報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 4

2020-12-29 20:01:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日15:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 西武バス上落合八丁目停留所→斉藤家]

〔「上落合八丁目です」〕

 私達を乗せたバスは毎週土曜日1本しか運転されない免許維持路線である。
 それでも他の繁忙路線と平行する区間においては、他に何人かの乗客も乗り合わせていた。
 しかしその平行路線が少なくなる度に乗客は減って行き、ついにこの路線単独の区間ともなると、乗客は私達だけしかいなくなった。
 そして、バスが下車停留所に到着するが、意外にもそこでバスを待つ乗客はいた。
 このまま終点まで乗客ゼロというのも可愛そうだと思っていたが、一応の需要はあるようた。
 もっとも、このような免許維持路線のことを知っているのは、明らかに地元民であろう。
 とはいえ、私はネットで調べて知っていたが、絵恋さんは知らなかった。
 この県道をバスが走っているというのはバス停の存在から知ってはいたが、本数となると知らなかったようだ。
 都営バスに乗り慣れている身としては、中扉から乗って前扉から降りる方式には違和感があるが、全国的に見ればこの方式の方が一般的である。

 メイド:「お待ちしておりました。御嬢様、愛原様」
 斉藤絵恋:「ああ。今日はダイヤが来てくれたのね」
 愛原:「だ、ダイヤ!?時刻表!?」
 絵恋:「違います。ダイヤモンドのことですよ」

 斉藤家のメイド達は宝石から取ったコードネームが付けられている。
 それは本名に因んだものであるという。
 例えば絵恋さん専属のメイドは『パール』という。
 本名は霧崎真珠なので。
 ヤンキーだった頃は『切り裂きパール』という渾名を持っていた。

 ダイヤ:「コードネーム“ダイヤモンド”です。よろしくお願いします」

 “ダイヤ”は“パール”とは対照的に、ツインテールのお下げ髪をしていた。
 見た目には清楚なメイドで、とても過去に収監された履歴を持つとは思えない。

 愛原:「よ、よろしく。愛原学です。……因みに本名は何と仰いますか?」
 ダイヤ:「金子剛美(かねこ たけみ)と申します」
 愛原:「金子剛美……」

 金……剛……金剛!金剛石(ダイヤモンド)!?
 そういうことか!

 ダイヤ:「お荷物、お持ち致します」
 絵恋:「ありがと」
 ダイヤ:「愛原様も」
 愛原:「あ、いや、いいよ。重いし」
 高橋:「先生の荷物運びは俺の仕事だ!」
 ダイヤ:「も、申し訳ありません」
 リサ:「じゃあ、私の持って」
 ダイヤ:「かしこまりました」
 愛原:「リサの荷物も着替えとか何とか色々入ってるから重いんじゃないか?」
 ダイヤ:「いえ、これくらい平気です。では、ご案内させて頂きます」

 メイドのダイヤはバス停のすぐ近くにある歩道橋の階段を登った。
 それにしても、本当にこのメイド服は目立つ。
 斉藤家は地元でも名士らしいので、町内会に入っているご近所の人達はもう慣れっこだろうが、さすがにこの県道まで来るとな……。
 バスを待っていた乗客も、メイド服姿のメイドさんが来てびっくりしたことだろう。

 愛原:「確かに埼玉は少し冷えるな」

 歩道橋の上に上がると、風が吹いて来た。
 メイドのダイヤさんはパールと違ってロングヘアーということもあり、風に髪がゆらゆらと靡いている。
 ロングタイプのスカートもひらひらと靡くが、それが絵になるのである。

 絵恋:「リサさん、スカート押さえて!見えちゃうよ!」

 絵恋さんが慌てて後ろからリサのスカートを押さえる。

 リサ:「先生に見られるくらい平気」
 絵恋:「いや、先生以外にも見られるから、これ!」
 リサ:「フム。じゃあ気をつける」

 リサはスカートを手で押さえた。
 リサのヤツ、また見せパン穿いてこなかったのか。
 あれほど高野君に言われたのに。
 いや、リサの発言からして、私がいるからワザとだな、全く。
 因みに絵恋さんは黒いスパッツがチラ見えしたことから、ちゃんと穿いているようだ。
 AVではよく穿いていないのが当たり前になっているが、現実は逆だからな?
 なので、よくJKのスカートの中を盗撮して捕まるヤツのニュースを見るが、どうせスパッツしか写ってないだろといつもツッコんでいる。
 もしかして、リサみたいな奇跡を狙っているのだろうか?
 アホだな。

 ダイヤ:「こちらでございます」
 愛原:「久しぶりの訪問だ」
 歩道橋を渡り終えて一方通行の小路に入り、しばらく真っ直ぐ進んで行くと、風景が高級住宅街のそれに変わって来る。
 いかにもセコムが入っていそうな邸宅が並ぶ一画に、斉藤家は存在した。
 豪邸と言える部類には入るだろうが、田園調布とか常盤台のそれと比べれば少し毛色が違う。
 “おぼっちゃまくん”の御坊家や“ちびまる子ちゃん”の花輪家はさすがに誇張し過ぎだろうが、それでも広い敷地に大きな庭があるというのがベタな法則ではなかろうか。
 それと比べれば、斉藤家は敷地面積はセレブの家にしては狭い。
 1階に車が3台駐車できる駐車場があるのだが、その分1階は狭くなってしまっている。
 が、その代わり、縦方向に広く造ったようである。
 見上げると地上3階建てで、地下室も広く造っているという。
 また、塔屋も存在する。
 塔屋とは屋上に造られた小屋のことで、ビルの場合だとエレベーター機械室になっていたり、窓清掃用のゴンドラの格納庫になっている事が多い。

