報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長からの依頼」

2020-12-22 20:04:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月2日12:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 高野君への面会で東京拘置所に行った後、事務所に戻ると、斉藤社長からの依頼書がファックスされていた。
 それに目を通していると、ボスから電話が掛かって来た。

 ボス:「私だ」
 愛原:「ああ、ボス。お疲れ様です」
 ボス:「昼休みの最中、申し訳ない。そちらに斉藤社長からの依頼書が行ったと思うが、引き受けてくれるかね?」
 愛原:「はい。大丈夫です」
 ボス:「そうか。では、私から斉藤社長には伝えておくから、詳しい資料をメールしてもらおう。今日中に来るだろうから、しばらく待ってもらいたい」
 愛原:「分かりました」

 私は電話を切った。
 本当にボスは、ここぞという時にはタイムリーに連絡を入れて来る。
 一体、正体は誰なのだろう?

 高橋:「またレズガキのお守りっスか?」
 愛原:「そんなところだ」
 高橋:「全く。探偵を何だと思ってんスか、あの社長は……」
 愛原:「いや、今度の仕事は渡りに舟かもしれないぞ」
 高橋:「? どういうことっスか?」
 愛原:「今度の日曜日、聖クラリス女学院中等部と東京中央学園墨田中学校で女子空手部の交流試合があるらしい。絵恋さんも参加するから、俺達は護衛として付いて行って欲しいとのことだ」
 高橋:「あいつに護衛なんて要ります?化け物をピヨらせることができるヤツですよ?」
 愛原:「しかし、もしあの学校に『1番』がいるとしたら、巻き込まれる恐れがある。そんな時、バイオハザードを何度も潜り抜けた俺達の護衛が必要だってことらしいな」
 高橋:「どっちかっつーと、探偵よりかはガードマンの仕事って感じですね」
 愛原:「まあな」

 もちろん身辺警備を一手に引き受ける警備会社は存在する。
 だが、普通の暴漢相手ならそれで事足りるだろうが、何しろ相手はBOWだからな。
 海外ならむしろそこで“青いアンブレラ”の出番なのだろうが、いかんせん日本では活動停止を食らってしまった。
 最初のうちは日本の警備会社に毛を生やしたような活動にしておいたら、取り締まられることもなかっただろうに、“青いアンブレラ”は日本をナメてるとしか思えない。
 いや、むしろヘタすりゃ“青いアンブレラ”が出張ってもおかしくないバイオハザードをナメている日本政府の方がおかしいのだろうか。
 もしも新型コロナウィルスがゾンビウィルスに変異しようものなら、後者の論が正しいということになる。

 高橋:「しかしあんなことがあったってのに、開催するんですね」
 愛原:「ミッション系の学校だからな。『神の御加護さえあれば大丈夫』とでも思ってるのかもな」
 高橋:「全然大丈夫じゃなかったと思いますけどね」
 愛原:「まあな。まあ、俺の勝手な想像だ」

[同日15:30.天候:晴 同事務所]

 リサ:「ただいま」
 斉藤絵恋:「こんにちはー」

 日本広しと言えど、JCが気軽にやってくる探偵事務所なんて、ここだけだろう。
 だが、ちょうどいい。

 愛原:「おー、お帰り。斉藤さん、いらっしゃい」
 高橋:「神聖な事務所をたまり場にすんじゃねぇ」
 愛原:「まあ、どうせヒマだからいいよ」
 高橋:「はあ……」
 愛原:「給湯室の冷蔵庫にジュースがあるから」
 リサ:「はーい」
 斉藤:「ありがとうございます」

 2人は給湯室にあるダイニングテーブルに向かった。
 ここで宿題をやるのが定番になっている。

 愛原:「今日は、あのメガネのコはいないのかい?」
 リサ:「コジマは午後から病院に行ってる」
 愛原:「そうか」
 斉藤:「リサさんが『捕食』してくれてるおかげで、小島さんのお腹の病気も調子がいいんですよ」
 愛原:「そりゃあ良かった。それより斉藤さん、ちょっと飲みながらでいいから聞いてくれるかな?」

 すると斉藤さん、リサとの一時を邪魔されるのがイラッと来たか、眉を潜めて言った。

 斉藤:「これから宿題をやらせて頂くんですけど?」
 愛原:「ああ、そうかい……」

 だが、リサが斉藤さんを軽く睨み付けた。
 今のリサは人間に化けた第0形態だが、睨み付ける瞬間のみ、瞳が赤く光った。

 リサ:(なに先生の頼み断ってんの?いい度胸してんじゃん。逆らったらどうなるか、分かってるよね?)

