個体」
 愛原:「それが今、都内にいるみたいなんだけど、何か知ってるかい?」
 高野:「『2番』と同様、寂しがりやの部分があると思います。『2番』のリサちゃんが愛原先生を慕っているのは、何も命を救われたからだけではなく、愛原先生に追い出されて、居場所を失うことを最も恐れているからです。『1番』も同じだと思われます」
 愛原:「しかし『1番』は同じ学校の生徒を駒扱いして、何人も殺してしまった。せっかくの居場所を自分で潰そうとするかね?」
 高野:「それは直接本人に聞きませんと。とにかく、私が知っているのはここまでです」
 愛原:「分かった。もし更に私に教えたくなったら、手紙を書いてくれな?」
 高野:「分かりました」

 この時点では、高野君からは重要なことは聞き出せなかった。
 でも、まだ他に何か知っていそうな感じだ。
 時期が来たら、話してくれるかもしれない。
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物語の途中ですが、ここで大石寺登山参詣のもようをお伝えします。 20201219

2020-12-19 22:01:55 | 日記
 今年最後の添書登山に参加させて頂いた。
 コロナ禍でGoToトラベルの中止が打ち出される中、世間の皆様には申し訳ない……と思うのは私だけのようで、意外と旅行客はいたぞ。

 

 出発は東京駅から。
 東海道新幹線はJR東海なので、駅名看板もJR東海仕様。
 東日本と違って、コーポレートカラーのオレンジ色を使用しています。

 

 新幹線と言えば駅弁だろう。
 何と、JR東海の駅弁店でありながら、仙台に本店を構える牛タン弁当が売られていた。
 迷わず手に取ってしまった。
 おかげ様で、まるで東北新幹線のE5系に乗ってしまったかのようだ。

 

 開けるとこんな感じ。
 至ってシンプルなものである。
 紐を引き抜くと温まるタイプ。
 やっぱり牛タンは熱いうちに食べるのがデフォ。

 

 新富士駅に到着する。
 因みにここで、本来なら富士駅南口行きの“しおかぜ”号に乗り換える予定だが、富士宮駅経由世界遺産センター行きの路線バスが先に来たので、そちらに乗車した。
 予定外のことだが、たまにはこのルートもいいだろう。
 予想通り、地元民しか乗らないローカルバスだ。

 

 富士宮駅の駅名看板。
 ここで身延線下り列車の遅れが放送される。
 何でも車内で非常ボタンが押され、車内点検を行ったとのこと。
 たった2両編成のワンマン列車で何が起きたのか不明だが、5分遅れで到着する。

 

 西富士宮駅の駅名看板。
 揃いも揃って、平仮名が大きく書かれているタイプ。
 ワンマン運転ということもあり、非常ボタンが押された経緯については謎のまま。
 GoToトラベル隊の年寄りが、トイレ内の非常ボタンを水を流すボタンと間違えて押した可能性大と、同信の徒は後に仰る。

 

 報恩坊の入口。
 境内は至って静かで、FFⅦリメイクのメインテーマ(昼の七番街スラム)を流したいくらいだ。
 時間があったので、御住職と共に御経に参加させて頂く。
 やはり、常住御本尊の御前の読経・唱題は格別なものがある。

 

 境内より富士山を撮影。
 12月にも関わらず、雪を被っていないのが分かる。
 しかし、山梨側はしっかり雪を被っているとのこと。
 それがウソみたいに、静岡側は雪が無いのである。

 

 三門。
 すっかり仮囲いが取れ、来年には信徒も通行できるようになるとのこと。
 入る際に御題目三唱をしてから入るのが基本。
 もっとも、それは今、裏門等で行われている。
 裏門もそうだが、三門にも門扉は付けられていない。
 これは他宗も同じ。
 そもそも三門とは、その寺院の正門である。
 それに門扉を設けないのは、一切衆生がいつでも仏門に下れるようにという意味がある。
 他宗と共通しているということは、これは釈尊の教えを他宗は用い、大聖人様も用いられたということだ。

 

 帰りのバス……ではなく、高速バスを使用した新富士駅行きの特急バス。
 これだとPasmoが使えないので、それの利用者は待機している後続の一般路線用の特急バスの読取機を使うという裏技を係員が案内していた。
 だったら最初から一般路線用のバスを使えばいいのにと思うが、これは恐らく、高速バスが減便状態なので、余った車両を流用しているからと思われる。
 乗り心地は一般路線用より良いので、利用者にとっては乗り得と言える。

 

 これが私が乗った帰りのバス。
 海老名サービスエリアで休憩なう。
 ダイヤが変わったので、休憩場所と時間が変わったのかと思ったが、そうでもなかった。
 海老名サービスエリアで30分休憩するので、トイレだけでなく、軽食をつまんだり、土産を買う時間は十分にある。
 私のお勧めは、建物の外側のキッチンカーで売られている牛串。
 柔らかい肉がジューシーで美味い。
 1本500円だが、東京駅まで小腹を満たすには十分である。
 作中の愛原学は、リサ・トレヴァーをここに連れて来てはいけない。
 牛串を食べ放題しかねず、金欠になること請け合いである。

 御多分に漏れず、海老名ジャンクションから厚木トンネルまでの渋滞にハマる。
 東京駅日本橋着は19時過ぎ。
 はっきり言って、海老名ジャンクションと厚木トンネルは欠陥構造ではないかと思う。
 後者は道路の拡幅を行って、欠陥を補おうとしているようだが。
 帰りのバスの乗車人数は31人。
 ソーシャルディスタンスをしなければ、定員40名満席ではなかっただろうか。
 これはキャンペーンで明日まで運賃片道1000円という安さを打ち出した為、集客できたものと思われる。
 で、高速バスがソーシャルディスタンスを行って、わざと空席が出るようにしてくれれば、実は新幹線よりもクラスターの危険性は低いような気がしてきた。
 何故かって?
 私は自由席で新富士駅まで向かったのだが、近くの3人席ではグループ客が座席を向かい合わせにして、マスクを外してワイワイやっていたからだ。
 コロナ禍でなければ週末のごく普通の光景であり、熱海駅で降りて行ったそのグループ客は賑やかだったというだけで、ちゃんと降りる時に座席は元の位置に戻し、ゴミは片付けて行くというマナーの良さだったのだが、コロナ禍のせいでただ単に賑やかにやっていたというだけで台無しに感じてしまうのである。
 その点、高速バスは個人客が多く、実はそんなに騒ぐ者はいない。
 まあ、今回の場合、婦人部のオバちゃん達が多少賑やかだっただけでw
 まあまあ。
 というわけで、私の今年の大石寺登山参詣はこうして無事に終了したというわけだ。

 最後に報恩坊同信の徒のT氏には、特に復路の道中お世話になりました。
 この場を借りて、厚く御礼申し上げます。
コメント
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