 新庄:「お帰りなさいませ、御嬢様。いらっしゃいませ、愛原様」
 愛原:「新庄さん、しばらくです」

 お抱え運転手兼執事の新庄氏。

 新庄:「旦那様が応接室でお待ちでございます。どうぞ、こちらに」
 愛原:「ありがとうございます」

 ダイヤとは別のメイドさんがやってきた。

 新庄:「ルビー、愛原様方のお荷物を客室に」
 ルビー:「かしこまりました!」

 家事使用人の中では、メイドよりも執事の方が地位が上である(上級使用人)。
 ここでは新庄氏が使用人の中で責任者なのだろう。
 単なる運転手だけだと、メイド達と同じ下級使用人となる。

 ルビー:「お荷物、お部屋までお運び致します」

 ダイヤやパールよりも明るい感じの小柄なメイドさんは、私や高橋の荷物を受け取ると、奥の部屋へと向かった。
 快活な性格なのに、あれでも過去に何ややらかしたんだろうな。

 高橋:「多分、俺の見立てでは、真珠がこの中で一番やらかしてますね。他はまだ懲役ン年で済んだ奴らでしょうが、真珠の場合は少年法で保護されてなけりゃ、死刑か無期懲役モンですよ」
 新庄:「お察しの通り、殺人罪で逮捕歴のある者はパールだけです」
 高橋:「やっぱりか」
 新庄:「それより、応接室へ。ご案内致します」
 愛原:「ああ。よろしくお願いします」
 リサ:「先生、私はサイトーの部屋に行ってるから」
 愛原:「ああ、分かった」

 私と高橋は1階奥の応接間へ。
 リサと絵恋さんはエレベーターで、3階へ向かった。
 この家、ホームエレベーターがあるのだ。
 
コメント (6)
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“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 3

2020-12-29 14:27:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日14:33.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。9番線の電車は宇都宮線、普通列車、小金井行きです。短い10両編成での運転です。電車はホーム中ほどに停車しております」〕

 危うくリサの機嫌を損ね、この電車を途中で運転中止に追い込むところであったが、何とかお菓子で機嫌を直すことに成功し、私達は今、埼玉の地を踏んでいる。

 愛原:「いやあ、電車がダイヤ通りに走るって素晴らしいことだなぁ……」
 斉藤絵恋:「先生。リサさんの機嫌を損ねたりしたら、先生もバイオテロリストですからね?」
 愛原:「わ、分かった。気を付けるよ」

 電車を降りて、コンコースへの階段を登る。
 私が美人のグリーンアテンダントに目を奪われたせいか、今度はリサが私にアピールしてくる。
 リサは中学生ながら通学の時以外は制服のスカートをJKのように短くしているのだが、それで私の上をさっさと行って自分のことをアピールしてくる。
 それだけならまだ可愛い方で、私が申し訳ないなと思うのは、リサの取り巻きをやっている(またはやらされている)同級生達。
 もちろんそこには斉藤絵恋さんも含まれている。
 私が他の女性に目を奪われないよう、彼女達もまた私の事務所や家に来る場合は、太ももが見えるような服装を強要されているのだ。
 たまたま私が自分専用のPCに保存しておいた18禁動画の中に、『JK太もも&パンチラパラダイス』なるものがあり、リサはこれを見て私がそういうフェチだと思ったらしい。
 で、例え私がリサ以外の女性に目を向けてしまっても、それがまだリサの取り巻きであれば、自分の管理内であるので、いつでも注意できるということなんだと。
 また、逆に私がリサにばかり目を向けていて、却って飽きられないようにする為、あえて取り巻きを使うことも考えているのだとか。
 もし本当にそうだとしたら、既に恐ろしいコである。

 斉藤:「埼玉は少し寒いですね」
 愛原:「ゴメンな、斉藤さん。リサのワガママに付き合わせてしまって……」

 私は同じく制服のスカートから生足を出している斉藤さんを見ながら言った。
 本当ならストッキングでも穿いて防寒対策したかっただろうに、リサがそれを許さないのだ。
 学校によっては冬場の生足を原則禁止とし、ストッキング着用を義務付ける所もあるらしいが、東京中央学園はそこまで厳しくない(着用については自由だが、着用する場合は色の規定がある)。

 斉藤:「いいんです。リサさんの頼みなら、何でも聞きます」
 愛原:「そうか……」

 もしも万が一、リサが『ここで全裸になれ』と命令したら聞くのだろうか?

