[12月12日15:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 西武バス上落合八丁目停留所→斉藤家]
〔「上落合八丁目です」〕
私達を乗せたバスは毎週土曜日1本しか運転されない免許維持路線である。
それでも他の繁忙路線と平行する区間においては、他に何人かの乗客も乗り合わせていた。
しかしその平行路線が少なくなる度に乗客は減って行き、ついにこの路線単独の区間ともなると、乗客は私達だけしかいなくなった。
そして、バスが下車停留所に到着するが、意外にもそこでバスを待つ乗客はいた。
このまま終点まで乗客ゼロというのも可愛そうだと思っていたが、一応の需要はあるようた。
もっとも、このような免許維持路線のことを知っているのは、明らかに地元民であろう。
とはいえ、私はネットで調べて知っていたが、絵恋さんは知らなかった。
この県道をバスが走っているというのはバス停の存在から知ってはいたが、本数となると知らなかったようだ。
都営バスに乗り慣れている身としては、中扉から乗って前扉から降りる方式には違和感があるが、全国的に見ればこの方式の方が一般的である。
メイド:「お待ちしておりました。御嬢様、愛原様」
斉藤絵恋:「ああ。今日はダイヤが来てくれたのね」
愛原:「だ、ダイヤ!?時刻表!?」
絵恋:「違います。ダイヤモンドのことですよ」
斉藤家のメイド達は宝石から取ったコードネームが付けられている。
それは本名に因んだものであるという。
例えば絵恋さん専属のメイドは『パール』という。
本名は霧崎真珠なので。
ヤンキーだった頃は『切り裂きパール』という渾名を持っていた。
ダイヤ:「コードネーム“ダイヤモンド”です。よろしくお願いします」
“ダイヤ”は“パール”とは対照的に、ツインテールのお下げ髪をしていた。
見た目には清楚なメイドで、とても過去に収監された履歴を持つとは思えない。
愛原:「よ、よろしく。愛原学です。……因みに本名は何と仰いますか?」
ダイヤ:「金子剛美(かねこ たけみ)と申します」
愛原:「金子剛美……」
金……剛……金剛!金剛石(ダイヤモンド)!?
そういうことか!
ダイヤ:「お荷物、お持ち致します」
絵恋:「ありがと」
ダイヤ:「愛原様も」
愛原:「あ、いや、いいよ。重いし」
高橋:「先生の荷物運びは俺の仕事だ!」
ダイヤ:「も、申し訳ありません」
リサ:「じゃあ、私の持って」
ダイヤ:「かしこまりました」
愛原:「リサの荷物も着替えとか何とか色々入ってるから重いんじゃないか?」
ダイヤ:「いえ、これくらい平気です。では、ご案内させて頂きます」
メイドのダイヤはバス停のすぐ近くにある歩道橋の階段を登った。
それにしても、本当にこのメイド服は目立つ。
斉藤家は地元でも名士らしいので、町内会に入っているご近所の人達はもう慣れっこだろうが、さすがにこの県道まで来るとな……。
バスを待っていた乗客も、メイド服姿のメイドさんが来てびっくりしたことだろう。
愛原:「確かに埼玉は少し冷えるな」
歩道橋の上に上がると、風が吹いて来た。
メイドのダイヤさんはパールと違ってロングヘアーということもあり、風に髪がゆらゆらと靡いている。
ロングタイプのスカートもひらひらと靡くが、それが絵になるのである。
絵恋:「リサさん、スカート押さえて!見えちゃうよ!」
絵恋さんが慌てて後ろからリサのスカートを押さえる。
リサ:「先生に見られるくらい平気」
絵恋:「いや、先生以外にも見られるから、これ!」
リサ:「フム。じゃあ気をつける」
リサはスカートを手で押さえた。
リサのヤツ、また見せパン穿いてこなかったのか。
あれほど高野君に言われたのに。
いや、リサの発言からして、私がいるからワザとだな、全く。
因みに絵恋さんは黒いスパッツがチラ見えしたことから、ちゃんと穿いているようだ。
AVではよく穿いていないのが当たり前になっているが、現実は逆だからな?
なので、よくJKのスカートの中を盗撮して捕まるヤツのニュースを見るが、どうせスパッツしか写ってないだろといつもツッコんでいる。
もしかして、リサみたいな奇跡を狙っているのだろうか?
