報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 2

2020-12-27 19:50:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日14:00.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅(低いホーム)→宇都宮線543M列車5号車2階席]

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。15番線に停車中の列車は、14時8分発、普通、小金井行きです。……〕

 上野駅始発の宇都宮線、高崎線電車は、基本的に低いホーム13番線から15番線のいずれかから出発する。
 低いホームは頭端式ホームになっており、上野東京ラインを走る電車はここには来ない。
 私達が乗る電車は既に入線していた。
 グリーン車は4号車と5号車にある。

 リサ:「売店閉まってる」
 愛原:「そうだな」

 ホームにあるNEWDAYSは閉店していた。
 どうやら平日のみのオープンらしい。

 リサ:「おやつ買おうと思ってたのに……」
 愛原:「おいおい。まだ食べる気かよ」
 絵恋:「リサさん、家に着いたらお菓子出るわよ?」
 リサ:「それまでの腹持たせ」
 高橋:「どんだけ食うつもりだ」

 しかし2階建てグリーン車のある場所まで来ると、リサの目が獲物を見つけたかのように光る。
 元々飲み物の自動販売機くらいなら、そこかしこにあった。
 リサが見つけたのは、お菓子の自動販売機だった。
 アルフォートを2つ買っている。

 リサ:「はい、サイトー」
 絵恋:「えっ?私にくれるの?」
 リサ:「ん」
 絵恋:「も、萌えぇぇぇぇっ!い、一生大事にしますっ!!」
 リサ:「いや、一緒に食べようよ」

 かつてはリサの方が天然ボケで、絵恋さんがツッコミ役だったようだが、今では絵恋さんの百合ぶりが加速したこともあり、リサの方がツッコミ役になっている。
 リサ自身も、研究所の外の世界について随分慣れたというのもあるだろう。

 リサ:「ついでにジュース」
 絵恋:「チョコレートには紅茶が合うわよ」
 リサ:「よし。午後の紅茶ミルクティーにしよう」
 高橋:「ジュースじゃねーじゃん。先生は何か飲みますか?」
 愛原:「いや、いいよ。別に喉乾いてないし。それより早く乗ろう」
 リサ:「2階席~、2階席~」
 愛原:「言うと思った。行こうか」

 私達は5号車に乗り込むと、2階席への階段を登った。
 休日の上野始発で中途半端な時間ということもあり、車内は空いていた。

〔この電車は宇都宮線、普通電車、小金井行きです。4号車と5号車はグリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 座席は向かい合わせにはしなかった。
 どうせ明日は普通車に乗るし、そこのボックスシートなんて、元々向かい合わせになっているわけだしな。
 私と高橋が進行方向左側に座り、その後ろにリサと絵恋さんが乗った。
 2人はテーブルを出して、その上にアルフォートとペットボトルを置いている。

〔「14時8分発、宇都宮線、普通列車の小金井行き、まもなく発車致します」〕

 ホームの外から発車ベルが聞こえてくる。
 前は発車メロディだったような気がするが、ベルに戻されたようだ。
 まあ、ベルの方が旅情はあるような気がする。

〔15番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 ドアが閉まる音がする。
 通勤電車タイプと同じ形式ながら、こちらは何故かドアの閉まる音が大きい。
 前者は『バン』と閉まるのに対し、後者は『ガチャン』と、まるで連結するかのような音だ。
 そして、列車は定刻通りに発車した。
 これとて通勤電車のようにスーッと走り出すわけではなく、まるで機関車が客車をけん引する時のような出し方だ。
 もっともそれは上野駅のような始発駅だけで、途中駅でもそのような出し方をするわけではない。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は宇都宮線、普通電車、小金井行きです。【中略】次は、尾久です〕

 高橋:「明日もこの電車で?」
 愛原:「ああ。宇都宮線には、朝一本だけ大宮始発の電車がある。それで栃木を目指そう」
 絵恋:「愛原先生、父に頼めば新幹線代くらい出しますよ?何でしたら、私から父に言っても……」
 愛原:「いや、いいんだ。何の確証も無く行くんだから、そんな贅沢はできない」