 そんなことを言いたげだ。

 斉藤:「ひぅ……!ご、ごめんなさい!な、なんでしょうか?」
 愛原:「ああ……えーと……。さっき、斉藤さんのお父さんから仕事の依頼を受けたんだ。何でも今週日曜日、空手の対外試合があるらしいね?」
 斉藤:「あー、そのことですか。よりにもよって、連続猟奇殺人事件が起きた聖クラリスですよ?何で中止にしないのって思いましたね」
 愛原:「会場はその聖クラリス女学院なんだってね」
 斉藤:「そうなんです。あそこの武道館の方が、うちより新しくてきれいなので」
 愛原:「そうなのか。で、私と高橋がキミの護衛役を任されたのでよろしく」
 斉藤:「そうなんですか。まあ、私は護衛なんて要らないって言ったんですけどね。父の心配性のせいで、巻き込んでしまって申し訳ありません」

 斉藤さんはやや憤慨気味に言った。

 愛原:「どうだろう?この際だからリサも、関係者として一緒に連れて行くことはできないだろうか?私達はキミの護衛役として一緒に学校に入れるみたいだが、リサも一緒の方がキミはもっと安心だろう?」
 斉藤:「そうですね!ていうか、リサさんの応援があれば心強いです!……そうですね。リサさんには、空手部のマネージャー助手ということにしておきましょう」
 愛原:「よろしく頼むよ」

 これでリサを潜り込ませれば、『1番』のことがもっと分かるかもしれない。
 何しろ同じリサ・トレヴァーだ。
 同族のことは、もう気配などで分かるだろう。

 斉藤:「高等部では女子剣道部の交流試合もあるそうなので、盛り上がれそうですね」
 愛原:「えっ、そうなの!?」

 私は咄嗟に栗原蓮華さんの顔を思い浮かべた。

 斉藤:「そうなんです。えーと……高等部には1年生で、しかも左足が義足でありながら、段位を持つ強い剣道部員がいるそうです」
 愛原:「栗原さんだ!……因みに、因みにだよ?更に他に武道の交流試合はあるの?」
 斉藤:「いいえ。中等部では女子空手部、高等部では女子剣道部だそうです。それがどうかしましたか?」

 私と高橋は顔を見合わせた。
 これは何たる偶然!……というには、あまりにも話が出来過ぎてはいないだろうか?
 もしかして、大いなる罠が仕掛けられているのでは?
 うん、何かそんな気がしてきた。

 愛原:「とにかく、俺達とリサが護衛に行くから。もし斉藤さん、危険だと思ったら、急いで逃げるんだよ?」
 斉藤:「えぇ?」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「秋葉原経由菊川行き」

2020-12-22 16:09:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月2日10:20.天候:晴 東京都千代田区神田佐久間町 東京メトロ秋葉原駅→秋葉原電気街]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 高野君と2回目の面会を行った後、事務所に戻る途中である。
 来た道を戻るつもりでいたので、本来なら1つ手前の仲御徒町駅で降りる予定であった。
 しかし高橋が、どうしてもアキバに寄りたいというので、帰りは秋葉原周りで帰ることにした。

〔足元に、ご注意ください。あきはばら、秋葉原。中目黒行きです〕

 私達は秋葉原駅で降りた。

 高橋:「先生、サーセン。俺のワガママに付き合って頂いちゃって……」
 愛原:「別にいいよ。それで、何だ?買い物か?」
 高橋:「そうなんです。注文してた銃のカスタムが終わったみたいなんで、引き取りに……」
 愛原:「それは本物?それともエアガン?」
 高橋:「【お察しください】」

 地上に出て電気街方面に向かう。

 高橋:「引き取りに行くだけなんで、すぐ終わります」
 愛原:「そうか」
 高橋:「先生もついでに、新しい銃を見繕ってみては?」
 愛原:「いいよ。別に持ち歩くわけじゃないし、俺にはショットガンで」
 高橋:「そうですか?」
 愛原:「それで思い出したけど、高野君みたいなスナイパーがいなくなると、少し痛いかもな」
 高橋:「え?」
 愛原:「いや、『1番』との戦いが今後どうなるか分からんけど、もしもゲームや映画のような展開になるとしたら、遠くから狙撃することも重要だからな」
 高橋:「でも実際最後の方、ロケランとかグレラン撃ってますよ?」
 愛原:「……まあな。やっぱりいいよ。最後はBSAAの皆様の仕事だ」
 高橋:「はい」