アホだな。
ダイヤ:「こちらでございます」
愛原:「久しぶりの訪問だ」
歩道橋を渡り終えて一方通行の小路に入り、しばらく真っ直ぐ進んで行くと、風景が高級住宅街のそれに変わって来る。
いかにもセコムが入っていそうな邸宅が並ぶ一画に、斉藤家は存在した。
豪邸と言える部類には入るだろうが、田園調布とか常盤台のそれと比べれば少し毛色が違う。
“おぼっちゃまくん”の御坊家や“ちびまる子ちゃん”の花輪家はさすがに誇張し過ぎだろうが、それでも広い敷地に大きな庭があるというのがベタな法則ではなかろうか。
それと比べれば、斉藤家は敷地面積はセレブの家にしては狭い。
1階に車が3台駐車できる駐車場があるのだが、その分1階は狭くなってしまっている。
が、その代わり、縦方向に広く造ったようである。
見上げると地上3階建てで、地下室も広く造っているという。
また、塔屋も存在する。
塔屋とは屋上に造られた小屋のことで、ビルの場合だとエレベーター機械室になっていたり、窓清掃用のゴンドラの格納庫になっている事が多い。
新庄:「お帰りなさいませ、御嬢様。いらっしゃいませ、愛原様」
愛原:「新庄さん、しばらくです」
お抱え運転手兼執事の新庄氏。
新庄:「旦那様が応接室でお待ちでございます。どうぞ、こちらに」
愛原:「ありがとうございます」
ダイヤとは別のメイドさんがやってきた。
新庄:「ルビー、愛原様方のお荷物を客室に」
ルビー:「かしこまりました!」
家事使用人の中では、メイドよりも執事の方が地位が上である(上級使用人)。
ここでは新庄氏が使用人の中で責任者なのだろう。
単なる運転手だけだと、メイド達と同じ下級使用人となる。
ルビー:「お荷物、お部屋までお運び致します」
ダイヤやパールよりも明るい感じの小柄なメイドさんは、私や高橋の荷物を受け取ると、奥の部屋へと向かった。
快活な性格なのに、あれでも過去に何ややらかしたんだろうな。
高橋:「多分、俺の見立てでは、真珠がこの中で一番やらかしてますね。他はまだ懲役ン年で済んだ奴らでしょうが、真珠の場合は少年法で保護されてなけりゃ、死刑か無期懲役モンですよ」
新庄:「お察しの通り、殺人罪で逮捕歴のある者はパールだけです」
高橋:「やっぱりか」
新庄:「それより、応接室へ。ご案内致します」
愛原:「ああ。よろしくお願いします」
リサ:「先生、私はサイトーの部屋に行ってるから」
愛原:「ああ、分かった」
私と高橋は1階奥の応接間へ。
リサと絵恋さんはエレベーターで、3階へ向かった。
この家、ホームエレベーターがあるのだ。
〔「上落合八丁目です」〕
私達を乗せたバスは毎週土曜日1本しか運転されない免許維持路線である。
それでも他の繁忙路線と平行する区間においては、他に何人かの乗客も乗り合わせていた。
しかしその平行路線が少なくなる度に乗客は減って行き、ついにこの路線単独の区間ともなると、乗客は私達だけしかいなくなった。
そして、バスが下車停留所に到着するが、意外にもそこでバスを待つ乗客はいた。
このまま終点まで乗客ゼロというのも可愛そうだと思っていたが、一応の需要はあるようた。
もっとも、このような免許維持路線のことを知っているのは、明らかに地元民であろう。
とはいえ、私はネットで調べて知っていたが、絵恋さんは知らなかった。
この県道をバスが走っているというのはバス停の存在から知ってはいたが、本数となると知らなかったようだ。
都営バスに乗り慣れている身としては、中扉から乗って前扉から降りる方式には違和感があるが、全国的に見ればこの方式の方が一般的である。
メイド:「お待ちしておりました。御嬢様、愛原様」
斉藤絵恋:「ああ。今日はダイヤが来てくれたのね」
愛原:「だ、ダイヤ!?時刻表!?」
絵恋:「違います。ダイヤモンドのことですよ」
斉藤家のメイド達は宝石から取ったコードネームが付けられている。
それは本名に因んだものであるという。
例えば絵恋さん専属のメイドは『パール』という。
本名は霧崎真珠なので。
ヤンキーだった頃は『切り裂きパール』という渾名を持っていた。
ダイヤ:「コードネーム“ダイヤモンド”です。よろしくお願いします」
“ダイヤ”は“パール”とは対照的に、ツインテールのお下げ髪をしていた。
見た目には清楚なメイドで、とても過去に収監された履歴を持つとは思えない。
愛原:「よ、よろしく。愛原学です。……因みに本名は何と仰いますか?」
ダイヤ:「金子剛美(かねこ たけみ)と申します」
愛原:「金子剛美……」
金……剛……金剛!金剛石(ダイヤモンド)!?
そういうことか!
