[12月6日07:27.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅新宿線ホーム→大江戸線ホーム]
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。もりした~、森下~。大江戸線は、お乗り換えです〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は斉藤社長の依頼で、娘の絵恋さんに付いている。
そして、絵恋さんは他校との交流試合に参加するところであった。
高橋:「何もこんな朝早くからよ」
電車を降りがてら、高橋がそんな文句を言った。
愛原:「開会式は9時からだ。絵恋さんとしては、早めに到着して、先方の雰囲気を掴んでおきたいんだよ。何しろ、東京中央学園側はアウェイなわけだからな」
高橋:「そりゃそうですけど……」
菊川から森下駅までは歩いても行けるのだが、絵恋さんと待ち合わせをして一緒に行く為、菊川駅から電車に乗った。
都営新宿線には一区間だけ乗る形になる。
愛原:「場所は六本木。東京中央学園よりも一等地にあるな」
高橋:「高校は上野にあるんでしょう?東京中央も、そういった意味では一等地だと思います」
愛原:「まあな」
東京中央学園は都内各地(一部は千葉県)にキャンパスがいくつか散らばっている。
イメージとしては埼玉の学校法人、佐藤栄学園に似ている。
それに対し、これから向かう聖クラリス女学院は初等部から大学まで徒歩圏内に集約されている。
愛原:「どれ、次は大江戸線か」
一旦改札口へ向かうコンコースに上がり、それから大江戸線ホームへ向かう階段を下りる。
平日なら通勤・通学客でごった返している時間だが、日曜日ともなると静かなものだ。
リサ:「先生、『退魔士』の人、来る?」
愛原:「栗原蓮華さんか。来るだろう。高等部は高等部で、剣道の交流試合だ」
リサ:「先生。もしも私が『1番』だったら、多分私の前に直接は現れない。あいつ、臆病者みたいだから」
愛原:「ということは?」
リサ:「私だったら、『退魔士』の人を襲うと思う」
愛原:「なるほど。確かに今、蓮華さんを見ている人はいないな……」
大江戸線ホームに向かい、そこでしばらく電車を待ちながら私は考えた。
『1番』とは同族のリサが考えることは一致しているかもしれない。
そして、同族とはなるべく戦いたくないが、面倒臭い人間はさっさと殺したいと思うだろう。
そうなると、蓮華さんを狙うか。
しかし、蓮華さんもそれまで何人ものリサ・トレヴァーの首を刎ねている。
その中で『1番』が一番強いったって、復讐心に燃える蓮華さんだって強いと思うのだ。
どうしたものか……。
〔まもなく4番線に、大門、六本木経由、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
しばらく思案していたが、なかなかいいアイディアが思いつかない。
そんな時、接近チャイムと放送が鳴り響いて、私は我に戻った。
〔4番線の電車は、大門、六本木経由、光が丘行きです。もりした、森下。新宿線は、お乗り換えです〕
ぶどう色に近いワインレッドのラインカラーを帯びた電車がやってくる。
そして先頭車両に乗り込むと、そこには見知った顔が2つあった。
善場優菜:「おはようございます」
栗原蓮華:「おはようございます」
空いている車内に、善場主任と栗原蓮華さんが乗っていた。
そこで私はピンと来た。
そうか!蓮華さんの方は、善場主任に見てもらえばいいんだ!
或いは、その逆でもいい。
何でこんなことに気が付かなかったんだろう!
『1番』のことだから、善場主任に相談すれば、動いてくれるのだ!