 平日の午前中とあってか、電気街は空いていた。
 電気街は北に行けば行くほど、マニアックな店が増える傾向にある。
 特に、『電気街北口駅』とも言える銀座線の末広町駅周辺はそのような店が多い。
 その為、電気街の北側に用のある者は、秋葉原駅ではなく、末広町駅を利用するのだという。
 そこの一画に、高橋行きつけのガンショップがあった。

 店長:「いらっしゃい。おお!高橋さん」
 高橋:「うス。マスター、例の物を引き取りに来たぞ」
 店長:「毎度。今度のカスタムでは、弾倉の方を……」
 高橋:「これから敵はもっと強くなる。霧生市のゾンビの1匹や2匹、弾1発で軽くあの世に送れるくらいの威力は欲しいよな」
 店長:「高橋さんは誰と戦ってるの?」
 愛原:「高橋、一応ゾンビも元人間だからな?」

[同日10:56.天候:晴 千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1088K電車最後尾車内]

 高橋の用事も終わり、私達は本当に事務所に帰ることにした。

 高橋:「先生、サーセンっした」
 愛原:「いや、いいよ。これからの戦いの役に立つってんなら……。あ、いや、なるべくなら使わない方がいいんだよな」

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。急行電車の通過待ちは、ありません〕

 強風を伴って京王電鉄の車両が飛び込んで来る。
 さすがにラッシュの終わった今は、空席の目立つ車内となっている。

〔4番線は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう~、岩本町~〕

 電車に乗り込んで、ローズピンクの座席に腰かけた。
 車両にもよるだろうが、都営地下鉄の車両よりもクッションは柔らかい。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 都営地下鉄の車両はJR東日本の普通列車と同じ音色のドアチャイムだが、京王電鉄の方はJR東海のそれと同じである。
 乗務員室の方から発車合図のブザーが聞こえると、エアの抜ける音がして電車が走り出した。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.S09.Please change here for the Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 この区間で私達は『1番』と思われる少女に出会った。
 反対方向であるが。
 どうして『1番』はあの時、痴漢に遭った少女でいたのだろう?
 私達のことは、『1番』の耳にも入っていたはず。
 明らかに彼女の敵になることは知っていたはずだ。
 であれば、私達がまだ正体を知らぬうちに殺してくるなり、いっそのことあの電車にウィルスを撒き散らしてバイオハザードを引き起こすことだってできたはずである。
 いや、そもそも何であのタイミングで痴漢に遭ってたんだ?
 そりゃ、痴漢が発生してもおかしくないほどの混雑っぷりではあったが……。

 愛原:「ん?」

 その時、私のスマホが震えた。
 メール着信である。
 見ると、斉藤社長からであった。
 新たに仕事の依頼があり、その依頼書を事務所にファックスしたので、確認してほしいというものだった。
 全く。
 NPO法人デイライトと斉藤社長の仕事の依頼のおかげで、うちの事務所は持っているようなものだ。
 ありがたいことだ。
 もっとも、斉藤社長の依頼してくる仕事とは、おおよそ探偵業とはかけ離れた『便利屋』とか『何でも屋』みたいなものであるが……。

 愛原:「斉藤社長から仕事の依頼が来たようだ。急いで帰って確認しよう」
 高橋:「はい」

 日本でも指折りの大製薬企業の経営者である斉藤社長が、うちみたいな弱小探偵事務所に仕事の依頼をしてくるなんて、今もってしても不思議なことである。
 ただこれは、斉藤家の財務から報酬が支払われており、大日本製薬(通称、ダイニチ)の会計から支払われているのではない。
 つまり、斉藤社長の個人的案件で私達は動いているわけだ。
 もちろんそれでも、私達にとっては大口顧客であることに変わりは無いが。
 はてさて、斉藤社長は今度は何の依頼をしてきたのだろう?
 また、絵恋さんのお守りじゃないだろうな。
 ここで一旦、『1番』に関する推理・考察は停止した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする