報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「惨事の後」

2020-12-18 19:54:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月1日15:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日は大変だった。
 リサが『1番』に操られた少女達と遭遇し、しかもその少女達は全員死亡という最悪な展開だったのだから。

 善場:「……確かにBSAAの捜査内容と一致しますね。ありがとうこざいます」

 善場主任が事務所に来所し、学校から帰って来たリサから事情を聴いていた。

 リサ:「私はウソはついてないよ」
 善場:「ええ。そうですね。それと愛原所長」
 愛原:「何でしょう?」
 善場:「あなたと高橋助手が痴漢から助けた少女は、この制服を着ていましたか?」

 善場主任は、とある学校の制服の写真を見せた。
 それはグレーのセーラー服だった。

 愛原:「あっ、そうそう!こんな感じです!」
 善場:「これは都内にある私立の女子校のものです。東京中央学園と同じく、中高一貫校ですね。違いは女子校か共学校か、くらいです」
 愛原:「そこに『1番』が?」
 善場:「可能性は大です。実際、愛原所長達の前では、その制服を着て現れたわけですからね」
 愛原:「確かに……」
 善場:「さすがに警察も怪しんでいまして、今、警察がその学校に行っているはずです。私達の調査はその後になります」
 高橋:「サツが捕まえられっこ無ェよ」
 善場:「そうですね。まあ、彼らにも捜査権はありますから」

 善場主任の目論見が当たっていたところで、その『1番』は警察の前では、何も知らない人間の女子生徒のフリをするのだろう。

 愛原:「何と言う名前の学校ですか?」
 善場:「聖クラリス女学院です」
 高橋:「いかにも少女漫画に出て来そうな名前だな」
 愛原:「御嬢様学校で有名な所ですね。東京中央学園も比較的富裕層が通う学校だけれども、聖クラリス女学院も似たようなものだよ」
 高橋:「そうなんスか」
 愛原:「逆に斉藤さん辺り、そっちの学校に行った方がモテモテだったろうになぁ……」
 高橋:「あー、確かに」
 リサ:「先生、いまサイトーの話してない」
 愛原:「おっと、そうだった!」
 善場:「東京中央学園は中間層から富裕層の中でも、比較的カジュアルな考えの御家庭の子が通う傾向がありますね。それに対して聖クラリス女学院は、もっと保守的思考の、家柄を重視するとか、そういう固い感じの御家庭の子女が通う傾向があります」
 高橋:「俺には違い過ぎる世界だ」
 愛原:「そうだな。それでリサは、そっちには通わせられなかったんですね?」
 善場:「まあ、上層部の意向で、宗教色もあるからというのもありますが、そうですね」
 愛原:「あ、そうか。名前からしてミッション系だ」

 リサはBOWだし、人間としての出自も孤児院だから、家柄を重視されてしまうと、リサは【お察しください】。

 愛原:「でも『1番』は潜り込めたんですよね?」
 善場:「不思議なことに。その辺も調査する必要がありますね。とにかく、『1番』のことについてヒントが得られて良かったです」
 愛原:「ええ」
 善場:「今後とも皆さんはお気を付けください。『1番』がまた動ないとは思えませんから」
 愛原:「分かりました」

 善場主任との打ち合わせが終わり、彼女が帰ってしまうと、私はテレビを点けた。
 この時間、ワイドショーをやっているが、新型コロナウィルスに打って変わり、昨日の惨劇のことが取り上げられていた。
 もちろん、うちのリサのことは揉み消されている。
 とはいえ、彼女が殺したのは少女達がゾンビ化してからであるので、そもそも無罪なのであるが。

 愛原:「リサ。『1番』のことについて、お前はどう思う?」
 リサ:「……多分、中身は私と一緒。いかに上手く人間を捕食するか考えてる。ま、私は老廃物だけどね」
 愛原:「老廃物でいいなら、それだけは目を瞑るよ。だけど、『1番』は違う。本当に人間の血肉を狙ってる」
 リサ:「そうだね。で、私が思ったのは、『1番』は大したこと無い」
 高橋:「弱ェのか?」
 リサ:「弱いんじゃないかって思う。少なくとも、気弱で臆病なんだって思った」
 愛原:「それはどうして?」
 リサ:「さっさと自分が来ないから。自分が感染させた同じ学校のコ達を使って私を探させただけで、自分は出て来ない。多分、これからも自分は安全な所にいて、私達のことは感染者を使って牽制するだけ。いかに楽に人間を貪り食おうか考えてる。そんなヤツ、臆病だよね」
 高橋:「臆病っつーか、卑怯だな」
 愛原:「てことは、さっさと引きずり出してやった方が勝てるというわけか」
 リサ:「まだ分かんないよ?愛原先生みたいな人に命令されて、そうしてるだけかもしれないし」
 愛原:「ああ、そうか。お前が俺の命令を聞いてくれてるのと同様、『1番』にもそういう人間がいるかもしれないってことか」
 リサ:「多分ね」
 高橋:「そいつが元凶ってことですか?」
 愛原:「その元凶を更に操り糸で操る黒幕が、またいたりしてな?」

 少し昔の政界で言うなら、鳩山由紀夫を操り糸で操る小沢一郎、その小沢一郎を更に操り糸で操る中国共産党の……あれ?誰か来たか?

