報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長の所へ」

2020-12-27 12:31:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月8日09:50.天候:晴 東京都千代田区丸の内 大日本製薬本社]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は一昨日の件に関する報告書を、斉藤社長の所へ持って行く所だ。
 一昨日は斉藤社長の娘さんのお守りを任されていて、本当なら昨日お渡しするはずだった。
 しかし昨日は社長の都合が悪かった為、今日になったというわけだ。
 うちの事務所から本社ビルまではタクシーで向かう。
 大事な報告書なので、輸送には最新の注意を払わなてはならない。

 運転手:「こちらでよろしいですか?」
 愛原:「はい」
 運転手:「ありがとうございます」
 愛原:「領収書お願いします」
 運転手:「はい」

 私は料金を払うと、高橋と一緒にタクシーを降りた。
 今日ばかりは高橋もスーツを着てはいるが、やはりどうしても新宿歌舞伎町のホスト感が否めない。
 受付で用件を伝え、入館証を貰って先へ進む。

 警備員:「お疲れ様です!」

 役員室フロアへ直接向かうエレベーターホールには別に警備員が立っていたが、私達の入館証を見るや直立不動で敬礼してきた。

 愛原:「こんにちは。お邪魔します」

 私も20代の頃は、そっち側に立っていた。
 いつ頃だっただろう?
 警備員ではなく、探偵の仕事をやりたいと思うようになったのは……?
 忘れたな。
 警備員より探偵の方がカッコ良くて儲かるなんてミーハーな考えだったと思うが……。

〔上に参ります〕
〔ドアが閉まります〕

 一気に何百メートルも上に上がる。
 こういう時、耳がキーンとなるのが高層ビル上層階の特徴だ。

 高橋:「先生。先生もいつかはこういうビルに事務所を……」
 愛原:「いや、最近になって気づいたんだがね、探偵業より警備業の方が儲かるわなぁ……と」
 高橋:「え?」
 愛原:「いや、警備業ならセコムとかアルソックとかCSPとか、有名企業がいくつもあるけど、探偵業で有名どころって知ってるか?」
 高橋:「えっと……」
 愛原:「そういうことだよ」

 昔の連続テレビドラマに“東京警備指令ザ・ガードマン”なんてのがあったけど、あれは警備業と探偵業を足して2で割った設定だな。

〔ドアが開きます〕

 ピンポーン♪

〔30階です〕
〔下に参ります〕

 秘書:「お待ちしておりました、愛原様。ご案内させて頂きます。どうぞ」
 愛原:「恐れ入ります」

 私達が通されたのは応接室。
 下の階のミーティングフロアにも応接室はあるだろうが、役員が直接応対する部屋なだけに、その内装は豪勢なものである。

 秘書:「ただいま斉藤が参りますので、少々お待ちください」

 秘書さんにお茶を出して頂き、それから私達は斉藤社長が来るのを待った。

 斉藤:「おお、愛原さん。御足労、感謝致します」

 隣の社長室から斉藤社長が入って来た。

 愛原:「斉藤社長、報告書をお持ち致しました」
 斉藤:「一昨日は想定外の事で、大変でしたな」
 愛原:「裏を掻かれてしまいましたね。まさか、地下鉄の中で襲ってくるとは……」
 斉藤:「そのような中、娘を無傷で護って頂けるとは、さすがは愛原さん達だ」
 愛原:「お褒めに預かりまして……」
 斉藤:「報酬は御約束通り、例の口座に振り込ませて頂きます」
 愛原:「ありがとうございます」
 斉藤:「それで、どうですか?アンブレラ達の動きについて、何か分かりましたか?」
 愛原:「リサ・トレヴァー『1番』が、聖クラリス女学院に生徒のフリして潜んでいる可能性が大です。今、NPO法人デイライトの関係者が学院内を捜索中です」
 斉藤:「そうですか……」

 斉藤社長は右手を顎にやって考える仕草をした。

 斉藤:「実は娘は当初、聖クラリス女学院への進学を考えていたのです。しかし通学の利便性を考えて、東京中央学園に急きょ変更しました。あの性癖ですから、『共学校なんてイヤ!』と駄々をこねたものです。しかし、今となっては東京中央学園で良かったと思っていますよ」
 愛原:「斉藤社長も東京中央学園の出身者ですよね?」
 斉藤:「ええ。高等部だけですが」