 私はそう固辞した。

 グリーンアテンダント:「失礼します。グリーン券はお持ちでないでしょうか?」

 そこへグリーンアテンダントの女性がやってきた。
 紙のグリーン券で乗車すると、座席上の端末と連動させることができないので、グリーンアテンダントが確認に来るのである。

 愛原:「あ、はい。あります。大宮まで」
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます」

 これまた美人で爽やかなアテンダントだ。

 愛原:「車内販売もあるの?」
 グリーンアテンダント:「はい、ございます」
 愛原:「缶コーヒーとフィナンシェにしようかな」
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます。お支払いは如何なさいますか?」
 愛原:「ボクはニコニコ現金払いで」😉
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます」

 私が鼻の下を伸ばしていると……。

 高橋:「先生、後ろに注意してください」
 愛原:「ん?」
 リサ:👹
 斉藤:「ふ、不潔だわ。エロオヤジだわ」
 愛原:「ハッ!ち、違うんだ、リサ!これは……!」
 リサ:「サイトー、今からこの電車に私のウィルスばら撒いていい?」
 絵恋:「り、リサさん、それはダメ!」
 リサ:「『1番』にできることは、私にもできるんだからね?」
 愛原:「そ、そうだ!リサ、おやつのお代わりはどうだ!?何でも買ってやるぞ!」
 リサ:「! それじゃあ、私はバームクーヘンと……」

 危ない危ない!
 ようやくリサの機嫌を修正することができた!
 危うくこの電車が惨劇に見舞われるところだった。

 斉藤:「せめて明日はこのグリーン車でと思いましたけど、この分じゃ、やめた方がいいですね」

 絵恋さんは呆れた様子で言った。

 高橋:「先生、明日は各駅停車の普通車で行きましょう。その方が安全です」
 愛原:「す、すまん……」
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物語の途中ですが、ここで他宗教勧誘についてレポート致します。

2020-12-27 18:01:05 | 日記
 今日、私の家のポストに以下のようなチラシが投函されていた。

 

 

 

 見て分かるように、キリスト教からの勧誘チラシである。
 投函されるに当たり、特にインターホンを鳴らされることは無かったので、ポスティング作戦を実施したようだ。
 さて、体験発表を掲載するというのはなかなか珍しいことだ。
 これまでキリスト教に関する勧誘チラシと言えば、教会の活動内容や聖書の内容を説明したものに終始するというイメージだったのだが。
 それにしても、聖書講演会の会場が川口リリアって……。
 ここって確か、顕正会の総幹部会を行う場所じゃなかったか?
 在日に関するヘイトスピーチ集会は全面禁止だが、さすがに宗教関係までは禁止にできなかったか。

 ちょっと会場に潜入してみて、どんな話をするのかスパイしてみるか?
 魔女狩りについてどう思うか聞いてみたいものだ。
 今は“私立探偵 愛原学”シリーズを重点的に書いているが、“大魔道師の弟子”もいずれは再開するつもりでいるので。
 ぶっちゃけ稲生勇太は一人前に昇格してあげて、マリアと結婚させ、新シリーズに向かった方がいいような気がする。

 でもまあ、信心フラフラの私がホイホイ行ったところで……。

 雲羽:「イエス・キリストの大慈大悲に触れ、涙が止まりませんでした!」「日蓮正宗を直ちに離檀し、キリスト教へ改宗します!」「というかもう洗礼は受けました!」「こっちの方が幸せです!」「功徳はキリスト教にこそあります!」

