報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「地下鉄の戦い」

2020-12-25 20:09:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月6日08:20.天候:不明 東京都港区 都営地下鉄大江戸線麻布十番駅~六本木駅間トンネル]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 すんごいマズいことになった。
 私達の想定だと、これから向かう女学院にてリサ・トレヴァーの『1番』が待ち受けているはずだった。
 ところが、『1番』はその上を行きやがったのだ。
 現地に向かう地下鉄の中で襲って来たのだ。
 これは想定外だった。
 行く手をどこに潜んでいたか、ネメシスが立ちはだかり、後部からはまた別の化け物が襲って来たというではないか。
 まさかネメシスが2匹?
 それだとBSAA並みの装備が無いと勝てないぞ?
 リサですら、一匹相手に苦戦しているというのに!

 愛原:「どいて!通してください!」

 前後を挟み撃ちにされて避難路を失った乗客達はパニックになっていた。
 中には機転を利かして乗降ドアの非常コックを開き、手動でドアを開けて車外へ脱出しようと試みる者もいた。
 ところが、ミニ規格の地下鉄の弱点がここで現れた。
 トンネル断面が小さく、しかもこの辺りは単線トンネルである為、側面からの脱出が困難という特徴があった。

 高橋:「どけっ!」

 私達がそんな乗客達を避けながら最後尾に向かうと、そこにいたのは……。

 乗客ゾンビA:「アァア……!」
 乗客ゾンビB:「ウゥウ……!」
 乗客ゾンビC:「アゥゥ……!」

 ゾンビ化した乗客達だった。
 動きがぎこちなく、素早さにも欠けることから、Tウィルス系のゾンビだと思われる(Cウィルスだと動きは俊敏になる)。

 愛原:「ゾンビしかいないぞ!?ゾンビしかいないじゃん!?」

 もちろん私の感覚がマヒしているだけであって、他の一般乗客達から見れば、これとて十分な化け物なのである。

 女子中学生:「キャアアアッ!」
 乗客ゾンビD:「アァァァッ!!」

 その時、1人の女子中学生がゾンビ化した乗客に掴み倒された。

 高橋:「伏せろ!!」

 高橋は手持ちのマグナムを取り出すと、それで乗客Dの頭を撃ち抜いた。

 愛原:「大丈夫か!?」

 私が女子中学生をゾンビDから引き離した。
 その直後、ゾンビAが私に噛み付こうとしたが、私も手持ちのハンドガンで応戦する。

 高橋:「先生、下がってください!ここは俺が!」
 愛原:「分かった!キミ、ケガは無いかい!?」
 女子中学生:「は、はい……」

 少女はリサと似たようなショートボブの髪形をしており、しかも聖クラリス女学院の制服を着ていた。
 登校中にこの惨事に巻き込まれたようだ。

 愛原:「前の車両に逃げるんだ。もっとも、先頭には行くなよ?真ん中の車両辺りだ。いいね?」
 女子中学生:「は、はい」

 しかし、この乗客達はどうしてゾンビ化したのだろう?
 もちろんネメシスにそれは可能だ。
 しかしネメシスは前の方にいた。
 そしてこの狭いトンネルでは、電車の外側を回り込むことなど不可能だ。

 乗客ゾンビB:「ギャアァァッ!!」
 乗客ゾンビC:「アァァァ……!」
 愛原:「よし、クリア!」
 高橋:「掃除完了っス!」

 私達は最後尾にいたゾンビ達を倒した。

 愛原:「後ろはどうなってるんだ!?」

 私達は後部運転室に向かった。
 大江戸線はワンマン運転なので、後部運転室に行っても、そこに車掌はいない。
 しかし遮光幕は下ろされておらず、しかも室内は照明が点灯していたので、中の様子を見ることはできた。
 だが、中は特段何も無い。
 ネメシスに侵入された前部運転室とは対照的だ。