 愛原:「警察じゃそこまで分かんないだろうから、早いとこ善場主任達に捜査してもらわないと」
 高橋:「俺達じゃ何もできないっスか?」
 愛原:「だって依頼が無いんじゃ動けねーよ」
 高橋:「それもそうっスね。あの日本刀のJKには教えますか?」
 愛原:「今はいいだろう。日本刀持って、聖クラリス女学院に乗り込まれても、話がややこしくなるだけだ」
 リサ:「栗原蓮華さんか。同じ学園の先輩の」
 愛原:「そうだよ」
 リサ:「……もしかしたら、その人から逃げてるのかもしれないね」
 愛原:「んん?」
 リサ:「あの人は何人ものリサ・トレヴァーを斬ってる。きっと、『1番』の耳にも入ってる。だけど『1番』は臆病だから、自分で倒そうとはしない。栗原さんに見つからないようにしてるのかも。だから霧生市にはいたんだけど、あの人が来るって分かったから逃げてしまったのかも」
 愛原:「なるほど!そういうことか!」
 高橋:「じゃあ先生、やはりここは……」
 愛原:「いや、いずれにせよ善場主任の捜査待ちだな」

 本当にその学院にいるのかどうかも分からない。
 まずはそこ突き止めてからだ。
 できれば背後関係も分かるといい。
 ……高野君が案外知ってたりしてな。
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“愛原リサの日常” 「『1番』動く」

2020-12-18 15:00:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月30日20:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川地区某所]

 斉藤:「もう帰っちゃうの?どうせなら、泊まって行けばいいのに……」
 リサ:「愛原先生から帰って来いって言われてる。だから帰る」

 リサは斉藤のマンションに行っていた。
 学校から直接向かったので、制服姿のままである。
 宿題や夕食はここで済ませた。

 斉藤:「そう。残念ね。それじゃまた明日、学校でね」
 リサ:「うん。それじゃ」

 リサは斉藤と別れると、家を目指した。
 菊川3丁目の斉藤家から1丁目の愛原のマンションを目指す。
 移動手段は徒歩である。
 新大橋通りという大通りを通り、また、途中に地下鉄菊川駅もあるので、特に寂しくも無い町である。
 しかし、一たび住宅街に入れば、それはもう閑静なものである。

 リサ:(駅前を通ってから、妙な気配を感じる……)

 そこは上級BOW。
 自分に送る変な視線があると、すぐに気づく。
 リサは駅前のコンビニに入った。

 店員:「いらっしゃいませー」

 店内に入って、リサは雑誌コーナーに向かった。
 雑誌を立ち読みするフリをして、店の外に目をやる。
 店の外には他校の制服を着た女子生徒達が3人ほど、店の前に屯し始めた。
 グレーのセーラー服の上にコートを羽織り、マフラーを着けている。
 見たことも無い制服だった。
 セーラー服にトラウマのあるリサには、あれが不快に感じた。
 だが、どうやらあの女子生徒達はリサに用があるようだった。

 リサ:「しょうがない」

 リサは店で飲み物と生理用品だけ購入すると、店を出た。

 女子生徒A:「ちょっといいですか?」
 リサ:「何か?」
 女子生徒B:「その制服、東京中央学園ですよね?」
 リサ:「そうだけど?」
 女子生徒C:「そこの中等部に通う愛原リサって人、知ってますか?」

 やはり、自分に用があるようだった。

 1:私だよ。
 2:知らないよ。
 3:とうだろう?

 リサ:「どうだろう?」
 女子生徒A:「へえ、さすがね。もうお金の匂いを嗅ぎ付けたみたい」
 リサ:「情報料は5000円でいいよ」
 女子生徒B:「高い!」
 女子生徒C:「2000円にして!」
 リサ:「じゃあ3000で」
 女子生徒A:「……まあいいわ」
 女子生徒B:「いいの!?」
 女子生徒A:「今日中に居場所を掴まないと殺される……!」
 女子生徒B:「そ、それもそうだね」
 リサ:「殺される?誰に?」
 女子生徒A:「アンタには関係無い!……ちょっと、向こうに公園があったよね?そっちで話そう」

 リサは3人の他校生徒に囲まれるようにして、近くの公園に向かった。

 リサ:(こいつらに私を探させているヤツがいる。そして、私を見つけられなかったら殺すとまで言ってる。こんなことをさせるのは『1番』か?でも、あいつは私達から逃げてるはず……)