ダイヤ:「お荷物、お持ち致します」
絵恋:「ありがと」
ダイヤ:「愛原様も」
愛原:「あ、いや、いいよ。重いし」
高橋:「先生の荷物運びは俺の仕事だ!」
ダイヤ:「も、申し訳ありません」
リサ:「じゃあ、私の持って」
ダイヤ:「かしこまりました」
愛原:「リサの荷物も着替えとか何とか色々入ってるから重いんじゃないか?」
ダイヤ:「いえ、これくらい平気です。では、ご案内させて頂きます」
メイドのダイヤはバス停のすぐ近くにある歩道橋の階段を登った。
それにしても、本当にこのメイド服は目立つ。
斉藤家は地元でも名士らしいので、町内会に入っているご近所の人達はもう慣れっこだろうが、さすがにこの県道まで来るとな……。
バスを待っていた乗客も、メイド服姿のメイドさんが来てびっくりしたことだろう。
愛原:「確かに埼玉は少し冷えるな」
歩道橋の上に上がると、風が吹いて来た。
メイドのダイヤさんはパールと違ってロングヘアーということもあり、風に髪がゆらゆらと靡いている。
ロングタイプのスカートもひらひらと靡くが、それが絵になるのである。
絵恋:「リサさん、スカート押さえて!見えちゃうよ!」
絵恋さんが慌てて後ろからリサのスカートを押さえる。
リサ:「先生に見られるくらい平気」
絵恋:「いや、先生以外にも見られるから、これ!」
リサ:「フム。じゃあ気をつける」
リサはスカートを手で押さえた。
リサのヤツ、また見せパン穿いてこなかったのか。
あれほど高野君に言われたのに。
いや、リサの発言からして、私がいるからワザとだな、全く。
因みに絵恋さんは黒いスパッツがチラ見えしたことから、ちゃんと穿いているようだ。
AVではよく穿いていないのが当たり前になっているが、現実は逆だからな?
なので、よくJKのスカートの中を盗撮して捕まるヤツのニュースを見るが、どうせスパッツしか写ってないだろといつもツッコんでいる。
もしかして、リサみたいな奇跡を狙っているのだろうか?
アホだな。
ダイヤ:「こちらでございます」
愛原:「久しぶりの訪問だ」
歩道橋を渡り終えて一方通行の小路に入り、しばらく真っ直ぐ進んで行くと、風景が高級住宅街のそれに変わって来る。
いかにもセコムが入っていそうな邸宅が並ぶ一画に、斉藤家は存在した。
豪邸と言える部類には入るだろうが、田園調布とか常盤台のそれと比べれば少し毛色が違う。
“おぼっちゃまくん”の御坊家や“ちびまる子ちゃん”の花輪家はさすがに誇張し過ぎだろうが、それでも広い敷地に大きな庭があるというのがベタな法則ではなかろうか。
それと比べれば、斉藤家は敷地面積はセレブの家にしては狭い。
1階に車が3台駐車できる駐車場があるのだが、その分1階は狭くなってしまっている。
が、その代わり、縦方向に広く造ったようである。
見上げると地上3階建てで、地下室も広く造っているという。
また、塔屋も存在する。
塔屋とは屋上に造られた小屋のことで、ビルの場合だとエレベーター機械室になっていたり、窓清掃用のゴンドラの格納庫になっている事が多い。
新庄:「お帰りなさいませ、御嬢様。いらっしゃいませ、愛原様」
愛原:「新庄さん、しばらくです」
お抱え運転手兼執事の新庄氏。
新庄:「旦那様が応接室でお待ちでございます。どうぞ、こちらに」
愛原:「ありがとうございます」
ダイヤとは別のメイドさんがやってきた。
新庄:「ルビー、愛原様方のお荷物を客室に」
ルビー:「かしこまりました!」
家事使用人の中では、メイドよりも執事の方が地位が上である(上級使用人)。
ここでは新庄氏が使用人の中で責任者なのだろう。
単なる運転手だけだと、メイド達と同じ下級使用人となる。
ルビー:「お荷物、お部屋までお運び致します」
ダイヤやパールよりも明るい感じの小柄なメイドさんは、私や高橋の荷物を受け取ると、奥の部屋へと向かった。
快活な性格なのに、あれでも過去に何ややらかしたんだろうな。
高橋:「多分、俺の見立てでは、真珠がこの中で一番やらかしてますね。他はまだ懲役ン年で済んだ奴らでしょうが、真珠の場合は少年法で保護されてなけりゃ、死刑か無期懲役モンですよ」
新庄:「お察しの通り、殺人罪で逮捕歴のある者はパールだけです」
高橋:「やっぱりか」
新庄:「それより、応接室へ。ご案内致します」
愛原:「ああ。よろしくお願いします」
リサ:「先生、私はサイトーの部屋に行ってるから」
愛原:「ああ、分かった」
私と高橋は1階奥の応接間へ。
リサと絵恋さんはエレベーターで、3階へ向かった。
この家、ホームエレベーターがあるのだ。