 とかなりそうだからやめておこうw
 いや、これがチラシの末尾にある、「関係の無い異端組織」であるエホバの証人、モルモン教、統一教会の集会だったら、むしろツッコミ所満載で、これだけでブログが何回も更新できるんだろうけど。
 一応、伝統キリスト教を名乗る教会って、必ず「エホバの証人、モルモン教、統一教会」の三点セットとは無関係を大きく謳うよね。
 まあ、日蓮正宗が「顕正会、正信会、創価学会とは無縁です」とか言うようなものか。
 いや、無縁では無いか。
 私が現役顕正会員だった頃、さいたまスーパーアリーナで行われる大会に参加するエホバ信者の団体と遭遇したことがあったが、同行の会員が、「生命力の無い奴ら」と酷評していた。
 今の顕正会員だって人のことは言えないと思うが、そんな顕正会員から見ても「生命力の無い信者達」だったのである。
 尚、クリスマスの時期に街頭でトランペットを吹き、「社会鍋」と称する募金活動を行う団体に救世軍が存在する。
 軍隊然としたキリスト教団で、軍服を着用した見た目には異端組織のように見えるが、一応正規の(?)教団として認められているらしい。
 この救世軍、他のキリスト教団とは友好的な関係を築く方針であるが、そんな団体でも、やはり件の三点セットとは距離を置きたいようである。

 いずれにせよ、信者獲得に躍起になっているのはどこの教団も同じということ。
 因みに報恩坊は、誓願未達確定の赤ランプが点灯しておりますw
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“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 1

2020-12-27 15:29:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日13:34.天候:晴 東京都台東区上野 都営地下鉄上野御徒町駅→JR上野駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は土曜日だが、私達はある場所へ向かっている。
 それは斉藤社長の私邸。
 斉藤絵恋さんの実家でもある。
 もちろん、勝手に向かっているのではなく、斉藤社長にお呼ばれしたからである。
 で、今回はその斉藤絵恋さんも一緒。
 今日、中学校は午前中までの授業なので、それから向かうこととなった。

 斉藤絵恋:「リサさんが泊まりに来てくれるなんて、感激ですぅ!」
 愛原:「明日に備えて作戦会議だとか仰ってたけど、何か知ってる?」
 斉藤絵恋:「いいえ、全然!」
 愛原:「そうかい」
 絵恋:「で、このルートは何なんですか?確かに父からは、『愛原さんに付いて来なさい』とは言われましたけど……」
 愛原:「2人とも、来年度は上野高校に通うだろう?その通学路を確認しようと思って」
 絵恋:「ああ、なるほど!」
 愛原:「晴れてる日は、菊川から森下まで歩いてもいいことが分かった。そこから都営大江戸線には乗るが、今の下車駅、上野御徒町駅から高校までの距離だな」

 上野高校はJR上野駅から至近距離にあり、御徒町駅からも徒歩圏内と思われる。
 地上に出てJR御徒町駅から北に向かう。
 線路の東側にある商店街の中を通って行く。
 コロナ禍にあっても、商店街の賑わいは大して沈んでいる感じはしない。
 旅行を控えた都民達は、こういう都内の賑わっているところへ繰り出す方を選んでいるのか。
 500~600メートルくらい商店街の中を進んだところで、ついにJR上野駅前の大通りに出た。

 愛原:「どうだい?こんな感じなら、歩いて通学しても大丈夫かい?」
 リサ:「私は大丈夫」
 絵恋:「私もです!リサさんと一緒なら、地獄の果てまでも一緒に歩いて行きます!」
 リサ:「いや、私は地獄まで行かないって」
 絵恋:「あくまでも例えよ~!」
 愛原:「雨が降った時とかなんかは、電車に乗ってもいいだろうけどね」

 取りあえず通学定期は森下~上野御徒町で買っといて、上野~御徒町間と森下~菊川間はPasmoにチャージしている分で乗ってもらおう。
 あくまでも天気の悪い日くらいだろうからな。

 絵恋:「私はリサさんと相合傘したいです」
 高橋:「良かったな、リサ。モテモテで」
 リサ:「獲物の方から寄って来てくれるシステム、功徳です」
 愛原:「リサ・トレヴァーの場合、そういう意味で美女・美少女が多いのか?」
 絵恋:「きっとそうですよォ!」
 愛原:「エブリンはどうなんだろうな?」
 高橋:「10歳前後のクソガキでしょ?獲物によっちゃ、『ロリコンホイホイ』かもしれないっスね」
 愛原:「……なるほどな」
 リサ:「先生も気を付けてよ?」
 愛原:「何が?」
 リサ:「『ロリコンホイホイ』」
 愛原:「失敬な!」
 絵恋:「え……?愛原先生、ロリコンだったんですか?ヒくわぁ……」
 愛原:「根も葉もない話を鵜呑みにしないように!だいたいキミ達、もう中学3年生で、ロリって歳でもないだろ」
 絵恋:「でもリサさんは童顔ですよね?」
 愛原:「BOWだからかもしれないな」