 愛原:「そこの貫通扉を開ければ、脱出できるはずだ」

 私は乗務員室扉をこじ開けた。
 そこから運転室に入ると、貫通扉を開けた。

 職員A:「大丈夫ですか!?」
 職員B:「救助に来ました!」

 麻布十番駅方面から地下鉄職員達がやってきた。

 愛原:「先頭車両は大変なことになっています!運転士さんは殺されました。とにかく、乗客の皆さんを避難させてください」

 私はそれだけ職員達に言うと、再び前の方に向かって進んだ。

 愛原:「後ろから避難できます!後ろの車両に向かってください!」

 とはいえ、さすがに死体だらけの最後尾を通るのはアレか?
 こりゃ早いとこネメシスを倒さないと……。

 女子中学生:「…………」
 愛原:「おおっ、キミ!後ろから脱出できるぞ!ちょっと……あれだ。死体が転がってるから、それが苦手だというのなら、目を瞑って……」
 女子中学生:「ありがとう。オジさん達、強いね」
 愛原:「ちょっとな。前は危ないから、後ろから脱出するんだ」
 女子中学生:「うん、分かった。ありがとう」

 女子中学生は最後尾の車両に向かった。
 だが、そこへ……。

 リサ:「待てっ!オマエ、『1番』だな!?」

 前の車両からリサ達がやってきた。

 愛原:「おお、リサ!無事だったか!?」
 善場:「ネメシスは何とかこちらで対応しました!BSAAが新宿方面から来ましたので!」
 愛原:「そうでしたか!」
 リサ:「『1番』!」
 女子中学生:「『1番』?何の事?」
 リサ:「トボけるな!私は『2番』だ!臭いは誤魔化せない!」
 『1番』?:「あなたが『2番』?ふーん……」

 その時だった。

 愛原:「おわっ、ととと!」

 何と、電車が動き出した。

 愛原:「え?え?え?何で何で!?」

 こんな状態で電車が動けるのか!?
 誰もハンドル操作なんてしてないのに!?

 『1番』?:「じゃあね?『2番』さん」
 リサ:「待てっ!」

 リサから『1番』と呼ばれた少女は後部運転室に行くと、開いている貫通扉から飛び下りた。

 蓮華:「『1番』!私はオマエを絶対に逃がさない!必ずまた見つけて、その首刎ねてやる!!」
 善場:「至急!至急!こちら善場!大至急、麻布十番駅を包囲されたし!聖クラリス女学院の制服を着た少女が『1番』である!」
 愛原:「前の方はどうなってるんだ!?」
 リサ:「ネメシスにだいぶ壊されたはずだけど……!」

 私達は先頭車に向かった。
 もしもこの電車が暴走しているのなら、早いとこ止めないとマズいことになる。
 確かに4両目から向こうは、窓ガラスが殆ど割れ、照明も壊されて薄暗くなっていた。
 最初に私達が乗っていた先頭車なんか、まるでトロッコ列車のようだ。
 だが、これもどういうわけだか、次の六本木駅に到着すると、ちゃんと停車した。

 愛原:「何が一体どうなってるんだ!?」
 善場:「ATO運転の路線ですからね。まさか、指令所から遠隔で操作した?いや、まさか新交通システムではないのだから、そういうことはできないはず……」

 しかし、仮にさっきの少女が『1番』だとしたら、最後尾車両の惨劇も辻褄は合う。
 リサ・トレヴァーもTウィルスを宿しているので、普通の人間を感染させてゾンビ化させることは可能だからである。
 都営新宿線で会った少女はロングヘアーだったが、恐らくあの後切ったのかもしれない。

 愛原:「リサ、あれは本当に『1番』で間違いないのか?」
 リサ:「私と同じ匂いがした。というか、かなり人食いをした臭いがしたよ」

 BOWは人食いをすればするほど、体臭がキツくなる。
 普通の人間でも、採食より肉食を中心とした食生活をしていると体臭がキツくなるのと同じことだ。

 善場:「でも、これではっきりしましたね。『1番』は聖クラリス女学院の生徒として潜り込んでいることが」
 愛原:「今から乗り込みますか?」
 善場:「もちろんですよ。何食わぬ顔して、登校しているかもしれませんからね」

 私達は電車を降りると、聖クラリス女学院に向かおうとした。
 だが、その前に警察に事情を話さなくてはならなった。
 もちろんこの場に善場主任がいたので、流れはスムーズだったが。

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