愛原:「おはようございます」
私達は彼女達の向かい側に腰かけた。
すぐに短い発車メロディ(乗降促進メロディ)が鳴って、ドアが閉まった。
そして、電車が走り出す。
〔次は清澄白河、清澄白河。半蔵門線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Kiyosumi-Shirakawa.E14.Please change here for the Hanzomon line.〕
善場主任はいつも通り黒いスーツを着ているが、蓮華さんは違った。
もう既に剣道着を着ているようである。
但し、上にはコートを羽織っていたが。
で、私が気になったのは持ち物。
長物を2つ持っている。
1つは試合に使う竹刀だろう。
しかしもう1つは……恐らく、『1番』を斬る為の真剣であろう。
そんなもの合法的に持ち歩けないから、善場主任が付いているのだろう。
聞けばやはりその通りであった。
善場:「愛原所長も水臭いですよ?『1番』の情報を掴んだら教えてくださいと言ったではありませんか?」
愛原:「す、すいません。まだ確定はしていない、推理の段階だったので……」
善場:「それでもいいんですよ。些細なことでも、情報提供は大事ですから」
愛原:「はあ……」
正しくその通りだ。
因みに斉藤さんは、学校指定のジャージを着ている。
試合の時に着る空手の道着は、手持ちのボストンバッグの中に入っている。
愛原:「『1番』の目星、誰だかもう付いてるんですか?」
善場:「何人かは。愛原所長が仰ってた特徴と照らし合わせて、何人かは候補に浮上しました。ただ、候補者達は中等部と高等部に別れてしまっています」
愛原:「え?」
善場:「聖クラリス女学院は、東京中央学園と違って、中等部・高等部で制服のデザインを変えるようなことはしないのです」
愛原:「あちゃー……」
東京中央学園は男女共通で、中等部のブレザーはシングル、高等部はダブルという違いを付けているのだが。
だからもし、ここで蓮華さんが制服を着ていたら、彼女はダブルのブレザーを着ているということになる。
今ここで制服を着ているのはリサだけだ。
そのリサはシングルである。
善場:「とにかく、『1番』がどこから攻撃してくるか分かりません。私は彼女を見ていますから、愛原所長は『2番』と行動してください」
愛原:「分かりました」
善場主任は元『12番』の『0番』。
人間に戻れつつも、身体能力はリサ・トレヴァー時代の物を色濃く残す善場主任がいれば心強い。
善場:「何かありましたら、すぐに連絡を」
愛原:「はい」
私は善場主任から小型のトランシーバーを渡された。
なるほど。
同じ学校の敷地内でも、中等部と高等部は分かれているし、当然会場も別れている。
こういう時、無線機があるとやり取りしやすいかもな。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。もりした~、森下~。大江戸線は、お乗り換えです〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は斉藤社長の依頼で、娘の絵恋さんに付いている。
そして、絵恋さんは他校との交流試合に参加するところであった。
高橋:「何もこんな朝早くからよ」
電車を降りがてら、高橋がそんな文句を言った。
愛原:「開会式は9時からだ。絵恋さんとしては、早めに到着して、先方の雰囲気を掴んでおきたいんだよ。何しろ、東京中央学園側はアウェイなわけだからな」
高橋:「そりゃそうですけど……」
菊川から森下駅までは歩いても行けるのだが、絵恋さんと待ち合わせをして一緒に行く為、菊川駅から電車に乗った。
都営新宿線には一区間だけ乗る形になる。
愛原:「場所は六本木。東京中央学園よりも一等地にあるな」
高橋:「高校は上野にあるんでしょう?東京中央も、そういった意味では一等地だと思います」
愛原:「まあな」
東京中央学園は都内各地(一部は千葉県)にキャンパスがいくつか散らばっている。
イメージとしては埼玉の学校法人、佐藤栄学園に似ている。
それに対し、これから向かう聖クラリス女学院は初等部から大学まで徒歩圏内に集約されている。
愛原:「どれ、次は大江戸線か」
一旦改札口へ向かうコンコースに上がり、それから大江戸線ホームへ向かう階段を下りる。
平日なら通勤・通学客でごった返している時間だが、日曜日ともなると静かなものだ。
リサ:「先生、『退魔士』の人、来る?」
愛原:「栗原蓮華さんか。来るだろう。高等部は高等部で、剣道の交流試合だ」
リサ:「先生。もしも私が『1番』だったら、多分私の前に直接は現れない。あいつ、臆病者みたいだから」
愛原:「ということは?」
リサ:「私だったら、『退魔士』の人を襲うと思う」
愛原:「なるほど。確かに今、蓮華さんを見ている人はいないな……」
大江戸線ホームに向かい、そこでしばらく電車を待ちながら私は考えた。
『1番』とは同族のリサが考えることは一致しているかもしれない。
そして、同族とはなるべく戦いたくないが、面倒臭い人間はさっさと殺したいと思うだろう。
そうなると、蓮華さんを狙うか。
しかし、蓮華さんもそれまで何人ものリサ・トレヴァーの首を刎ねている。
その中で『1番』が一番強いったって、復讐心に燃える蓮華さんだって強いと思うのだ。
どうしたものか……。
〔まもなく4番線に、大門、六本木経由、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
しばらく思案していたが、なかなかいいアイディアが思いつかない。
そんな時、接近チャイムと放送が鳴り響いて、私は我に戻った。
〔4番線の電車は、大門、六本木経由、光が丘行きです。もりした、森下。新宿線は、お乗り換えです〕
ぶどう色に近いワインレッドのラインカラーを帯びた電車がやってくる。
そして先頭車両に乗り込むと、そこには見知った顔が2つあった。
善場優菜:「おはようございます」
栗原蓮華:「おはようございます」
空いている車内に、善場主任と栗原蓮華さんが乗っていた。
そこで私はピンと来た。
そうか!蓮華さんの方は、善場主任に見てもらえばいいんだ!