 確かに霧生市で初めて会った時よりは、リサの体は成長している。
 しかし食欲旺盛な割には、その成長速度は遅いように見受けられる。
 リサの体型など、中学3年生女子の平均くらいである。
 あれだけバクバク食べる子が、平均程度の体型というのは不自然である。
 それに対して絵恋さんはリサよりも身長が高く、顔つきも会った当初より段々と大人びて来ていることが分かる。
 これが人間の10代女子の普通の成長なのだろう。
 特に絵恋さんは空手で体を鍛えているということもあって、肉付きもしっかりしている。

 愛原:「人間に戻れれば、成長速度も速まると思うんだが……」
 リサ:「でも、スカートのサイズとかは結構ギリギリ。高校生になったら、少しサイズの大きいのにしたい」
 愛原:「ああ。来年買ってあげるよ」
 絵恋:「リサさん、スカートって入学した後からずっと使ってる?」
 リサ:「うん」
 絵恋:「あ、そう!?」
 リサ:「なに?」
 絵恋:「いや、私、サイズが合わなくなって2回くらい交換してるから」
 リサ:「サイトー、太ったの?」
 絵恋:「違う!それだけ体が大きくなったってことよ。自分でもびっくりするくらいね」
 リサ:「そういえばサイトー、私と最初に会った時は身長、私と同じくらいだったのに、今はすっかり抜かれた」

 女子のスカートもアジャスター付きなのだが、斉藤さんはそれでも途中で交換しなくてはならなくなり、リサは交換とまでは行かなくても、アジャスターをマックスまで伸ばしている。

 リサ:「むー……。もうちょっと食べれば、私も大きくなれるかな……?」
 愛原:「多分、食べた分は人間の体としての成長ではなく、BOWの力の糧として消費されるんだろうな」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「善場主任が言ってたよ。善場主任も『12番』だった頃は、女子大生でありながら、女子高生と間違えられるほどの童顔で体も小さかったって。それが『0番』になってから、急に成長して今みたいな文句無しの大人の女性に成長できたってさ」
 リサ:「やっぱり私は早く人間に戻るべき」
 愛原:「そういうことだ。頑張ろう」

 私達はそんなことを話しながら、JR上野駅の構内に入った。
 そのまま奥へ進むと、中央改札口に到着する。

 愛原:「上野始発を狙うか。次は14時8分発か。あれにしよう」
 絵恋:「ちょっと待っててください」

 絵恋さんがキップ売り場に向かう。
 もしかして、電車代を出してくれるのか?
 そんなもの、後で引き受ける仕事の報酬の高さに比べれば微々たるものだ。
 それこそ経費で落として良いレベルだ。

 絵恋:「お待たせしました」

 絵恋さんが戻ってきた時、その手にはキップが握られていた。
 やはり電車代を?

 絵恋:「グリーン券です」
 愛原:「えっ!?」

 上野から大宮まで乗るのにグリーン車かよ。

 絵恋:「大丈夫です。父から既にお金はもらってますので」

 斉藤社長の意向なのか?
 それならむしろ従わざるを得ないが……。

 絵恋:「何でしたら、家までの交通費も、後で請求して頂ければ払うそうです」
 愛原:「いや、それには及ばない。お気持ちだけ頂いておくよ」

 私はそう言ってPasmoを取り出し、それで改札口を通過した。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長の所へ」

2020-12-27 12:31:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月8日09:50.天候:晴 東京都千代田区丸の内 大日本製薬本社]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は一昨日の件に関する報告書を、斉藤社長の所へ持って行く所だ。
 一昨日は斉藤社長の娘さんのお守りを任されていて、本当なら昨日お渡しするはずだった。
 しかし昨日は社長の都合が悪かった為、今日になったというわけだ。
 うちの事務所から本社ビルまではタクシーで向かう。
 大事な報告書なので、輸送には最新の注意を払わなてはならない。