 東京中央学園は中高一貫校ではあるが、高等部から入学する者もいる。
 それに対して、聖クラリス女学院は高等部からの入学者がいない(転入生はいる)完全中高一貫校である。

 愛原:「社長、日本に新型BOWエブリンが入ってきている可能性は考えられますか?」
 斉藤:「エブリンですか?」
 愛原:「はい。2017年、アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件のラスボスです」
 斉藤:「そのことは知っています。可能性はあると思います」
 愛原:「ありますか!」
 斉藤:「ありますね。愛原さん、だいぶ前、群馬の方にお仕事に行かれたことがあるでしょう?下仁田方面です」
 愛原:「ありますね!」
 斉藤:「実はあの時点でエブリンの存在は疑われていました。日本アンブレラの五十嵐元社長が手引きしたのか、或いはもっと別の誰かが手引きしたのかは分かりませんが、疑いがあったのは事実です」
 愛原:「座敷童扱いされていましたね」
 斉藤:「正しく座敷童の如く、獲物の家に取り憑くBOWですよ。但し、日本の妖怪としての座敷童は、憑いた家に幸福を齎すと言われているのに対し、エブリンはその逆ですけどね」
 愛原:「もしかして、聖クラリス女学院に憑いている?」
 斉藤:「可能性はありますね。エブリンは大体10歳前後の少女の姿を模しています。まさかそんな幼気な少女がBOWだなんて、誰も思いますまい。そして聖クラリス女学院には、初等部もある。考えられることです」
 愛原:「今、デイライトさん達が調査中ですので、その結果を待つしか無いですね」
 斉藤:「恐らく私は近いうち、BSAAが突入するものと思っていますよ。そうなったら、民間人の我々は傍観する他無いですから」
 愛原:「そりゃそうです」
 斉藤:「そこで国家機関が聖クラリス女学院に目を向けている間、愛原さん達には別の仕事をお願いしたいと思っております」
 愛原:「別の仕事?」
 斉藤:「はい。以前、愛原さん達には、私が高校生だった頃、通っていた東京中央学園上野高校についてお話ししたことがあったと思います」
 愛原:「当時の科学教師が旧・日本アンブレラの研究員で、科学準備室の奥の倉庫に秘密の研究室を構えていたという話ですね?」
 斉藤:「そうです」

 しかし私達が調査に入った時には既に蛻の殻で、一応そこには更に秘密の隠し通路があり、そこを通じて、やはり蛻の殻となっていた旧・日本アンブレラの営業所に繋がっていたという所までは突き止めた。
 だが、当の研究員の事については結局分からずじまいだった。

 斉藤:「東京中央学園は栃木県に合宿所を持っていましてね。愛原さん、そこの調査をお願いできますか?」
 愛原:「その合宿所、何かあるんですか?」
 斉藤:「元々は学校として建てられた物が廃校となり、それを日本アンブレラが買い取ったものなんですが、近くに新しい施設を造ったという理由で、売りに出したんですよ。それを買ったのが東京中央学園なんです」
 愛原:「ええっ!?」
 斉藤:「もちろん新しい研究施設は、日本アンブレラが倒産したことで無くなりました。その施設は取り壊されて更地になっていますが、旧施設の方は今でも合宿所として使われています。私が現役生だった頃、あの施設では色々な噂を聞いたものです。所詮高校生の言うことですから、単なる噂話だったのでしょうが、それにしては具体的な話とかもありましたからね。火のない所に煙は立たぬ、というでしょう?」
 愛原:「まあ、いいでしょう。お引き受けします」
 斉藤:「ありがとうございます。後で依頼書をお送りしますので、どうかお願いします」
 愛原:「1つ聞いていいですか?」
 斉藤:「何でしょうか?」
 愛原:「確かに建物の歴史からして曰く付きですけれども、それでも社長が私達を送り込むという判断に至った材料とは何だったのでしょう?」
 斉藤:「実はふとしたことがきっかけで、私は新施設と旧施設の図面を手に入れることができました。それを照らし合わせてみると、何とも奇妙なことに気づいたんですよ。だからです。図面は後でお見せします。きっと愛原さんも唸ると思いますよ」

 しかし、探せばまだまだあるもんだな。
 旧アンブレラの秘密研究施設。
 恐らく1つが見つかったり、見つかりそうになって処分するに至っても、すぐにまた別の施設で研究が続けられるようにする為だろうな。

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