或いは、その逆でもいい。
何でこんなことに気が付かなかったんだろう!
『1番』のことだから、善場主任に相談すれば、動いてくれるのだ!
愛原:「おはようございます」
私達は彼女達の向かい側に腰かけた。
すぐに短い発車メロディ(乗降促進メロディ)が鳴って、ドアが閉まった。
そして、電車が走り出す。
〔次は清澄白河、清澄白河。半蔵門線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Kiyosumi-Shirakawa.E14.Please change here for the Hanzomon line.〕
善場主任はいつも通り黒いスーツを着ているが、蓮華さんは違った。
もう既に剣道着を着ているようである。
但し、上にはコートを羽織っていたが。
で、私が気になったのは持ち物。
長物を2つ持っている。
1つは試合に使う竹刀だろう。
しかしもう1つは……恐らく、『1番』を斬る為の真剣であろう。
そんなもの合法的に持ち歩けないから、善場主任が付いているのだろう。
聞けばやはりその通りであった。
善場:「愛原所長も水臭いですよ?『1番』の情報を掴んだら教えてくださいと言ったではありませんか?」
愛原:「す、すいません。まだ確定はしていない、推理の段階だったので……」
善場:「それでもいいんですよ。些細なことでも、情報提供は大事ですから」
愛原:「はあ……」
正しくその通りだ。
因みに斉藤さんは、学校指定のジャージを着ている。
試合の時に着る空手の道着は、手持ちのボストンバッグの中に入っている。
愛原:「『1番』の目星、誰だかもう付いてるんですか?」
善場:「何人かは。愛原所長が仰ってた特徴と照らし合わせて、何人かは候補に浮上しました。ただ、候補者達は中等部と高等部に別れてしまっています」
愛原:「え?」
善場:「聖クラリス女学院は、東京中央学園と違って、中等部・高等部で制服のデザインを変えるようなことはしないのです」
愛原:「あちゃー……」
東京中央学園は男女共通で、中等部のブレザーはシングル、高等部はダブルという違いを付けているのだが。
だからもし、ここで蓮華さんが制服を着ていたら、彼女はダブルのブレザーを着ているということになる。
今ここで制服を着ているのはリサだけだ。
そのリサはシングルである。
善場:「とにかく、『1番』がどこから攻撃してくるか分かりません。私は彼女を見ていますから、愛原所長は『2番』と行動してください」
愛原:「分かりました」
善場主任は元『12番』の『0番』。
人間に戻れつつも、身体能力はリサ・トレヴァー時代の物を色濃く残す善場主任がいれば心強い。
善場:「何かありましたら、すぐに連絡を」
愛原:「はい」
私は善場主任から小型のトランシーバーを渡された。
なるほど。
同じ学校の敷地内でも、中等部と高等部は分かれているし、当然会場も別れている。
こういう時、無線機があるとやり取りしやすいかもな。
意外だったな。
ああ見えて、何回か未達やってるんじゃないかと思ったが。
「ある条件」って、多分あれのことか?
でも……。
雲羽:「そんなこと俺達に言われても……」
鬼舞辻トチロ~:「俺達に言われても?何だ?言ってみろ」
雲羽:「まずい!」
鬼舞辻トチロ~:「何がまずい?言ってみろ」
その後、報恩坊パチンコ隊を見た者は誰もいない……。