 運転手:「こちらでよろしいですか?」
 愛原:「はい」
 運転手:「ありがとうございます」
 愛原:「領収書お願いします」
 運転手:「はい」

 私は料金を払うと、高橋と一緒にタクシーを降りた。
 今日ばかりは高橋もスーツを着てはいるが、やはりどうしても新宿歌舞伎町のホスト感が否めない。
 受付で用件を伝え、入館証を貰って先へ進む。

 警備員:「お疲れ様です!」

 役員室フロアへ直接向かうエレベーターホールには別に警備員が立っていたが、私達の入館証を見るや直立不動で敬礼してきた。

 愛原:「こんにちは。お邪魔します」

 私も20代の頃は、そっち側に立っていた。
 いつ頃だっただろう?
 警備員ではなく、探偵の仕事をやりたいと思うようになったのは……?
 忘れたな。
 警備員より探偵の方がカッコ良くて儲かるなんてミーハーな考えだったと思うが……。

〔上に参ります〕
〔ドアが閉まります〕

 一気に何百メートルも上に上がる。
 こういう時、耳がキーンとなるのが高層ビル上層階の特徴だ。

 高橋:「先生。先生もいつかはこういうビルに事務所を……」
 愛原:「いや、最近になって気づいたんだがね、探偵業より警備業の方が儲かるわなぁ……と」
 高橋:「え?」
 愛原:「いや、警備業ならセコムとかアルソックとかCSPとか、有名企業がいくつもあるけど、探偵業で有名どころって知ってるか?」
 高橋:「えっと……」
 愛原:「そういうことだよ」

 昔の連続テレビドラマに“東京警備指令ザ・ガードマン”なんてのがあったけど、あれは警備業と探偵業を足して2で割った設定だな。

〔ドアが開きます〕

 ピンポーン♪

〔30階です〕
〔下に参ります〕

 秘書:「お待ちしておりました、愛原様。ご案内させて頂きます。どうぞ」
 愛原:「恐れ入ります」

 私達が通されたのは応接室。
 下の階のミーティングフロアにも応接室はあるだろうが、役員が直接応対する部屋なだけに、その内装は豪勢なものである。

 秘書:「ただいま斉藤が参りますので、少々お待ちください」

 秘書さんにお茶を出して頂き、それから私達は斉藤社長が来るのを待った。

 斉藤:「おお、愛原さん。御足労、感謝致します」

 隣の社長室から斉藤社長が入って来た。

 愛原:「斉藤社長、報告書をお持ち致しました」
 斉藤:「一昨日は想定外の事で、大変でしたな」
 愛原:「裏を掻かれてしまいましたね。まさか、地下鉄の中で襲ってくるとは……」
 斉藤:「そのような中、娘を無傷で護って頂けるとは、さすがは愛原さん達だ」
 愛原:「お褒めに預かりまして……」
 斉藤:「報酬は御約束通り、例の口座に振り込ませて頂きます」
 愛原:「ありがとうございます」
 斉藤:「それで、どうですか?アンブレラ達の動きについて、何か分かりましたか?」
 愛原:「リサ・トレヴァー『1番』が、聖クラリス女学院に生徒のフリして潜んでいる可能性が大です。今、NPO法人デイライトの関係者が学院内を捜索中です」
 斉藤:「そうですか……」

 斉藤社長は右手を顎にやって考える仕草をした。

 斉藤:「実は娘は当初、聖クラリス女学院への進学を考えていたのです。しかし通学の利便性を考えて、東京中央学園に急きょ変更しました。あの性癖ですから、『共学校なんてイヤ!』と駄々をこねたものです。しかし、今となっては東京中央学園で良かったと思っていますよ」
 愛原:「斉藤社長も東京中央学園の出身者ですよね?」
 斉藤:「ええ。高等部だけですが」

 東京中央学園は中高一貫校ではあるが、高等部から入学する者もいる。
 それに対して、聖クラリス女学院は高等部からの入学者がいない(転入生はいる)完全中高一貫校である。