 リサ:「先生。この後はどこに行く?」
 愛原:「ここからバスに乗るよ。少しだけ時間がある」
 リサ:「じゃあ、本買っていい?」
 愛原:「いいよ」

 リサはコンコース内にある本屋を指さした。
 リサ達はマンガのコーナーに行く。
 いくらBOWでも、マンガに興味を持つところは人間らしいのだが。

 愛原:「『冬の臨時列車掲載』ね」

 私は平積みにされている今月の時刻表を見て呟いた。

 

 高橋:「先生、今年の冬は帰省されるんですか?」
 愛原:「コロナ禍だからなぁ、多分無理だろ~。そういうオマエはどうなんだ?オマエは新潟県出身だったな?」
 高橋:「下越の片田舎です。でも、俺の家庭は崩壊しているので、帰るもクソも無いんですよ」
 愛原:「そうなのか」
 高橋:「だから先生の所みたいに、平和な家庭が羨ましいんです」
 愛原:「そうか……」
 高橋:「だからこそ、俺みたいなヒネクレ者がのこのこお邪魔するのは申し訳ないと思っています」
 愛原:「前回のことなら気にするな。あれは緊急事態だったからな。まさか最終的にリサ・トレヴァーに繋がっていたとは思わなかったが」
 高橋:「先生の伯父さん、リサを人間に戻す薬を作るってことでしたけど、本当にできるんですか?」
 愛原:「正確には、『リサを人間に戻す薬の材料の一部となる薬品』って所だな。でもなかなか根幹を成す薬品だったらしく、それで旧アンブレラが買い付けに来たって話だっただろ」
 高橋:「そうです」
 愛原:「その点はまだ日本アンブレラは優しいな」
 高橋:「そうなんですか?」
 愛原:「もしもアメリカの本体が俺の聞いた通りなら、公一伯父さんをスカウトしようとするだろう。そして断ろうものならその場で射殺するか、もしくは拉致って伯父さんを人体実験に掛けていただろう」
 高橋:「戦隊ヒーロー番組辺りに出て来る悪の組織みたいな奴らですね!?」
 愛原:「か、もしくは“名探偵コナン”に出て来る黒の組織みたいな奴らとかな。多分そういう組織のモデルとなったのが、洋画に登場する悪の組織なんだろう」
 高橋:「はあ、なるほど」

 しばらくしてリサ達が戻って来る。

 リサ:「買って来た」
 愛原:「で、何を?」
 リサ:「“鬼滅の刃”」

 人食い鬼(を模したBOW)、人食い鬼の登場するマンガを買うの図。

[同日14:55.天候:晴 JR大宮駅西口バスプール→西武バス大38系統車内]

 目当ての物を買ってから改札を出て西口に向かう。
 実際には東西自由通路上にあるNEWDAYSにも立ち寄った。
 バスプールでバスを待っていると、中型路線バスがやってくる。
 バスに乗り込むと、1番後ろの座席に座った。

 リサ:「先生、そのペーパーバッグの中身は?美味しそうな匂いがする」
 愛原:「これは斉藤社長へのお土産だよ。大会社の社長さんに、変な物は持って行けないからな」
 絵恋:「父はそういうの気にしませんよ。コンビニで売ってる適当な菓子折りでも十分です」
 愛原:「それはちょっとキツいだろう」

 私は苦笑した。
 一応、新大橋通り沿いの和菓子屋で購入したものだ。
 お茶請けにはちょうどいいだろう。
 発車の時間がやってきて、バスにエンジンが掛かった。
 コロナ対策の為に小さな窓が各所で開いていて、さすがに寒い。
 早いとこ暖房を効かせてもらたいたものだ。

〔「14時55分発、上落合経由、大宮駅東口行き、発車致します」〕
〔発車します。お掴まりください。発車します〕

 バスが走り出す。
 走り出すと、開いた窓から少し風が吹き込んで来た。
 斉藤さんはマフラーを巻き直したが、リサは何もしない。
 本当に暑さ寒さには強いBOWなのだ。

〔♪♪♪。大変お待たせ致しました。ご乗車、ありがとうございます。このバスは上小町、中並木経由、大宮駅東口行きです。次は新国道、新国道。……〕

 斉藤:「父に一応ラインしておきました。バス停まで迎えに行かせるそうです」
 愛原:「えっ?いいよ、そんな。申し訳ない」

 どうせバス停から斉藤家まで、徒歩5分といったところだ。
 迎えに来てもらうほどのものではない。

 斉藤:「うちのメイドの誰かが来るらしいですね」
 高橋:「真珠の『危険な同僚』達か……」

 高橋は右手をこめかみに当てる仕草をした。
 高橋は他人の事は言えないが、霧崎真珠さんも前科者。
 そして何故か斉藤家の使用人達は、皆して前科者なのである。
 もちろん全員が(表向きは)ちゃんと更生して、斉藤家で使用人として真面目に働いているのだが。
 斉藤社長のお抱え運転手の新庄さんだって、前職のタクシー運転手だった時、人身事故を起こして市原刑務所で服役したことがあるというくらいだ。

 斉藤:「父はそういうのが好きなんです。好きにやらせてください」
 愛原:「まあ、キミがそう言うのなら……」
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