 近くの公園に行くと、更に5人の女子生徒が待ち構えていた。
 全員同じグレーのセーラー服を着ている。

 女子生徒A:「さあ、ここに3000円あるから。愛原リサの居場所を教えてくれます?」
 リサ:「2度も言わせないで。どうだろう?」
 女子生徒D:「おい!こいつ本当は知らないんじゃないの!?」
 女子生徒E:「ウソついたら殺すぞ!」

 待ち構えていた女子生徒達はナイフやらスタンガンやら取り出した。

 リサ:「ふん……」

 リサは第一形態に変化した。

 女子生徒F:「こ、こいつ!あの人と同じ!」
 女子生徒G:「こいつだよ!こいつを連れて行かないと!」
 リサ:「私を倒したら、一緒に行ってやるよ」

 リサは一瞬わざと負けて、こいつらに命令した奴らと接触しようかと思ったが、愛原への連絡手段が無いことに気づいてそれはやめることにした。
 スマホはあるが、連絡する暇があるとは思えなかったからだ。

 リサ:(取りあえずこいつら半殺しにして、逆に聞き出してやるか……!)

 変化したリサは向かう所、敵無しだった。
 恐らくはケンカに自信のある者達だったのだろうが、リサにあっという間に倒された。

 リサ:「愛原リサ、という者を探してるんだっけ?」
 女子生徒A:「あ、いや、その……」

 残るはこの女子生徒Aだけになった。
 彼女はリサの強さに恐れを成し、腰を抜かしてしまった。

 リサ:「私と一緒に来てもらおうか。あんた達に命令したヤツについて聞かせてもらう」
 女子生徒A:「そ、それは……!」

 その時、リサに倒された女子生徒達が叫び声を上げた。

 女子生徒A:「あ……あ……あ……!」

 その者達は全員ゾンビ化した。

 リサ:「なっ……!?感染してたの!?」

 もちろん感染していようが、ただのゾンビに負けるリサではない。
 首を蹴り飛ばしたり、頭を叩き割ったりして対処した。

 リサ:「来い!」
 女子生徒A:「きゃあっ!」

 リサは生き残りの女子生徒Aを抱えると、持ち前の身体能力で素早くこの場から立ち去った。
 そして、近くのマンションの屋上に上がる。
 リサはすぐに現況を愛原や善場に報告した。
 これで警察の次にBSAAが出動してくるというわけである。

 リサ:「アンタは助けてやるから、アンタ達に命令したのは誰か教えて?」
 女子生徒A:「い、言えない……」

 するとリサ、牙を剥き出しにして迫った。

 リサ:「言わないと、ここで食い殺すぞ……!」
 女子生徒A:「いやぁあああっ!」

 座り込んだ女子生徒の周りから湯気が立ち上がる。
 あまりの恐怖に失禁してしまったようだ。

 リサ:「どうして言えない!?」
 女子生徒A:「言ったら殺される……!」
 リサ:「殺される前に、私の知り合いが保護してくれる……。ん?」

 リサは先ほどの事態を思い出した。

 リサ:「私と同じ感じのヤツに脅されてる?」

 女子生徒Aは無言で何度も頷いた。

 リサ:「そいつの名前はリサ・トレヴァーとか言わない?」
 女子生徒A:「違う!あの人の名前は……あぁあ!」

 すると、女子生徒Aが頭を抱えて苦しみだした。

 女子生徒A:「ち、違うんです!今のはつい……!お、お許しください!お慈悲を!どうか!どうか!……ブボォォォッ!!」

 女子生徒Aは血反吐を吐いた。

 女子生徒A:「た、助け……!死にたく……!!」

 だが、リサはこの女子生徒は死ぬと分かった。
 その直後、女子生徒は全身から血を噴き出して死んだのである。

 リサ:「『1番』!近くにいるのか!?」

 全部、リサがやろうと思えばできる異能であった。
 リサはその力を抑えて、せいぜい感染者に胃腸炎を起こさせる程度にしている。
 しかし、力を強めれば、このように体内に送り込んだウィルスを暴走させて殺すことは可能だ。
 そして、それと同じことができる者と言えば、あと1人しかいない。
 リサは同じリサ・トレヴァーの生き残りを呼んだ。
 だが、それに答える者はいなかった。

 リサ:「!?」

 その時、死んだはずの女子生徒Aの口元がパクパク動いた。
 殺されても尚、『1番』に操られているようだ。

 女子生徒A:「エブリンが『皆もらった』と言えば、それが捕食の始まり。私達が捕食を始める時は、何と言う?」
 リサ:「何だって?」

 今度こそ本当に死んだようだ。
 どうやら『1番』がこの女子生徒を使って、何かメッセージを言わせたらしい。

 リサ:「『いただきます』……じゃないの?やっぱり『1番』、アンタとは友達になれそうにない」

 リサはそう言って、マンションの屋上から向かいのマンションに飛び移った。
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