 愛原:「社長、日本に新型BOWエブリンが入ってきている可能性は考えられますか?」
 斉藤:「エブリンですか?」
 愛原:「はい。2017年、アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件のラスボスです」
 斉藤:「そのことは知っています。可能性はあると思います」
 愛原:「ありますか!」
 斉藤:「ありますね。愛原さん、だいぶ前、群馬の方にお仕事に行かれたことがあるでしょう?下仁田方面です」
 愛原:「ありますね!」
 斉藤:「実はあの時点でエブリンの存在は疑われていました。日本アンブレラの五十嵐元社長が手引きしたのか、或いはもっと別の誰かが手引きしたのかは分かりませんが、疑いがあったのは事実です」
 愛原:「座敷童扱いされていましたね」
 斉藤:「正しく座敷童の如く、獲物の家に取り憑くBOWですよ。但し、日本の妖怪としての座敷童は、憑いた家に幸福を齎すと言われているのに対し、エブリンはその逆ですけどね」
 愛原:「もしかして、聖クラリス女学院に憑いている?」
 斉藤:「可能性はありますね。エブリンは大体10歳前後の少女の姿を模しています。まさかそんな幼気な少女がBOWだなんて、誰も思いますまい。そして聖クラリス女学院には、初等部もある。考えられることです」
 愛原:「今、デイライトさん達が調査中ですので、その結果を待つしか無いですね」
 斉藤:「恐らく私は近いうち、BSAAが突入するものと思っていますよ。そうなったら、民間人の我々は傍観する他無いですから」
 愛原:「そりゃそうです」
 斉藤:「そこで国家機関が聖クラリス女学院に目を向けている間、愛原さん達には別の仕事をお願いしたいと思っております」
 愛原:「別の仕事?」
 斉藤:「はい。以前、愛原さん達には、私が高校生だった頃、通っていた東京中央学園上野高校についてお話ししたことがあったと思います」
 愛原:「当時の科学教師が旧・日本アンブレラの研究員で、科学準備室の奥の倉庫に秘密の研究室を構えていたという話ですね?」
 斉藤:「そうです」

 しかし私達が調査に入った時には既に蛻の殻で、一応そこには更に秘密の隠し通路があり、そこを通じて、やはり蛻の殻となっていた旧・日本アンブレラの営業所に繋がっていたという所までは突き止めた。
 だが、当の研究員の事については結局分からずじまいだった。

 斉藤:「東京中央学園は栃木県に合宿所を持っていましてね。愛原さん、そこの調査をお願いできますか?」
 愛原:「その合宿所、何かあるんですか?」
 斉藤:「元々は学校として建てられた物が廃校となり、それを日本アンブレラが買い取ったものなんですが、近くに新しい施設を造ったという理由で、売りに出したんですよ。それを買ったのが東京中央学園なんです」
 愛原:「ええっ!?」
 斉藤:「もちろん新しい研究施設は、日本アンブレラが倒産したことで無くなりました。その施設は取り壊されて更地になっていますが、旧施設の方は今でも合宿所として使われています。私が現役生だった頃、あの施設では色々な噂を聞いたものです。所詮高校生の言うことですから、単なる噂話だったのでしょうが、それにしては具体的な話とかもありましたからね。火のない所に煙は立たぬ、というでしょう?」
 愛原:「まあ、いいでしょう。お引き受けします」
 斉藤:「ありがとうございます。後で依頼書をお送りしますので、どうかお願いします」
 愛原:「1つ聞いていいですか?」
 斉藤:「何でしょうか?」
 愛原:「確かに建物の歴史からして曰く付きですけれども、それでも社長が私達を送り込むという判断に至った材料とは何だったのでしょう?」
 斉藤:「実はふとしたことがきっかけで、私は新施設と旧施設の図面を手に入れることができました。それを照らし合わせてみると、何とも奇妙なことに気づいたんですよ。だからです。図面は後でお見せします。きっと愛原さんも唸ると思いますよ」

 しかし、探せばまだまだあるもんだな。
 旧アンブレラの秘密研究施設。
 恐らく1つが見つかったり、見つかりそうになって処分するに至っても、すぐにまた別の施設で研究が続けられるようにする為だろうな。
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